冷凍食品の品質が格段に向上し、地方の名産品をインターネット通販でお取り寄せできる時代になりました。これはコールドチェーン(低温流通機構)の発達がもたらしたものです。EC市場の拡大とともに冷凍・冷蔵食品の需要が急増しており、コールドチェーンは食品を扱うEC事業者にとって無視できない物流インフラです。本記事ではコールドチェーンの仕組み・メリット・課題から温度帯別の配送コスト、食品EC開業の実務までを整理します。物流全体の費用感は発送代行の完全ガイドと合わせてご活用ください。
この記事の内容
コールドチェーンとは「低温流通機構」もしくは「低温流通体系」とも呼ばれ、冷凍食品・チルド食品など低温管理が必要な商品を、生産から消費までの全過程で途切れなく低温で管理した状態で流通させる仕組みです。「チェーン(鎖)」が示すように、生産→保管→輸送→販売→消費という各段階がすべて適切な温度帯で連結していることが重要です。
コールドチェーンは昭和40年(1965年)に当時の科学技術庁が出した勧告に端を発し、家庭用冷蔵庫と低温冷凍機の普及とともに日本に定着しました。流通する商品は食品だけに限らず、輸血等に用いられる血液バッグなどの医療品・医薬品、場合によっては電子部品の流通にもコールドチェーンが採用されています。物流の5大機能の中でも、低温物流は保管・輸送に高い専門性が求められる領域です。
コールドチェーン需要が急拡大している背景には、3つの構造的な要因があります。
低温物流の国内市場規模は2025年度に1兆9,157億円と予測されており、2022年度比で8.1%の成長が見込まれる。
一方、需要の急拡大に対して冷凍・冷蔵倉庫の供給は追いついていません。国内の商業冷蔵倉庫の多くが老朽化を抱えており、設備の更新と新規建設の遅れが業界全体の課題になっています。
冷凍冷蔵倉庫の保管料は上昇傾向にあり、国内の冷凍倉庫は需給が逼迫した状態が続いている。電気代や人件費の上昇も保管コストを押し上げる要因となっている。
食品EC事業を始める事業者にとっては、コールドチェーン対応の物流パートナーを早期に確保することが事業開始の最初のボトルネックになっています。物流業界の現状と動向でも、低温倉庫の需給逼迫が継続的な論点になっています。
コールドチェーン最大のメリットは食品の品質維持です。登場以前は常温物流しかなく、流通過程で食品が傷むリスクがありました。新鮮な食品は産地近くでしか手に入りませんでしたが、コールドチェーンの普及により産地から遠い消費者にも鮮度を保った状態で届けられるようになりました。倉庫側の品質管理は倉庫の保管と品質管理でも整理しています。
地方の名産品をEC通販でお取り寄せできるのは、コールドチェーンの恩恵です。国内に限らず越境ECでも食品輸出が可能になり、食品業界においてコールドチェーンの拡大はそのままビジネスチャンスの拡大を意味します。
食品を冷凍・冷蔵で保管・流通させることで品質劣化を抑制し、賞味期限・消費期限を延ばせます。フードロスの減少は廃棄コストの削減につながり、計画的な生産体制の構築も可能になります。
冷凍・冷蔵設備を備えた倉庫・冷凍車・保冷ボックスの確保に加え、設備稼働の電気代などランニングコストが発生します。需要増加に対して施設が不足しているため、保管料は上昇傾向が続いています。通常倉庫との費用差は倉庫の保管費用で確認できます。
保管・輸送の各段階で温度管理を徹底するには専門的な知識と技術が求められます。食品によっては出荷前に「予冷」工程が必要なケースもあり、品質を保つための要素が複数あります。IoTセンサーを活用したリモート温度モニタリングが有力な解決策です。品質指標の考え方は物流KPIの管理で整理しています。
低温管理施設内では冷気を逃がさないよう扉が厳重に管理されており、頻繁な入出庫は室温上昇による品質リスクを伴います。WMS(倉庫管理システム)によるリアルタイム在庫管理がこの課題を軽減します。在庫管理の仕組みはWMSの活用で整理しています。
コールドチェーンで管理される温度帯は大きく3種類に分かれます。EC事業で食品を扱う場合、商品カテゴリに応じた温度帯を正確に把握し、その温度帯に対応した配送会社・発送代行業者を選ぶ必要があります。温度帯の誤りは品質劣化や食品衛生法違反につながるため、事前確認が必須です。
| 温度帯 | 温度範囲 | 対象食品の例 | 配送手段の例 |
|---|---|---|---|
| 冷凍 | -18℃以下 | アイスクリーム、冷凍食品、冷凍肉魚 | クール宅急便(冷凍)、飛脚クール便(冷凍) |
| チルド | 0〜5℃ | 生ハム、チーズ、ヨーグルト、鮮魚 | クール宅急便(冷蔵)、飛脚クール便(冷蔵) |
| 冷蔵 | 5〜10℃ | 野菜、果物、一般食品 | クール宅急便(冷蔵)、ゆうパックチルド |
クール宅急便は通常の宅急便運賃にサイズ別のクール追加料金が加算される仕組みです。2025年4月の改定で、追加料金は次の体系になっています。
| サイズ(重量上限) | クール追加料金(税込) | 主な用途の目安 |
|---|---|---|
| 60サイズ(2kgまで) | 275円 | 少量の冷凍食品・加工品 |
