越境ECの始め方と失敗しない4つの準備|商品選定・関税計算・配送手段・保険の実務リスト
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越境ECの市場規模は世界的に急拡大しています。
2024年の世界の越境EC市場規模は約1.01兆USドル(約152兆円)に達し、2034年には6.72兆USドルにまで成長すると予測されている。中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆6,372億円(前年比8.5%増)。
「日本製品を海外に売る」チャンスはかつてないほど広がっています。しかし、国内のネットショップ運営と同じ感覚で越境ECを始めると、思わぬトラブルに見舞われることがあります。「商品が税関で止められた」「購入者に高額な関税が請求された」「配送中に破損したが保険が適用されなかった」――こうしたトラブルは事前確認で防げます。
本記事では、越境ECを始める前に確認すべきポイントを「取扱商品」「関税・通関」「配送方法」「保険」の4つの観点から解説します。越境ECの物流全般については「発送代行完全ガイド|仕組み・費用・業者選び・導入手順をすべて解説」も合わせて参考にしてください。
越境ECの全体像――国内ECとの違い
越境ECとは、自国の国境を越えて海外の消費者に商品を販売する電子商取引のことです。国内ECとの最大の違いは「国境を越える」ことに伴う追加の手続きとリスクが存在する点です。通関手続き、関税対応、輸入国の法規制への準拠、国際配送の手配、貨物保険の検討など、確認すべき事項が格段に増えます。「ECモール5社の費用・物流サービスを徹底比較」も販路選定の参考になります。
取扱商品のチェック――禁制品と輸入規制
越境ECで最初に確認すべきは、販売する商品が輸入先の国で正当に輸入できるかどうかです。
禁制品の確認方法
各国の禁制品情報は、日本郵便の国際郵便禁制品ページで国別に確認できます。代表的な禁制品には火薬類、毒物、麻薬類、生きた動物、偽造品などがありますが、国によっては食品・化粧品・電子機器にも独自の規制がかかります。リチウムイオンバッテリーを内蔵した電子機器は航空便での輸送に制限がかかるケースが多く、化粧品や健康食品は成分表示の基準が国ごとに異なるため、事前に輸入国の規制を調べておくことが不可欠です。
輸入そのものは可能でも「許可」が必要な場合
禁制品には該当しなくても、事前の許可申請が必要な商材もあります。医薬品、医療機器、食品(原材料証明書が必要な場合)、ワインなどのアルコール類が該当します。取り扱い商品の輸出入規制は発送代行業者や配送会社に事前に相談しておきましょう。
国ごとに異なる規制の具体例
| 国・地域 | 主な規制 | 注意点 |
|---|---|---|
| 中国 | 食品・化粧品にCFDA登録が必要 | 成分表示の中国語翻訳も必須 |
| EU | 化粧品のRA安全性評価書が必須 | パッケージ表記もEU規制に準拠 |
| オーストラリア | 木製品・食品の検疫が極めて厳格 | 木製梱包材にも燻蒸処理証明が必要 |
| 米国 | FDA登録(食品・化粧品・医療機器) | 2025年8月以降デミニミス撤廃で全商品に関税 |
こうした国ごとの規制の違いを自社ですべて把握するのは現実的ではありません。越境EC対応の経験が豊富な物流パートナーに相談するのが最も効率的です。越境EC×発送代行の実務については「越境EC×発送代行の実務ガイド|通関書類・HSコード・禁制品・貨物保険」で詳しく解説しています。
関税と通関の基礎知識――HSコード・申告価格・原産国
商品が輸入可能だと確認できたら、次に押さえるべきは関税に関する3つのキーワードです。
HSコード(商品の国際分類番号)
HSコード(Harmonized System Code)とは、あらゆる貿易対象品目を21の項目で大分類した6桁の数字です。世界200カ国以上で導入されており、このコードをもとに各国の関税率が決定されます。自社商品のHSコードを把握しておくことで、輸入国ごとの関税率を事前に調査できます。関税率は国によってまちまちで、同じ商品でもある国では5%、別の国では30%かかることもあります。関税は基本的に商品の購入者(輸入者)が支払うため、販売ページや購入確認メールで「関税は購入者負担になる場合があります」と明記しておくことがトラブル防止の鉄則です。
米国デミニミス制度の撤廃に注意
かつて米国には個人輸入のUS800ドル以下の商品に対する非課税措置(デミニミスルール)がありましたが、この制度は2025年8月29日に全世界を対象として撤廃されました。
2025年7月30日、トランプ大統領はすべての国を対象としてデミニミスルールの適用を停止する大統領令を発表。2025年8月29日以降、800ドル以下の貨物であっても関税・税金・手数料が課される。
出典:JETRO ビジネス短信「トランプ米大統領、全世界に非課税基準額(デミニミス)ルール適用を停止する大統領令発表」(2025年8月)
これにより、米国向けの越境ECでは金額にかかわらず全商品が関税の対象となります。さらに2025年10月27日からは日本発の米国向けEC商品にDDP(関税込み配送)が義務化されており、配送コストと通関手続きの負担が大きく増加しています。米国デミニミス撤廃の影響と対策については「米国デミニミス制度撤廃後の越境EC物流【2026年版】」で詳しく解説しています。
税関申告価格
