物流会社ランキング【2026年最新版】大手12社の売上高比較と事業特性|海運・宅配・3PLの業界構造を徹底解説
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「物流会社のランキング」を調べる方には、大きく2つの目的があります。業界研究・就職活動のために「どの物流企業が規模として大きいか」を把握したいタイプと、EC事業者として「自社の発送・3PLを任せる会社を選びたい」タイプです。本記事はその両方にお答えします。前半では最新決算に基づく大手物流企業12社の売上高ランキングと各社の事業ポジショニング・特性比較を徹底解説し、後半では業界全体を揺るがす海外展開の背景・2024年問題の影響まで掘り下げます。
ランキングに登場する12社は、海運グループから宅配・3PL・EC物流特化型まで幅広い事業形態を持つ企業群です。月間数十〜数百件規模のEC事業者がこれらの大企業と直接取引できるケースは多くありません。業界全体の構造を把握した上で、自社に合った物流パートナー——EC特化型の発送代行——をどう選ぶかまで、この1記事で整理できます。
| # | 企業名 | 売上高 | 決算期 | 主事業 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | NIPPON EXPRESS HD | 2兆5,748億円 | 2025年12月期 | 総合物流・3PL |
| 2 | 日本郵船 | 2兆4,236億円 | 2026年3月期 | 海運・総合物流 |
| 3 | 日本郵政(郵便・物流) | 2兆808億円 | 2025年3月期 | 郵便・国際物流 |
| 4 | ヤマトホールディングス | 1兆8,656億円 | 2026年3月期 | 宅配・国際物流 |
| 5 | 商船三井 | 1兆8,250億円 | 2026年3月期 | 海運(バルク・タンカー) |
| 6 | SGホールディングス | 1兆6,447億円 | 2026年3月期 | 宅配・ロジスティクス |
| 7 | 川崎汽船 | 1兆183億円 | 2026年3月期 | 海運・フォワーディング |
| 8 | ロジスティード | 9,107億円 | 2025年3月期 | 3PL・フォワーディング |
| 9 | センコーグループHD | 8,996億円 | 2026年3月期 | 陸上輸送・3PL |
| 10 | SBSホールディングス | 4,903億円 | 2025年12月期 | 3PL・EC物流 |
| 11 | AZ-COM丸和HD | 2,305億円 | 2026年3月期 | EC常温物流・3PL |
| 12 | ハマキョウレックス | 1,555億円 | 2026年3月期 | 物流センター・運送 |
※各社の最新通期決算(有価証券報告書・決算短信)に基づきます。NIPPON EXPRESS HDはIFRS適用のため売上収益を記載。ロジスティードは2026年3月期通期未発表のため2025年3月期を使用。
2025〜2026年決算から読む物流業界の3断層
今回取り上げた12社の最新決算を横断すると、日本の物流業界が3つの異なる競争サイクルを同時進行させていることが鮮明になります。コロナ特需の反動で急速な正常化フェーズを迎えている海運型3社、料金適正化の浸透と構造改革で収益を取り戻しつつある宅配・総合物流型4社、そしてEC市場の構造的拡大を追い風に過去最高業績を更新し続ける3PL・EC物流特化型5社——この「3断層」が2025〜2026年の業界を分かつ最大の構図です。
| グループ | 代表企業 | 業績トレンド | 主要因 | 今後の焦点 |
|---|---|---|---|---|
| 海運型(3社) | 日本郵船・商船三井・川崎汽船 | 減収・減益基調 | コンテナ市況正常化・ONE依存・地政学リスク | 非海運事業の多角化・脱炭素投資 |
| 宅配・総合物流型(4社) | NX-HD・日本郵政・ヤマトHD・SG HD | 緩やかな増収・利益回復 | 料金適正化の浸透・構造改革効果 | AI経営・DX投資・グローバル展開 |
| 3PL・EC物流特化型(5社) | ロジスティード・センコー・SBS・AZ-COM丸和・ハマキョウ | 増収・最高益更新 | EC市場の構造的拡大・料金改定浸透 | 物流センター拡充・人材確保 |
断層①海運3社 — 「正常化」フェーズ(日本郵船・商船三井・川崎汽船)
日本郵船・商船三井・川崎汽船の海運3社は、コロナ禍(2020〜2022年)の巣ごもり需要急増によるコンテナ運賃の歴史的高騰が収束し、正常化(水準訂正)フェーズに入っています。3社が経由するOcean Network Express(ONE)のコンテナ事業利益は2023年度をピークに急落しており、2026年3月期は日本郵船の経常利益が前年比▲57%・商船三井の事業損益が前年4,132億円から1,686億円へ▲2,446億円の大幅減となるなど、その影響の大きさが数字に現れています。
さらに紅海・スエズ運河の通航リスク高騰により、喜望峰経由の迂回ルートが多発し、トン海里ベースの輸送量は増加したものの燃料費と航行日数が増大するという構造的なコスト上昇に直面しています。地政学リスクは短期で解消しない前提でのシナリオ設計が3社共通の課題です。各社は対応策として非海運事業の多角化を加速——日本郵船はヘルスケア物流(モビアント・インターナショナル買収)、川崎汽船はLNG・アンモニア燃料の次世代エネルギー輸送、商船三井はドライバルク・LNG船の長期契約拡大で、ONE依存度の低減を図っています。
