HSコードの調べ方ガイド2026年版|越境EC事業者が知るべき関税番号の仕組み・検索手順・誤申告リスク
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越境ECに取り組むEC事業者にとって、HSコード(関税番号)の正確な把握は避けて通れません。誤ったHSコードを申告すると、輸出入の遅延・課税ミス・最悪の場合は罰則対象になるリスクがあります。特に2025年8月にデミニミス制度が全世界対象で撤廃されて以降、小口輸出入であっても正確なHSコード申告が求められるようになりました。
本記事では、HSコードの基本的な仕組みから、税関・JETROを使った調べ方の手順、商材別の分類事例、誤申告リスクと対策、越境EC事業者がHSコードを効率的に管理する実務ノウハウまでを体系的に解説します。発送代行の活用との連携についても触れます。
HSコード(関税番号)とは何か
HSコードの定義と国際的な位置づけ
HSコード(Harmonized System Code)とは、世界税関機構(WCO)が定める国際的な商品分類コードです。「HS番号」「関税番号」とも呼ばれ、輸出入される商品をすべて6桁の数字で分類します。現在200以上の国・地域が採用しており、越境EC・国際貿易のほぼすべての場面でHSコードが使われています。
HSコードは商品の種類だけでなく、適用される関税率・輸入規制・検疫要件を決定する役割も担います。同じ商品でも申告するHSコードが異なれば、関税率が大きく変わることがあります。
HSコードの桁数と各桁の意味
HSコードは国際共通の6桁を基本とし、各国が独自に細分化して8〜12桁まで拡張しています。日本では税関が「実行関税率表」において9桁(輸入)・6桁(輸出)のコードを管理しています。
HSコードの上位6桁は世界共通です。7桁以降は各国が独自に設定するため、輸出先国のHSコードと日本のHSコードは必ずしも一致しません。越境ECでは輸出国・輸入国それぞれのHSコードを確認する必要があります。
なぜHSコードが越境ECで重要なのか
越境ECの成長とともに、HSコードの重要性は年々高まっています。日本の越境EC市場規模は拡大を続けており、輸出入の件数増加に伴い税関申告の正確性が厳しく問われるようになっています。
経済産業省の調査によると、日本のBtoC-EC市場規模は令和6年度(2024年度)に26兆1,654億円に達し、越境ECを含む電子商取引の普及が物流・通関業務に与える影響は引き続き拡大している。
HSコードの調べ方3ステップ
ステップ1:商品の特徴を整理する
HSコードを調べる前に、輸出入する商品の特徴を整理します。分類に影響する主な要素は次のとおりです。
- 素材・材質:綿・ポリエステル・革・金属・プラスチックなど
- 用途・機能:食用・工業用・医療用・装飾用など
- 形状・加工状態:原材料・半製品・完成品の区別
- 重量・容量:単位や容量が分類に影響する商品がある(食品・飲料など)
ステップ2:税関またはJETROのデータベースで検索する
日本でHSコードを調べる主な方法は2つあります。
まず、日本税関(customs.go.jp)が公開する「実行関税率表」です。輸入申告に必要な9桁コードとその関税率が掲載されており、キーワード検索機能も備えています。「品目分類照会」機能では税関相談官に分類の確認を依頼することも可能です。もう一つはJETRO(日本貿易振興機構)の貿易・投資相談データベースです。輸出先国別の関税率や規制情報もまとめて調べられます。
| 調べ方 | 主な情報源 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 税関データベース | 日本税関(customs.go.jp) | 日本の輸入9桁コード・実行関税率を一覧確認 | 日本への輸入・輸出の一次確認 |
| JETRO 照会 | JETRO(jetro.go.jp) | 輸出先国別の関税率・規制・認証要件を横断確認 | 越境ECで複数国に販売する場合 |
| 通関業者・3PL | 専門会社に依頼 | グレーゾーン商品の判断、税関照会も代行 | 化粧品・食品・医療機器など規制商品 |
| AIツール・DB | 各種SaaS(Avalara等) | 商品名・説明文から候補コードを自動提案 | 大量SKUの一次スクリーニング |
