デミニミス改正と越境EC2026年|米国800ドル関税撤廃の影響と日本セラーの対応戦略
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2025年8月29日、米国はデミニミス・ルール(少額免税制度)を全世界向けに撤廃しました。中国・香港向けは同年5月に先行して廃止されており、これで米国に輸入されるほぼすべての貨物が、金額の大小にかかわらず関税・通関申告の対象になりました。当初は2027年7月の廃止が法定されていましたが、2025年7月30日の大統領令で施行が大幅に前倒しされた格好です。
この制度変更は、Amazon・eBay・Shopify経由で米国市場に参入している日本のEC事業者にとって、すでに直面している現実です。これまで800ドル(約12万円)未満の小口出荷で関税・通関申告を免除されていた恩恵は、日本発の荷物についても2025年8月29日をもって消滅しました。対応が遅れた事業者が、関税・通関コストの増加と配送遅延で競合に後れを取る局面に入っています。
本記事では、デミニミス制度の仕組みから改正タイムライン・実務への影響・具体的な対策まで、2026年6月時点の最新情報をもとに体系的に解説します。越境ECの発送代行・物流設計については発送代行の解説もあわせて参照してください。
デミニミス制度とは|800ドル少額免税の仕組みと成立背景
Section 321の概要
デミニミス(De Minimis)とは「ごく小さな事柄については法は関与しない」を意味するラテン語で、米国では1930年の関税法(Tariff Act)第321条(Section 321)として制度化されました。この制度により、申告価額が一定額未満の輸入品には関税と輸入申告が免除されていました。
2016年以前のしきい値は200ドルでしたが、2016年2月の貿易円滑化・貿易執行法(Trade Facilitation and Trade Enforcement Act)の施行によって800ドルに引き上げられました。この引き上げを機に越境EC市場は急拡大し、中国発の低価格ECプラットフォームがこの制度を最大限に活用しました。なお、ここで言う「免除」はあくまで過去の制度であり、2025年8月29日以降は全世界向けに撤廃されている点に注意が必要です。
800ドルルールのメリットと日本セラーへの恩恵(〜2025年8月28日まで)
日本のEC事業者がeBayやAmazon Global Sellingで米国向け個人向け商品を販売する場合、撤廃前は1件当たりの出荷額が800ドル未満であれば原則として関税ゼロ・通関申告不要でした。これは次の3点で日本セラーに大きなコスト・オペレーション上のメリットをもたらしていました。
| 項目 | デミニミス適用時(旧制度) | デミニミス撤廃後(現行) |
|---|---|---|
| 関税 | ゼロ(800ドル未満) | 商品カテゴリ別の関税率を適用 |
| 通関申告書類 | 不要または簡易申告 | 正式輸入申告(Entry)が必要 |
| 通関費用 | ほぼゼロ | 通関代理人費用(30〜100ドル/件) |
| 配送リードタイム | 税関通過が迅速 | 審査・書類確認で数日遅延の可能性 |
| 顧客負担 | なし | DDU配送では顧客が関税を負担 |
HSコードとは何か
デミニミス撤廃後に必要となる正式輸入申告では、すべての商品に「HSコード(Harmonized System Code)」を付与する必要があります。HSコードは世界税関機構(WCO)が定める国際標準の商品分類コードで、6桁の数字(米国では10桁)で商品を識別します。このHSコードによって適用される関税率が決まるため、コードの正確な分類が輸入コストに直結します。
日本の越境ECの関税仕組みと国別税率解説にもあるとおり、HSコードの誤分類は追徴課税や通関遅延の原因になります。越境EC事業者は自社商品のHSコードを事前に整理しておくことが不可欠です。HSコードと関税率は日本税関の実行関税率表でも確認できます。
2025年の制度改正経緯|全世界向け撤廃のタイムライン
フェーズ①:中国・香港向けデミニミス停止(2025年5月2日)