紅海を経由する航路は2023年11月以降、フーシ派による攻撃リスクの高まりにより、コンテナ船各社が喜望峰迂回ルートに移行。欧州〜アジア間の輸送日数は約10〜14日延長し、輸送コスト・燃料費が大幅に増加するなど、国際物流のサプライチェーンに広範な影響が及んでいます。
断層②宅配・総合物流4社 — 「料金適正化定着」フェーズ(NX-HD・日本郵政・ヤマトHD・SG HD)
NX-HD・日本郵政・ヤマトHD・SGホールディングスの4社は、2023〜2024年にかけて進めてきた料金の値上げ・適正化の効果が2025〜2026年に本格的に利益へ反映し始めているフェーズです。ヤマトHDは2026年3月期の営業利益を前年比+99.2%(ほぼ倍増)と回復させ、SGホールディングスは売上+11.2%・営業利益902億円を達成しました。
ヤマトHDが掲げた「聖域なき見直し」は、宅急便の個建て単価引き上げ・AI活用による配送効率化・固定費圧縮の3本柱で構成されており、2027年3月期の営業利益420億円を目標に設定しています。ただし2026年3月期は期首計画399億円に対して実績283億円と116億円の未達——コスト削減ペースと価格競争のバランス管理が引き続き課題です。日本郵政は2024年10月の郵便料金値上げ(定形郵便25g以下:84円→110円)の効果が2025年度以降に本格寄与する見通しで、長期的な郵便物量減少のダウントレンドを補う収益構造が整いつつあります。NX-HDは欧州・アジアのM&A後の統合コスト消化フェーズにあり、低収益不動産の戦略的売却(計画1,500億円以上)で財務を引き締めながらグローバルネットワークの収益化を急いでいます。
断層③3PL・EC物流特化型5社 — 「EC追い風」成長フェーズ(ロジスティード・センコー・SBS・AZ-COM丸和・ハマキョウ)
ロジスティード・センコーGHD・SBSホールディングス・AZ-COM丸和HD・ハマキョウレックスの5社は、EC市場の構造的拡大を直接の追い風として受け、揃って増収増益を達成しています。SBS HDは売上・利益ともに過去最高(売上4,903億円+9.4%・営業利益213億円+20.3%・ROE12.7%)、AZ-COM丸和HDは売上+10.6%(2,305億円)、ハマキョウレックスは営業利益率9.5%という業界トップ水準の収益性を維持。センコーGHDは24期連続増収という驚異的な記録を更新しており、安定成長の象徴的存在です。
5社に共通するのは物流センター運営(倉庫保管・流通加工・出荷作業)を軸にした高付加価値化と、大手EC事業者との長期委託契約による安定収入モデルです。ハマキョウレックスの物流センター194拠点・AZ-COM丸和HDの「3PL&プラットフォームカンパニー」構想・SBS HDのEC物流とフォワーディングの複合展開——差別化軸はそれぞれ異なりますが、EC需要の恩恵を直接吸収できるポジショニングが高い成長率と収益性を支えています。「3PLとEC物流代行の違い」で各社のサービス区分を整理しています。
2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26兆1,654億円(前年24兆8,054億円・前年比+5.4%)に達しました。引き続き拡大傾向にあり、EC物流市場への波及効果も持続しています。
3断層が示す2026〜2027年の構造的テーマ
この3断層の分析から導かれる2026〜2027年の業界構造テーマは3つです。第一に非コンテナ収益の構築——海運3社にとって最優先の課題であり、ヘルスケア・LNG・バルクへの投資加速が継続する。第二に料金適正化の持続性——宅配・総合物流4社は値上げ効果の剥落後もコスト改善と付加価値化で利益を維持できるかが問われる。第三に3PL・EC物流の人材・拠点確保——成長が続く一方で、倉庫スタッフ不足と物流センター建設コストの上昇が収益性を圧迫するリスクが顕在化しつつある。物流業界全体の共通課題として2024年問題への対応とWMS・AMR活用による省力化投資の加速があり、「物流AIの活用事例2026年版」でも詳しく解説しています。
日本の物流企業ランキング12社(売上高順・2026年版)
日本を代表する物流企業12社を、最新決算の売上高(営業収益)の大きい順にご紹介します。各社の有価証券報告書・決算短信に基づく数値です。1位と12位の間には実に16倍以上の規模差があり、業界の多様性が際立ちます。
1位:NIPPON EXPRESSホールディングス(2兆5,748億円)
2025年12月期の売上収益は2兆5,748億円(前年2兆5,776億円からほぼ横ばい)。日本通運ブランドで知られる総合物流企業で、世界49カ国・312都市・739拠点で事業展開しています。2024年にはオーストリアのフォワーダーcargo-partner社をグループに加え、欧州ネットワークを大幅に強化しました。1,000路線以上の国際航空輸送と独自コンテナによる国際海上輸送を手がけ、グローバルサプライチェーンのコンサルティングサービスも提供しています。今回の12社ランキングでは初めて日本郵船を抜いて首位に立っており、総合物流の強さを示しています。
問題意識:売上がほぼ横ばい(▲0.1%)の背景には、海外M&A後の統合コストが収益の重荷となっていることがあります。2024年のcargo-partner社買収後のEMEA統合が進行中である一方、国内では低収益不動産事業の整理が急務となっていました。グローバル規模での管理コストの適正化と、M&A投資の早期回収が最大の課題です。