ステップ3:税関照会・相談で確定する
自社で調べた結果に確信が持てない場合や、グレーゾーンの商品については税関への事前照会(品目分類照会)を活用します。書面または電子申請で照会でき、回答が「事前教示書」として交付されます。事前教示書があれば、輸入時にその分類が認められる(有効期限あり)ため、通関トラブルを防ぐ最も確実な手段です。
事前照会は無料ですが、回答まで数週間かかることがあるため、輸出入の開始前に余裕をもって申請することが重要です。
商材別・業種別のHSコード分類事例
越境ECで頻出する商材のHSコード例
以下は越境ECでよく取り扱われる商材のHSコード(国際共通6桁)の代表例です。各国で7桁以降が異なるため、輸出先国の税関・JETROで最終確認が必要です。
| 商材カテゴリ | 具体的な商品例 | HSコード(6桁) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 化粧品・スキンケア | フェイスクリーム | 3304.99 | 成分・効能表示で分類が変わる場合あり |
| 化粧品・スキンケア | リップ・口紅 | 3304.10 | 医薬部外品は別途確認が必要 |
| 健康食品・サプリ | プロテインパウダー | 2106.10 | 成分比率で分類が変わる。輸入規制に注意 |
| 健康食品・サプリ | ビタミンサプリメント | 2936.xx | 成分により号が分かれる。医薬品と判断される国も |
| アパレル・衣料 | 綿製Tシャツ(男性用) | 6109.10 | 素材比率(50%以上の主成分)で分類 |
| アパレル・衣料 | スポーツシューズ | 6404.11 | 甲材と底材の素材で類・項が変わる |
| 電子機器・ガジェット | スマートフォン | 8517.12 | 各国で関税率が大きく異なる。認証取得も必要 |
| 電子機器・ガジェット | ワイヤレスイヤホン | 8518.30 | 電波規制・技術基準適合証明を要する国がある |
| 雑貨・生活用品 | 陶磁器の食器 | 6911.10 | 材質(磁器・陶器)で分類が異なる |
| 食品 | レトルト食品(カレー) | 2106.90 | 成分・製法・保存方法で号が変わる場合あり |
HSコード分類が特に難しい商材
以下の商材は分類判断が特に難しく、専門家への相談を強く推奨します。
- 複合素材アパレル:綿とポリエステルの混紡など、主成分の割合が分類を決定する
- 機能性食品・サプリメント:食品(第21類)か医薬品(第30類)かの境界が国によって異なる
- スマートデバイス:通信機器・コンピュータ・家電のいずれに分類されるかが関税率に直結する
- 化粧品・医薬部外品:訴求する効能・成分表示の違いで規制カテゴリが変わる
判断に迷う商材については、越境EC対応の3PL・通関業者に相談することが最もリスクの少ない選択肢です。
HSコードの誤申告が引き起こすリスク
税関でのリスク
HSコードの誤申告(ミスコーディング)は、EC事業者にとって深刻な影響をもたらします。主なリスクは次の4点です。
- 関税の過不足:正しいコードに比べて関税率が低い場合は追徴課税、高い場合は過払いが生じる
- 輸入差し止め・廃棄:規制対象品目に該当するコードを誤申告すると、荷物が差し止められ、最悪廃棄処分になる
- 通関遅延:税関の精査が入り、出荷から配達までのリードタイムが大幅に延びる
- 罰則・制裁:故意の虚偽申告は各国の関税法・貿易規制法による罰則対象となる
EC事業者の評判リスク
通関遅延は顧客への配達遅れに直結します。特にAmazon・越境ECモールを通じた販売では、遅延や返送が増加することで出品者評価が低下し、販売継続に影響が及ぶことがあります。
| リスク | 発生確率 | 影響度 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 関税の過不足 | 中 | 中(コスト影響) | 税関データベースで事前確認・定期見直し |
| 輸入差し止め | 低(規制品のみ) | 高(在庫損失) | 事前教示・通関業者に依頼 |
| 通関遅延 | 中〜高(不注意申告) | 高(顧客クレーム) | HSコードマスタを整備し、商品登録時に固定 |
| 罰則・制裁 | 低(悪意ある場合) | 極高(事業継続性) | 専門家確認・事前照会の取得 |
