2026年4月の改正物流効率化法施行を控え、特定荷主として指定される可能性のある企業・EC事業者の間で「具体的に何をしなければならないのか」という不安が高まっています。 本記事では、届出書類5種類の記載方法、CLO選任の実務フロー、中長期計画作成の3つのポイントを、実例を交えて詳しく解説します。
この記事の内容
改正物流効率化法とは、荷主と物流事業者が協働して物流効率化を推進するための法律です。 2026年4月施行により、一定規模以上の「特定荷主」に対して、以下の義務が課されます。
「2026年問題」として知られるドライバー不足が深刻化する中、法改正は業界全体の物流効率化を加速させる転機となります。詳しい背景や法改正の狙いについては、別記事「物流2026年問題とは?改正物流効率化法4月施行でEC事業者に何が起きるか」をご参照ください。
改正物流効率化法が適用される「特定荷主」は、以下の要件で判定されます。
| 指標 | 基準値 | 判定方法 |
|---|---|---|
| 年間貨物輸送量(トンキロ) | 3,000万トンキロ以上 | 前年度の実績で判定。トンキロ = 輸送トン数 × 輸送距離 |
| 対象事業者 | 製造業、卸売業、小売業、EC事業者など | 荷主としての機能を有すること |
| 届出時期 | 2026年5月まで | 施行から1ヶ月以内に様式第1で届出 |
年間3,000万トンキロは、一見高い基準に思えますが、EC事業の成長に伴い該当企業は増加傾向です。 例えば、日本全国に月1,000トン、平均500km配送する企業であれば、年間輸送量は600万トンキロとなり、わずか1.7倍の成長で指定対象となります。
国交省の「物流効率化法理解促進ポータル」では、自社が特定荷主に該当するかを判断する自己診断シートが提供されています。
経産省が提供する5つの様式(様式第1~第5)は、それぞれ異なる目的を持っています。 以下は、特定荷主として初めて届出する場合の主要な手続きです。
届出の最初のステップは、現在の物流体制を経産省に報告することです。記載内容は以下の通りです。
「記載例」:EC企業A社が月500トン、全国配送(平均600km)を行う場合、年間3,600万トンキロとなり特定荷主に該当します。様式第1には、主要な物流パートナー3~5社、各社の委託内容(輸送のみ、輸送+保管など)を明記する必要があります。
特定荷主の指定を取り消したい場合に提出します。通常は初回届出では不要ですが、事業縮小や物流体制の大幅な変更により年間トンキロが3,000万以下に低下した場合に使用します。具体的な物流体制の変更については、EC物流全般の改善ガイドも参考になります。
中長期計画書は、改正物流効率化法で最も重要な書類です。 以下の3つの改善軸について、5年間の具体的な目標と施策を記入します。
| 改善軸 | 主な施策例 | 測定指標 |
|---|---|---|
| ①積載効率の向上 | ・混載化による1台あたり積載率の向上 ・パレット化・段ボール規格統一 ・バックハウルの活用 |
積載率(%) 或いは一件あたり配送料金(円/件) |
| ②荷待ち時間の短縮 | ・配送予約枠の事前確保 ・納品時間帯の短縮化 ・積込・荷下ろしスタッフの配置最適化 |
平均荷待ち時間(分) 或いは年間待機時間削減率(%) |
| ③荷役時間の短縮 | ・自動化ソリューション導入 ・作業手順の標準化・デジタル化 ・人員配置の最適化 |
1件あたり荷役時間(分) 或いは年間人時削減率(%) |
中長期計画は初回届出時に提出し、その後は毎年度報告が基本です。 ただし内容に大きな変更がない場合は、5年に1度の提出でも認められています。荷役時間の短縮にはWMS(倉庫管理システム)の導入や、物流加工の効率化も有効です。
CLOの選任は、他の3つの届出と同時に行うことが推奨されています。記載項目は以下の通りです。
毎年度、前年度の物流改善実績を報告する書類です。中長期計画との進捗の対比、新たな改善施策の追加などを記入します。
CLO未選任の罰則は100万円以下の罰金、届出漏れは20万円以下の過料と、他の届出よりも厳しく設定されています。 CLO選任は法対応の中でも特に重要な手続きです。
改正物流効率化法で定められるCLOの要件は、以下の通りです。
現在、物流担当者が経営層から距離がある企業の場合は、この機会に物流部署の権限と位置づけを組織内で高める必要があります。
以下のスケジュールで進めることをお勧めします。
中長期計画は「何をするか」の宣言ではなく、「どの数字をいつまでに改善するか」を明確にすることが成功のカギです。 以下の3つのポイントを実践すれば、現実的で評価可能な計画が完成します。
まず必要なのは、現在の物流KPI(重要業績評価指標)の定量化です。
これらのデータは、物流パートナーから取得するか、自社システムから抽出します。物流KPIの管理方法についてはこちらの記事をご参照ください。
5年間を3段階に分け、段階的な改善目標を設定することが現実的です。
この段階的アプローチにより、初期投資を最小限に抑えながら、現実的な改善を実現できます。各段階での在庫管理の見直しについては、EC事業における在庫管理の最適化も参考になります。
中長期計画には、以下のようなリスク要因と対応策も明記することが求められています。
こうしたリスク記載は、経産省の審査で「現実的な計画」と評価される重要な要素です。
