消費者庁が景品表示法の運用状況を公表|措置命令13件・課徴金3.3億円|EC事業者が見直すべき広告表示
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消費者庁は2026年5月28日、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の景品表示法の運用状況を公表しました。措置命令は13件、課徴金納付命令は10件・総額3億3,940万円、そして指導は388件——商品ページの「盛った表現」や「お得に見せる価格表示」が、具体的な行政処分として現実のリスクになっていることを示す数字です。特に今回はステルスマーケティング告示に関する確約計画の認定が4件含まれており、レビュー・インフルエンサー施策を行うEC事業者には無関係でいられない内容です。この記事では公表内容のポイントと、EC事業者が自社の商品ページ・販促を見直すための実務チェックポイントを解説します。物流を含む販売体制全体を整えたい方は、あわせて発送代行の基礎知識も押さえておきましょう。
ニュース概要:令和7年度の運用状況の数字
公表された「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」(消費者庁)によると、令和7年度の主な実績は次のとおりです。
| 区分 | 件数 | 内訳・補足 |
|---|---|---|
| 措置命令 | 13件(13事業者) | 優良誤認3件・有利誤認8件・原産国告示2件 |
| 確約計画の認定 | 8件(8事業者) | 優良誤認1件・有利誤認5件・ステルスマーケティング告示4件(重複計上あり) |
| 課徴金納付命令 | 10件(10事業者) | 納付命令額は計3億3,940万円 |
| 指導 | 388件 | 命令に至らない違反被疑行為への行政指導 |
このうち、公正取引委員会の地方事務所・支所等の調査を踏まえて消費者庁が措置命令を行ったものが5件、指導が22件あります。違反の調査・端緒は公正取引委員会の地方組織にも広がっており、「東京の大手だけが見られている」わけではない点に注意が必要です。なお、公正取引委員会が所管する取引適正化の枠組みについては取適法と物流取引の見直しでも整理しています。
確約手続とは:自主是正で命令を回避する枠組み
今回8件が認定された確約手続は、違反の疑いを指摘された事業者が、自ら是正措置計画(表示の停止・再発防止策・消費者への周知など)を申請し、消費者庁の認定を受けることで措置命令や課徴金納付命令を受けずに事件を終結させる仕組みです。2024年の景表法改正で導入され、運用が定着しつつあります。事業者側のメリットは命令・公表による信用毀損を抑えられることですが、認定を受けるには迅速で実効性のある是正計画が前提になります。違反の疑いに気づいた時点で素早く動ける社内体制(後述)が、この枠組みを使えるかどうかの分かれ目です。
おさらい:景品表示法がECに求める3つのルール
景品表示法(景表法)は、消費者を誤認させる「不当な表示」と「過大な景品類の提供」を禁止する法律です。EC事業者が日常的に関わるのは主に次の3類型です。
| 類型 | 内容 | ECでの典型例 |
|---|---|---|
| 優良誤認表示 | 商品・サービスの品質や性能を実際より著しく優れていると誤認させる表示 | 根拠のない「業界No.1」「飲むだけで痩せる」、効果を保証するような体験談 |
| 有利誤認表示 | 価格や取引条件を実際より著しく有利と誤認させる表示 | 実売実績のない「通常価格」からの二重価格表示、常時実施している「期間限定セール」 |
| ステルスマーケティング告示 | 事業者の広告であることを隠した第三者の投稿・レビュー | 広告表記のないインフルエンサー投稿、報酬を渡したレビュー依頼 |
違反が認められると、再発防止等を命じる措置命令(事業者名が公表される)、優良誤認・有利誤認には対象商品の売上額の3%にあたる課徴金納付命令が課される可能性があります。事業者が自主的に是正計画を申請して認定を受ける確約手続という枠組みもあり、令和7年度は8件が認定されました。なお、通販の表示ルールとしては景表法と並んで特定商取引法も重要です。
通信販売では、商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。もっとも、これは、事業者が予め、広告で返品特約を表示していない場合に認められるものです。
