みなさんがネットショップを開設したい!と思ったとき、真っ先に直面する課題があります。それは商品の調達方法です。海外から調達できるという話は聞いたけれども、実際商品を海外から輸入するにはどうしたらいいのでしょうか?
海外からの商品調達を検討するときは、輸入貿易実務に関わる手続きを知ることが必要です。ここでは最低限押さえておくべき『インコタームズ』について紹介します。
IT・国際輸送が発達した現代では、海外からの商品調達のハードルは格段と下がりました。「世界の工場」と呼ばれる中国や、中国より生産コストが安い「チャイナプラス1」と呼ばれるタイなどの東南アジア諸国で生産拠点が設けられ、そこで生産された商品が世界中の消費国へ輸出されています。
大手企業のみが取り扱えていた海外商品も、昨今では個人事業主も比較的簡単に海外の工場から直接購入することができるようになってきています。海外からの輸入により、人気の商品を大量にそしてより安価に仕入れることができます。
とはいえ、国内商取引とは勝手が異なるのも事実で、最大の違いとして認識しておかなければならないのは、海外商取引ではインコタームズの取決めが必要かつ出発点となる、という点です。
インコタームズとは国際商業会議所が定めた国際基準の貿易条件ルールであり、これにより商品の引き渡し場所、リスク移転、輸送費の負担条件、保険料の負担条件などが売主と買主の間で取決められることとなります。
インコタームズはFree条件、Delivered条件、Carriage/Cost条件毎にアルファベット3文字で表され、合計11条件が存在します。日本への輸入時に最も一般的に取り扱われるインコタームズは以下の4つです。その他のインコタームズやインコタームズの詳細は日本貿易振興機構(Jetro/ジェトロ)をご参考ください。
「EXW – Ex-Works」は国際商取引における配送条件を規定するインコタームズで、商品の引き渡し場所と費用負担の範囲を明確にします。この条件において、売り手は出荷準備が整った商品を自身の施設(工場、倉庫など)にて買い手に引き渡します。ここでの「引き渡し」とは商品が買い手の指定する運送業者に引き渡されることを指します。
EXWの条件下では、輸出許可や輸出手続きの責任は買い手にあります。また、運送費、保険料、関税など、商品が売り手の施設を出た後の全ての費用とリスクは買い手が負担します。売り手は商品の出荷準備のみを行うため、EXWは売り手にとってはリスクが最も低いインコタームズと言えます。
「CIF – Cost, Insurance And Freight」は、商品の輸送費用、保険、船積みまでの費用を売り手が負担することを規定します。この条件の下では、売り手は商品を指定された港まで運び、輸送に必要な費用と保険料を支払います。
具体的には、CIFは商品価格、運賃、保険料を含んだ価格体系を意味します。商品が積み込み港の船舶上に載せられた時点でリスクが売り手から買い手に移行しますが、輸送中の保険は売り手が手配します。したがって、商品が運送中に損傷した場合や紛失した場合でも、保険によって補償が受けられます。
ただし、CIFは海上運送を前提とした取引条件であり、買い手の港での取扱いや輸入関税、その他の費用は買い手の責任となります。また、保険内容は最低限度のものであるため、より広範な保険を必要とする場合は買い手が別途手配することが必要となります。
「FOB – Free On Board」は、売り手が商品を出荷港の船に積み込む責任と費用を負担することを規定します。売り手は商品を出荷港まで運び、指定された船舶に積み込みます。商品が船の甲板上に安全に載せられた時点で、商品のリスクが売り手から買い手に移行します。
FOBの条件下では、出荷後の運送費、保険料、目的地までの運送リスク、輸入手続きと費用、そして目的地までの運送を買い手が負担します。売り手は商品を出荷港まで安全に運び、船舶に積み込む責任とコストを負担します。
したがって、買い手は自身で運送業者と保険会社を選び、契約を結ぶことができます。これは、買い手が運送費や保険料についてよりコントロールを持つことができる一方、それらに関連するリスクも全て買い手が負担することを意味します。