打ち手:低収益不動産の戦略的売却(計画額1,500億円以上)を実行し、間接コストの継続削減を推進しています。欧州ではcargo-partnerのネットワーク(欧州30カ国超)をNXグローバルネットワークに統合し、航空フレイトの競争力を強化。アジア圏においても3PL案件の積み上げを加速させています。
評価:売上横ばいでも収益構造の改善路線は明確であり、不動産売却益で得た資源をテクノロジー投資や海外展開に再配分できれば2026〜2027年の業績押し上げが期待できます。首位奪還の実績と欧州強化の進展から、総合物流企業として引き続き業界をリードするポジションにあります。
2位:日本郵船(2兆4,236億円)
2026年3月期の売上高は2兆4,236億円(前年2兆5,887億円から▲1,650億円・▲6.4%)。コンテナ船市況の軟化と、日本貨物航空(NCA)の非連結化が主な減収要因です。世界47カ国・595拠点で事業を展開し、日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社が共同設立したコンテナ船事業会社「Ocean Network Express(ONE)」は世界第6位の船隊規模を誇ります。2025年7月にはオランダの医薬品物流企業モビアント・インターナショナルを買収し、ヘルスケア物流への進出を加速させています。
問題意識:売上▲6.4%・経常利益▲57%という急激な落ち込みは、コンテナ運賃の正常化(コロナ特需の反動)が主因です。ONE経由でのコンテナ事業に収益が集中していた構造の脆弱性が露呈しており、市況感応度の高いビジネスモデルからの脱却が最優先の経営課題です。NCAの非連結化も減収要因として影響しました。
打ち手:ヘルスケア物流(モビアント・インターナショナル買収、2025年7月)で非海運の安定収益源を構築するとともに、物流・航空・客船の各セグメントの比率引き上げにより市況感応度の低い収益体質へのシフトを推進しています。ONE依存から「多脚化」する中期戦略を進行中です。
評価:コンテナ市況が回復局面に入れば業績は反転する見込みですが、ONE依存のリスクは構造的課題として残ります。ヘルスケア物流買収は中長期の収益多角化として評価できる一手であり、非海運事業の成長スピードが株式市場における再評価の鍵を握っています。
3位:日本郵政グループ 郵便・物流事業(2兆808億円)
日本郵政グループの郵便・物流事業の営業収益は2兆808億円(2025年3月期)。2024年10月の郵便料金改定(定形郵便物25g以下:84円→110円)の効果により、2025年度以降の収益改善が見込まれています。国際物流事業では、子会社「JPトールロジスティクス」を通じて世界50カ国・1,200拠点でフォワーディングやロジスティクスサービスを展開しています。なお、ゆうパックの取扱個数は前年度比2.1%増、ゆうパケットは16.1%増と小口物流は堅調に推移しています。「日本郵便の配送サービス徹底解説」でクリックポスト・ゆうパケット・ゆうパックの比較をご紹介しています。
問題意識:デジタル化の進展による郵便物量の長期的な減少が続く中、全国に張り巡らせた郵便局ネットワーク(約2万4,000局)と配送インフラの固定コストが収益を圧迫し続けています。2024年問題による配送コスト上昇も加わり、コスト構造の抜本的な見直しが迫られています。
打ち手:2024年10月の郵便料金改定(84円→110円・+31%)で収入基盤を強化するとともに、小口物流(ゆうパケット+16.1%・ゆうパック+2.1%)のEC需要取り込みを加速。JPトールロジスティクスを通じた国際物流50カ国・1,200拠点展開で非郵便収益を積み上げています。
評価:料金値上げ効果は2025年度以降に本格寄与する見通しで、郵便物量の減少をどこまで補えるかが中期業績の鍵です。ゆうパケットの16.1%増はEC需要の恩恵を受けており、国内小口物流×国際物流の組み合わせで中期的な収益安定化は可能とみられます。
4位:ヤマトホールディングス(1兆8,656億円)
2026年3月期の営業収益は1兆8,656億円(前年1兆7,626億円から+5.8%)。営業利益は283億円で前年比ほぼ倍増(+99.2%)となりました。ヤマト運輸ブランドの宅急便は国内シェアトップクラスです。海外では国際航空貨物・国際海上貨物・国際宅急便の3セグメントで事業展開し、25の国と地域を拠点に世界200以上の国・地域へのラストワンマイル配送を行っています。クロネコゆうパケットやネコポス(2025年2月に再開・クロネコゆうパケットと併存中)など小型商品向けサービスが充実しており、EC事業者にとって身近な配送キャリアです。「ヤマト運輸の配送サービスを物流会社が解説」で各サービスの料金と使い分けをご紹介しています。
問題意識:2026年3月期は営業利益が前年比+99.2%と大幅改善したものの、期首業績予想399億円に対して実績283億円と116億円の未達に終わりました。構造改革が道半ばであり、コスト削減ペースと価格競争のバランス管理・中計目標達成に向けた確実な実行力が問われています。
打ち手:経営トップ直轄の「聖域なき見直し」プロジェクトでAI活用・固定費圧縮・ネットワーク効率化を推進。宅急便単価の引き上げと国際物流の拡充を並行させ、2027年3月期の営業利益420億円を目標に設定しています。ネコポス再開(2025年2月)・クロネコゆうパケット推進でEC小口市場の取り込みも強化。
評価:増収増益(+5.8%・+99.2%)で構造改革の成果は確実に出始めており、方向性は正しいと評価できます。ただし期首計画未達は重視すべき点であり、2027年3月期の420億円目標達成が「転換点の確認」となる重要な指標です。AI経営への積極的な取り組みは中長期の競争力強化につながると見込まれます。
