STOCKCREW JOURNAL

コールドチェーンとは?物流への影響とその課題

作成者: STOCKCREW(公式)|2023年05月30日

ひと昔前と比較すると冷凍食品の品質のレベルは格段に向上し、加熱後はできたての味とそれほど変わらない、と感じませんか?また、地方の名産品をインターネット通販で「お取り寄せ」するのが流行っています。これはすべてコールドチェーンの発達がもたらしたものです。ここでは、このコールドチェーンについて解説します。

コールドチェーンとは?

コールドチェーンとは、「低温流通機構」もしくは「低温流通体系」の意味で、具体的には冷凍食品やチルド食品を低温管理が必要な商品を、生産から消費の過程でしっかりと低温で管理した状態で流通させる仕組みです。コールドチェーン自体は古くから存在するもので、昭和40年に当時の科学技術庁が出した勧告に端を発しています。この時期から低温の冷凍機や家庭用の冷蔵庫(冷凍庫含む)が普及した背景があります。

参考資料:日立評論1974年2月号:コールドチェーン発展の背景と市場動向

ちなみに、コールドチェーンによって流通する商品は食品だけに限りません。輸血などに用いられる血液バッグといった医療品や医薬品。さらに、場合によっては電子部品の流通においてもコールドチェーンが採り入れられています。

コールドチェーン拡大の理由

もともとあったコールドチェーンというシステムですが、ここ最近は急激にその需要が高まっています。その原因として挙げられているのが通信販売、ECの拡大です。

近年、冷凍技術の進歩により、冷凍食品は味が落ちるといったネガティブポイントが次第に薄れつつあります。味もさることながら、健康志向を受けてそのニーズを満たす冷凍食品、チルド食品も増えてきており、味・健康面での安心感のいずれも満たす冷凍食品を通信販売する事業者の増加が、コールドチェーンの需要を後押ししていると見られています。

そのほか、新型コロナウイルスのまん延により、家での食事、いわゆる「内食」が増えて、冷凍食品、チルド食品のニーズが急上昇したという事情も忘れてはなりません。

ECの拡大と物流については「EC物流代行の重要性はなにか?メリットとデメリットを解説!」で詳細を記載しています。

コールドチェーンが物流を含む商取引にもたらしたメリット

コールドチェーンが商取引全体にもたらしたメリットのなかで、とくに代表的なものを紹介します。

 

食品の品質維持

コールドチェーンがもたらした最たるメリットは、食品の品質維持、つまりユーザーに新鮮な商品を届けられるようになった点にあります。コールドチェーン登場以前は常温での物流しか方法がなく、流通段階で傷んでしまう恐れがありました。そのため新鮮なものは産地の近くでしか望めませんでしたが、コールドチェーンが普及することによって鮮度を保った状態でユーザーの手元に届けられるようになりました。

 

流通範囲の拡大

ひとつ上の「食品の品質維持」でも紹介したように、常温物流では鮮度の高い食品は産地の近くでしか手に入れられませんでした。しかし、コールドチェーンの発達により、産地から離れた場所でも高鮮度=「採れたて」に近い食品を手に入れられるようになったのです。これは日本国内に限った話ではなく、海外へもその範囲が広がっています。したがって、食品業界においてはコールドチェーンの拡大=ビジネスチャンスの拡大とも言えます。

 

フードロスの軽減

ここまで紹介したコールドチェーンは物流における輸送を中心に紹介してきましたが、コールドチェーンは輸送だけではなく、保管の面でもその効力を発揮します。まず、生産した食品を冷凍、もしくは冷蔵保管、流通させることは品質劣化を抑制し、さらに賞味期限(消費期限)を伸ばせるようになります。その結果、フードロス減少を実現できます。フードロスを抑えられれば、計画的な生産体制を築けるだけにとどまらず、廃棄にかかるコストを抑制できるため、結果的にコストの抑制につながります。

コールドチェーンの課題

おもに食品、医療業界においてコールドチェーンはいまや欠かせない存在とも言えますが、いくつかの課題も残されています。以下、代表的な課題を紹介します。

 

コスト

コールドチェーンの実現にあたっては、冷凍・冷蔵の設備が整った保存倉庫のほか、冷凍車(冷蔵車)や保冷ボックスといった「コールド」の部分を実現する設備を確保しなければならないため、通常の物流よりもコストがかさみます。また、冷凍・冷蔵設備を稼働させるための電気代などランニングコストもかかってしまいます。

こうした実情がある中、コールドチェーン対象商品の需要は年々増加しており、冷凍・冷蔵設備が不足してしまっている状況に陥ってしまっているという問題もあります。

物流倉庫とコストに関しては『「保管」のマメ知識~倉庫と保管機能~』もご参照ください。こちらの記事で料金差異が発生する理由を記載しています!

 

専門的な知識・技術

保管、輸送の段階で温度管理を徹底するためには、専門的な知識や技術が必要になります。食品によっては出荷前に予冷という工程が必要など、品質を保つために欠かせない要素が複数あるため、コールドチェーンにかかわるとなると、それを維持するために意識を高める必要性とその徹底が求められます。

 

管理の難しさ

コールドチェーンをキープするためには高い意識が必要であると紹介しましたが、そのためには作業する人にとって心身ともに負担をかけてしまいます。こうした人員の管理はもちろん、低温管理されている施設内には冷気が逃げないように厳重な扉が設置されているため、在庫に目が届きづらい、管理しづらいという面もあります。それを防ぐために頻繁なチェックを施そうと入出庫の機会を増やしてしまうと室温が上がってしまい、商品の品質に悪影響を及ぼしてしまう懸念も出てきます。

まとめ

コールドチェーンの普及によって、新鮮で美味しい食品を食べられる機会が増加しましたが、その裏には徹底した温度管理や専門的な知識が必要となります。

昨今は通信販売による「お取り寄せ」、そして内食機会の増加などにより、冷凍食品やチルド食品のニーズが飛躍的に高まってはいるのですが、コールドチェーンを十分に満たす施設数が不足し始めているという問題も出てきています。