物流業界ではさまざまな課題を抱えている企業も多く、日々の忙しさでなかなか解決策にまで手が回らないケースが多くなっています。そんな中、課題解決の助け舟となり得るものとしてIotソリューションが注目されています。今回は物流業界の抱える課題やIotのメリット、そして代表的なツールを紹介します。
目次
物流業界が抱える課題
競争激化ともいえる中、物流業界で多くの企業が抱える課題を紹介します。
慢性的な人手不足
少子高齢化が進む日本では、労働人口が減少しつつあり、転職市場でも好待遇の求人が人気となっています。求職者が売り手市場の中、なかなか好条件を提示できない企業もあり、さらに慢性的な人手不足に悩まされています。
特に物流業界は配送ドライバーの人手が足りておらず、なかなか対策が進まないので大きな課題ともなっています。
市場ニーズの急変に対応できていない
2020年以降に世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス。物流業界だけでなく多くの企業がダメージを受けており、倒産や廃業という最悪の事態に追い込まれているケースも目立っています。
しかし、外出自粛やリモートワークの増加によってECサイトの需要が高まり、物流業界の需要は増える一方です。が、配送日時も当日や翌日の時間指定が一般的な小ロット多品種の配送の増加という、市場ニーズが変化しています。こうした状況に臨機応変な対応が課題となっています。
EC需要と物流の課題は「EC物流の課題である宅配クライシスとは?その内容と解決法を探る」でも詳細を紹介しています。
燃料費の高騰でコスト増大
2022年は円安や物価高にともない、約40兆円にも及ぶ経済対策が講じられます。原材料や燃料の高騰は物流業界にも大きなダメージを与えています。運送費を急激に上げるわけにもいかず、トラックの維持費やガソリン代のほか、資材の原材料費も高騰している状況で、いかに物流コストを削減していくかが重要な課題となっています。
課題解決には抜本的な変革でIotが必要
物流業界では上記の課題を解決するために、抜本的な変革が求められます。そこで物流業界の効率化を図れるIoTが注目されています。
IoTとは
IoTは「モノのインターネット」といわれ、日用品から企業が扱う設備に至るまで、さまざまなモノをインターネットに接続し、従来よりも進んだ使い方を目指すものです。工場や倉庫などで生産・搬入された製品がどの設備でいくつ加工され、どの棚に保管されているのかなど、IoTを利用すればリアルタイムな情報を現場にいなくても共有できます。物流業界では倉庫作業やトラックなどの配送作業にIoTの導入が進められています。
AIやITとの違い
IoTはAIやITと混同されやすいといえます。AIは人工知能で高度な計算プログラミングによって自ら学習することが可能です。モノをインターネットにつなげるIoTとは趣旨が異なります。
一方、ITはインターネットなど情報技術の総称となります。いわばITの中にIoTが含まれていることになります。
物流業界でIoTを活用するメリット
物流業界でIoTを活用するメリットを紹介します。
配送業務の見える化で効率アップ
IoTの導入により、トラックの積載情報や空車情報を一元管理し、配送ルートも含めて見える化が可能となります。これによって効率的な配送業務が実現でき、余分な配車が不要になったり、人手不足の解消にもつながります。
温湿度管理の自動化で品質を保つ
IoTはさまざまなデータを管理できるようになります。たとえば倉庫内やトラックの温湿度を事務所で管理できるようになり、品質を一定に保てます。これにより、一層の物流サービス向上を図れます。
予防保全でメンテナンスコストを軽減
配送するトラックや倉庫内の設備は、故障してから直すのでは非効率的です。IoTでデータを抽出すれば異常を察知できるので、故障を予防することも可能になります。計画的なメンテナンスを実施すれば、設備を停止するのも少ない時間で済み、予備の配車も事前に手配できます。
IoTはDX化にも重要な役割を担う
政府は企業のDX化を推進しており、IoTはDX化にも重要な役割を担っています。
DXとは
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、IoTやAIを駆使したデジタル技術を用いて企業風土の変革を促し、競争社会で優位に立つことを指しています。
2021年に「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」が発表され、国土交通省では物流業界のDXを推進しています。物流DXは単にデジタル技術を用いて効率化を図るのではなく、従来のやり方を刷新し、ビジネスモデルそのものを変革し、それを標準化することが求められています。
物流業界でIoTを導入する際の注意点
物流の効率化を図ってコスト削減につながるIoTですが、導入するには一定のコストが必要です。そのため、どの作業にムダがあって非効率なのかを事前に自社で課題を再検討しなければなりません。また、情報の流出を防ぐためにセキュリティ対策を徹底する必要があります。
さらに、DX化によってIoTを導入する場合、これまでのやり方から一気に変わるので既存社員の再教育も必要です。物流業界は高齢のドライバーや倉庫作業者も多く、ITに疎い人もいます。IoTで配置転換になるケースも出てくることが予想されるので、そうした事態に対しての理解を得られるよう、研修を行うなど対策を施すことが重要です。
代表的なIoTツール
物流業界で活躍する代表的なIoTを紹介します。
RFID
RFIDとは、商品情報の入ったICタグを専用のリーダーで読み取るシステムです。これは非接触型なので離れた位置の荷物にも対応できます。メリットとしては、一度に複数の商品を検品でき、倉庫作業などの物流業務の効率化を図れます。
WMS(倉庫管理システム)
WMSは倉庫内の入出庫管理を行うシステムです。入荷作業ではどこの棚が空いているのかを探す作業も手間がかかります。しかし、WMSを導入すると入荷時には自動的にロケーション管理も行えるため、棚を探すというムダを省けます。在庫管理の自動化によってヒューマンエラーを防げるほか、出荷時にもラベル発行まで簡単にできるので作業性もスピーディーになります。
画像AI認識
AIによる画像認識も物流業界では、検品作業の効率化を実現できるツールとして注目を浴びています。手作業での検品作業は工数がかかるために人手も必要になります。そこで、カメラを使って文字ラベルを読み取れば、コードがない商品の検出も可能となります。また、カメラを複数設置することで、検品作業でのキズチェックも判別できます。在庫管理については、Iotと連携するのがもっとも作業効率はよくなります。
TMS
TMSは配車管理システムで、配送先の走行ルートや位置情報、積載物、燃料の計算も管理します。配送状況から効率の悪い車両を特定して他の車両に荷物を振り分けることも可能です。走行距離や運搬回数、燃料費を数値化できるので、物流コストを大幅に軽減させられます。燃料の高騰によってコスト増大となる課題解決に大きなプラスをもたらしてくれるであろうシステムです。
まとめ
物流業界が抱える課題は人手不足など深刻な問題が多く、企業の存続にも影響を及ぼすものとなっています。そこで、物流業界にもIoTを活用すれば倉庫作業や配送作業の見える化を図り、業務効率化につなげることが可能です。