5位:商船三井(1兆8,250億円)
2026年3月期の売上高は1兆8,250億円(前年1兆7,754億円から+2.8%)。ドライバルク船(鉄鉱石・石炭・穀物)、油送船(原油・石油製品)、LNG船、自動車船など多様な船種を運航する海運大手です。ONEを通じて世界120カ国以上との輸送ネットワークを有し、LNG船事業ではエネルギー転換への対応を強化しています。2026年度は中東情勢の一過性費用などの影響を受けながらも、ドライバルク市況の回復が利益を下支えしました。
問題意識:事業損益が前年の4,132億円から1,686億円へ▲2,446億円という大幅減が最大の課題です。コンテナ(ONE)の高利益が消えた穴をバルク・タンカーでどう補完するかが喫緊の問題であり、地政学リスクも航路コストを押し上げ続けています。自動車船事業も中東情勢悪化の影響を受けており、複数セグメントが同時に逆風にさらされています。
打ち手:ドライバルク船・油送船・LNG船の多角化を継続し、長期契約ベースの安定収益を積み上げる戦略を推進。LNG船でエネルギー転換(脱炭素)需要を取り込み、中東・アジア間の航路リスク分散も進めています。バルク市況の回復局面での営業力強化に注力中です。
評価:売上+2.8%(1兆8,250億円)は維持したものの事業損益の急落は深刻です。ただしバルク市況の回復が進めば2027年3月期の反転は十分可能であり、LNG長期契約の積み上げで収益の安定化基盤は着実に強化されています。ONE依存からの脱却が中長期の構造的安定化の鍵です。
6位:SGホールディングス(1兆6,447億円)
2026年3月期の営業収益は1兆6,447億円(前年1兆4,792億円から+11.2%)。佐川急便ブランドの宅配便でヤマトと双璧をなす存在です。営業利益902億円・利益率5.5%を達成し、期首業績予想通りの着地となりました。越境ECの取り込みによるデリバリー事業の取扱個数増加と、Morrison社のグループ化完了がポジティブに寄与しています。「佐川急便の配送サービスを物流会社が解説」で各サービスの料金と使い分けをまとめています。
問題意識:グローバル物流子会社(エクスポランカ社・スリランカ)の業績悪化が利益圧迫要因として表面化しており、海外展開リスクの管理体制の強化が求められています。国内では人件費・燃料費の高騰が収益構造を厳しくしており、料金適正化の継続と生産性改善のバランスが課題です。
打ち手:Morrison社(豪州)のグループ化完了で越境EC物流を強化するとともに、国内では料金適正化を継続。デリバリー事業の取扱個数増加とロジスティクス事業の高付加価値化で増益を確保しています。SGホールディングスのグローバルネットワーク(30の国と地域)を活用した越境EC需要の取り込みを加速させています。
評価:売上+11.2%・営業利益902億円・利益率5.5%は12社中でも際立った好業績です。エクスポランカ問題は管理可能なリスクとして継続注視が必要ですが、越境ECの取り込みで国際部門の重心が高まれば2027年以降のさらなる成長加速が見込まれます。
7位:川崎汽船(1兆183億円)
2026年3月期の売上高は1兆183億円(前年1兆479億円から▲2.8%)。コンテナ船事業(ONE経由)に加え、航空・海上貨物のフォワーディング、陸上輸送、倉庫・貨物混載事業にも注力しています。自動車船事業が中東情勢悪化による配船効率低下と運航費用増で苦戦し、製品物流セグメントの経常損益が前年比大幅減となりました。カーボンニュートラル推進事業やLNG燃料事業など、脱炭素社会に向けた新規ビジネスの開拓も進めています。
問題意識:自動車船事業が中東情勢悪化による配船効率低下と運航費用増で苦戦し、製品物流セグメントの収益が大幅に悪化しています。コンテナ事業はONE経由のため直接的なコントロールが限られており、市況変動への独自の対応手段が限定的である点が構造的な課題です。
打ち手:カーボンニュートラル推進事業(LNG燃料・アンモニア燃料対応船舶)への積極的な先行投資で次世代収益源を構築。フォワーディング・陸上輸送・倉庫業などノンアセット型事業の比率を高め、市況感応度の低い安定収益体質へのシフトを推進しています。
評価:売上▲2.8%と3社の中では比較的小幅の落ち込みに留まっています。自動車船の回復時期が不透明な点は懸念材料ですが、カーボンニュートラル推進事業への先行投資は中長期的な競争優位性につながる可能性があり、評価は中立から慎重なポジティブです。
8位:ロジスティード(9,107億円)
2025年3月期(FY2024)の売上収益は9,107億円(前年比+12%)。旧社名「日立物流」から2023年4月に商号を変更し、KKR(Kohlberg Kravis Roberts)との強固なパートナーシップのもと「グローバル3PLリーディングカンパニー」をめざしています。2024年10月に(株)アルプス物流を連結化し、国内物流事業をさらに強化しました。国内物流(4,776億円)と国際物流(4,189億円)の2本柱体制で、3PL事業・フォワーディング事業・重量機工事業を展開しています。なお2026年3月期通期は5月時点で未発表(Q3累計7,384億円・前年同期比+10%)です。
問題意識:KKR傘下での大規模M&A(アルプス物流連結化等)の統合コストが収益を一時的に圧迫しており、「投資フェーズ」から「回収フェーズ」への移行を加速させることが優先課題です。旧社名「日立物流」からの認知転換も引き続き取り組むべき課題として残っています。
