次世代型の輸送手段として物流の世界でひときわ注目を浴びている「ドローン」。自動運転技術にも多大な期待が集まっていますが、物流手段として導入するには、解決すべき課題が山積しています。その点、ドローンについてはもう目の前まで迫っています。そこで今回は、ドローンを物流に活用するメリットや実用化のためにどのような法整備が行われているのか、新導入される免許制度とともに解説します。
まずドローンについて、基本的なことを確認しましょう。
ドローンの正式名称は、「無人航空機(UAV)」といい、人が搭乗せず、遠隔操作か自動飛行できる航空機のことを意味します。ドローンというと、複数のプロペラがタコ足状に広がってUFOのごとく浮上する「マルチコプター」のイメージが強いかもしれませんが、必ずしもそのような形状とは限りません。現にアメリカではイオンブースターを採用したプロペラの無いドローンが開発されています。広義では、探査衛星もドローンの一種になります。
物流に活用する上でポイントとなるのは、機体本体とバッテリーの総重量が、100g以上のドローンは、国土交通省への登録が義務付けられている点です(下記「ドローン登録システム」参照)。実際には、100g未満の商品が数多く販売されていますが、それらは「トイ(おもちゃ)ドローン」と呼ばれ、あくまで遊びや趣味の範囲で使用されるものです。
厳密にいうと、100gでは日常的に荷物を運ぶことは難しいでしょう。野菜や米を段ボールに詰めて送るにしても、当たり前のように5〜10kgになるので、少なくともそれと同じくらいかそれ以上の重量がなければ、長距離にわたって実用性のある運搬をすることは不可能です。国内では1t規模の荷物を運べるドローンの開発が進められていますし、海外では最大積載量2tで1,750kgという機体重量をもつドローンの実用例があります。
ドローンの使用には、4つの飛行レベルが定義づけられていて、そのレベルによって航空法上の規制も異なります。
レベル1・2に関しては、とくに後述のルールに反していなければ、国土交通省の許可なく飛行可能です。レベル3は、現行法上では飛行ごとに許可・申請が必要です。レベル4は、禁止されていますが、後述するように2023年以内をめどに一部解禁される予定です。
先述のルールというのは以下のとおりです。
さらに小型無人機等飛行禁止法では、ドローンをはじめとする模型飛行機を原則として飛ばしてはならないエリアが明確に規定されているので、注意が必要です。具体的には、国会議事堂、皇居、防衛関係施設、原子力事業所などがそれにあたります。
ドローンの運行については、過去に複数回、法律や制度の改正が繰り返されてきました。直近では、2022年6月に航空法が改正され、2023年以降、一定の条件を満たしていることを前提に、レベル4の補助者も管理者もいらない「有人地帯における目視外飛行」が可能となる見込みになっています。
これは、医薬品などの物流や緊急物資の運搬、インフラ設備の点検といった社会的・人道的に重要度の高いタスクへのドローン需要を見越した措置といえるでしょう。
上記のレベル4解禁の条件というのが、新たに設けられるドローン国家資格の取得です。2022年12月5日よりスタートする予定で、同資格には、「一等資格」と「二等資格」があります。
つまり、一等資格がなければ「レベル4での飛行はできない」ということです。2022年9月5日より、国土交通省から同資格の講習内容・試験内容・教則が発表されており、資格取得のための講習機関(ドローンスクール)の登録もスタートしています。
すでに、ドローン飛行のための各種民間資格が、個人や団体、企業などに付与されていますが、それと新設される国家資格は、まったくの別物です。ただし、民間資格取得者には、国家資格試験や講習の一部が免除される制度が設けられています(民間資格の講習機関は複数あり、そのすべてで優遇されるとは限りません)。
ここからドローンを導入することによる物流へのメリットについて解説しましょう。まず、「ドライバー不足の解消」が第一に挙げられます。
近年、国内におけるトラックドライバー不足は深刻化しており、今後その状態はさらに悪化すると考えられています。しかも2024年4月からは、36協定(※)を締結したとしてもドライバーの時間外労働が年間960時間に規制される、いわゆる「2024年問題」が控えています。高齢化が顕著なうえ、新たにトラックドライバーを志望する若者が極めて少ないため、配送に動ける人手が先細りしていくのは、目に見えています。
そこでドローンが導入されれば、ドライバー不足を補えます。製造工場や物流倉庫からドローンを飛ばして直接荷物を配送できると、ドライバーは必要ありません。梱包さえできればトラックに積み込む手間が省け、配送用のトラックを手配しなくて済むので、作業時間やコスト削減にも寄与すると考えられます。
ドライバー不足と物流の関係は「宅配クライシスとは?~EC物流の課題と解決~」でより詳細を説明しています。
※36(サブロク)協定……労働基準法36条で定められた労使協定のこと。時間外労働や休日労働をさせる場合に、その旨を正式な協定としてあらかじめ労使間で取り交わすことを義務付けたものです。
ドローンが使えるようになると、わざわざ道路を通る必要がなくなるため、配送時間を大幅に短縮できるでしょう。事故や交通量が増加することによる渋滞には一切影響を受けなくなるという意味でもメリットは大きいです。
さらに産直の農産物や海産物をより新鮮なまま客先へ届けることができるので、自分達はもちろん、生産者の存在価値や経済価値も同時に高められます。それは、医薬品や災害時の救援物資についても同様のことがいえます。
また、トラックが減れば、渋滞に巻き込まれないだけでなく、交通量が減って渋滞の原因を少なく抑えることもできるので、業界を超えた社会的メリットも計り知れません。
ドローンが使えると、船がなければ届けられない離島のほか、高速道路、幹線道路がなくて車ではアクセスしにくい山間部にも荷物を届けやすくなります。逆にそれらの場所から、海や山を越えなければ行くことのできない遠く離れた地域へ荷物を送ることも可能になります。
ドローンは充電して飛行させますが、トラックに比べるとCO2の排出量が減るので、脱炭素に役立つと考えられます。今や物流業者にとってエコへの前向きな取り組みは、消費者やステークホルダーから支持され、社会的評価と市場価値を上げるうえで非常に重要な要素です。
ドローンが本格的に社会実装されれば、物流に与えるメリットは計り知れません。目減りしていくトラックドライバーの労働を補うだけでなく、過疎地における生活利便性の向上や災害物資の輸送、脱炭素にも寄与すると期待できます。そんな時代がすぐ目の前に迫っていると考えると、非常に楽しみであり、ますます目が離せません。
物流業界ではドローン以外にもロボットなど、さまざまなIoT機器の活用が進んでいます。発送代行サービスを提供するSTOCKCREWもその例に漏れません。IoT機器の利活用によって、コストダウンも同時に実現しています。発送代行のご利用をご検討ならば、お気軽にSTOCKCREWにご相談ください。