2015年の国連総会で採択されたのが「持続可能な開発目標」、いわゆる「SDGs」です。SDGsは世界規模で取り組む目標であり、国内でも官公庁を含めてさまざまな企業が賛同し、物流業界でもSDGsが注目されています。今回は物流企業が取り組む、取り組むべきSDGsについて紹介します。
SDGsとは貧困や環境、教育、技術、ジェンダーなど、17の目標と169のターゲットを設定し、2030年までに達成することを掲げた国際目標です。17の目標は下記のとおりです。
これには日本も意欲的に参加しており、政府は日本のSDGsモデルとして「アクションプラン」を設定し、8つの分野で優先課題を挙げています。優先課題分野は下記になります。
<優先課題8分野>
SDGsは国際的な取り組みともいえますが、一方で国内企業にも取り入れられるものが多くみられます。その中でも物流業界で取り組めるSDGsはどのようなものがあるのかみていきましょう。
物流業界では交通事故の減少は大きなテーマです。SDGsでも目標の3つ目に挙げられている「すべての人に健康と福祉を」が物流業界にとって交通事故の減少につながります。
事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数は、2022年4年の9月末現在で118件と前年よりも26件減少しています。これは2018年9月末と比較しても54件も少ないこととなり、年々減少傾向にあるといえます。ただ、それでもSDGsの理念は「すべての人」が対象であり、交通事故の中でも死亡事故をより少なくしていくことが課題といえます。
交通事故の減少には「ドライバーの安全教育を徹底」「運行記録(休憩含む)の自動データ化」「バックカメラの設置」「追突防止システムの導入」など、多岐に渡ります。また、車両全台にドライブレコーダーを設置し、万が一の事故発生時に記録を残しておき、KYTの教育として今後の事故防止に役立てることも可能です。
物流業界では先述の交通事故の他にもフォークリフトなどの倉庫作業で危険な箇所がたくさん潜んでいます。事故やヒヤリハットは安全だけでなく品質にも影響するものです。SDGsの4つ目の目標には「質の高い教育をみんなに」とあり、安全面や品質面の研修を開いて対策することも必要といえます。
万が一にも事故が発生すると、ケガ人がいなくてもホッとはできません。積み荷の損傷があればそれだけで損害賠償にもなりますし、工場で生産をし直す場合には計画変更となると、多方面に影響が出てしまいます。納期が間に合わない場合には空路を使うこともあるので、自社の物流ルートから外れてしまうと、運賃が入らないばかりか燃料代までも請求される結果になりかねません。
トラックドライバーの不足が深刻化となっていますが、SDGsでは「働きがいも経済成長も」と8番目の目標にあります。物流業務をDX化して効率を高められれば人手不足の解消につながり、長時間労働の改善やコア業務への人の配置転換などが可能となります。
SDGsの5番目の目標には「ジェンダー平等を実現しよう」とあり、男女間の格差をなくす取り組みが期待されます。男社会として認識されてきたトラックに代表される物流業界も女性ドライバーが増えてきており、女性管理職の登用など、給与面でも男女間で優位不利がないようにすることが大切です。一方で男性でも身体的特徴を理由に、採用段階で不利を被ることがあってはなりません。男性・女性に関わらず、性別に左右されない働きやすい環境を整えることがSDGsには求められています。
物流業界では環境面での取り組みが重要視されています。SDGsでは7番目の目標に「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」とあります。物流業界ではトラック配送がメインなので、低公害車に切り替えるなどの抜本的な対策が必要です。ハイブリッドや低排出ガス認定車、天然ガス自動車の導入はコストはかかりますので、少なくとも低燃費で省エネに対する取り組みは心がけるべきでしょう。
すぐ省エネ度の高い配送車に手が回らなくても「事業所や倉庫の照明をLED化」「不要な照明を消す」「エアコン温度の管理」「アイドリングの廃止」など、地球温暖化防止に少しでも貢献できる取り組みはすぐに始められます。
SDGsでは9番目の目標に「産業と技術革新の基盤をつくろう」とあります。物流業界での取り組みではDX化を推進して技術革新を図り、物流業務の効率化が可能です。物流DX化には配車管理システムのTMSや倉庫管理システムのWMS、検品作業のロボット化などがあります。
こうしたデジタル技術を導入することでミスも減らせるだけではなく、余裕の出た人員を他の業務に回して人手不足の解消を図れるだけではなく、従業員のスキルアップにもつなげられます。物流DXで効率化を図れれば、それだけ生産性向上にもつながり、利益を従業員に還元できるのでモチベーションも向上してWin-Winの関係が構築できるでしょう。
SDGsは国際社会全体での取り組みとなるので、SDGsに賛同し、実践することで自ずと企業評価も高まります。SDGsを達成できなかったといってペナルティがある訳でもありません。しかし、取り組まないでいると新規のビジネスチャンスの喪失や雇用の充実が図れない可能性もあります。
また、国連総会で取り上げられているように、環境問題や差別、食料危機といった課題は世界で共有していくものであり、社会的意義も含めて自社企業でも取り組まなければなりません。
物流企業がSDGsに取り組むのに参考となるのがホワイト物流です。ホワイト物流とは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推奨する物流業界のホワイト化のことを指しています。ホワイト物流は深刻化する配送ドライバーの人手不足問題について、少しでもドライバーの負担を軽減するべく官民一体となって物流業務の効率化を目指す取り組みです。
これは2024年に物流業界にも大きな問題となる、自動車運転業務の年間960時間以内の時間外労働規制です。これまではドライバー不足ということもあって猶予期間がありましたが、2024年4月からは罰則が科されます。過労死が社会問題となる中、ホワイト物流に賛同してSDGsに取り組む姿勢が企業評価を高めていくことになるでしょう。
国際的な目標となるSDGsは、物流企業にとっても取り組める内容が多くあります。
これらの取り組みは今後の物流業界にも大きな課題となっていくものであり、多くの企業で解決可能です。SDGsは国際的な目標ですので、新規ビジネスチャンスも生まれやすく、企業評価も高まりますので、ぜひ取り組んでいきましょう。
発送代行を提供するSTOCKCREWでは、とくに物流DXの面でSDGsに取り組んでいます。具体的にどのような取り組みをしているのか、などどんなことでもかまいません。お気軽にお問い合わせください。