打ち手:2024年10月のアルプス物流連結化で国内物流基盤を強化し、56カ国以上の国際ネットワークを活用した越境EC・グローバルサプライチェーン案件の獲得を推進。KKR資本を背景にDX投資(WMS高度化・AMR導入)を継続しており、「グローバル3PLリーディングカンパニー」の実現を目指しています。
評価:2025年3月期+12%増収・2026年3月期Q3累計+10%継続と高い成長性を維持しており、中長期の成長ポテンシャルは12社中でも高いグループに位置します。2026年3月期通期確定値(5月時点未発表)が次の評価材料となりますが、Q3ペースが継続すれば前年比10%超の増収が視野に入ります。
9位:センコーグループホールディングス(8,996億円)
2026年3月期の売上高は8,996億円(前年8,545億円から+5.3%)で、24期連続増収を達成しました。営業利益370億円(+5.9%)で利益率は4.1%です。トラック輸送・3PL・ロジスティクスを主力とする中堅物流グループとして、拡販・料金改定・M&Aの三位一体戦略を推進しています。2027年3月期には初の売上高1兆円超(1兆200億円)を予想しており、25期連続増収・18期連続経常増益を見込んでいます。
問題意識:2027年3月期の売上高1兆円(初の大台超え)達成を目指す中、慢性的なドライバー不足と人件費の上昇が最大の構造的リスクです。2024年問題(ドライバー時間外労働規制)により輸送キャパシティの確保が難しくなっており、人員確保・生産性向上の取り組みが計画実現の可否を左右します。
打ち手:「拡販・料金改定・M&A」三位一体戦略を継続し、M&Aによる事業領域拡大と料金改定による単価向上を同時並行で推進。2027年3月期の売上高1兆200億円・18期連続経常増益を計画し、財務規律を維持しながら成長を続けています。
評価:24期連続増収という記録は業界で突出した安定性を示しており、経営の一貫性は高く評価できます。2027年3月期の1兆円超達成は有力視されており、三位一体戦略の実行力と財務健全性を兼ね備えた物流業界屈指の長期成長企業です。
10位:SBSホールディングス(4,903億円)
2025年12月期(2025年度)の売上高は4,903億円(前年4,481億円から+9.4%)で、過去最高の売上高を更新しました。営業利益は213億円(+20.3%)、当期純利益も118億円(+22.5%)と過去最高を達成しています。物流事業(4,602億円)と不動産事業(193億円)の2本柱で、物流事業は新規顧客獲得と料金適正化の推進が増益に寄与しました。EC事業者向けの3PL・フォワーディング・宅配ラストワンマイルに注力しており、2026年度も売上高5,100億円(+4.1%増)・25年連続増収を見込んでいます。
問題意識:過去最高の売上・利益を更新したことで「守り」の経営が問われる局面に入っています。グローバル物流子会社の安定化と、物流×不動産の複合事業モデルを今後どう発展・拡張させるかが中期的な戦略課題です。ROE12.7%という高水準を持続できるかが市場からの評価基準となります。
打ち手:新規顧客獲得と料金適正化を柱に物流事業(4,602億円)の収益基盤を拡大。EC事業者向け3PL・フォワーディング・ラストワンマイルに集中し差別化を追求しています。2026年度売上5,100億円・25年連続増収を計画し、安定成長路線を維持します。
評価:売上+9.4%・営業利益+20.3%・ROE12.7%は業界ベストクラスの財務指標であり、EC物流に特化した事業モデルの強さが数字に表れています。2026年度も力強い成長が見込まれており、5,000億円の壁を超えて次の成長ステージへの布石となる重要な1年です。
11位:AZ-COM丸和ホールディングス(2,305億円)
2026年3月期の売上高は2,305億円(前年2,084億円から+10.6%)。EC常温3PL事業(741億円)・EC常温輸配送事業(612億円)・ラストワンマイル事業(389億円)が主力事業で、大手ネット通販会社向け物流センター運営に強みを持つEC物流特化型の企業です。営業利益率5.1%・自己資本比率40.1%と財務健全性も高く、「3PL&プラットフォームカンパニー」として2030年度売上高5,000億円のビジョンを掲げています。医薬・医療3PL事業(266億円)にも積極的に展開しており、EC以外の成長分野にも注力しています。
問題意識:大手ネット通販会社向け物流への依存度の高い事業構造から脱却し、医薬・医療3PLや食品物流など複数の成長エンジンを構築することが中期的な課題です。2030年度5,000億円ビジョン達成に向けた人材確保と拠点拡大コストの管理も焦点となっています。
打ち手:EC常温3PL・ラストワンマイルの深耕と並行して医薬・医療3PL(266億円)を育成し、EC依存度の低減を図っています。財務健全性(自己資本比率40.1%)を維持しながら年率10%超の成長を継続し、2030年度5,000億円の長期ビジョンへの投資を行っています。
評価:+10.6%増収・自己資本比率40.1%・営業利益率5.1%とバランスよく成長しており、EC物流特化の恩恵を受けながら医薬3PLで非EC依存を高める戦略は堅実です。2030年5,000億円ビジョンは年率約12%の成長継続が必要ですが、直近の成長率はそれを上回るペースにあります。
12位:ハマキョウレックス(1,555億円)
2026年3月期の売上高は1,555億円(前年1,467億円から+6.0%)。物流センター事業(1,009億円)と貨物自動車運送事業(546億円)の2本柱で運営するEC物流・3PL特化型の物流企業です。営業利益率9.5%は業界トップクラスの高収益水準であり、物流センター194拠点での運営ノウハウと高い生産性が強みです。2026年度も15社の新規物流センターを受託しており、着実な成長を続けています。