改正物流効率化法は、必ずしも自社で全てを実行する必要はありません。 発送代行サービスをうまく活用することで、「特定荷主としての法対応」と「物流効率化」を両立させることが可能です。
大手の発送代行企業(例:EC物流アウトソーシングサービス)では、以下のような物流最適化が既に実現されています。
発送代行を利用すれば、自社の中長期計画に「当社は認定発送代行業者と協業し、以下の改善を実現する」と記載するだけで、既に法対応の3要件を満たすことができます。
例えば、STOCKCREW(ストッククルー)のような発送代行サービスを利用する場合、以下の効果が期待できます。
つまり、発送代行を利用することは「法対応を外注する」ことではなく、「プロの物流インフラに自社業務を統合させて、物流改善を加速させる」という戦略的な選択肢なのです。 発送代行導入に合わせて、受注管理システムの連携や、OMSの導入も検討すると、さらに一体的な効率化が実現できます。
発送代行を利用する場合、様式第1(状況届出書)には、発送代行業者を「主要な物流パートナー」として記載する必要があります。その際、以下の情報を用意しておくと手続きがスムーズです。
STOCKCREWへのお問い合わせの際に、改正物流効率化法対応を踏まえた中長期計画の相談もできます。
改正物流効率化法の施行を「面倒な届出義務」と捉えるのではなく、「物流効率化を経営課題として真正面から向き合うチャンス」と捉えることが重要です。
本記事で解説した通り、届出書類の作成プロセスそのものが、以下の成果をもたらします。
ハコベルの2026年3月調査では、4割超のEC事業者が法改正対応に「不安がある」と答えていますが、正しい手順と相談相手を持つだけで、その不安は大きく軽減されます。 発送代行などの外部リソースも活用しながら、2026年4月を「物流最適化元年」にしましょう。また、アパレル業界など業種別の物流戦略も参考になります。
物流効率化に関するご質問や、中長期計画策定の具体的な相談は、STOCKCREWへのお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。業界の最新動向や、実例に基づいたアドバイスが得られます。
サービス資料のダウンロードも可能です。改正物流効率化法対応の詳細な手引きや、実例に基づいた改善ケーススタディが含まれています。
また、2026年問題の概要や背景をしっかり理解したい場合は、別記事「物流2026年問題とは?改正物流効率化法4月施行でEC事業者に何が起きるか」も合わせてお読みください。 物流コスト削減の具体的な方法については、EC事業の配送料金最適化戦略もご参照ください。
貨物輸送量(トンキロ)= 輸送トン数 × 平均輸送距離(km)です。例えば、月100トン、平均300km配送する企業の場合、年間輸送量は100トン × 300km × 12ヶ月 = 360万トンキロとなります。配送実績データから、各区間の輸送トンと距離を集計することで算出できます。不確実な場合は、経産省の簡易診断ツールを利用することをお勧めします。
改正物流効率化法では、CLOは「特定荷主の従業員であることが望ましい」と示されていますが、法的に社員であることを絶対要件としていません。ただし、外部から採用する場合でも、物流実務経験5年以上の要件は変わらず、また社内権限や経営層への報告機能が確保される必要があります。いずれにせよ、届出様式第4には職務経歴が詳しく記載されるため、採用後すぐの届出は避け、3~6ヶ月の在任期間を設けることが推奨されています。
改正物流効率化法では、目標未達成についての直接的なペナルティは設けられていません。ただし、毎年の定期報告書(様式第5)では進捗状況の報告が求められ、目標と実績の乖離が大きい場合は、経産省から改善指導が入る可能性があります。重要なのは「無理な目標を立てる」ことではなく、「現実的で段階的な改善計画を立て、実績をベースに見直し続ける」ことです。
いいえ。届出は特定荷主(貴社)から経産省への一度きりの報告です。様式第1には、主要な物流パートナー3~5社の名前と委託内容を記載しますが、各パートナー企業が別途届出をする必要はありません。ただし中長期計画では、複数パートナーとの連携による積載効率化などを記載する場合、事前にパートナー各社と改善内容の確認・調整を進めておくことが重要です。
発送代行利用時は、「当社は認定発送代行業者との協業を通じ、以下の改善を実現する」という記載が有効です。具体的には、(1) 発送代行業者が既に提供している積載効率化・荷待ち短縮・荷役自動化の実績、(2) 自社における在庫管理やオーダー管理の改善施策、(3) 発送代行業者と共同で実施する新システム導入の計画などを組み合わせて記載します。重要なのは「他社任せ」ではなく「協業による改善」という姿勢を示すことです。
改正物流効率化法では、届出義務を怠った特定荷主に対して「50万円以下の過料」が課される可能性があります。また、CLO未選任で届出漏れの場合は「100万円以下の罰金」、CLO届出漏れは「20万円以下の過料」と、より厳しい処罰が想定されています。何らかの理由で5月に間に合わない場合は、まず経産省の相談窓口に連絡し、猶予期間の相談をすることをお勧めします。
改正物流効率化法の届出は、基本的に経済産業省が窓口です。経産省が提供する様式第1~5を用いて届出を行います。一方、国交省の「物流効率化法理解促進ポータル」は、法改正の背景や理解促進を目的とした情報提供窓口であり、届出先ではありません。不明点がある場合は、経産省の物流政策課に問い合わせてください。