トランプ大統領は2025年4月の大統領令で、中国・香港からの輸入品に対するデミニミス・ルールの適用を同年5月2日から停止することを発表しました。これにより、Temu・SHEINなど中国発の低価格EC事業者が享受していた少額免税の恩恵が完全に消滅しました。これが全世界向け撤廃に先行した第一段階です。
フェーズ②:米国全世界向け10%追加関税(2026年2月24日〜)
デミニミス整理と並行して、米国は2026年2月24日から通商法第122条に基づき全世界からの輸入品に10%の追加関税を課しました。この措置は150日間の暫定措置とされていますが、延長・恒久化の可能性も排除できません。日本からの出荷品もこの追加関税の対象となります。詳細は米国10%追加関税で変わる日本越境EC戦略に詳しく解説しています。
今回の大統領令では、中国に対するデミニミスの適用停止を継続するとともに、これまで留保されていたその他の国・地域に対しても、デミニミスの適用停止を決めた。これにより、米国東部時間8月29日午前0時1分以降に通関する貨物は、国際郵便ネットワークを通じて送付されるものを除き、電子申請システム(ACE)を利用した輸入申告書類の提出が必要で、適切な関税なども支払わなければならない。
出典:ジェトロ「トランプ米大統領、全世界に非課税基準額(デミニミス)ルール適用を停止する大統領令発表」(2025年8月)
フェーズ③:全世界向けデミニミス撤廃(2025年8月29日・施行済み)
当初、全世界を対象としたデミニミス廃止は「One Big Beautiful Bill Act」(2025年7月成立)で2027年7月末と法定されていました。しかし2025年7月30日付の大統領令により施行が前倒しされ、2025年8月29日午前0時1分以降に通関する貨物から全世界向けにデミニミスが撤廃されました。この時点で日本から米国への輸出品も、金額の大小にかかわらず通関申告と関税納付が義務化されています。最新の運用は税関(日本側)および米国CBP(税関国境保護局)の情報を随時確認することを強く推奨します。
なお、7月4日に成立した「大きく美しい1つの法案法(OBBBA)」で、デミニミスは2027年7月1日での廃止が決まっていた。今回の大統領令でデミニミスの利用期限は約1年半前倒しされたかっこうだ。
出典:ジェトロ「トランプ米大統領、全世界に非課税基準額(デミニミス)ルール適用を停止する大統領令発表」(2025年8月)
また、トランプ政権の関税政策と越境ECへの全体的影響についてはトランプ相互関税とデミニマス廃止【2026年版】もあわせて参照してください。
Temu・SHEIN・Amazon Haulへの打撃と日本セラーへの波及
中国発プラットフォームへの直接打撃
デミニミス撤廃の最大の狙いは、Temu・SHEINなど中国発の低価格ECプラットフォームへの打撃にあります。これらのプラットフォームは1件数ドル〜数十ドルの小口商品を大量に中国から直送し、デミニミスを活用して関税ゼロで米国消費者に届けていました。2025年5月の中国・香港向け停止により、このビジネスモデルは根本から揺らいでいます。
Amazon Haulも同様の影響を受けています。AmazonがTemuに対抗して立ち上げたHaulは超低価格品の中国直送モデルを取り込んでいましたが、デミニミス撤廃後は価格競争力の維持が難しくなっています。Amazon Haulの欧州展開を含む最新動向はAmazon Haul欧州上陸2026に詳しく解説しています。
日本セラーへのプラス面とマイナス面
一見すると中国発プラットフォームが打撃を受けることで、日本セラーには商機が生まれるように見えます。実際、品質・信頼性・ブランド力に強みを持つ日本製品は価格競争から一歩引いた位置にあり、低価格品の価格上昇は日本商品の相対的な競争力向上につながりえます。
しかし日本セラーへのマイナス面も無視できません。2025年8月29日以降、日本からの出荷にも関税と通関申告が必要になったことで、次の3つのコスト・オペレーション負担が増加しています。