問題意識:売上規模(1,555億円)では12社中最小ですが、業界トップ水準の営業利益率9.5%を誇る高収益企業です。規模の小ささから人材採用競争力や認知度で大手に劣るため、物流センター新規受託の継続的な獲得が売上成長の生命線となっています。人手不足・建設コスト上昇への対応も課題です。
打ち手:2026年度は新規物流センター受託15社を計画し、高収益の物流センター事業(1,009億円)のシェア拡大を推進。物流センター194拠点で蓄積したオペレーション・ノウハウと高い生産性を武器に競争入札で大手に対抗し、既存センターの生産性向上も継続的に取り組んでいます。
評価:売上+6.0%・営業利益率9.5%は業界屈指の実績で、規模の拡大よりも収益性の維持を優先する経営方針は持続可能性が高く評価されます。新規受託15社が順調に立ち上がれば2027年3月期の増収基調は継続する見通しです。小さく強い物流企業として業界の中で独自の地位を確立しています。
ランキングの読み方:3タイプで理解する物流企業の特性
12社は事業の性質から3タイプに分類できます。宅配・総合物流型(NIPPON EXPRESS HD・日本郵政・ヤマトHD・SGホールディングス)は国内の商品流通・EC物流に深く関わり、配送キャリアとしてEC事業者と最も接点を持ちます。海運型(日本郵船・商船三井・川崎汽船)はコンテナ船・バルク船・タンカーが主体で、EC事業者とは海外仕入れや輸出時を除いて直接接点がありません。3PL・EC物流特化型(ロジスティード・センコーGHD・SBSホールディングス・AZ-COM丸和HD・ハマキョウレックス)は国内の保管・配送・流通加工に強みを持ち、EC物流の委託先として検討しやすい選択肢です。
12社の事業ポジショニングと特性比較
12社を「地理的展開(国内特化 ↔ グローバル)」と「事業特性(宅配・EC ↔ 産業物流・海運)」の2軸でマッピングすると、各社の競争ポジションが立体的に見えてきます。同じ「物流」というカテゴリに属しながら、ビジネスモデル・主要顧客・収益構造はまったく異なる企業群が共存しているのが日本の物流産業の特徴です。
4象限で読む業界の競争構造
右上象限(グローバル×宅配・総合)にはNIPPON EXPRESS HD・ヤマトHD・SGホールディングス・日本郵政が位置します。国内に確立した宅配ネットワークを足場に海外展開を推進中で、EC荷物の取扱い増加と料金適正化による単価向上が共通の成長ドライバーになっています。
右下象限(グローバル×産業物流・海運)は日本郵船・商船三井・川崎汽船・ロジスティードが集まります。コンテナ船・LNG船・ドライバルクという異なる船種に強みを持ち、市況サイクルに収益が大きく左右されます。2024〜2026年は「コロナ特需の正常化」フェーズにあり、次の収益ピークをどこに設定するかが各社の経営課題です。
左上象限(国内×EC特化)にはAZ-COM丸和・SBSホールディングスが位置し、EC物流専門の3PL企業として注目されています。売上規模は上位勢に比べ小さいものの、成長率と利益率では12社中トップクラスを誇ります。
左下象限(国内×3PL)のセンコーグループ・ハマキョウレックスは、陸上輸送・物流センター運営を軸に安定した国内基盤を持ちます。2024年問題への対応としてドライバー労働条件の改善とデジタル化を進めており、地方物流の守り手として重要な役割を担っています。
12社の事業特性比較マトリクス
| 会社名 | タイプ | 売上規模 | 地理的展開 | 主要顧客 | 収益の特徴 | 注目ポイント(2026) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| NIPPON EXPRESS HD | 総合物流 | 2.6兆円 | 49カ国 | 製造業・商社・BtoB | 安定型、IFRS適用 | 欧州M&A統合・不動産売却益活用 |
| 日本郵船 | 海運 | 2.4兆円 | 47カ国 | 荷主・資源会社 | 市況連動、ONE依存 | 非コンテナ多角化・脱炭素投資 |
| 日本郵政(物流) | 総合・国際 | 2.1兆円 | 50カ国 | 個人・法人双方 | 郵政基盤+国際物流 | Toll統合深化・EC荷物増加 |
| ヤマトホールディングス | 宅配 | 1.9兆円 | 25の国・地域 | EC事業者・個人 | 宅配便値上げ定着 | 法人向け構造改革・黒字安定化 |
| 商船三井 | 海運 | 1.8兆円 | 120カ国以上 | エネルギー・資源会社 | LNG・バルク多角化 | LNG長期契約×脱炭素 |
| SGホールディングス | 宅配・物流 | 1.6兆円 | 30の国・地域 | EC事業者・法人 | 高利益率5.5% | 越境EC・Morrison社グループ化 |
| 川崎汽船 | 海運 | 1.0兆円 | グローバル | 荷主・エネルギー会社 | 市況依存、LNG案件積上げ | コンテナ正常化後の収益モデル |
| ロジスティード | 3PL・フォワーダー | 9,107億円 | 56カ国以上 | 製造業・流通 | 日立製作所傘下から独立系へ | グローバル3PL強化・M&A |
| センコーグループHD | 陸運・3PL | 8,996億円 | アジア中心 | 食品・流通・製造 | 安定成長型 | 2024年問題対応・ドライバー確保 |
| SBSホールディングス | EC物流・3PL | 4,903億円 | アジア中心 | EC事業者・流通 | 高成長・アジア拡大 | 国内EC拡大+アジア物流展開 |
