突然ですが、みなさん『衛生管理者』という資格をご存じでしょうか?
50人以上の労働者を有する職場では衛生管理者を選任する必要があります。この衛生管理者は労働安全衛生法で定められた国家資格です。
衛生管理者の選任はわたしたちのような倉庫業や発送代行を提供する企業でも必要になる資格です。今回はこの衛生管理者について詳細を紹介します。特にスタートアップ企業は、突然の事業拡大などで従業員の増加も突然起きえます。そんなとき慌てないためにも是非必要要件などのポイントをチェックしてください!
【関連記事】
物流業界の資格を紹介!「現場」「管理」「国際」別のおすすめ資格とは
衛生管理者とは、労働安全衛生法に基づき労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することを目的とした国家資格です。
50人以上の労働者がいる職場では、衛生管理者を選任しなければなりません。
衛生管理者には第1種・第2種があり、業務内容に変わりはありませんが、行うことのできる業種が異なります。有害業務を含む危険度の高い職場でも業務が行えるのが第1種、第2種はそのような職場では業務を行うことができません。
衛生管理者の主な仕事は、作業環境の管理、労働者の健康管理、安全衛生教育の実施、健康保持増進措置などです。
作業環境の管理とは「作業をおこなう場所・空間」の管理のことをいいます。
作業をおこなう上で有害因子(作業の妨げとなる要因)を把握し、それを良好なものへと改善していくことが目的です。
従業員にとって有害となる要因を排除して、適切な作業環境を管理していくことが必要になります。従業員が快適だと思える環境づくりは大切です。
労働者の健康管理において最も重要な仕事は、健康診断の実施・結果管理です。
労働者の健康診断をした結果、共通の疾患が見られた場合は職場の環境が悪化している証拠なので、至急対策を立てなければなりません。
なお、最近は技術の進歩により従業員に疾患が現れるまで職場環境が悪化することは少なくなりました。
その代わり、長時間労働などによるストレスで体調を崩す労働者が増加しているようです。そのため、衛生管理者はストレスによって体調を崩しがちな労働者の相談を受けたり、場合によっては産業医とのパイプ役になったりすることも職務の一つです。
安全衛生教育は、労働安全衛生法という法律によって実施することが義務付けられています。「労働安全衛生教育」といってもそこには様々な種類があります。
①雇い入れ時、作業内容変更時の教育
新しく従業員を雇い入れたときに実施することが決められています。また、作業内容が変更された場合においてもその都度、従業員に対して安全衛生教育をすることが求められます。
②危険有害業務従事者への特別教育
危険または有害な業務に就く際に必要な教育になります。学ぶ内容は携わる危険・有害業務ごとに異なりますので、その都度労働局のホームページで確認することが求められます。
③職務長に対する教育
現場を指揮するために必要な教育になります。職長教育は合計で12時間以上とすることが法律で定められており、講義は専門知識を持った人物から受けることになっています。講座・通信講座・出張講座で学びます。
④労災防止のための能力向上教育
常に職場の安全衛生水準を向上させるために必要な教育になります。社会経済情勢の変化の動向、社会経済情勢、事業場における職場環境の変化等に対応した事項を学びます。
健康保持増進措置は、従業員の体調を常に考え一人ひとりが健康でいられるよう指導することが目的です。
①運動指導
運動指導プログラムを作成、運動実践のための指導を行います。
②保健指導
勤務形態や生活習慣に配慮した、健康的な生活指導・教育を行います。主な内容は睡眠・喫煙・飲酒・口腔保健などが対象です。
③メンタルヘルスケア
従業員のストレスに対する気付きの援助・リラクゼーションの指導・良好な職場の雰囲気づくりなどがあげられます。
④栄養指導
食習慣・食行動の指導、改善を目的としています。
衛生管理者を選任する義務が発生するのは、事業場単位で見て常時50人以上の労働者がいる事業場になります。
衛生管理者は専属でなければならず、他の事業場との兼任はできません。事業場の労働者数が50名を超えるタイミングでは、衛生管理者の選任の他にも、衛生委員会の設置、産業医の選任など、複数の義務が発生します。
選任義務があるのに衛生管理者を置かなかった場合、50万円以下の罰金に処するという罰則規定が、労働安全衛生法に記載されています。
選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告する必要があります。
代表的な受験資格は、大学または高等専門学校(短大を含む)を卒業し、労働衛生の実務経験が1年以上ある・高等学校を卒業し、労働衛生の実務経験が3年以上ある・労働衛生の実務経験が10年以上ある者になります。
労働衛生の実務確認として、事業者証明書が必要です。
衛生管理者の免許を取得するには、国家試験に合格する必要があります。試験は毎月1~3回程度行われています。試験2週間前までに受験申し込みをし、衛生管理者国家試験を受験して、試験に合格すると資格を取得できます。
衛生管理者という資格の簡単な仕事内容と要件について紹介しました。
最近はデスクワークや在宅勤務が増え、健康面でのサポートが重要になってきているように感じます。心身の健康で気になることがあるとき、職場の環境が良くないと感じるとき、衛生管理者がいれば相談することができます。
衛生管理者はその条件を満たす倉庫や配送会社、発送代行会社といった物流業界でも活躍しています。