外国人労働者204万人・技能実習の給与は21万3,500円|令和7年調査で見るEC出荷現場の人材コスト
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厚生労働省が2026年8月31日、令和7年の外国人雇用実態調査の結果を公表しました。外国人労働者は約204万人で、前年の約182万人から1年で22万人増えています。給与も上がり、一般労働者の月間きまって支給する現金給与額は292.4千円・前年比6.4%増。EC出荷を自社倉庫で回している事業者にとって、この調査は「採用できるかどうか」ではなく「採用したあとに何がかかるか」を教えてくれるデータです。この記事では、統計の数字を出荷現場の人件費に翻訳し、自社出荷を続けるかどうかの判断材料にします。外注に切り替えたときの費用構造は発送代行の仕組みと費用から押さえておくと比較しやすくなります。
何が公表されたか——外国人労働者は約204万人に
この調査は、雇用保険の被保険者が5人以上で、かつ外国人労働者を1人以上雇っている事業所を対象にしたものです。令和5年から毎年実施されており、今回で3回目にあたります。
外国人労働者数(雇用保険被保険者数5人以上事業所)は約204万人(前年約182万人)
調査の規模と読み方
抽出された9,016事業所のうち、有効回答は3,919事業所と14,248人です。事業所側と労働者側の両方に聞いている点がこの調査の特徴で、「雇う側が何に困っているか」と「働く側が何に困っているか」を突き合わせられます。
注意しておきたいのは、母集団が「雇用保険被保険者5人以上の事業所」である点です。小規模な倉庫や、スポット委託中心の現場は捕捉されにくい構造になっています。数字は実態の下限に近いと考えたほうが妥当です。
1年で22万人増えた意味
182万人から204万人ですから、1年で約12%の増加です。国内の生産年齢人口が減り続けているなかで、この伸び方は「一部の業種の話」では説明がつきません。倉庫・物流の現場もその一部です。人手の逼迫が今後どう進むかは倉庫・物流の人手不足は2026年以降どう深刻化するかに整理しています。
在留資格の構成が入れ替わりつつある
人数だけでなく、どの在留資格で働いているかの内訳が動いています。ここが出荷現場の設計に効いてきます。
減っているのは「身分に基づくもの」
永住者や日本人の配偶者などが該当する「身分に基づくもの」は、27.6%から24.0%へ3.6ポイント下がりました。この区分は就労に制限がなく、シフトの組み方も日本人と同じように扱えるため、現場としては最も扱いやすい層です。その層の比率が下がっているということは、制度上の制約がある人材の比率が上がっていることを意味します。
増えているのは専門的・技術的分野と技能実習
専門的・技術的分野は38.9%から42.1%へ、技能実習は20.2%から21.7%へ増えています。技能実習は在留期間や職種の制約が強く、配属先の変更にも手続きが伴います。採用の柔軟性が下がる方向に構成が動いていると読むのが実務的です。
国籍・地域別では、ベトナムが最も多く26.5%ですが、前年の32.4%からは大きく下がりました。中国が14.7%、フィリピンが10.5%で、いずれも前年と同水準です。特定の国に依存した採用ルートが細りつつある兆候と見ることもできます。
賃金は上がっている。ただし資格によって差がある
この調査でEC事業者に最も直結するのが給与のデータです。一般労働者の月間きまって支給する現金給与額は292.4千円で前年比6.4%増。所定内実労働時間は158.7時間、超過実労働時間は17.6時間でした。
在留資格別の給与と労働時間
| 在留資格 | 月間きまって支給する現金給与額 | 前年比 | 所定内 | 超過 |
|---|---|---|---|---|
| 全体(一般労働者) | 292.4千円 | +6.4% | 158.7時間 | 17.6時間 |
| 専門的・技術的分野 | 306.5千円 | +6.0% | 159.4時間 | 16.4時間 |
| うち特定技能 | 254.1千円 | +1.5% | 163.1時間 | 20.3時間 |
| 技能実習 | 213.5千円 | +1.7% | 165.2時間 | 21.4時間 |
