「在庫を持たないEC」とは|オンデマンドフルフィルメントと在庫保有型の使い分け
- EC・物流インサイト
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「売れるか分からない商品の在庫を、先に抱えるのが怖い」——グッズ販売やD2Cで、多くの事業者が抱える悩みです。この課題に応える「在庫を持たないEC」の仕組みが広がり始めています。セイノーホールディングスは2026年3月、OpenFactoryと連携し、注文が入ってから製造して出荷する「オンデマンドフルフィルメント」サービスを開始しました。本記事では、在庫レス型の仕組みと向く商材を整理し、在庫を保有して素早く届ける従来型(=発送代行)との使い分けを、EC物流の視点で解説します。どちらが自社に合うかを見極める判断軸を持ち帰ってください。
「在庫を持たないEC」とは
受注してから製造する新サービス
セイノーホールディングスは2026年3月27日、OpenFactoryと連携して「在庫を持たないEC」を実現するオンデマンドフルフィルメントサービスを開始すると発表しました。従来の物販は、あらかじめ商品を製造・仕入れて在庫として保有し、注文が入ったら在庫から出荷する形が一般的です。これに対して新サービスは、ECサイトやライブコマースで注文が入ってから商品を製造し、出荷する「受注生産型」の流れをワンストップで提供します。作り置きの在庫を持たないため、売れ残りのリスクを抱えずに商品販売を始められるのが特徴です。
クリエイター・IPグッズ・ノベルティ向け
対象となる商品は、Tシャツやパーカーなどのアパレル、マグカップやスマートフォンケースなどの雑貨、アクリルグッズ、ポスター、ノベルティグッズなどです。用途としては、クリエイターグッズ、IP・キャラクターグッズ、ライブコマース向けの限定商品、企業のノベルティなどが想定されています。ファンやフォロワーに向けてグッズを販売したいが、どれだけ売れるか読めず、在庫リスクを取りたくない——そうしたニーズに応える仕組みだといえます。
セイノーHDはOpenFactoryと連携し、EC・ライブコマース等の注文データをもとに全国の提携工場でオンデマンド製造し、セイノーグループの物流ネットワークで配送する「在庫を持たないEC」向けのフルフィルメントサービスを開始した。
オンデマンドフルフィルメントの仕組み
注文データが製造・出荷を動かす
オンデマンドフルフィルメントの流れは、大きく4段階です。まずECサイトやライブコマースで商品を販売し、注文が発生します。次に、その注文データが製造システムに連携されます。連携を受けた全国の提携工場が、注文分だけをオンデマンドで製造します。最後に、製造された商品がセイノーグループの物流拠点で出荷処理され、全国の顧客へ配送されます。ポイントは、商品が「先に作られて倉庫で待っている」のではなく、「注文をきっかけに作られる」という点です。在庫という中間在庫を持たずに、注文から製造・配送までが一本の流れでつながります。
従来の在庫保有型との違い
従来型(在庫保有型)では、需要を予測して先に在庫を用意し、倉庫に保管しておきます。注文が入れば在庫からすぐ出荷できるため、配送が速い一方、売れ残れば在庫が損失になります。オンデマンド型(在庫レス型)は、注文後に製造するため在庫リスクがない代わりに、製造の時間がかかり、届くまでのリードタイムは長くなりがちです。どちらが優れているという話ではなく、商品の性質やビジネスモデルによって適した方式が異なります。下図で両者の流れの違いを整理します。
在庫レス型のメリットと向く商材
在庫リスクゼロで「まず売ってみる」ができる
