今や日本の輸出入の総額は、180兆円に迫る勢いで、実に国家予算の約1.8倍に相当します。それを陰で支えるのが、物流企業にほかなりません。世界の名だたるインテグレーターやフォワーダーに対抗して、国内の物流企業も積極的に海外展開を果たしています。今回は、世界展開する国内企業をランキングでご紹介します。その背景にある動向についても分析するので、物流、運送会社を探している方や就職を考えている方など、ぜひ参考にしてください。
大手物流企業を中心に国内の物流企業、運送企業が海外展開を積極的に推し進めている背景について具体的に解説します。
荷主企業が海外進出し、生産拠点や販売拠点を国外に増やすようになると、その動きに伴って必ず物流需要が増加します。とりわけ2011年の東日本大震災以降に1ドル75円台という記録的な相場をマークして以来、長期にわたる円高を背景に、かつては輸出入に伴う輸送が主な役割だったことに加え、世界の各所において現地付近での保管、荷役、流通加工、包装といった総合的な物流機能、3PL(サードパーティロジスティクス)も含めたニーズが、それ以前に比べて急速に増え始めました。
とくに中国をはじめとするアジア圏での物流需要の高まりは顕著で、その地域をターゲットにしている企業にとって海外で原料の調達から生産、販売、そして消費までを完結させるグローバルサプライチェーンの構築が、急務となりました。その結果、そのバックボーンとしての役割を物流企業に求める動きが、活発化したのです。
時間に正確、誤配送が少ない、小回りが効く、仕事が丁寧、といった日本流のロジスティクスは、世界でも非常に高く評価されています。そのサービスとノウハウを国外へ輸出することによる大幅な収益増を狙った戦略として、大手を中心に海外展開が積極化しました。
その日本流ロジスティクス、以下の記事でさらに深く理解できます。
今後、国内における人口減少は、世界に類を見ない速度で急激に進んでいきます。コロナ禍による巣ごもり需要で、宅配件数は増加傾向にあるものの、toBも含めて、その流れが永続するとはとても考えられません。そこで物流業界では、中長期的な戦略として、M&Aなども含めて海外拠点の充実をはかる動きが、活発化しているのです。
物流業界、企業は将来性があると言えるでしょう。その理由として、物流業界は、グローバルな経済の発展や電子商取引の普及などに伴い、年々需要が増加しており、今後もその需要は高まると予想されています。また、新たなテクノロジーの導入やデジタル化により、より効率的な物流システムの構築が進んでいます。
このような状況下で、物流企業はますます重要な存在となっており、求人数も増加しています。さらに、物流企業はグローバルに展開することが多く、多様なキャリアパスや海外勤務の機会もあるため、将来性が高い業界の一つと言えます。
とはいえ、物流業界は競争が激しく、労働条件や待遇面において課題もあります。したがって、将来性があるとは言えども、入社前にはしっかりと業界や企業を調べ、自分が望む年収かどうか、さらにそれも含めて自分にとって優良な企業であるかどうかが職場選びの重要なポイントとなります。
ここからは実際の日本の物流企業を売上順に記載しております。
日本郵政グループ全体の2022年3月期の営業収益(売上高)は、11兆2,647億円。うち郵便・物流事業の営業収益は、2兆412億円となっています。さらにそのうち国際物流事業の営業収益は、8,279億円と実に40%を占めています。
2009年にオーストラリア最大の国際物流企業「トールグループ」を6,200億円で買収し、現在は世界50ヵ国、1,200ヶ所でフォワーディングやロジスティックサービスを展開しています。と同時に、トールグループと日本郵便の子会社である「JPトールロジスティクス株式会社」を設立し、国外、国内を問わず、あらゆる物流ニーズに応えるソリューションサービスを提供しています。
2022年3月期の営業収益は、2兆2,807億7,500万円で、不動産業等、物流と直接関係しない部門の売上を含むものの、日本郵政の郵便・物流事業のみの売上高を上回っています。日本郵船は、後述する商船三井、川崎汽船と同じく海運業のため、他のランキング企業とは業態の傾向が少し異なります。
上記売上高のうち、航空運送事業が1,887億円、物流事業が8,474億円、定期船事業が1,905億円、不定期専用船事業が9,745億円、などとなっています。2021年3月現在で、世界47カ国、595拠点で事業展開しており、社員の40%が海外勤務経験者という超国際派の物流企業です。