第一に関税コストの増加です。商品カテゴリにもよりますが、米国の一般的な輸入関税率は数%〜20%超に及びます。800ドル(約12万円)未満の取引であっても、この関税を誰が負担するかを事前に決めておく必要があります。第二に通関手続きコストです。正式輸入申告(Entry)を行う場合、通関士・税関ブローカーへの委託費用が1件あたり数十ドル発生します。出荷件数が多いほど累計コストは膨らみます。第三に配送リードタイムの延長リスクです。税関審査・書類確認が必要になることで、これまでより数日の遅延が生じる可能性があります。
eBayセラーへの具体的影響
eBayで中古品・工芸品・コレクターズアイテムを販売している日本のセラーは、800ドル以下の少額取引が多く、デミニミスの恩恵を最も受けていた層の一つです。eBayの国際発送と発送代行についてはeBay発送代行完全ガイド2026でも整理しています。撤廃後は、eBay取引にも通関コストが発生することを前提とした価格設定・送料設計の見直しが求められます。
また、越境EC市場規模と商材別需要構造【2026年版】によると、越境EC市場全体は引き続き成長軌道にありますが、制度変更への対応力が事業者間の格差を広げる転換期に差し掛かっています。
通関書類・HS番号申告の変更点と実務対応
正式輸入申告(Entry)に必要な書類
デミニミスが撤廃され正式輸入申告が必要になったことで、米国向け輸出では以下の書類が必要となります。実務上は通関代理人(Customs Broker)に委託するケースが多いですが、提出書類の内容は出荷側(日本のセラー・発送代行業者)が正確に用意しなければなりません。
具体的には、コマーシャルインボイス(Commercial Invoice)・パッキングリスト(Packing List)・輸出書類(B/L or Air Waybill)が基本セットとなります。コマーシャルインボイスには、商品のHSコード・正確な商品説明・申告価額・輸出者と輸入者の情報が必要です。申告価額の過小記載は関税法違反となるため、実際の取引価額を正確に記載する必要があります。
| 書類 | 役割 | 記載・準備のポイント |
|---|---|---|
| コマーシャルインボイス | 取引内容と申告価額の証明 | HSコード・商品説明・申告価額・輸出者/輸入者情報を正確に記載 |
| パッキングリスト | 梱包内容・数量・重量の明細 | インボイスと数量・重量が一致していること |
| B/L または Air Waybill | 輸送契約・貨物引渡しの証憑 | 海上はB/L、航空はAir Waybillを使用 |
| HSコード(スケジュールB) | 関税率の決定根拠 | 米国向けは10桁。誤分類は追徴課税の原因 |
HSコード分類の実務
米国向け輸出では、世界共通の6桁HSコードに加え、米国独自の桁を加えた10桁の「スケジュールBコード(Schedule B)」を申告します。このコードは米国センサス局(Census Bureau)のウェブサイトで検索・確認できます。日本側の関税・消費税の計算手順は日本税関のカスタムスアンサー(税額計算方法)も確認できます。
日本のEC事業者が扱うカテゴリ別の注意点は次のとおりです。コスメ・スキンケア用品は成分表示や安全性試験書類の要求が加わる場合があり、HSコードも細分化されています。電子機器・家電は追加関税の対象になりやすいカテゴリで、コード選定を誤ると予想外の関税率が適用されるリスクがあります。食品・サプリメントはFDA(食品医薬品局)の輸入要件も絡むため、通関業者との綿密な事前確認が必要です。
eBayでの個人輸出を含む実務フローはeBay個人輸出の出荷実務フロー【2026年版】でも整理しています。
DDP(Delivered Duty Paid)対応の必要性
デミニミス撤廃後、輸送条件をDDU(Delivered Duty Unpaid:関税は受取人負担)のまま維持すると、米国の消費者が税関から「関税を支払わないと荷物を受け取れない」と通知を受けるケースが発生します。これはカート放棄率・返品率の上昇と顧客満足度の急落につながります。
これを防ぐには、輸送条件をDDP(関税込み、送り主が関税を負担)に切り替えるか、商品価格に関税相当額を見込んだ価格設計(ランデッドコスト計算)を行うことが効果的です。大手プラットフォームではAmazon MCFやShopifyのDuty&Tax機能がDDP対応を自動化する仕組みを提供しています。米国向け物流の全体像はFBA移行ガイドもあわせて確認すると理解が深まります。