在庫レス型の最大のメリットは、売れ残りリスクを負わずに商品販売を始められることです。先に在庫を仕入れる必要がないため、初期の資金負担が小さく、「まず売ってみて、反応を見る」という身軽な始め方ができます。とくに、どれだけ売れるか読みにくいクリエイターグッズや、期間限定・数量未定のライブコマース商品、種類は多いが各SKUの需要が小さい多品種商材では、在庫レス型の強みが活きます。売れた分だけ作るため、廃棄や在庫評価損の心配がありません。ライブコマースのように「その場の熱量で数量が読めない」販売とも相性がよく、配信で急に注文が伸びても、在庫切れや作りすぎを気にせず販売できます。資金を在庫に固定しないため、キャッシュフローの面でも身軽です。とくに立ち上げ期の事業者や、ファン向けに多品種のグッズを展開したいクリエイターにとって、在庫リスクを負わずに商品ラインを増やせる意義は大きいといえます。
向く商材・向かない商材
一方で、在庫レス型が万能というわけではありません。注文後に製造するため配送までの時間がかかり、「今日頼んで明日ほしい」といった即納ニーズには応えにくい面があります。また、オンデマンド製造に対応できる商品(プリント系のアパレル・雑貨・グッズなど)に向いており、複雑な製造や食品などは対象になりにくいのが一般的です。回転が速く即納が求められる定番商品や、まとめて作った方が単価を抑えられる商品は、従来どおり在庫を保有して素早く出荷する方式が適しています。
在庫レス型と在庫保有型の使い分け
2つの軸で自社の商品を分類する
どちらの方式が適するかは、「需要の読みやすさ」と「即納の必要性」という2つの軸で整理すると判断しやすくなります。需要が読みにくく、即納も強く求められない商品(受注生産のグッズなど)は在庫レス型が向きます。逆に、需要が読みやすい定番商品で、素早い配送が求められる商品は、在庫を保有して即出荷する在庫保有型が向きます。多くの事業者は、この両方の性質を持つ商品を扱っているため、「すべてを一方式に寄せる」のではなく、商品ごとに方式を使い分けるのが現実的です。
比較表で違いを押さえる
両方式の違いを整理すると、下表のようになります。在庫レス型は在庫リスクの回避に、在庫保有型は配送スピードとコスト効率に強みがあります。自社の商品ポートフォリオを見渡し、定番の売れ筋は在庫保有型で素早く回し、テスト販売や限定グッズは在庫レス型で身軽に——という組み合わせが、リスクと機会のバランスを取る一つの解になります。
| 比較軸 | 在庫レス型(オンデマンド) | 在庫保有型(発送代行など) |
|---|---|---|
| 在庫リスク | なし(受注後に製造) | あり(需要予測が必要) |
| 配送スピード | 製造時間が必要でやや長い | 在庫から即出荷(最短翌日も) |
| 初期負担 | 小さい(仕入れ不要) | 仕入れ・保管費が発生 |
| 向く商材 | グッズ・受注生産・多品種少量 | 定番・回転の速い・即納が要る商品 |
| 単価・量産効果 | 都度製造で単価は高めになりがち | まとめ生産で単価を抑えやすい |
在庫保有型の物販は発送代行で最適化
定番・即納商品は「持って、速く出す」が強い
在庫レス型は魅力的な選択肢ですが、多くのEC事業者の売上の中心は、需要がある程度読める定番商品や、素早い配送が求められる商品です。こうした商品は、在庫を保有して注文に即座に出荷する在庫保有型が引き続き有利です。ここで課題になるのが、在庫の保管・管理と、出荷の手間・スピードです。発送代行を使えば、在庫の保管から受注連携・梱包・出荷までをまとめて委託でき、在庫保有型の弱点である「保管と出荷の負担」を軽くできます。STOCKCREWは初期費用0円・固定費0円、基本配送料は全国一律260円〜で、1点からの小ロット出荷にも対応します。在庫レス型が「作りすぎない」ことで機会と効率を両立するのと同様に、在庫保有型でも「持ちすぎない」在庫運用と素早い出荷を組み合わせれば、在庫リスクを抑えつつ配送スピードの強みを活かせます。発送代行は、この「適正在庫+即出荷」を、自社で倉庫や人員を抱えずに実現する手段になります。
在庫レス型と組み合わせて使う
