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物流不動産とは?拡大の背景には先進的な物流施設あり

作成者: STOCKCREW(公式)|2023年07月03日

時代の変遷により、大型物流施設の新規開発が増えてきてきました。
大型物流施設にはさまざまな定義がありますが、おおむね延べ床面積5,000㎡以上、大都市圏は30,000㎡以上の施設を指すようになりました。その中でも賃貸物件の場合に物流不動産と呼ぶようになったのです。
以前の倉庫機能のように、商品を保管して指示に合わせて出荷するだけにとどまらず、梱包などの流通加工にも注力するようになった結果、多機能で大型化が進みました。その結果、EC市場関係以外にREITなどを含む不動産として注目を集めるようになっています。

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ECの隆盛により大型の先進的物流施設が増加

新型コロナウイルスのまん延によって、人同士の接触機会が少ないEC、つまりインターネット通販が盛んになりました。ECの増加によって、商品を保管している倉庫にもこれまでとは異なるサービスが求められるようになりました。加えて、物流用の増加によって効率化も求められるようになったため、これまでの倉庫に先進的な技術が投入が急務になっています。そうした技術を備えた先進的物流施設は開発費や維持管理費が少なくて済むのが拡大の後押しとなりました。

立地条件としては交通の利便性が重要で、都市圏での需要が高まりました。土地確保が難しい一面もありますが、一般の不動産とは異なり長期契約が望めるところがポイントとなり、先進的な物流倉庫の建設を後押ししています。

倉庫業は免許などの問題で参入障壁が高く、不動産業界からは敬遠されがちの存在でした。しかし、中央省庁の再編成により、各省庁間の問題がクリアになって参入障壁が減り、新規参入が増えた一面もあります。
さらに、ロボットなどの利用も増え、最低限の人員でも稼働できるようになったのも物流施設の増加の要因となっています。人材不足が叫ばれる中でも、効率化の後押しが先進的物流施設のさらなる拡大へとつながったのです。

物流機能と物流施設については、「「倉庫」と「物流センター」の違い~物流機能と産業構造の変化~」では、物流施設の機能の変遷をより詳細に記載いています。

物流施設は都市部を中心に拡大

先進的な大型物流施設は、都市部を中心に展開が進んでいます。現在のECビジネスではスピードが重視されています。当日配送のみならず、注文から数時間後に着荷させるようなケースもあり、人口が集中している都市圏への物流施設の進出は必然と言えます。そのほか、都市部への物流施設の拡大の要因を以下にまとめました。

 

小売業の変化

新型コロナウイルスのまん延は、社会の構造を大きく変えました。さまざまな業種に影響を与え、大きな変化が続いてきた中で、先進的な物流施設は小売業にうまくフィットする努力を重ねています。
コロナ禍以前であれば、小売業の成長は横ばいで変化が少ないとされていましたが、コンビニやドラッグストアの売上が好調になることで成長率が高まっています。そして、小売業の成長にさらなる拡大に影響を与えたのがEC、ネット通販です。高頻度の物流が発生するこれらの業態も市場の拡大に影響を及ぼし、物流施設の市場を一気に拡大させました。

 

EC市場の社会的背景による成長

EC市場はある意味、コロナ禍をトリガーとして急激に成長しました。それでも日本のEC市場はアメリカやイギリスに比較するとまだまだ普及の余地があるといわれており、成長は続くと考えられています。市場成長が見込める以上、先進的物流施設の拡大は続くことが予想されます。

ECと物流の関係については、「EC物流代行の重要性はなにか?メリットとデメリットを解説!」もご覧ください。

3PLの変化

3PLとは、サードパーティーロジスティクスのことを指します。物流業務の委託を受ける存在で、2005年あたりから成長を続けてきました。さまざまな業種が3PLをアウトソーシングとして利用するようになり、変化を遂げてきたのがその理由です。それだけ物流部門を自社で抱えることは、リスキーであるともいえます。
この3PLは物流不動産をテナントとして利用して運営しているケースが多いため、ECを含めた小売業の市場の成長が3PLの需要拡大につながったといえます。需要に応えるためにロボットなどの先進技術を投入して効率化に努めた結果、床面積に対する作業の効率化にもつながっています。

物流不動産の用途の多様化

従来、倉庫の主たる業務は「保管」にありました。しかし、それ以外の機能や業務もあり、物流施設の中に集約し統合していくことで先進的物流施設となっていきます。こうした業務の多様化は、コスト削減やリードタイム短縮といったメリットを生み出します。ロボットを導入するなどし、スピードと正確性を含む効率化が進んでいます。技術革新により使い勝手も向上し、さらなる需要拡大につながった側面があります。

都市部における交通網の変化

都市部ではさまざまな交通網の整備が進んでいます。その中でも外環道や新名神、第二京阪、第二東名などの交通網が都市部における利便性に変化を与えてきました。都市部を含めた高速道路網の整備は、物流に大きな影響を与えます。輸送時間の短縮は、サービス品質のみならず、コストにも大きな影響を与えます。
各地の高速道路網の整備は、新たな物流不動産市場の開拓にもつながりました。新たな物流基地の創生へとつながり、また新しいネットワークが生まれます。

賃貸需要から起こる物流不動産の新規開発

物流不動産において、大手デベロッパーの参入が相次いでいます。都市圏でも大規模な供給が始まり、空室率が非常に低いことが判明しています。供給を満たすようテナントの新規参入が続いており、引き続き物流不動産のニーズが継続することが予想されています。
好立地な物流不動産を手に入れるのは、リスクも高く難しいのですが、賃貸であれば物件取得に対するリスクを下げられるのも需要が伸びる要因といえます。

東京を中心とした首都圏のみならず、関西圏での物流不動産の需要も安定しています。大型物流不動産の建設が相次いでいますが、空室率は以前少ない状態を維持しており、賃貸需要が高まっています。土地確保の難しさもあり、新規供給は限定的になってしまいますが、賃料が上昇しても依然高い需要は続くと予想されます。

倉庫の保管料金について、「4つのポイントで保管料を徹底比較!【物流の機能を知る】」で詳細をご確認ください。

土地高騰と実質利回りの影響

再三に渡って紹介しているように、物流不動産の需要はまだまだ伸びると考えられています。ECのサービス品質が周知されるようになったため、この業態がまだ伸びるとされているからです。しかし、都市圏での土地の高騰などが床需要に対する賃料に大きな影響を与え始めているのも現実です。

実際に巨大資本がなければ都市部での土地確保は難しく、利便性とリスクを考えれば、物流倉庫、不動産を賃貸にするのが現実的です。これがテナント型の物流倉庫が多くなってきた背景ともいえます。賃貸優位であり競争に打ち勝てる大手デベロッパーであっても、空室率を下げるために競争市場として相場との兼ね合いが欠かせません。

現在の実質利回りは低下してきており、市場として変化も生まれてきています。特に地方での物流不動産は大きな影響が出てきました。しかし、首都圏などの優位性は崩れておらず、今後も長期的に高い利回りが期待できるとされています。

まとめ

先進的物流施設は、大手デベロッパーが参入してきている中、新規参入も増えました。不動産市場としてみても、かなりの好況となっています。さらにはREITの対象となっている物流不動産ま出てきています。そのため、物流施設が不動産投資市場も含め注目を集めやすい存在になったといえるでしょう。

ECという小売市場から見ても先進的物流施設の必要性は高まっており、外国の大手投資家なども参入してきています。マルチテナント型なども増えてきており、これから先も好況が続くと予想されます。