| 身分に基づくもの | 347.2千円 | +13.8% | 151.0時間 | 15.8時間 |
伸び方が資格でまったく違う
全体は6.4%増ですが、内訳を見ると身分に基づくものが13.8%増と突出し、技能実習は1.7%増、特定技能は1.5%増にとどまっています。就労制限のない層ほど賃金が上がっているということで、労働市場で取り合いになっているのはこの層だと読めます。構成比が下がっているのと合わせて考えると、扱いやすい人材ほど採りにくく、採れば高いという構造です。
労働時間にも差があります。技能実習は所定内165.2時間・超過21.4時間で、身分に基づくもの(151.0時間・15.8時間)より月あたり約40時間長く働いています。給与総額の差が労働時間の差である部分は小さくありません。単価で見ると印象が変わります。
時間あたりで見ると差は縮む
給与額を総労働時間で割ると、技能実習はおよそ1,140円、身分に基づくものはおよそ2,080円という水準になります(本記事で公表値から計算した参考値です)。技能実習の水準は、地域によっては最低賃金と大きく離れていません。2026年10月に発効する最低賃金の改定額は2026年度の都道府県別最低賃金が出そろうに一覧でまとめてあります。最低賃金の上昇が倉庫の人件費と発送代行料金にどう波及するかは最低賃金の改定で倉庫人件費と発送代行料金はどう動くかに整理しました。
雇う理由と、雇ってからの課題
事業所側への質問では、雇用理由と課題の両方が聞かれています。ここに「見えないコスト」の正体が出ています。
理由の1位は労働力不足の解消
| 雇用する理由(複数回答) | 令和7年 | 前年 |
|---|---|---|
| 労働力不足の解消・緩和のため | 68.2% | 69.0% |
| 日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して | 56.2% | 54.7% |
| 事業所の国際化、多様性の向上を図るため | 18.1% | 15.8% |
| 日本人にはない知識、技術の活用を期待して | 14.1% | 13.2% |
7割近くが労働力不足の解消を挙げています。積極的な戦略というより、埋め合わせとしての採用が主流だということです。この構図は倉庫の現場採用でも変わりません。募集の設計そのものはEC倉庫・物流スタッフの採用方法ガイドに実務を寄せています。
課題は言語だけではない
最も多いのは「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」で46.2%、前年の43.9%から上がっています。次いで在留資格申請等の事務負担が24.8%、文化・価値観・生活習慣の違いによるトラブルが22.4%、生活環境の整備にコストがかかるが21.9%です。4項目すべてが前年より増えています。
ここで押さえたいのは、これらが給与に計上されないコストだということです。在留資格の更新手続きは総務の工数として、生活環境の整備は寮や備品の費用として、コミュニケーションの負荷は現場リーダーの時間として現れます。人件費の台帳には出てこないため、自社出荷の原価を見誤る原因になります。原価の洗い出し方は自社発送コストの可視化に手順をまとめました。
EC出荷現場に置き換えるとどうなるか
統計を現場の言葉に置き換えると、次の3つになります。
- 教える工数が増える——コミュニケーションの課題が46.2%まで上がっている以上、口頭で伝えて済ませる運用は成り立ちません。手順書の図解化、ピッキング指示の記号化といった作り込みが前提になります。
- 手続きの担当者が要る——在留資格の事務負担が24.8%。人数が増えるほど更新期限の管理が発生し、担当者を置かないと回りません。
- 採用単価が上がり続ける——就労制限のない層は給与が13.8%増。同じ条件で募集しても、去年と同じ人数は集まりません。
作業の標準化が前提条件になる
言語や文化の違いを吸収する現実的な方法は、作業から判断を減らすことです。ハンディターミナルでスキャンして照合する、ピッキングリストの並び順を棚の並びと一致させる、検品の合否をシステムが出す——こうした設計にしておけば、誰が入っても品質が揺れにくくなります。具体策はハンディターミナルの役割と選び方、ピッキングの手法比較と効率化、入荷検品・出荷検品の実務にまとめてあります。
