ネットショップに始まり、企業や小売店のオンラインストアの増加にともなってEC物流の市場規模は概ね拡大し続けています。しかし詳しく掘り下げると直近では減少傾向にあるジャンルもあって、一概に増加しているとも言えないようです。今回は、【2023年版】EC物流の市場規模についてお伝えします。市場規模拡大とオムニチャネルとの関係についても解説していきます。
近年、EC物流の国内市場規模はおおむね拡大を続けています。ECには、企業から個人へのネット販売を意味するBtoC、企業から企業へのBtoB、個人から個人へのCtoCなどがあります。いずれも増加傾向にあるのですが、本記事では中でもとくにBtoCに注目して解説していきます。
経済産業省の「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2021年のEC物流におけるBtoC市場は、20兆6,950億円でした。前年比1兆4,171億円増、約6.84%の伸び率でした。さらに遡って比較すると、2013年の11兆1,660億円と比べて8年後の2021年度は約1.88倍にも拡大しています。この動きに呼応して年間の宅配便数も約50億個に到達しました。
これだけ顕著に市場規模が拡大している要因としては、おもに以下の3つが考えられます。
同調査によると、BtoC(物販系)におけるスマートフォン経由での購入額は6兆9,421億円で、パソコンとの合計額の52.2%を占めています。時系列で遡ると、2015年のスマホ経由率は、わずか27.4%に過ぎませんでした。2017年が35.0%、2019年が42.4%です。ところが2020年には、50.9%と、1年で8.0%以上も増加しています。この変化は、上記3の新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言などの影響が強くあると考えられます。
つまり、スマホの普及に伴ってデジタルシフトが急激に進んだことで個人のEC利用率が急拡大、その流れを後押ししたのがコロナ禍の巣ごもり需要というわけです。
ちなみにパソコンとスマホの大きな違いとして、スマホの場合、アプリを利用できる点があります。パソコンは、ネットショップからの通知が基本的にメール経由となります。メールは放置されたり未読のまま削除されたりするケースが少なくありません。ところがスマホは、アプリにプッシュ通知することによってユーザーが察知および閲覧する確率は、メールよりも圧倒的に高くなる特徴があります。この操作性の違いによってスマホ経由率は目覚ましい勢いで伸長しているといえるでしょう。
しかもSNS(YouTubeを含む)の急拡大もスマホの使用機会を著しく押し上げています。今やネットショップのマーケティングにおいて、SNSはその筆頭といっても過言ではないくらいの高い効果を演出できる人気ツールに成長しました。若者を中心として大半のトレンドはSNSによって爆発的に拡散されます。この発信力が、EC物流のBtoC市場にさらなる追い風を吹かせているのです。
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EC物流のBtoCについて、さらに詳しく分析していきましょう。BtoC市場は、「物販系」「サービス系」「デジタル系」の3つの分野に大別できます。まず「物販系」について解説していきます。
先の「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」によると、「物販系」は、2013年から2021年に至るまで確実に市場拡大を続けています。物販系とは具体的に、
といったものが該当します。注目すべきは、2019年〜2020年、および2020年〜2021年の各1年で、前者は約2兆1,800億円、後者は1兆532億円と2013年以降、初めて1兆円を超す伸びとなった点です。それまでは、多くても8,000億円前後でした。やはりコロナ禍の巣ごもり需要が市場拡大に大きく影響しているといってよいでしょう。
さらに特筆すべきは、上記の期間における国内の物品購入額がほぼ横ばいという事実です。つまりコロナ禍だからといって全体的に物品購入が増えたのではなく、ECに購買手段が大きくシフトしたといえるわけです。2023年5月には、新型コロナウイルスが5類から2類に引き下げられるため、コロナ以前の日常を取り戻していくと予想できます。実店舗での買い物や観光も日常化すれば、巣ごもりの反動で物販系のEC市場の拡大ペースは鈍化するかもしれません。
BtoCのEC物流市場が拡大する中、3分野のうち「サービス系」だけが唯一、2020年〜2021年の2年間にわたってそれ以前より大幅に縮小しています。具体的には、2019年に7兆1672億円だったのが、2020年には4兆5,832億円、2021年には4兆6,424億円にまで減少しています。これらは、2014年の4兆4,816億円とほぼ同水準となります。サービス系とは、
といったものが該当します。具体的には、コロナ禍により旅行サービスと飲食サービスが大幅に減少しました。逆にフードデリバリーサービスやチケット販売は2021年において前年比プラスに転じています。このサービス系も、コロナ禍が明けると急激に需要が拡大していくと期待してよいでしょう。
最後に「デジタル系」です。デジタル系は、3分野の中で物販系以上にもっとも顕著な伸び率を見せています。2013年には、1兆1,019億円だったのが、2021年には2兆7,661億円となり、約2.5倍以上の伸長率です。しかも直近の2021年は前年比で12.38%増加しました。デジタル系は、
が該当します。この内容を見ると、スマートフォンやタブレット端末の普及と巣ごもり需要が大きく市場を拡大させたと分析できます。デジタル系は非常に勢いがあるジャンルのため、コロナ禍が落ち着いたとしてもその反動が生じるかどうかは定かではありません。
EC物流のBtoC、中でも物販系の市場動向を考えるうえでオムニチャネルの存在は無視できません。
本記事も含めてEC物流について考える際には、「ネット購入」と「実店舗での購入」を二分してそれぞれを別物として比較しがちです。しかしその考え方は現実的とは言えないでしょう。というのも近年のマーケティングには、オムニチャネルやO2O、OMOという考え方が主流になりつつあるからです。
オムニチャネル:実店舗とオンラインのどちらでも買い物が可能。たとえば実店舗にない商品をネットで注文、支払いはその場で済ませて自宅で商品を受け取るといった具合です。各チャネルのポイントを共有することもできます。
O2O(Online to Offline):オンラインユーザーにクーポンやセール情報を送って、実店舗に呼び込むという考え方。
OMO:オンラインとオフラインの融合を意味する3つの中ではもっとも進化系。顧客にさまざまなUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供します。チャットボットでスマホでも店頭でも疑問やニーズに応えたり、サイネージで顧客の体型や体質といった特徴を分析したり、最適な商品をレコメンドしたり、モバイルアプリで決済ができるというものです。
最近では、これらの考え方とシステムがリアルな購買行動に対してシームレスに浸透してきているのが現状です。つまりオフラインでの働きかけがECに好影響を与え、逆にECにおけるサービスが実店舗での購買意欲を喚起させている面が色濃くなっているというわけです。これは物販が日常生活に必要な現物商品を扱っており、試着、試飲、試用といった体験をゼロにすると満足度の高い買い物が成立しえない側面があることを考えると、当然と理解できるのではないでしょうか。
したがって、今後BtoCのEC物流が拡大し続けるとすると、その動向は少なからずオフラインによって支えられていることを忘れてはなりません。
EC物流の市場規模は、確実に拡大し続けています。ただし、物販系、サービス系、デジタル系の各分野によって、その変化ぶりは一様ではありません。コロナ禍が終焉した先で今後どのような展開を見せるのかについては、その要因とともにしっかりと注視していく必要があるでしょう。
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