EU・日本の少額輸入課税改正との連動|多重規制リスクを把握する
EUは2026年7月から150ユーロ未満に定額関税を導入
少額輸入への課税強化は米国だけの動きではありません。EUでは2025年11月に理事会が合意し、150ユーロ未満の少額免税(デミニミス)を撤廃したうえで、2026年7月1日から品目ごとに3ユーロの暫定定額関税を導入します。さらに、品目ごとに2ユーロの通関手数料が遅くとも2026年11月1日までに加わる見込みで、両方が適用されると合計5ユーロの負担となります。この暫定措置は2028年7月1日まで続き、EU税関データハブの稼働後に150ユーロ免税が恒久的に撤廃される計画です。これにより、EU向け越境ECにも関税コストが発生することになりました。
| 市場 | 改正内容 | 施行時期 | 日本セラーへの影響 |
|---|---|---|---|
| 米国 | デミニミス(800ドル)を全世界向けに撤廃 | 2025年8月29日(施行済み) | 金額問わず関税・通関申告が必須 |
| 米国(追加) | 通商法第122条で全世界に10%追加関税 | 2026年2月24日(150日暫定) | 追加コストが上乗せ |
| EU | 150ユーロ未満の免税撤廃・1品目3ユーロの定額関税+2ユーロ手数料 | 2026年7月1日〜(2028年まで暫定) | EU向けにも関税・手数料が発生 |
| 日本 | 1万円以下の少額輸入貨物の販売を消費税課税対象に・PF事業者へ納税義務転換 | 令和8年度税制改正で見直し | 国内倉庫を使う国外事業者・直送品の取扱に影響 |
EU関税改正の詳細と日本EC事業者の対策についてはEU少額小包への定額関税、2026年7月から導入でも整理しています。EU向けVATの仕組み(IOSS)は欧州委員会のVAT One Stop Shopも参考になります。
日本も令和8年度改正で1万円以下の少額輸入に消費税課税へ
日本国内でも、国境を越えて行われる通信販売のうち1万円以下の少額輸入貨物の販売を消費税の課税対象とする見直しが、令和8年度税制改正で進められています。現行は課税価格1万円以下の輸入貨物は関税とともに消費税が免除されていますが、国内事業者との競争上の公平性を確保する観点から、販売者やプラットフォーム事業者に納税義務を課す方向です。国内倉庫に在庫を置く国外事業者や、海外から直送される少額貨物が主な対象となります。日本国内向けに越境ECを展開する事業者は、この改正の動向も注視しておきたいところです。
米国・EU・日本に同時対応が求められる越境ECセラーの実態
複数市場に越境EC展開している日本のセラーにとって、2025〜2026年は「多重の制度変更対応」が求められる時期になっています。米国では2025年8月の全世界デミニミス撤廃、EUでは2026年7月からの定額関税導入、日本でも令和8年度改正と、ほぼ同時期に対応が必要な制度変更が集中しています。
この多重規制への対応で特に重要なのが、販売チャネルと対象市場を整理した「ランデッドコスト管理」です。商品価格×数量に対して、それぞれの市場の関税率・通関費用・物流コストを加えたトータルコストで採算を把握しておかなければ、見かけ上の粗利と実際の手取り利益が大きくかい離します。
ケーススタディ:米国向けアパレル販売事業者のモデルケース
以下は制度変更の影響を具体化するためのモデルケース(想定例)です。実在事業者の実績ではありません。米国向けにアパレル雑貨を販売する日本のEC事業者が、平均単価60ドル・月間500件を出荷していると仮定します。デミニミス適用時は800ドル未満のため関税ゼロ・通関費ほぼゼロでしたが、撤廃後はアパレルの一般的な関税率(仮に15%)と通関代理人費用(仮に1件40ドル)が発生します。1件あたり関税9ドル+通関費40ドル=49ドルの追加コストとなり、月間では約24,500ドルの負担増です。