標準化が追いつかないまま人が入れ替わると、真っ先に出るのが誤出荷です。指標としての管理方法は誤出荷を減らす物流改善ガイドとフルフィルメント品質KPIの実務評価が使えます。設備でどこまで人の判断を減らせるかは物流倉庫の自動化レベルと選定基準で段階的に整理しました。
安全衛生と健康管理の負荷も乗る
人数が増えれば、労働安全衛生の管理対象も増えます。メンタルヘルス対策の実施状況は令和7年の労働安全衛生調査で規模別に確認できます。そして9月は、職場の健康診断を点検する強化月間にあたります。
全国労働衛生週間(10月1日~7日)の準備月間である毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け
健康診断は在留資格にかかわらず、常時使用する労働者すべてが対象です。人数が増えるほど受診管理の工数も増えます。採用の話は必ず労務管理の話とセットになると考えておいてください。
自社出荷を続けるか、任せるか——判断に使う数字
ここまでの数字を、自社出荷の原価に積み直してみます。
給与の外側に乗るもの
| 項目 | 統計での裏付け | 現場での現れ方 |
|---|---|---|
| 教育・指導の工数 | コミュニケーションの課題 46.2% | 現場リーダーの時間、手順書の作成・翻訳 |
| 在留資格の事務 | 事務負担の課題 24.8% | 総務の工数、更新期限の管理、専門家への委託費 |
| 生活環境の整備 | コストの課題 21.9% | 寮・備品・通訳・相談窓口 |
| 賃金の上昇圧力 | 身分に基づくもの +13.8% | 募集単価の引き上げ、既存スタッフの昇給 |
荷主としての義務も、自社で出荷を持つ限り自社に残ります。国土交通省は物流効率化法に基づき、一定規模以上の荷主および物流事業者を特定事業者に指定し、物流効率化に向けた中長期計画の作成を義務付けています。人を抱える負荷と、荷主としての管理義務は同じ側に積み上がります。
これらは出荷件数が増えても減りません。むしろ人数に比例して増える性質のコストです。出荷が波打つEC事業では、繁忙期に合わせて人を抱えると閑散期に固定費として残ります。波動の見積り方はEC通販の年間出荷波動管理ガイドにまとめました。
固定費と変動費のどちらで持つか
外部の倉庫に任せると、これらの負荷は出荷件数あたりの単価に置き換わります。人を抱えないぶん、閑散期のコストが下がる代わりに、繁忙期は件数どおりに支払うことになります。どちらが有利かは出荷件数と季節変動で決まるため、感覚ではなく数字で比べる必要があります。
- 自社出荷の総原価を出す——給与だけでなく、上の表の4項目を工数と金額に落とし込みます。
- 件数あたりに割り戻す——月間出荷件数で割り、1件あたりの原価を出します。
- 外注の見積と並べる——保管料・作業料・配送料の内訳を同じ粒度に揃えて比較します。
件数別の分岐点は発送代行の損益分岐を出荷件数別にシミュレーションで試算できます。倉庫料金の相場感はEC・物流倉庫の料金相場、物流を「固定費」から「変動費」へは、この置き換えを経営の設計思想として整理したものです。初めて外部に出すときの進め方はEC物流の初めての外注化、3PLの全体像は3PLとEC物流外注の全体像にあります。
定着率は悪くない、という事実も見ておく
労働者側の回答では、「今の会社の仕事を続けたい」が81.2%でした。別の会社に変わりたいは6.1%です。定着しないという先入観は、この数字とは合いません。むしろ職業訓練を過去1年に実施した人が50.4%いる点を含めて、受け入れ体制を作れば戦力になると読むほうが実態に近いといえます。
問題は、その体制を自社で持つコストに見合うかどうかです。出荷が月数百件の規模で、総務が兼任の会社に、在留資格の管理と生活支援の窓口を置くのは現実的ではありません。規模が判断を決めます。EC物流全体の設計はEC物流完全ガイドから俯瞰できます。
まとめ:人が採れるかより、支え続けられるか
令和7年の外国人雇用実態調査では、外国人労働者が約204万人に増え、一般労働者の給与は292.4千円・前年比6.4%増となりました。ただし伸びは資格によって偏っており、就労制限のない「身分に基づくもの」が13.8%増と突出する一方、技能実習は1.7%増にとどまっています。構成比では身分に基づくものが3.6ポイント下がり、制約のある人材の比率が上がる方向に動いています。
