物流倉庫において欠かすことのできない業務の一つが、「保管」です。効率よく保管できれば、ピッキングや出荷がスムーズに進むうえ、作業員の負担も少なくなるため、業務効率化やコスト削減のみならずワークライフバランスの向上にも役立ちます。
今回は、物流倉庫における保管の意味やロケーション管理、保管効率をよくする方法について解説します。
物流倉庫における「保管」とは、荷主から預かった荷物を適切に管理することを意味します。物流倉庫ですから、預かった荷物はその後に出荷するのが前提です。なお、保管では以下の3点に留意します。
荷主から預かった荷物が破損したり、腐敗したり、盗難に遭ったりした場合は、賠償責任を負わなければなりません。また、ロケーションの方法いかんによって、在庫棚への格納作業にかかる時間や労力、ピッキングの際の手間にずいぶん差が生じます。さらに在庫棚の位置や、通路の幅とルート、マテハン機器の保管場所といった倉庫内のレイアウトによっても、ピッキングのしやすさや作業員の移動距離が大幅に違ってくるので軽視できません。
物流倉庫は、広さも天井の高さも設備や機能、躯体や床の強度ならびに入出庫口の場所や窓の大きさなどもまちまちです。これらを総合的に勘案し、その物流倉庫にとって最適な方法を見出すことが「保管」業務に求められているのです。
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どこに、何を格納するかというロケーション管理には、全部で以下の3種類があります。
荷主ごとや、商品の種類、品番、ロット番号にしたがって、格納する場所を決めておくのが「固定ロケーション」です。
どこで何を保管するかが決まっているので、入荷した荷物を在庫棚に納める作業が単純でやりやすい点がメリットです。ピッキングも迷わずできるでしょう。ただし、スペースに空きがあっても荷物を格納できないため、(保管スペースに)無駄が生じるデメリットがあります。逆にスペースが足りなくなって予定のエリアに商品が収納できなくなる恐れもあります。
商品の種類に関係なく、空いたスペースに格納していくのが「フリーロケーション」です。
いちいち場所を確認したり、遠くまで移動したりせずとも空いたところに次々と格納していけばよいので、入荷後の棚入れ作業が非常に楽です。
しかしその反面、どこに何があるかを把握しにくいため、ピッキングの際に苦労したり、時間がかかりすぎたりする恐れがあります。また、ピッキングの時に作業員たちが商品を探してあちこちと不規則に動き回ることも多くなりがちです。すると通路が混みあい、作業員同士や、作業員とフォークリフトや自動搬送機などが衝突するリスクも高まりかねません。これらを回避したい場合は、専用のソフトを導入する必要があり、そのための導入コストと人材教育が必要になるでしょう。
「ダブルトランザクション」は、固定ロケーションとフリーロケーションの融合です。純粋な保管エリアは固定ロケーションにして、ピッキングエリアをフリーロケーションで管理するのが一般的です。
格納の際には、どこに何を入れれば良いかがわかっているので非常に楽です。ピッキング作業のスペースも限定されているため、作業時間や移動距離を短くすることができます。ただし、商品を保管エリアからずい時、ピッキングエリアに移動させなければならないため、手間と時間がかかるのがデメリットです。
物流倉庫で保管業務を効率化するための方法を4つ紹介します。
物流倉庫で保管業務を効率化するための方法を4つ紹介しましょう。まず一つ目は、「動線を見直す」ことです。
物流倉庫内の通路は一定の幅を確保する必要があります。保管量を増やしたいがために、在庫棚の面積を広く取りがちになりますが、その分通路が狭くなると格納やピッキング作業がしにくくなります。作業員同士やロボティクスとの衝突の危険性も増すでしょう。
また、入荷→格納→ピッキング→梱包→出荷といった倉庫内での物流業務がスムーズに流れるように動線を設けるのがよいでしょう。理想は、入庫口に近い手前から奥に向かって、アルファベットの「I」字ルートで流れるパターンです。この場合、例えば、梱包スペースを入庫口近くに設けるのは要注意です。ピッキングしてから梱包で手前に戻り、出荷のために再度奥の方へと運ぶことになるため移動距離が長くなるからです。したがって、入庫口と出庫口が同じ方向にある場合なら、アルファベットの「U」字ルートで流れるように動線を確保するのがおすすめです。
保管にあたっては、十分に通路を確保しつつ有効スペースを最大限に活用するのが鉄則です。そのためには、スペースロスを減らす工夫が大切です。スペースロスには、以下の3種類があります。
・平面ロス:物流内の四方を見渡して荷物がおけるエリアが残っていないかを確かめます。整理整頓を徹底して、無駄なものを床に置かないようにすると平面ロスが減らせることがあります。
・高さロス:天井までの空間の有効利用を考えます。後述のようにさまざまな種類のラックを用いるなどして効率よく荷物を積み上げるように工夫します。
・山欠けロス:荷物同士の間に隙間があることを山かけロスと呼びます。わずか数センチでも規模の大きな倉庫の場合は膨大なロスにつながりかねません。荷物の形状や長さを考慮し、極力隙間を作らない保管方法を選択しましょう。
保管前後の物流業務を効率化するために、商品ごとの保管場所を見直すことも重要です。出荷頻度の高い商品は、できるだけ入庫口近くに格納する方が時間も手間もかかりません。加えて、流通加工や梱包スペースに移動しやすいメイン通路側に近い場所に収めておくと、格納だけでなくピッキングもしやすくなるでしょう。メイン通路から奥に入ってピッキングして戻るという動きを繰り返すとなると、移動距離が長くなり時間もかかるので非効率です。
逆に出荷頻度が低い商品は、入庫口や出庫口、メイン通路から離れたエリアや高所で保管するようにします。
保管設備の中でも、荷物を納めるラックを適材適所にチョイスすると効率よく保管することができます。ラックには、主に以下の4種類があります。
・積層ラック:メザニンラックともいいます。ラックを柱として2層化し、上段に床を設置するなどして空間を有効利用することができます。
・高層ラック:積層ラックを多層化したタイプで、とくにネットショップ用に少量多品種の商品を細かく区分けして保管するのに向いています。ニーズに合わせて層を増やせるため、天井までのスペースを最大限利用するのに有効です。
・パレットラック:パレットのまま上に向かって積み上げていけるラックで、重量棚とも言われます。一段に500kg以上、多い場合は数千キロ単位の荷物を積載できます。場所を自由に選べて高さも必要に応じて増やせるため、パレット単位で運搬する重量のかさむ荷物の保管に適しています。
・移動ラック:床に敷設したレール上を電動や手動でパレットラックが移動する仕組みで、移動棚ともいいます。パレットラックを移動することで通路の場所が変えられ、しかも1列で済むため保管効率を大幅にアップさせることができます。
「保管」は、物流倉庫において必須業務です。効率化できれば、コスト削減や競争力強化、業績アップに直結します。その物流倉庫に合った最適なロケーション管理法やレイアウトを把握できているかどうか、これも物流倉庫選びのポイントになると言えます。
物流倉庫の導入を検討している場合、お気軽にSTOCKCREWにお問い合わせください。
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