| AZ-COM丸和HD | EC物流特化 | 2,305億円 | 国内中心 | EC事業者(大手D2C) | 高成長・高利益 | ラストワンマイル自動化 |
| ハマキョウレックス | 物流センター・陸運 | 1,555億円 | 国内中心 | 食品・製造・流通 | 安定・堅実型 | センター受託拡大・省人化 |
規模差16倍——それでも共通する3つの構造的課題
売上高2.6兆円のNIPPON EXPRESS HDから1,555億円のハマキョウレックスまで16倍以上の規模差がありながら、12社が共通して直面する構造的課題があります。
第一はドライバー・作業員の確保と2024年問題への対応です。時間外労働の上限規制は陸上輸送を手がける全企業に影響し、賃上げ原資の確保と生産性向上の同時推進が求められます。第二はテクノロジー投資とAI・自動化への対応で、AMR・自動倉庫・AI需要予測の導入競争が各社の競争力を左右するようになっています。第三は脱炭素・ESG対応であり、特に海運各社にとってはLNG燃料船・アンモニア燃料への転換コストが中長期の財務負担として重くのしかかります。
物流企業の海外展開が進む3つの背景
荷主企業のグローバルサプライチェーン構築
荷主企業が生産拠点や販売拠点を国外に移転する動きに伴い、現地での保管・荷役・流通加工・包装といった総合的な物流機能へのニーズが急速に増加しました。特に中国をはじめとするアジア圏での物流需要の高まりは顕著で、グローバルサプライチェーンの構築が荷主企業の急務となっています。その物流基盤を提供する役割として、国内の大手物流企業への期待が高まっています。
日本流ロジスティクスの国際競争力
時間に正確、誤配送が極めて少ない、小回りが効く、作業が丁寧——日本の物流サービスの品質は世界でも非常に高く評価されています。このサービスとノウハウを国外に輸出し、大幅な収益増を狙う戦略として大手を中心に海外展開が加速しました。ピッキング精度の高さに代表される日本の物流品質は、海外市場でも差別化要因になっています。「ロジスティクスと物流の違い」を理解しておくと各社の戦略が見やすくなります。
国内人口減少への中長期対応
日本の人口減少は今後世界に類を見ない速度で進行します。国内物流需要の長期的な縮小を見越し、M&Aも含めた海外拠点の充実が物流業界全体の中長期戦略となっています。「物流業界の未来2026年版」でロジスティクス1.0〜4.0の変遷と将来ビジョンをまとめています。
物流企業を取り巻く構造変化と2024年問題
2024年問題の影響と2026年4月の法改正
2024年4月のドライバー時間外労働規制(年間960時間上限)は、国内物流企業に構造的な変化を迫っています。さらに2026年4月には改正「物流効率化法」が施行され、年間出荷量が一定以上の荷主には物流効率化計画の策定と報告が義務づけられました。
何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足の可能性があります。荷主企業・物流事業者・一般消費者が協力して我が国の物流を支えるための環境整備に向けて、抜本的・総合的な対策の策定が求められています。
輸送能力の不足を補うために、倉庫内の自動化投資・モーダルシフト(トラック→鉄道・船舶への転換)・共同配送の推進が加速しています。大手物流企業はAMRや自動梱包機への設備投資を進めており、「物流倉庫の建設ラッシュ」の背景にもこうした投資加速があります。
地政学リスクとサプライチェーンの再編
ロシア・ウクライナ情勢や中東の紛争に起因するサプライチェーンの分断は、航路の変更・燃料価格の高騰・保険料の上昇など、物流企業のコスト構造に直接的な影響を与えています。紅海・スエズ運河の通航リスクの高まりにより喜望峰経由の迂回ルートを取るケースが増え、海運大手3社の輸送コストは変動幅が大きくなっています。EC事業者にとっても、海外仕入れのコスト変動は利益率に直結する問題です。「EC事業者のための海外仕入れ物流ガイド」でコンテナ輸送・航空輸送・輸入通関の実務を整理しています。
EC市場の拡大と物流のDX
EC市場の拡大に伴い、BtoC物流の件数は増加の一途をたどっています。ヤマトやSGホールディングスといった宅配大手にとって、EC物流は今後も成長が見込める事業領域です。AZ-COM丸和HDのようなEC物流特化型企業が毎期10%超の増収を続けていることからも、EC物流需要の旺盛さが確認できます。
2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年24.8兆円、前年比5.1%増)に拡大しました。BtoB-EC市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前年比10.6%増)となり、商取引の電子化が引き続き進展しています。
この課題を解決するためにWMS(倉庫管理システム)やAMRの導入が急速に進んでいます。国土交通省の発表によると2025年4月の宅配便再配達率は約8.4%まで低下しており、2024年問題を受けた業界全体の改善努力が数字に表れ始めています。「物流DXの活用事例」は業界全体の最重要テーマになっており、「物流IoT・DXの最前線」でWMS・AMR・RFID・TMS・画像AIの5大技術の全体像をつかめます。
物流業界の将来展望