「DDP – Delivered Duty Paid」は、売り手が全ての輸送費用と輸入関税を含む全てのリスクと費用を負担することを規定します。この条件は、売り手に最も多くの責任を負わせる取引条件であり、商品の輸送から輸入手続き、関税の支払い、目的地までの配送までを全て売り手が行います。
売り手は、商品が目的地で買い手に引き渡されるまでの全てのリスクと費用を負担します。これには商品の梱包、輸送、保険、輸出入の手続き、関税、税金、そして目的地までの配送が含まれます。したがって、買い手は商品の到着を待つだけで良く、輸送や輸入に関する手続きやリスクを心配する必要はありません。
しかし、この条件下では売り手が買い手の国の輸入規定を理解し、遵守する必要があります。また、売り手は関税や税金の詳細を把握し、適切に支払う必要があります。これらの要件は売り手にとって大きな負担となる可能性があります。
日本への輸入においてDDPは一般的に使用される条件であり、買い手にとってはリスクと手続きの負担が最小限であることから、特に複雑な輸入手続きや高額な関税が発生する商品に対して有利な条件となることが多いです。
CIF条件を採用した場合、売主側(例:中国のA工場)は、商品が中国の港に停められた船の上に積み込まれた時点で危険負担が売主から買主(例:日本で購入したあなた)に移ります。
売主は中国国内から港までの陸上輸送、輸出通関費用、海上運賃、貨物保険料を負担します。売主のメリットはは輸送コストや納品スケジュールをコントロールでき、商品のリスクを自国の港(船上)で買主に移せるという条件です。
一方EXW条件を採用すると、買主が全ての危険負担を引き受ける代わりに、売主の工場から最終納品先(例:日本)までの輸送手段の選択肢を買主が全て決定する権利を手にします。
すでに買主側で輸送手段方法が確定している場合には、こうした条件を元に商品購入価格の交渉に臨まれることでしょう。なおEXW条件の反対にはDDP条件(Delivered Duty Paid 仕向地持込渡し<関税込み>)があり、売主が全てのリスク負担と輸出通関、海上運賃、海上保険、買主国での国内輸送に輸入関税などの費用負担も加えた条件などもあります。
インコタームズの決定は、売主と買主の間での取決内容やお互いの強みや弱みといった部分も考慮した上で検討されることをお勧め致します。
また、一般的にはありとあらゆる輸出入を伴う売買契約はインコタームズに基づいた取引価格の合意が必要です。注意点としてはインコタームズはリスク移転を定めますが、商品の所有権に関する定義は行っていません。所有権移転の分岐点は売買契約にて定義する必要があるでしょう。
ネットショップで商品を輸出入する際は、上記のインコタームズの選択が重要な要素となります。
例えば、販売者側が全ての輸送リスクと費用を負担する「DDP – Delivered Duty Paid」は、バイヤーにとっては最も安全な選択ですが、販売者にとっては関税、税金、配送コストなど全てを負担しなければならない重大な責任を伴います。逆に「EXW – Ex Works」は、販売者が商品を自身の事業所でバイヤーに渡すだけで良いため、販売者にとっては負担が少ない選択ですが、バイヤーにとっては全ての輸送リスクと費用を負担することになります。
インコタームズの選択は、自社のビジネスモデル、商品の種類、バイヤーの位置、販売価格などにより影響を受けるため、各事情に応じた最適なインコタームズを選択することが必要です。
また、インコタームズの選択やそれに伴う手続きは、専門的な知識と経験を要するため、これを外注することが可能です。物流会社や貿易コンサルタントなどが、インコタームズの選択、輸出入の手続き、関税計算などを代行するサービスを提供しています。ただし、これらのサービスは費用が発生するため、そのコストと利便性を比較検討することが重要です。
海外商品を輸入して販売、小規模であればそれほど問題はないでしょうが、規模が大きくなるとインコタームズの知識も欠かせなくなります。個人でそれを勉強してというのは、少々がハードルが高くなるでしょう。
STOCKCREWの発送代行サービスでは、国内配送のみならず、海外からの輸入の対応も行っています。
国際輸送や貿易については貿易実務そのものや貿易対象国独自の法規制や、商品によっては表示規制や成分を含めた輸入通関に必要な複雑な手続きや書類を必要とするケースがございます。
輸入プロセスの組立から検討されている方々は是非お気軽にお問い合わせください。