デミニミス制度撤廃後のHSコード重要性
デミニミス制度とは何だったか
デミニミス制度(De minimis)とは、一定金額以下の輸入品に対して関税・VAT(付加価値税)の徴収を免除する制度です。米国では800ドル、EUでは22ユーロ(旧制度)の閾値が設けられており、多くの小口越境ECはこの制度を活用することで通関コストを節約してきました。
しかし2025年8月29日、米国がデミニミス制度を全世界対象の小口輸入に対して撤廃しました(一次資料:JETROが確認)。これにより、小口輸出入でも正確なHSコードによる申告と関税・税金の納付が義務づけられるようになりました。
経済産業省は米国・EUをはじめとする各国のデミニミス制度見直しを受け、越境EC事業者に対して輸出入申告の正確性向上と通関手続きの適正化を促している。商品分類(HSコード)の正確な把握が、越境ECの持続的な運営において不可欠な要素となっている。
デミニミス撤廃によるEC事業者への影響
デミニミス制度の撤廃は、越境EC事業者に次のような実務上の変化をもたらします。
- 関税・VATの新規負担:これまで免税だった小口商品にも関税・消費税が課されるため、輸出価格の再設定が必要
- 通関手続きの増加:件数あたりの通関申告が増加し、処理コスト・時間が増大
- HSコード管理の必須化:全商品にHSコードを正確に設定し、申告に備えることが必須となった
- 価格競争力の変化:デミニミスを活用していた中国EC(Temu・SHEINなど)との価格差が縮小し、日本EC事業者にとって競争条件が改善
米国の関税政策やEU関税の動向は引き続き変化しているため、最新情報を定期的に確認することが必要です。
HSコードと輸出入書類の関係
インボイス・パッキングリストとHSコード
越境ECの輸出入では、以下の書類にHSコードを記載することが一般的です。
- 商業インボイス(Commercial Invoice):商品説明・数量・単価・HSコードを記載。税関が関税率を確認する主要書類
- パッキングリスト(Packing List):梱包ごとの明細。HSコードが必要な国もある
- 輸出申告書(Export Declaration):日本から輸出する際に税関へ提出。金額が20万円を超える場合は輸出許可申告が必要
関税率・輸入規制との連動
HSコードは関税率だけでなく、各国の輸入規制・認証要件・原産地規則とも連動します。例えば化粧品・医療機器・食品には多くの国で成分分析書・認証証明書の提出が求められ、これらはHSコードをもとに要否が判断されます。
また、FTA(自由貿易協定)の恩恵を受ける際にも正確なHSコードが必要です。日本はASEAN・EU・英国・米国(交渉中)など多くのFTAを締結しており、該当するHSコードであれば関税の優遇が受けられる場合があります。
越境EC事業者がHSコードを適切に管理する方法
SKUごとのHSコードマスタを構築する
取り扱い商品が多い越境EC事業者には、商品マスタにHSコードを紐づけた「HSコードマスタ」の構築を強く推奨します。具体的には次の手順で整備します。
- 全SKUのHSコード調査:税関・JETROで各SKUの6桁コードを確定し、輸出先国別に9桁まで拡張する
- スプレッドシートまたはOMSへの登録:SKUコード・商品名・HSコード・輸出先国・有効期限(事前教示書がある場合)を記録
- インボイス自動生成ツールと連携:受注時に商品マスタからHSコードを自動でインボイスに挿入
- 定期見直し(年1回以上):HS表は5〜6年ごとに改訂(2022年に最新改訂)されるため、コードが変更されていないか確認
複数の輸出先国を扱う場合の管理
日本のHSコード(6桁まで国際共通)をベースに、輸出先国ごとの追加桁数を管理するのが基本です。東南アジア向け越境ECや韓国向け越境ECなど、国ごとに規制・関税率が異なるため、主要販売先国のコード一覧を整備することが実務上重要です。
HS表改訂への対応
WCO(世界税関機構)はHSコード体系を約5〜6年ごとに改訂します。直近の改訂は2022年(HS2022)で、電子タバコ・廃棄物・新素材などで大幅な変更がありました。次回改訂はHS2027(2027年1月)が予定されており、EC事業者は改訂情報を定期的にチェックする必要があります。
発送代行・3PL活用でHS対応を効率化する
越境EC対応の発送代行が代行できること
