みなさんがネットショップで販売する商品を海外で大量に買い付けた場合、必要になることが海外から日本への輸送です。国内のEC物流については発送代行サービスもかなり充実しており、簡単にアプローチできるようになってきましたが、海上輸送は島国日本で不可欠ではありますが、馴染みがあるわけではありません。今回はそんな海上運賃つまり「輸送費」に関する内容をご紹介します。
目次
海運業界と海上運賃
船(海上)で輸送する際の費用を「海上運賃(Ocean Freight)」と呼びます。航空輸送が発達した現代においても運べる物量と輸送コストの観点から海上輸送は国際輸送の中でも主流の輸送方法と位置付けられております。
海運業界は不当な価格競争や業界の保護を背景に世界的に価格カルテルが認められている珍しい業界です。
運賃体系に関する海運同盟を組織して、加盟した船会社を利用する荷主と利用しない荷主で海上運賃の使い分けを行なってきた歴史があります。こうしたカルテルも近年の船会社間の競争激化により形骸化しつつありますが、運賃交渉や特殊に設定される費用項目などにおいては今でもこうしたカルテルの影響を感じられる場合もあるため、歴史的な背景として押さえておくと良いでしょう。
国際輸送費の基本構成
さて国際輸送費の基本的な構成は以下の通りとなります。
この中でサーチャージは各種調整金と呼ばれることもあり、その請求項目は使用する船会社や航路などで様々に設定されることとなります。代表的な費用項目としてBAF、CAF、AFR、THCなどがあり、これらの費用は商品が輸入国に到着するときに発行されるArrival notice(到着通知)に記載されておりますので興味がある方は確認してみるのも良いでしょう。
- 海上運賃
- サーチャージ
- 輸入国側で必要となる費用(輸入諸掛)
海上運賃
まずお断りしなくてはならないのが、ここでいう海上運賃というのはコンテナ船輸送(定期船)に関わるものだということです。
実は海上輸送にはコンテナ船(定期船)の他に1隻船を丸ごと貸し切る傭船(不定期船)や穀物などを運ぶバラ積み船、石油やガスを運ぶタンカー、自動車などを運ぶ自動車専用船など輸送する商品の特性により、使用される船の種類や契約が異なることを参考までに記載しておきます。
コンテナ船(定期船)で運ぶ商品は、我々が日常手にするような雑貨品や一般消費財から工業製品用の部品など輸送可能な商品の幅が広く、かつ積出港→途中の中継港(複数)→最終目的港といったような形で港間を繋ぐ航路(ループ)を定期的に運行することが多くなっています。
海上運賃は基本的には需要と供給によって決定されます。季節性や世界各国の経済状況、天候などの自然現象や運行可能な船そのものの数など決定要因が多様かつ複雑です。
直近ではコロナウイルスに起因したコンテナ不足や荷役人員不足、高収益な主要航路への振替といった各種要因を背景に海上運賃は歴史的な高騰を見せており、2021年1月の上海発米国西海岸向けコンテナ輸送運賃では前年同月比3倍以上の運賃相場になるなど運賃の振れ幅が大きくなりました。
続いて、海上運賃の設定方法ですが、コンテナと呼ばれる箱単位で輸送する場合にはサイズ別に20FT(TEU)や40FT(FEU)といった単位で積出港〜最終目的港までの運賃が設定されていきます。
コンテナサイズに満たない物量を扱う場合には容積または重量のどちらか重い方を採用するRevenue Ton=RTという運賃算定方法が取られます。ご自身の輸送する商品の物量を見て、コンテナ単位の輸送を行うか否かというのがまず最初の確認事項となるでしょう。
海上運賃に関しては航路の特徴(往航/復航)や運ぶためのコンテナ確保(回送)といった要素も含めて、リーマンショックやコロナウイルスといった世界を揺るがすようなイベントなどと絡めて運賃への影響度合いを理解して頂く方が良いと思いますのでこちらは別の機会に改めて説明させてください。
サーチャージ
さて海上運賃に追加されるサーチャージについて説明します。先に触れた通りこちらは様々な経済状況を反映した上で船会社が設定する性格上、その全てを網羅することは略不可能ですのでご自身に関係のある身近なサーチャージから覚えていくことをお勧めします。
まずは燃料系の割り増し料金です。
BAF-Bunker Adjustment Factor-
燃料費調整係数、いわゆる燃料割増料金のことで、燃料(重油)価格の変動に対して調整される割り増し料金です。航路によって異なる名称が使われることがありますが、ここでは一旦BAFとして覚えておいてください。
BAFは一般的にトン当たり、あるいはコンテナ当たりで料金が決められます。 また、最近ではBAFの一環として窒素酸化物の排出量を規制している国向けのNOx Emission Surcharge、Carbon Tax Surcharge、Low Sulphur Fuel Surchargeといった割り増し料金が適用されることもあります。今後も環境保護の観点から現状のBAFに変わる費用項目が生み出される可能性があり、その点については要注意です。
CAF-Currency Adjustment Factor-
通貨変動調整係数のことで、為替レートの変動に対して調整される割り増し料金です。基本的に船の運賃は米国通貨のUS$で決められており、各船会社はUS$から自国通貨へ切り替えて運賃回収を行っていることがこの項目がサーチャージとして設定されている背景となります。
CAFは一般的に基本料金に対する割合(%)で価格が決められています。東南アジア航路などでは、CAFに代わり、日本円の高騰に対して課徴するYAS(Yen Appreciation Surcharge)も適用されることもあります。
CSSとAFR-国際情勢とサーチャージ-
さらに政情不安な地域を船会社が航行する際の危険回避に関わる費用負担としてCSS(Carrier Security Surcharge)や米国の911テロ事件を契機として定められた出港前報告制度対応となるAFR(Advance Filing Rules on Maritime Container Cargo Information)と呼ばれるサーチャージなど国際情勢の影響を大きく受けるため、こうした情報にも日頃からアンテナを貼っておくと良いと思います。
輸入国側で必要となる費用(輸入諸掛)
最後に輸入国でかかる費用については説明していきます。
THC(Terminal Handling Charge)
コンテナターミナルで発生する費用のうち、ガントリークレーンと呼ばれる専用機器を使用した船からのコンテナ荷卸し費用、ターミナル内の輸送、コンテナターミナルの維持管理に充てるために設定されております。
CFSチャージ(Container Freight Station Charge)
上述したコンテナサイズに満たない物量の商品を取り扱う際にかかる費用です。専用のContainer Freight Stationでかかる荷卸し費用やターミナル内の輸送などが該当します。
あとは運行に関わる書類発行手数料が加算されることがあります。
商品をコンテナターミナルや保税倉庫から引き取るためのD/O FEE(Delivery Order Fee)や船荷証券であるB/Lを発行する手数料としてDOC FEEが設定されます。
まとめ
今回は海上運賃に関わる基本的な情報と代表的なサーチャージについて説明しましたが、今回の内容はほんの入り口に過ぎません。また既に述べたように海上運賃やサーチャージ適用状況などは常に変動しており、複数の船会社から見積もりを取得し検討されることをお勧めします。
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