この事業者がDDU(受取人負担)のまま放置すれば、関税通知を受けた顧客のカート放棄・受取拒否が増え、返品・再輸送コストがさらに膨らみます。対策としてHSコードを整備して通関を効率化し、関税相当を価格に織り込むDDP設計に切り替え、月間出荷の半分を在米FBA在庫からの国内配送に振り替えることで、追加コストの一部を吸収しながら配送リードタイムも短縮できる、というのが現実的な落としどころです。越境EC全体の物流設計と発送代行選定については越境EC×発送代行の始め方と業者選定の実務ガイドも参照してください。
日本セラーが今すぐ取るべき5つの対策
対策①:全商品のHSコード整備と分類精査
デミニミス撤廃後に最初に必要となるのがHSコードの整備です。自社商品の全SKUについて米国用の10桁スケジュールBコードを確認・登録し、誤分類がないか確認します。コードが正確に設定されていれば、通関申告の自動化・外部委託も容易になります。初めて取り組む場合は、日本貿易振興機構(JETRO)の貿易相談や通関士に相談することを推奨します。
SKU数が多い場合は優先度をつけて取り組みます。まずは米国向け売上上位20%のSKUから着手し、残りを段階的に整備する方法が現実的です。越境ECの始め方については越境ECの始め方と失敗しない4つの準備でも解説しています。
対策②:DDP(Delivered Duty Paid)対応への切り替え
消費者体験を守りカート放棄率を抑えるには、DDPへの切り替えが最も効果的です。ただし、DDPに切り替えると輸出者(日本セラー)側が関税を立替払いする必要があるため、商品価格への転嫁・送料設定の見直しが伴います。
具体的には次の手順を踏みます。①商品カテゴリ別の実効関税率を試算する、②ランデッドコスト(CIF+関税+通関費)を計算する、③現行の商品価格に上乗せが可能か・競合との価格差を確認する、④決済時に「関税込み」を明示するページ設計に改修する、の4ステップです。
対策③:通関代理人(Customs Broker)の選定と事前連携
デミニミス撤廃後、すべての出荷に通関申告が必要になったため、通関代理人への委託が実質的に必須です。米国の通関業者(Licensed Customs Broker)との契約・API連携を整備しておくことで、オペレーションの混乱を最小化できます。
発送代行業者が通関代理人と連携している場合、出荷データを自動で通関申告に転送できる仕組みが整っていることがあります。発送代行を活用した越境EC物流全体の設計は、海外発送代行サービスの選び方と業者比較で整理しています。
対策④:在米在庫・Amazon FBA活用の検討
米国向け販売規模が大きい事業者には、米国国内に在庫を持つFBA(フルフィルメント by Amazon)やサードパーティ倉庫(米国3PL)を活用することも有力な選択肢です。米国国内に在庫を持てば、消費者への配送は米国内配送となり輸入関税問題が根本的に解消されます。
デメリットとしては初期の在庫輸送コスト・米国倉庫料・為替リスクが挙げられます。月商規模・出荷件数・商品単価を考慮した上でROIを試算してから判断することを推奨します。個人事業主や中小規模の越境EC事業者向けの選択肢については越境EC個人事業主向けガイド【2026年版】も参照してください。
対策⑤:販売市場の多角化とリスク分散
米国一極集中の越境EC戦略は、今回のような制度変更リスクに脆弱です。米国向けの規制強化と並行して、EU・東南アジア・中東など複数市場への展開を検討することでリスクを分散できます。多角化戦略は短期的な収益よりも中長期の事業安定性を高める意味で重要です。ただしEUも2026年7月から課税が始まるため、各市場の制度を踏まえた配分設計が前提となります。
STOCKCREWの越境EC発送代行と国内倉庫の活用
STOCKCREWの対応領域と非対応領域の明示
STOCKCREWは日本国内の発送代行・EC物流に特化したサービスです。越境EC事業者がSTOCKCREWを活用する場合、対応範囲と非対応範囲を正確に理解した上で利用することが欠かせません。
STOCKCREWが対応する工程は次のとおりです。日本国内での商品の受入・入荷検品(外装検品・入荷時付帯)、ピッキング・梱包・出荷ラベル貼付、ヤマト運輸・佐川急便を使った国内発送(国際便・輸出通関手配を除く)、在庫管理・WMS連携、受注データ連携(各プラットフォームAPI対応)です。