大切なのは、在庫レス型と在庫保有型を「どちらか」で考えないことです。テスト販売や限定グッズは在庫レス型で在庫リスクを避け、反応が良く定番化した商品は在庫保有型に切り替えて素早く回す——このように商品のライフサイクルに合わせて方式を使い分けると、リスクと機会のバランスが取れます。STOCKCREWはAMR110台による自動化オペレーションで、定番商品の在庫保有・即日出荷を安定して支えます。在庫の持ち方は、コストと販売機会を左右する経営判断です。自社の商品ごとに最適な方式を設計しましょう。委託の判断は発送代行完全ガイドを参考にしてください。
まとめ:在庫の持ち方を戦略で選ぶ
セイノーHDが2026年3月に開始した「在庫を持たないEC」向けオンデマンドフルフィルメントは、注文を起点に製造・出荷する在庫レス型の仕組みで、クリエイターグッズやIP・ノベルティなど、需要が読みにくい商材の販売を身軽にします。一方、需要が読める定番商品や即納が求められる商品は、在庫を保有して素早く出荷する在庫保有型が引き続き有利です。両者は優劣ではなく使い分けの関係にあり、「需要の読みやすさ」と「即納の必要性」で商品を分類すると判断しやすくなります。在庫を持つか持たないかは、コストと販売機会を左右する戦略的な選択です。自社の商品ごとに最適な物流の形を設計していきましょう。
在庫保有型の出荷を最適化したい方は発送代行完全ガイドを、STOCKCREWのサービス全体像はSTOCKCREW完全ガイドをご覧ください。自社の在庫・出荷体制の相談はお問い合わせから、料金感の把握は資料ダウンロードからご確認いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 「在庫を持たないEC」とは何ですか?
注文が入ってから商品を製造して出荷する、在庫レス型(受注生産型)のEC・物流の仕組みです。作り置きの在庫を持たないため、売れ残りのリスクを負わずに商品販売を始められます。セイノーHDが2026年3月にオンデマンドフルフィルメントとして提供を開始しました。
Q. どんな商材に向いていますか?
需要が読みにくいクリエイターグッズ、IP・キャラクターグッズ、ライブコマース向けの限定商品、企業ノベルティなど、プリント系のアパレル・雑貨・グッズに向いています。回転が速く即納が求められる定番商品には向きにくい面があります。
Q. 在庫レス型のデメリットはありますか?
注文後に製造するため、在庫から即出荷する方式に比べて届くまでの時間が長くなりがちです。また、都度製造のため単価が高めになりやすく、対応できる商品もオンデマンド製造が可能なものに限られます。
Q. 在庫保有型(発送代行)とどう使い分ければよいですか?
「需要の読みやすさ」と「即納の必要性」で分けるのが目安です。読みにくく即納不要の受注生産品は在庫レス型、読みやすく即納が要る定番品は在庫保有型が向きます。多くの事業者は両方式を商品ごとに使い分けるのが現実的です。
Q. 定番商品の在庫と出荷の負担を減らすには?
在庫の保管から受注連携・梱包・出荷までを発送代行に委託すると、在庫保有型の弱点である保管と出荷の負担を軽くできます。自動化された倉庫なら、即日出荷や注文集中時の安定処理もしやすくなります。
この記事の監修者
仲井暉人
株式会社KEYCREW オペレーション部DX推進リーダー。IT業界でシステムエンジニアとして客先常駐・受託開発に約1年従事した後、KEYCREWに入社。現在は物流の仕組みづくりと改善を担当し、現場とシステムの両面から効率的な物流設計を支援している。倉庫出荷件数10倍拡大に伴うシステム連携・アーキテクチャ設計、自社ハンディ端末の機能設計・開発・導入、YFF移管1,000社超のシステム移管責任者として大規模プロジェクトを完遂。高負荷になるDB・インフラの見直しにより月額50万円のコスト削減も実現した。「心頭滅却」を信条に、バックエンド・フロントエンド・インフラの幅広い技術領域をカバーし、WMS・倉庫DX・庫内効率化・自動化技術に関する実装経験に基づいた記事を発信している。