ヤマト運輸を展開しているヤマトホールディングスの2022年3月期の営業収益は、1兆7,936億円です。
海外においては、国際航空貨物輸送、国際海上貨物輸送、そして国際宅急便という3つのセグメントで事業展開しています。25の国と地域を拠点とし、国際貨物は55カ国に対応、宅急便については、世界200を超える国と地域へラストワンマイルまでの配送を行っています。海外引越しや美術品、競技スポーツ関連の貨物など、専門性の高い海外物流や、海外物流に関するコンサルティング事業も行っています。
日本通運を運営しているNIPPON EXPRESSホールディングスの2022年3月期の営業収益は、1兆7,632億円です。世界49カ国、312都市、739拠点で事業展開しています。
海外では、1,000路線以上におよぶ国際航空輸送、独自コンテナや三国間相互輸送等による豊富な輸送メニューを提供する国際海上輸送、さらに航空、船舶に鉄道やトラックを組み合わせた国際複合輸送といったサービスを提供しています。国内外を問わず、倉庫保管や重量品・美術品の輸送、法人の海外引越し、さらにグローバルサプライチェーンの構築・運営を支援するサービスも手広く行っています。
佐川急便を展開しているSGホールディングスの2022年3月期営業収益は、1兆4,500億円でした。
国内にとどまらず、海外でもロジスティクス事業として、保管、検品、流通加工を行い、船舶や航空機、車両を使った国際輸送や通関業務、域内輸送など、世界30の国と地域において積極的に事業展開しています。
宅配については、法人と個人を問わず、「国際飛脚宅急便」として、世界220以上の国と地域のラストワンマイルまでの配送サービスを行なっています。
2022年3月期の営業収益は、1兆2,693億円です。鉄鉱石、石炭、穀物などを輸送するドライバルク船、原油や石油製製品、液体化学製品などを輸送する油送船、LNG船、自動車船、そして、日本郵船、川崎汽船と共に定期コンテナ船事業を統合した「Ocean Network Express(通称:ONE)」は世界6位の船体規模を誇り、世界120カ国以上との輸送ネットワークを有します。
2022年3月期の営業利益は、7,596億8,300万円です。内訳は、ドライバルクが2,765億円、エネルギー資源が897億円、製品物流が3,802億円となっています。
メイン事業は、海上貨物輸送ですが、それに加えて航空や海上貨物のフォワーディング、陸上輸送、倉庫・貨物混載事業にも注力しています。さらに時代を先取りしたカーボンニュートラル推進事業、燃料事業、電力・海洋事業による新規ビジネスの開拓にも余念がありません。
※ランキング内の売上高に関する数値は、各社の2022年の有価証券報告書を参考にしています。
最後に昨今の物流企業にまつわる懸念事項について触れておきましょう。
新型コロナウィルスのパンデミックに加えて、ロシアがウクライナに侵攻したことなどに起因する経済状況の劇的変化により、燃料の急激な高騰と未曾有ともいえる超円安が続いています。その影響で、倉庫・運輸を中心とする物流業界は、大幅なコストアップを強いられています。
円安で輸出が増えると海外への物流需要は増加するものの(ただし現在ならではの複雑なメカニズムにより、海外生産された日本製品の輸入額が増大していることもあって国内では貿易赤字が増しているという皮肉な異常事態が見られます)、航空、船舶、車両とすべての燃料が高騰しているため、利益は大きく押し下げられているのが、現実です。円高を背景に海外展開に注力していた国内企業の中には、経費削減のために国内製造に主軸をシフトしたり、海外から引き上げたりといったことを検討する動きも見られます。加えて、あらゆる業界や国と地域で供給網が分断されたり、物流量やそのルートが凄まじく変化したりしていることもより事態を深刻化しています。この流れが加速すると、世界展開している物流企業も事業戦略の大幅な見直しが迫られる恐れがあるでしょう。今後しばらく、これら一連の動きから目が離せません。
世界には、DHL、FedEx、UPSといった名だたる総合物流企業が存在します。ただ、日本流のロジスティックスが、世界で非常に高く評価されているのも事実です。よって、記事内で紹介した7社を筆頭に、今後、国内の物流企業が、世界に伍してどれだけ活躍の場を広げていくのか、今後さらに要注目です。
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