広告の品質・価格表示は景表法、返品特約や事業者表示は特商法と、商品ページは2つの法律のルールが重なる場所です。改正特商法と定期購入規制、そして利用規約など法的ドキュメントの整備もあわせて確認しておきましょう。
令和7年度の傾向:有利誤認が最多、ステマ確約4件
件数の構造を見ると、EC事業者が優先して対策すべきポイントが浮かび上がります。
傾向①:処分の中心は「価格の見せ方」(有利誤認)
措置命令13件のうち8件が有利誤認、確約計画でも5件と、価格・取引条件の表示が処分の中心です。提供価格・キャンペーン表示・原産国などへの不当表示が措置命令の対象になっており、「実際には存在しない通常価格との比較」「終わらないセール」のような価格演出は、最も摘発されやすい類型と考えるべきです。
傾向②:ステマ告示の執行が本格化している
確約計画認定8件のうち4件がステルスマーケティング告示関連でした。2023年10月に施行されたステマ規制は、運用の蓄積が進み、執行のフェーズに入っています。注意したいのは、規制の名宛人が広告主である事業者側だという点です。投稿したインフルエンサーやレビュアーではなく、依頼した事業者が処分の対象になります。「代理店に任せていた」「モニター施策の詳細を把握していなかった」では言い訳にならず、依頼の有無・対価の有無・表示内容の確認記録まで、事業者側に管理責任が求められます。SNS運用やレビュー施策を外部委託している場合こそ、契約と運用フローの点検が急務です。
傾向③:氷山の本体は388件の「指導」
公表されて目立つのは措置命令ですが、件数で圧倒的に多いのは388件の指導です。指導は事業者名こそ公表されないものの、根拠資料の提出を求められ、改善報告までの対応コストは小さくありません。「処分はニュースになる大手だけ」という認識は実態と異なり、中小規模のECにも日常的に行政の目が届いていることを示しています。
指導や調査の端緒として大きいのは、消費者や競合他社からの情報提供です。ECは商品ページが常時公開されているため、店頭販売よりも表示の証拠が残りやすく、通報のハードルも低い販売形態です。スクリーンショット1枚から調査が始まり得ることを前提に、「公開した表示はすべて記録に残る」という意識で商品ページを管理する必要があります。D2Cブランドのように指名検索や広告で集客する事業者ほど表示への注目度は高く、D2Cの事業設計においてもコンプライアンスはLTVを守る投資と位置づけるべきです。
EC事業者が見直すべき4つの表示リスク
商品ページ・販促物の4点チェック
今回の運用状況を踏まえ、自社の商品ページ・販促物で優先的に点検したいのは次の4点です。
- 二重価格表示の根拠——「通常価格○○円→セール価格○○円」と表示する場合、通常価格での十分な販売実績(直近8週間のうち過半の期間など、いわゆる価格表示ガイドラインの考え方)が説明できるかを確認します。説明できなければ比較対照価格は使わないのが安全です。
- 効果・性能表現の根拠資料——「最高クラス」「○○率99%」のような優良性の主張は、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料をセットで保管します。消費者庁から資料提出を求められて15日以内に出せなければ、不実証広告として優良誤認とみなされる仕組みです。
- レビュー・インフルエンサー施策の透明性——金銭や商品提供を伴う投稿依頼には「PR」等の広告明示を徹底し、依頼文面・投稿内容を記録します。モニター募集経由の投稿も対象になることが指導事例で示されています。
- 景品キャンペーンの上限管理——「購入者全員プレゼント」「抽選で○○が当たる」などの景品企画は、取引価額に応じた景品類の最高額・総額の制限内かを企画段階で確認します。
商材・販売モデル別の注意点
商材によって規制の重なり方は変わります。化粧品・健康食品は薬機法との二重チェックが前提になり、化粧品ECやサプリメントECでは「効果効能の表現範囲」と「景表法の根拠資料」の両方の管理が求められます。また、定期購入ECは初回価格の強調表示が有利誤認と改正特商法の両面で最も注意が集まる領域です。「初回500円」を大きく、定期縛りの条件を小さく表示する構成は、現在では真っ先に見直すべき類型といえます。年間の制度変更は2026年度の制度変更カレンダーで俯瞰できます。
指導事例から学ぶ社内体制づくり
指導事例に共通するのは「体制の不備」