| 80サイズ(5kgまで) | 330円 | ミールキット・詰め合わせ |
| 100サイズ(10kgまで) | 440円 | まとめ買い・ギフト |
| 120サイズ(15kgまで・上限) | 715円 | 大型の産地直送品 |
この追加料金に、関東同一地帯で60サイズ900円台からの通常宅急便運賃が加算されるため、60サイズの冷凍便は合計1,200円前後が目安になります。クール宅急便は120サイズが上限で、通常宅急便のような140〜200サイズには対応していません。また冷凍と冷蔵の混載はできず、温度帯ごとに別便になります。なお、通常宅急便の120〜200サイズの運賃は2025年10月に平均約3.5%改定されているため、最新の料金はヤマト運輸のサービス解説や公式の運賃シミュレーションで確認してください。飛脚クール便の詳細は佐川急便のサービス解説でも取り上げています。
コールドチェーン対応の発送代行業者に委託する場合、常温の発送代行より割高になるのが一般的です。保冷対応の保管料(常温比で30〜50%増が目安)に加え、梱包資材(ドライアイス・保冷剤・断熱箱)の費用も発生します。ただし個人でクール宅急便を手配するよりスケールメリットによるコスト削減が期待でき、さらに温度管理の専門性という品質面のメリットも得られます。常温配送の費用構造は発送代行の費用構造で確認し、コールドチェーンとの差分を把握しておくと役立ちます。
食品ECを始める際に、コールドチェーン対応で確認すべきポイントを5ステップで整理します。
EC事業の基本はネットショップ運営の全体像で押さえたうえで、コールドチェーン固有の要件を追加する形で計画を立てるのが効率的です。物流設計のポイントはEC物流の特徴と設計でも整理しています。
コールドチェーン対応の発送代行業者は常温物流業者より数が少ないため、次の5点を基準に慎重に選定してください。
冷蔵倉庫については、約半数が築30年以上経過しており、東京都内では、より老朽化の傾向にある。
コールドチェーン物流のパートナー選定は、食品EC事業の品質と信頼性を左右する最重要の意思決定です。物流業者選定の考え方は発送代行業者の比較でも整理しています。
なお、STOCKCREWは常温物流に特化した発送代行サービスであり、現時点では冷凍・冷蔵のコールドチェーンには対応していません。常温商品の発送代行と、冷凍・冷蔵商品のコールドチェーン対応業者を組み合わせて利用するEC事業者も少なくありません。常温の物流であれば、STOCKCREWの料金ページに費用感をまとめています。
コールドチェーン(低温流通機構)は生産から消費まで途切れなく低温管理して流通させる仕組みであり、食品品質の維持・流通範囲の拡大・フードロスの軽減という3つのメリットを持つ一方、コスト・専門知識・在庫管理の難しさという課題もあります。
食品EC事業を始める際は、温度帯(冷凍・チルド・冷蔵)の正確な把握、食品表示法・食品衛生法への対応、コールドチェーン対応の物流パートナーの早期確保という3点が事前準備の核です。冷凍倉庫の需給が逼迫している現状を踏まえると、パートナー確保は事業計画の初期段階から着手すべきです。
コールドチェーンのコストは通常物流より高くなりますが、産地直送・希少食材のお取り寄せ・高品質冷凍食品といった付加価値の高い商品を扱うことで粗利率を高め、コストを吸収できます。EC物流の全体像を把握したうえで、常温商品の物流効率化についてはSTOCKCREWのサービス全体像を確認し、無料の資料ダウンロードやお問い合わせからお気軽にご相談ください。
食品表示法への対応(賞味期限・アレルゲン表示)、食品衛生法への適合、コールドチェーン対応の配送会社との契約、梱包資材の確保という4点が最低限必要です。管轄の保健所に相談し、必要な許可・届出を確認してから事業を開始してください。事業開始の手順はEC事業フェーズ別の発送代行戦略でも確認できます。
クール宅急便の場合、通常宅急便の運賃にサイズ別のクール追加料金(60サイズ275円〜120サイズ715円・2025年4月時点)が加算されます。関東同一地帯の60サイズなら、通常運賃900円台にクール275円が加わり、合計1,200円前後が目安です。発送代行業者に委託する場合はスケールメリットによる割引が期待できます。
冷凍と冷蔵の混載はできません。温度帯が異なるため、それぞれ別便での配送が必要になります。同じショップで両方の温度帯を扱う場合は、顧客への送料説明と物流コストの設計に注意が必要です。
冷凍食品(-18℃以下)は-78.5℃のドライアイスで温度を保ち、チルド・冷蔵食品は保冷剤を使うのが一般的です。気温が高い夏季(6〜9月)は、ドライアイスと保冷剤を併用したり、断熱材の厚みを増したりして保冷力を強化します。商品の温度帯と配送日数に応じて資材を設計することが品質維持の鍵になります。
併用できます。常温商品は初期費用・固定費0円のSTOCKCREWのような常温専門業者に委託し、冷凍・冷蔵商品はコールドチェーン対応業者に委託する形で、商品ごとに最適な物流網を組み合わせるEC事業者は少なくありません。常温品の比率が高い場合は、まず常温部分のコストを最適化するだけでも全体の物流費を圧縮できます。