物流企業や荷主企業にとってコスト削減は大きなテーマです。燃料費の高騰、人手不足など、物流業界への大きなダメージが懸念されます。これを解決するにはコスト削減に取り組む必要があります。そのためには「物流費」をしっかりと把握しておくことが重要です。今回は物流費の内訳や課題、コスト削減の対策を解説していきます。
物流費とは物流に関わる費用です。物流費の支払い形態別では社内物流(自家物流)費と支払物流費に分かれます。社内物流費は社内の人件費やシステム費用です。一方の支払物流費は輸送費や倉庫の賃料で外注先への支払いとなります。
また、物流プロセス別でみた場合、「調達物流費」「社内物流費」「販売物流費」の3つに分けることができます。
物流費には大きく分けて「運送・輸送費」「荷役費」「保管費」「管理費」の4つがあります。
物流費の中で最も大きな割合を占めるのが運送・輸送費です。配送に関わる費用はトラックの燃料費以外にも、ドライバーの人件費やチャーター費用、宅配便の運賃が含まれ、積載量や輸送距離によって大きく変動します。
また、燃料費は為替や政治状況によっても変わるため、時期によっては大幅に経営を左右する要素になります。運送・輸送費は各種値上げの影響を受けやすく、ギリギリのところで対応している企業も少なくありません。
荷役は配送前後の段階で入出庫作業やフォークリフトの運搬、工場・倉庫内での仕分けやピッキングといった作業全般を指します。梱包作業に使われる資材も荷役費に含まれます。
保管費は荷物を保管する際にかかる費用です。倉庫や保管場所にかかる賃料のほか、寄託保管料や火災保険も入ります。保管費は坪単価やパレット単価など、契約によってさまざまな種類があります。
管理費とはおもに、人件費やシステム管理費です。基本的にバックヤードを担当する人員の給与になりますが、ドライバーの人件費を運送・輸送費で算出していない場合は、こちらの管理費に計上します。また、原材料を調達する調達物流費と製品に関連する社内物流費に分けられます。
日本ロジスティクス協会が2022年4月に発表した「2021年度物流コスト調査結果」によると、売上高物流コスト比率は5.70%となり、前年から0.32ポイント上昇しています。
また、全業種における支払物流費は85.1%、社内物流費が14.9%となっています。輸送費や保管費などの値上げが影響し、コストがかかってしまっているのが現状です。この背景には燃料費の高騰や新型コロナウイルスの影響もあって宅配便などの小口配送が増えたことやECサイトの需要過多があります。需要があるので業績も上がっているように感じられるかもしれませんが、実はそうともいえないのが実情です。
その理由として挙げられるのは、少子高齢化の波によるドライバー不足の深刻化です。特に若い世代の働き手を確保するのが難しく、技能伝承もままならない状況です。ドライバー不足は物流業界全体に浸透しており、配送に人を割かないといけない状態だと、倉庫作業や営業、事務など企業全体で人手不足となってしまいます。需要があるのに少子高齢化で働く人手が足りてない状態に陥り、物流業界全体で危機感を募らせています。その解決のためにも物流コストの削減が現状の大きな課題といえます。
こうした物流業界の課題については「物流業界の『今』と今後の課題」にて詳しく解説していまうので、ぜひご参照ください。
物流コストを見直す際には、4つのポイントに注目することが重要です。
以下、それぞれを解説します。
製品や部品を運ぶための輸送費用は、物流コストの大部分を占めるため、輸送コスト削減は重要事項になります。輸送方法やルートの見直し、効率的な荷役方法、貨物の積載率の最適化など、輸送費用を削減するための施策を検討する必要があります。
在庫が増加すると、保管スペースや人件費、管理費用などのコストが発生します。そのため、在庫管理に関する最適な戦略を考えることが必要です。たとえば、需要予測や在庫レベルの最適化、返品率の低減などが挙げられます。
サプライチェーン全体を見直し、生産、輸送、在庫管理などのプロセスを最適化することで、物流コストを削減できます。たとえば、生産ラインの改善、調達プロセスの改善、サプライヤーとの協力関係の強化などが最適化の一例となります。