雇用理由の68.2%が労働力不足の解消であり、課題はコミュニケーション46.2%、在留資格の事務24.8%、生活環境の整備コスト21.9%と、いずれも前年より増えました。これらは給与に計上されないため、自社出荷の原価を実態より軽く見せます。給与の外側にある4項目を工数と金額に落とし込み、件数あたりに割り戻して外注見積と並べる——判断はこの手順で数字にできます。
定着率そのものは悪くありません。「今の会社の仕事を続けたい」が81.2%です。論点は採れるかどうかではなく、受け入れ体制を自社で持ち続けられる規模かどうかにあります。判断材料として、費用構造は発送代行の業者選びと導入手順、STOCKCREWで何をどこまで任せられるかはSTOCKCREWのサービス範囲と料金にまとめています。自社の出荷件数で試算したい場合はお問い合わせフォームから、まず全体像を掴みたい場合は資料ダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 外国人労働者は何人いますか?
A. 令和7年外国人雇用実態調査では約204万人です。前年は約182万人でしたので、1年で22万人ほど増えています。ただしこの数字は雇用保険の被保険者が5人以上で外国人を1人以上雇用している事業所を対象にした集計であるため、小規模な事業所は捕捉されにくい点に注意が必要です。
Q. 技能実習の給与はいくらですか?
A. 月間きまって支給する現金給与額は213.5千円で、前年比1.7%増です。所定内実労働時間は165.2時間、超過実労働時間は21.4時間となっています。全体の一般労働者は292.4千円ですので、技能実習はそれより低く、労働時間は長い水準です。
Q. なぜ在留資格によって給与の伸びが違うのですか?
A. 就労制限の有無が影響していると考えられます。永住者などが該当する身分に基づくものは前年比13.8%増と突出しており、労働市場での競合が激しいことをうかがわせます。一方で技能実習は1.7%増、特定技能は1.5%増にとどまっています。制度上の制約が小さい層ほど賃金が上がっている構図です。
Q. 外国人を雇う理由として最も多いのは何ですか?
A. 労働力不足の解消・緩和のためが68.2%で最多です。次いで日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待してが56.2%、事業所の国際化・多様性の向上が18.1%、日本人にはない知識・技術の活用が14.1%となっています。積極的な戦略というより、人手の埋め合わせとしての採用が主流です。
Q. 雇用する側の課題は何ですか?
A. 日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくいが46.2%で最多です。次いで在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑が24.8%、文化・価値観・生活習慣等の違いによるトラブルが22.4%、生活環境の整備にコストがかかるが21.9%です。4項目とも前年より増えています。
Q. 外国人スタッフはすぐ辞めてしまうのではないですか?
A. 調査結果はその先入観と合いません。労働者側の回答では今の会社の仕事を続けたいが81.2%で、別の会社に変わりたいは6.1%でした。過去1年に仕事のための職業訓練や勉強を実施した人も50.4%います。受け入れ体制を整えられるかどうかが、定着を左右すると考えるほうが実態に近いといえます。
Q. 自社出荷を続けるかどうかは何を基準に判断すればよいですか?
A. 給与の外側にあるコストを数字にすることから始めてください。教育・指導の工数、在留資格の事務、生活環境の整備、賃金の上昇圧力の4項目を工数と金額に落とし込み、月間出荷件数で割って1件あたりの原価を出します。その数字を外注の見積と同じ粒度で並べると、規模に対して体制が重すぎるかどうかが見えます。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。