ECサイトで買い物をするユーザーは、商品価格だけでなく、送料にもしっかりと注意を払っています。項目が違っても、結局支払う金額はこの両者の合算ですから、その合計金額に見合った商品かどうかを吟味して最終判断を下しているといえます。そこで今回は、ECサイトで送料を安く設定する方法や注意点について解説します。
ECサイトを経営するにあたっては、送料に対する消費者心理をしっかりと理解しておく必要があります。
たとえば「送料無料」と表示されていると、多くのユーザーがそこに反応します。そして購入に前向きな気持ちが働くでしょう。しかし、他サイトの同等品と比較したときに、送料が有料でも商品代金と合計するとそちらの方が安価な場合は、結局購入に至らないケースがよくあります。
もちろんほかに特典を付けるとか、条件付きの送料無料など、打つ手は数多く存在します。商品価格を下げるのもそのひとつですが、あまりに安くしすぎると、場合によってはブランドイメージを損ねる恐れもあるので注意が必要です。そういったことを総合的に考慮しつつ、いかに多くのユーザーの購買意欲をそそるメニュー展開ができるかが、経営サイドの腕の見せ所といえるでしょう。
ユーザーの思考とニーズを深く理解し、競合の出方を分析しながら、利益を確実に獲得できる形で送料設定をしていくという、一種の心理戦にも似た駆け引きに勝つための最適な戦略構築が肝となります。
ECサイトにおける送料設定のパターンは、
以上の5種類になります。それぞれの設定方法について、解説していきます。
ユーザーの心にもっともストレートに刺さるのが、「送料無料」です。この一言があるだけで、企業努力をしていたり、サービス精神に富んでいる、といったポジティブなイメージを消費者に与えやすくなります。お得感がダイレクトに伝わるのでリピートを増やしたい場合にも有効です。
ただし、配送にあたっては必ず送料が発生します。送料をどのように補てんするかを熟慮しなければなりません。いったん無料にしてしまうと、顧客離れを恐れるあまり途中で有料にしにくくなる面があることも認識しておく必要があるでしょう。
一定金額以上の購入で送料が無料になる、というのもよく用いられる戦略です。Amazonが2,000円以上、楽天も3,980円以上で送料無料になるサービスが有名です。この場合は、送料が無料となる金額をいくらに設定するかがポイントになります。設定金額が低すぎると、後になって送料負担がのしかかってくるので要注意です。
加えて、そこに利用回数を加えるやり方もあります。つまり「3,000円以上の購入を条件に2回目から送料が無料」といったパターンです。こうすると送料負担は大きくなりますが、定期的な注文が期待できるので、収益の安定性が計りやすくなったり、経営計画が立てやすくなったりするメリットがあります。
国内ならどの地域でも一律料金で送れる、というパターンもよく利用されます。いちいちエリアを確認する必要がないので手間が省けるうえ、ユーザーにとってもシンプルで分かりやすいのが特長です。
ただし、極端な例ですが、工場や倉庫が北海道にあり、九州の顧客が多くを占める場合は、一律料金にするとかなり負担が重くなります。逆に配送拠点が東京都内にあって、関東エリアの顧客が多い場合は、経済的メリットが大きいでしょう。そのバランスをよく考慮して料金を設定する必要があります。
配送拠点のエリアを考慮して、都道府県や関東圏、中国地方といった地域ごとに送料の設定料金を変える方法もあります。この場合は、全国一律料金と違って、顧客の居住地域に偏りがあっても大幅に損失が出ることはありません。ただし、ユーザーからすると旨みがないため送料において満足度を高めることはそれほど期待できません。
商品自体の魅力を増したり、別特典を用意したりして、付加価値を高める努力が求められます。
運送会社が提供する配送メニューによって料金を設定する方法もよく採られます。封筒を使ってコンパクトに送れるメール便の場合と、ダンボールで送る場合とで異なる料金設定をする、といった具合です。サイズだけでなく、重さで料金が変わるパターンもあります。こちらも上記の地域別料金と同じで、送料負担がない分、経営的には楽になります。ただし、ユーザーがそれで納得するようなサービスの提供を重視する必要があるでしょう。
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ECショップの最適な送料を見つける方法
冒頭で述べたように、ECサービスにおいて送料の存在は非常に重要です。どのように設定するかで、売り上げやリピート率に大きな開きが出るといっても過言ではありません。
それをよく理解しているからこそ、EC業者間では送料をめぐる価格競争が激しく展開されているのも事実です。かと言って過度にその価格合戦に巻き込まれてしまうと、負担が重なり疲弊するおそれが高まります。よって利益を度外視したサービス提供は考えものです。業界内の相場をよく把握して対応することは大切ですが、赤字覚悟の低料金は、いずれ自社の首を絞める結果となりかねません。送料設定にあたっては躍起にならず、冷静に状況を見定めて判断するように努めましょう。
続いて、送料を安くするための具体策を4つ紹介します。
運送会社と法人契約をすると、送料を低く抑えられます。業者や荷物の中身、また取り扱う量によって金額は異なりますが、一定以上のまとまった配送業務を依頼することで、1点あたりの送料が割安になるのです。法人契約にすると、送料で得するだけでなく、集荷サービスや月毎のまとめ払いが利用できたり、送り状の作成業務が簡素化できたりするので、他の面でのメリットも期待できるでしょう。
近年の物流需要の高まりにより、運送各社は、サービスの向上に余念がありません。送料を決める要素は「サイズ」「重量」「運送距離」「運送手段」の4つです。とくに大手は、これらを踏まえた上で、独自の特徴をそれぞれに打ち出しています。さらに紛失や破損時の補償、それ以外の保険の範囲なども無視できません。安かろう悪かろうでは、トラブル時にかえって経費がかさんだり、信用を落としたりする恐れがあるからです。
これらの条件を総合的に考慮して、自社の荷物の中身や配送ニーズにあった業者を選ぶのが理想です。もっとも適切かつ安価な運送方法を活用するためにも、各社のサービスメニューを詳しく調査しましょう。
送料は箱や封筒などのサイズによって決まる場合が多いので、荷物の容量に過不足のない最適な梱包方法を選択する必要があります。とくに大きめの段ボールを使うと、中身に対してサイズが大きすぎる上に、高い料金で送ることになるので要注意です。
梱包を機械化するなら別ですが、手作業の場合は、段ボール等の選定に関するマニュアルの周知徹底に注力することが大切でしょう。
先ほど、法人契約について解説しましたが、配送だけでなく、在庫管理、注文を受けた後のピッキングや検品、梱包を含めた物流業務を一括して専門業者に委託するのも一つの方法です。
かなりまとまった規模でなければ、費用対効果の最適化は難しいですが、プロに任すことで、上記業務に加えて、カスタマー対応までを一任できるので、浮いた時間を重要度の高いコアな業務に充てることが可能、という利点があります。その方が、総合的に見ると経済的メリットが高いこともあるので、検討してみる余地はあるでしょう。
発送代行を利用するポイントは「物流アウトソーシングとは?自社物流との違いや種類を紹介」でも紹介しています。
送料は一度決めたら、そのまま永続させるというものではありません。その時々の状況に応じて柔軟に対応する姿勢をもつことも大事です。とくに昨今は、新型コロナウィルスのパンデミックなど世界情勢の変化によって燃料費が高騰し、物流業界は激動のさなかにあります。その煽りを受けて、送料に大きな変化が訪れることも大いに考えられます。つねに最新情報を広く収集し、運送会社とも良い関係を構築しながら、可能な限り最適な料金体系を維持できるように努めることが大切です。
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