一方、国際通関手続き・輸出申告・HSコード申告代行はSTOCKCREWのサービス範囲外です。輸出の通関手配は別途、通関業者・フォワーダーまたは国際宅配業者(DHL・FedEx等)が直接担う形となります。また、在庫保管から輸出梱包・インボイス作成まで一括対応する「国際フルフィルメント」を求める場合は、国際発送に特化した3PLとの組み合わせが必要です。
国内倉庫を起点にした越境EC物流の設計
STOCKCREWの国内倉庫を越境EC物流の起点として使う場合、次のような役割分担が効果的です。STOCKCREWが国内でのバルク入庫・保管・ピッキング・梱包・国際宅配業者への引き渡しを担い、DHL・FedExなどの国際宅配業者が輸出通関・海外配送・関税処理を担う構成です。STOCKCREWは初期固定費0円・基本260円〜で利用でき、すでに2,200社以上に導入されています。
STOCKCREWはAMR(自律走行ロボット)110台を稼働させており、ピッキング精度・出荷スピードの面で自社出荷に比べて有利です。繁忙期のライブコマース出荷急増にも対応できる処理能力を持ちます。ただし、AGF(自動搬送フォークリフト)は導入しておらず、重量物・パレット単位の大量出荷については事前確認が必要です。
STOCKCREWの発送代行に関する解説では、費用相場・業者選定基準・導入ステップを詳しく整理しています。越境EC物流の全体的な仕組みについてはEC物流の仕組みと全工程をわかりやすく解説【2026年版】もあわせて参照してください。
デミニミス撤廃に備えたSTOCKCREW活用の推奨ポイント
デミニミス撤廃が本格化する局面で、STOCKCREWを活用した越境EC物流設計で押さえておくべきポイントをまとめます。まず、商品出荷時のインボイス情報(HSコード・申告価額・商品説明)を正確にSTOCKCREWに連携できる仕組みを整えます。次に、国際宅配業者との連携フロー(ピックアップ依頼・ラベル発行・追跡番号連携)を事前に確認します。そして、DDP対応が必要な場合は国際宅配業者側でDDP設定を行い、STOCKCREWでは出荷指示データにその旨を含めます。
まとめ|デミニミス撤廃時代の越境EC戦略
米国デミニミス制度の撤廃は、越境EC事業者にとって避けられない制度変更です。2025年5月の中国・香港向け停止に続き、2025年8月29日には全世界向けの撤廃が施行済みで、日本発の荷物も金額の大小にかかわらず関税・通関申告の対象となっています。当初の2027年7月予定が大統領令で前倒しされた点を見誤らないことが重要です。
日本のEC事業者が取るべき行動は明確です。全商品のHSコード整備・DDP対応への切り替え・通関代理人との事前連携・在米在庫オプションの検討・販売市場の多角化という5つの対策を、段階的に実行することが重要です。EUの2026年7月課税、日本の令和8年度改正もあわせて、市場ごとのランデッドコストを押さえておきましょう。
国内の発送代行・物流オペレーションの効率化はSTOCKCREWが担い、輸出通関・国際物流は専門の通関業者・国際宅配業者と連携する役割分担を明確にすれば、コストを抑えながら越境ECのスケールアップが可能です。費用や業者選定で迷う場合は、お問い合わせや資料ダウンロードもご活用ください。
デミニミス撤廃後も越境EC市場は拡大を続けます。今から準備を進めた事業者が、制度変更後の競争で優位に立てます。国内物流の効率化から始めたい方は発送代行の解説で費用・業者選定のポイントを確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. デミニミスとは何ですか?簡単に教えてください。
デミニミスとは、一定金額未満の輸入品に対して関税と通関申告を免除する制度です。米国では800ドル(約12万円)未満の輸入品が対象で、Section 321(1930年関税法第321条)として定められていました。少額の個人向け越境EC取引でコスト・手続きを軽減する役割を果たしてきましたが、中国発低価格品の大量流入に対する措置として、2025年5月に中国・香港向け、2025年8月29日に全世界向けが撤廃されています。