越境EC向けの発送代行サービスの中には、インボイス作成・HSコード入力支援・通関書類の準備を代行できる事業者があります。特に出荷件数が多い場合や商品カテゴリが多様な場合は、専門知識を持つ3PLを活用することで通関ミスを大幅に削減できます。
越境EC専門の3PLを選ぶ際は、対応国・通関サポートの有無・HSコードマスタ管理機能の3点を必ず確認してください。
STOCKCREWの対応範囲と越境ECへの活用
STOCKCREWは初期費用・月額固定費0円の発送代行サービスです。現時点では国内発送(常温商品)を中心に対応しており、物流全般の効率化を支援しています。越境EC向けの国際発送については専門の通関業者・国際3PLとの連携が必要ですが、国内在庫の保管・ピッキング・出荷準備をSTOCKCREWが担うことで、越境EC事業者のオペレーション負荷を下げることが可能です。
越境EC事業者が国内拠点の物流を発送代行に外注し、国際輸送・通関は専門業者と連携する「二段階アウトソーシング」は、規模が拡大するEC事業者に有効な構造です。
HSコード管理を省力化するテクノロジー
近年、AIを活用してHSコードを自動分類するSaaSツールが普及しています。商品名・説明文・画像をインプットすると、候補となるHSコードを複数提案してくれる機能を持つサービスが登場しており、大量SKUの一次スクリーニングに活用されています。ただし最終的な申告コードは人間(または通関専門家)が確認・確定するフローが必要です。
また、主要なECカートやOMS(受注管理システム)の中には、商品マスタにHSコードフィールドを設け、インボイス・ラベルへの自動入力に対応しているものも増えています。OMS選定の際は越境EC・HS対応機能の有無を確認すると良いでしょう。
まとめ
HSコード(関税番号)は、越境ECを展開するすべての事業者が正確に把握すべき重要な申告情報です。6桁の国際共通コードを基本に、輸出先国によって7桁以降が異なります。税関の実行関税率表やJETROのデータベースを活用して調べ、判断に迷う場合は税関への事前照会(品目分類照会)で確定することをおすすめします。
デミニミス制度の撤廃により、小口越境ECでも正確なHSコード申告が必須となりました。全SKUにわたるHSコードマスタの整備と、定期的な見直しが今後の越境EC事業運営の基盤となります。国内物流のアウトソーシングも含めた総合的な発送代行の活用で、越境ECのオペレーションをより効率的に構築してください。
よくある質問(FAQ)
Q. HSコードは誰が決めるのですか?
HSコードは輸出入申告を行う事業者(または通関業者)が自己申告します。税関が付与するものではありません。分類に迷う場合は、税関の「品目分類照会」制度を利用して事前教示書を取得することができます。事前教示書があれば、その分類が公式に認められます(有効期限あり)。
Q. HSコードは輸出と輸入で別のコードを使いますか?
国際共通の上位6桁は同じですが、7桁以降の国内細分コードは輸出用(6桁)と輸入用(9桁)で異なります。また輸出先国のHSコード体系も国ごとに異なるため、輸出先国の税関データベースで現地コードを確認することが必要です。
Q. HSコードを間違えた場合はどうなりますか?
関税の過不足が生じます。不足分は追徴課税の対象となり、輸入差し止めや通関遅延が発生することもあります。悪意のある虚偽申告の場合は関税法・外国為替及び外国貿易法による罰則対象です。誤りに気づいた場合は速やかに修正申告を行ってください。
Q. デミニミス撤廃で小額の輸出でもHSコードが必要ですか?
はい。2025年8月のデミニミス制度撤廃以降、米国向けの小口輸出(800ドル以下)を含め、正確なHSコードによる申告と関税・税金の納付が義務づけられました。EU・各国でも同様の動きが進んでいるため、金額にかかわらずHSコードを正確に設定することが必要です。
Q. 日本国内に在庫を置いて越境EC発送する場合、HSコードはいつ必要ですか?
輸出申告の際に必要です。日本から海外へ発送する場合、税関に提出する輸出申告書(または簡易申告)にHSコードを記載します。輸出金額が20万円超の場合は輸出申告(輸出許可)が必要で、それ未満でも航空貨物の場合は航空会社・フォワーダーへの申告にHSコードが求められます。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。