物流におけるデジタル技術の活用により、物流プロセスの効率化が可能です。IoT技術による在庫管理やトラッキング、ロボットによる荷役や倉庫内作業の自動化、AIによる需要予測や輸送ルートの最適化などの例が挙げられます。
以上のポイントを踏まえ、物流コストの削減に向けた施策を検討していくことが重要です。
物流費のコスト削減についてですが、迅速に対応できるものもあれば、長期的な視野で効果を実感できることもあります。物流費のコスト削減にはどのような対策をすればいいのでしょうか?こちらにも4つのポイントがあります。
以下、それぞれのポイントを解説します。
物流費において、コストがもっともかかるのが運送・輸送費です。そのために拠点を多くして配送エリアを広げる方針にすれば……と考えますが、拠点運営の管理・維持費、人件費、在庫などを考慮すれば拠点を集約したほうがコスト削減につながります。
拠点が狭まると、運送するのに距離が延長するので余計に運賃がかかるということも確かにあります。しかし、管理費として考えると、荷物をまとめて積載できるほうが運賃も抑えられる場合もあり、何よりも人を集約できて管理しやすい効果は大きいメリットになります。
物流コスト削減にあたって、すぐに実行できるのムダな作業を省く、効率化を進めることです。人によって感覚で動くなどさまざまなやり方が生じると、精度にバラつきが出てしまいます。ルールを統一して標準化するのがベストですが、これまで当たり前の感覚で作業してきたことを、すぐにルール化するのも難しい問題といえます。
そこでまずは「5S3定」活動を徹底して見える化を図ることがおすすめです。5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」、3定は「定位」「定品」「定量」になります。
製造業では基本となる考え方で、倉庫作業でも取り入れられるものです。
この「5S3定」が徹底されれば見える化が進みますので、従業員も働きやすくなるだけではなく、ルール化もしやすくなり、標準化にも対応できます。ここまでくれば作業のムダがなくなって効率化が図れますので、実際に物流コストの削減につながっていくでしょう。
物流業務はシステムで管理することで効率化を推進できます。物流管理システムは入荷・荷役(検品・運搬・梱包)・保管・出荷・配送といった工程の一元管理が可能です。事務所など離れた場所からでもシステム管理が可能で、工程の見える化を実現しています。特に工程ごとに誤配送や因数不足といった人的ミスが発生すると、再配送でロスが出ますし、先方の生産ラインがストップすれば賠償責任が生じてしまいます。
物流管理システムは物流プロセスに特化した「倉庫管理システム」と在庫管理に特化した「在庫管理システム」があります。どちらもメリットがありますので、費用やその効果と相談しながらシステム導入を検討するようにしましょう。
物流費のコスト削減には、物流業務そのものをアウトソーシングで業務委託する方法もあります。アウトソーシングのメリットは物流費の明確化とコア業務の特化になります。
メーカーなど荷主企業からすると、繁忙期と閑散期では在庫数が違うので、物流コストに大きな開きが生じます。倉庫の維持管理にも費用がかかりますし、配送業務では燃料費や運賃など、物流費は分かりづらいものです。物流コストを把握する上でも、物流業務をアウトソーシングすることは物流費の明確化につながります。
また、メーカーでは物流業務がノンコア業務になります。ノンコア業務はそれ自体が利益を生むものではありません。そこで物流業務をアウトソーシングすることで、本来のコア業務である生産現場や営業に力を入れられます。コア業務に特化することは物流業務に割いていた人材を集約できますので、生産ラインを強化することが可能です。物流業務のアウトソーシングは業務効率化であり、大きなメリットが生じます。
物流費は運送費や荷役費など、コストが生じることが多くあり、荷主企業も効率化を図るのが難しいといえます。燃料費の高騰や少子高齢化によって人手不足の現状もあり、コストのかかる物流費への対策が必要です。そこで、物流費の課題に対してここで挙げた対策を講じ、物流管理システムの導入やアウトソーシングで物流業務の効率化を図ります。
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