Q. 日本からの発送にデミニミス撤廃の影響はいつから出ていますか?
2025年8月29日から、日本発の輸出品も800ドル未満かどうかにかかわらず通関申告と関税の対象になっています。当初は2027年7月の廃止が法定されていましたが、2025年7月30日の大統領令で施行が前倒しされました。加えて2026年2月から米国が課している10%の追加関税(通商法第122条)も日本発が対象のため、コスト増は二重に発生しています。最新の政策動向を随時確認することを推奨します。
Q. HSコードとは何ですか?自分で調べられますか?
HSコードは世界税関機構(WCO)が定める商品分類の国際標準コードです。6桁が共通で、米国では10桁(スケジュールBコード)が必要です。米国センサス局のウェブサイト(Schedule B Search)で商品名・用途を入力して検索できます。ただし分類が複数候補ある場合や専門知識が必要なケースもあるため、初めての方はJETROの貿易相談や通関士への相談をお勧めします。誤分類は追徴課税や通関遅延の原因になります。
Q. DDP対応に切り替えると商品が値上がりしますか?
DDPに切り替えると、輸出者(日本セラー)が関税を立替払いするため、その分を商品価格や送料に転嫁する必要があります。ただし関税率は商品カテゴリによって異なり(0%〜20%超)、すべての商品が大幅に高くなるわけではありません。まず自社商品のHSコードと米国税率表を照合してランデッドコストを試算し、競合商品との価格差を確認した上で転嫁幅を設定することを推奨します。また「関税込み価格」を明示することで顧客の購入時の不確実性が消え、転換率が上がるケースもあります。
Q. STOCKCREWは越境ECの通関手続きに対応していますか?
STOCKCREWは日本国内の発送代行・EC物流に特化したサービスのため、輸出通関手続き・HSコード申告代行はサービス範囲外となります。国内での商品受入・入荷検品・ピッキング・梱包・国内発送(ヤマト運輸・佐川急便)には対応しています。輸出通関は別途DHL・FedExなどの国際宅配業者または通関士に依頼する形となります。STOCKCREWを国内拠点として活用しながら、国際輸送は専門業者と連携する役割分担が現実的です。
Q. EUや日本にも同様の規制が入ると聞きましたが、どう対応すればよいですか?
EUでは2026年7月1日から150ユーロ未満の少額免税が撤廃され、1品目あたり3ユーロの定額関税(さらに2ユーロの通関手数料が加わる見込み)が導入されます。日本でも令和8年度税制改正で1万円以下の少額輸入貨物の販売を消費税課税対象とする見直しが進んでいます。米国・EU・日本の規制が同時期に重なるため、両市場に展開している事業者は影響の大きい市場から優先して対応を進める必要があります。まず自社の市場別販売比率を確認することをおすすめします。
この記事の監修者
保阪涼子
株式会社KEYCREW 営業部長。物流会社で10年間、EC物流の現場担当・営業事務を経験し、EC・物流業界で通算10年以上のキャリアを持つ。STOCKCREWではサービス開始初期から商談を担当し、500社以上のEC事業者への導入支援を一貫して手がけてきた。YFF(Yahoo!フルフィルメント)移管時には1,000社超の顧客接点・フロー設計を主導。月間10万件以上の出荷管理に携わり、顧客の物流費を平均15%削減する成果を上げている。成約率50%を達成した営業手法には、「『売る』より『解く』」という顧客課題解決型のアプローチが根底にある。物流メディア(Logistics Today、ECのミカタ)へのインタビュー掲載実績も持つ。