公表資料には、命令に至らなかった指導事例の共通点も示されています。注目すべきは、指摘されているのが表示そのものだけでなく、「体制の不備」である点です。具体的には、景表法の考え方の周知啓発がない、法令遵守の方針が明確化されていない、景品類を管理する担当者を定めていない、不当表示が判明した場合の対応方針がない——といった項目が繰り返し挙げられています。有利誤認の指導事例では「ポスターの表示の根拠となる情報を確認していなかった」、ステマ関連では「モニター募集サイト経由で依頼した第三者の投稿を、根拠確認なしに抜粋して表示していた」といった具体例が紹介されており、悪意がなくても「確認していなかった」だけで指導対象になることがわかります。
整えるべき3つの体制
これを裏返すと、EC事業者が整えるべき体制は次の3点に集約されます。
- 表示管理の責任者を決める——商品ページ・広告・SNS投稿の公開前に表示をチェックする担当者を明確にします。兼任でも「誰が見るか」が決まっていることが重要です。
- 根拠資料の保管ルールを作る——性能データ・試験結果・販売実績など、表示の根拠を商品ごとにフォルダで一元管理し、求められたら即提出できる状態にします。
- 問題発覚時の対応手順を文書化する——誤表示が見つかった際の表示停止・修正・社内報告の手順をあらかじめ定めておきます。確約手続のような自主是正の枠組みを使えるかどうかも、初動の速さで決まります。
広告表示の管理は、受注・出荷のオペレーションと同じく「仕組み化」がすべてです。販促・表示まわりの管理に経営資源を割くためにも、出荷・在庫管理などの定型業務は物流の外注化で手離れさせる、という優先順位の付け方が中堅EC事業者の定石になりつつあります。
まとめ:表示の根拠管理は「攻めの販促」の土台
令和7年度の景品表示法運用状況は、措置命令13件・確約計画認定8件・課徴金納付命令10件(計3億3,940万円)・指導388件という内容でした。処分の中心は価格表示の有利誤認であり、ステマ告示の執行も本格化しています。EC事業者が取るべき対策は、二重価格の根拠確認、優良性表示の根拠資料保管、レビュー・インフルエンサー施策の広告明示、景品企画の上限管理の4点、そしてそれらを支える表示管理体制の整備です。根拠を管理できている事業者ほど、強い訴求を安心して使える——表示コンプライアンスは守りではなく、攻めの販促の土台です。
ネットショップ運営の全体像はネットショップ運営の体系ガイドで、EC物流を含む出荷体制の整備は発送代行の選び方とSTOCKCREWのサービスで確認できます。物流面のご相談はお問い合わせから、サービス資料は資料ダウンロードからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. 令和7年度の景品表示法の運用状況のポイントは何ですか?
消費者庁が2026年5月28日に公表した内容では、措置命令13件(優良誤認3・有利誤認8・原産国告示2)、確約計画の認定8件、課徴金納付命令10件・計3億3,940万円、指導388件でした。価格表示に関する有利誤認が最多で、ステルスマーケティング告示に関する確約認定が4件含まれる点が特徴です。
Q. 優良誤認と有利誤認の違いは何ですか?
優良誤認は商品の品質・性能を実際より著しく優れていると誤認させる表示で、根拠のない効果表現などが該当します。有利誤認は価格や取引条件を実際より著しく有利と誤認させる表示で、実績のない通常価格との二重価格表示や常態化したセール表示が典型例です。
Q. 課徴金はどのような場合に課されますか?
優良誤認表示・有利誤認表示を行った場合、原則として対象商品・サービスの売上額の3%にあたる課徴金の納付が命じられる可能性があります。令和7年度は10事業者に対して計3億3,940万円の納付命令が行われました。違反を自主申告した場合の減額制度などもあります。
Q. ステルスマーケティング規制ではECの何が対象になりますか?
事業者が第三者に依頼・対価提供して行わせた投稿やレビューのうち、広告であることが消費者に分からないものが対象です。インフルエンサーへの投稿依頼、モニター募集サイト経由のSNS投稿依頼、報酬付きレビュー依頼などが該当し、「PR」「広告」等の明示が求められます。
Q. 中小のEC事業者も摘発の対象になりますか?
対象になります。令和7年度は命令に至らない指導が388件と圧倒的に多く、公正取引委員会の地方事務所等の調査を踏まえた処分・指導も行われています。事業規模にかかわらず、表示の根拠資料の保管と表示チェック体制の整備を進めておくことが現実的な備えです。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。