物流業界は今後5〜10年でさらに大きな構造変化が予想されています。自動運転トラックの商用化が中長距離の幹線輸送から実用化が進む見込みで、2024年問題の根本解決につながる可能性があります。ドローン配送の実用化が山間部や離島の物流課題を解決する可能性も注目されています。物流データのオープン化・標準化が進むことで、荷主・倉庫・配送会社間のシームレスなデータ連携が実現し、サプライチェーン全体の可視性が飛躍的に向上するでしょう。「物流AIの活用事例2026年版」で需要予測やWMS自動化の最新動向もまとめています。
まとめ:物流会社ランキングの正しい使い方
今回取り上げた12社は、売上規模・事業モデル・地理的展開・収益構造のいずれをとっても大きく異なります。売上高首位のNIPPON EXPRESS HD(2.6兆円)は総合物流のグローバル展開を推進し、EC物流特化型のAZ-COM丸和(2,305億円)は国内EC荷物の成長を高収益で取り込んでいます。一方で日本郵船・商船三井・川崎汽船の海運3社はコンテナ市況の正常化フェーズを乗り越え、非コンテナ事業や脱炭素投資で次の収益サイクルを準備しています。
業界研究・就職活動においてこのランキングを活用する際は、「売上高の順位」だけでなく「どの市場でどのビジネスモデルで稼ぐか」という事業特性の違いを理解することが重要です。海運企業と宅配企業とEC物流特化企業では、求められるスキルセット・キャリアパス・収益サイクルがまったく異なります。また投資家・アナリストの視点では、市況連動型(海運)と安定成長型(宅配・3PL)の組み合わせが、物流セクター内でのポートフォリオ設計に示唆を与えます。
荷主企業(製造業・商社・小売等)として物流パートナーを探している場合は、自社の貨物特性・地域・ボリュームに合わせて12社の事業特性を参照してください。月間数十〜数百件規模のEC事業者については、本ランキング12社との直接取引よりも、これらの大手の配送網を間接利用するEC特化型の発送代行サービスが実務的な選択肢になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 業界研究・就職活動で物流企業を見るとき、どの指標を重視すればよいですか?
売上高ランキングだけでなく、営業利益率・海外売上比率・事業タイプを組み合わせて見ることをお勧めします。海運企業は市況サイクルで利益が大きく変動するため、5年以上のトレンドで評価するのが適切です。一方、宅配・3PL企業は安定した利益率を持つ傾向があり、料金適正化と自動化投資が利益率改善の鍵になっています。EC物流特化型(AZ-COM丸和・SBSなど)は高成長・高利益率で、EC市場の拡大とともに注目度が増しています。
Q. 海運企業(日本郵船・商船三井・川崎汽船)と宅配企業(ヤマト・SGホールディングス)は何が違いますか?
海運企業は「船舶で大量の貨物を世界中に運ぶ」ビジネスで、コンテナ船市況・燃料費・地政学リスクに収益が大きく左右されます。宅配企業は「個人・法人宛ての小口荷物を日本国内で届ける」ビジネスで、EC市場の成長とともに需要が安定して増加しています。就職先として選ぶ場合、海運は国際的な業務・英語力を求められる場面が多く、宅配は国内ネットワーク運営・ラストマイルのオペレーション力が中心になります。
Q. 3PLとは何ですか?なぜ近年注目されているのですか?
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)とは、荷主企業に代わって倉庫管理・在庫管理・出荷・配送のすべてを代行する物流アウトソーシングサービスです。近年、EC市場の急拡大・2024年問題によるドライバー不足・自動化投資の必要性が重なり、自社物流から3PL委託に切り替える企業が増えています。ランキング上位のロジスティード・センコーはBtoB大口向け、AZ-COM丸和・SBSはEC特化型の3PLとして急成長しています。
Q. 物流企業の売上高ランキングはなぜ毎年変動するのですか?
最大の変動要因は海運市況です。日本郵船・商船三井・川崎汽船はコンテナ船運賃の変動に連動して売上高・利益が大きく変わります。2021〜2022年はコロナ禍の港湾混雑で運賃が歴史的高値となり、2023〜2025年は正常化で大幅に低下しました。今回の2026年版で日本郵船が首位からNIPPON EXPRESS HDに抜かれた背景にも、この海運市況の正常化があります。宅配・3PL企業の変動は比較的穏やかで、M&Aや料金改定が主な変動要因です。
Q. 2024年問題は大手物流企業にどのような影響を与えていますか?
2024年4月のドライバー時間外労働規制(年間上限960時間)により、陸上輸送を主力とするヤマト・SG・センコー・ハマキョウなどでは輸送能力の制約が顕在化しています。各社の対応策は主に3方向です。①料金値上げ(単価向上で収益を確保)、②自動化・省人化投資(AMR・自動倉庫・AI仕分け等)、③共同輸送・モーダルシフト(幹線輸送を鉄道・船舶に切り替えてドライバー依存を下げる)。国土交通省の試算では2030年に輸送力が約34%不足する可能性があり、業界全体での構造改革が急務となっています。
この記事の監修者
北原一樹
株式会社KEYCREW オペレーション部長。大手物流会社にて現場担当からセンター長を経て、営業・管理職を12年間歴任。物流業界での経験は24年に及ぶ。大規模顧客の初のEC・DCが併設された10,000坪規模の大型倉庫の立ち上げを主導した実績を持ち、月間100Mの赤字を抱えていた物流センターをわずか3か月で黒字化に転換させた。現在はSTOCKCREWにおいて部門管理・各拠点の収支管理・業務改善を統括。「現地・現物」「数字で現場を見る」「何事にも基準を作る」を信条に、年間5千万点の入出荷を支える高品質な物流オペレーションを実現している。