税関申告価格とは、関税を計算するために税関当局へ申告する金額で、商品の販売価格または公正な市場価格に準じた金額をインボイスに正確に記載する必要があります。申告価格を意図的に低く記載する行為(アンダーバリュー)は各国の税関法に抵触するため絶対に行ってはいけません。
原産国の確認
原産国とは、商品が実際に生産・製造された国を指します。複数の国にまたがって製造される商品は原産地規則に基づく判定が必要になります。原産国によって関税率が変わる場合もあるため、判断が難しい場合は通関業者に相談しましょう。商品の国際識別については「JANコードとは?取得方法・種類・EC物流での活用メリット」も参考になります。越境ECの関税の詳細は「越境ECの関税|アメリカ・中国・台湾の税率・HSコード・通関手続き」を参照してください。
配送方法の選び方――コスト・スピード・追跡性のバランス
越境ECにおいて、配送方法の選択は購入者の満足度を大きく左右します。
| 配送方法 | リードタイム | コスト | 追跡 | 適したケース |
|---|---|---|---|---|
| EMS(国際スピード郵便) | 2〜5日 | 中 | ◎ | バランス重視 |
| 国際eパケット | 7〜14日 | 安 | ○ | 小型・軽量品 |
| DHL / FedEx(国際クーリエ) | 1〜3日 | 高 | ◎ | スピード重視・高額品 |
| SAL便(エコノミー航空) | 2〜3週間 | 最安 | △ | コスト最優先 |
郵便系サービス(EMS・eパケット・SAL便)
日本郵便が提供する国際郵便サービスは、越境EC初心者にとって最も手軽な選択肢です。EMSはアジア圏なら2〜3日で届き、追跡と補償も付帯します。eパケットは2kgまでの小型商品向けで安価ですが到着まで1〜2週間かかります。ただし、米国向けについては日本郵便の一部サービスで引受停止の影響が出ているため、最新の対応状況を確認してください。
国際クーリエ(DHL・FedEx・UPS)
DHL、FedEx、UPSなどの国際クーリエサービスは、最速で翌日〜3日以内に届く圧倒的なスピードが魅力です。通関手続きも代行してくれるため、高額商品や緊急性の高い配送に適しています。米国デミニミス撤廃後はDDP対応が必須となったため、DDP配送に対応したクーリエの重要性が増しています。
配送方法を選ぶ際の判断基準
配送方法の選択は「コスト」「スピード」「追跡性」「補償」の4要素で判断します。商品の価格帯が高い場合は追跡と補償が充実したクーリエを、低価格の軽量商品ならeパケットを、というように商品特性に合わせて使い分けるのが合理的です。配送のリードタイムや追跡方法は、購入者にとって購入時の大きな判断基準になります。商品ページに配送目安日数を明記し、購入確認メールに追跡番号を自動送信する仕組みを整えましょう。
貨物保険で万が一に備える
国際配送は国境を越える性質上、購入者の手元に届くまでに多くの人の手を介します。梱包を万全にしても、配送中の破損や紛失を100%防ぐことは困難です。
貨物海上保険は国際的にICC(Institute Cargo Clauses)で規定されており、補償範囲の広さによってA・B・Cの3つのレベルに分かれます。ICC(A)は最も広範で、輸送中のほぼすべての危険を補償するため、水濡れに弱い電子機器や高額商品に適しています。EMSには標準で最大200万円(実損額)の補償があり、DHLやFedExも申告価格に基づく補償が付帯しています。高額商品の場合は追加の保険を検討しましょう。貨物保険の詳細は「越境EC事業者のための貨物海上保険ガイド」を参照してください。
越境ECの物流を発送代行に任せるメリット
越境ECには禁制品チェック、HSコードの確認、インボイスの作成、国際配送の手配、保険の付保など、国内ECにはない多くの手続きが発生します。これらをすべて自社で対応するのは、特に小規模事業者にとって大きな負担です。
越境EC対応の発送代行サービスを利用すれば、インボイスの作成から国際配送の手配、梱包、保険の付保まで一括して委託できます。国内ECの発送と越境ECの発送を一つの倉庫から一元管理できれば、在庫の分散を防ぎ管理コストを最小化できます。主要ECプラットフォームとAPI連携している発送代行業者なら、受注データの連携もスムーズです。海外発送代行の選び方は「海外発送代行とは?越境ECを成功させる物流の選び方」で解説しています。
まとめ:事前確認を怠らず、越境ECのチャンスをつかもう
越境ECの事前確認は、商品の輸入規制チェック、HSコード・申告価格・原産国の把握、配送方法の選定、貨物保険の検討と多岐にわたります。特に2025年8月の米国デミニミス制度撤廃により、米国向け越境ECの関税・通関環境は大きく変わっています。最新の制度変更を正確に把握した上で物流パートナーと連携することが、これまで以上に重要です。
「発送代行完全ガイド」と「STOCKCREW完全ガイド|サービス内容・料金・倉庫・導入方法を徹底解説」も参考に、まずは無料のサービス資料をダウンロードするか、お問い合わせページからお気軽にご相談ください。
越境ECに関するよくある質問(FAQ)
Q. 越境ECを始めるのに必要な初期費用はどのくらいですか?
販売プラットフォームの利用料(Shopifyなら月額約4,000円〜)と最初の在庫仕入れ費用が主な初期コストです。Shopifyの多言語・多通貨機能やeBay、Shopeeなど既存のマーケットプレイスを活用すれば、月数千円〜数万円で始められます。
Q. 返品・返金はどう対応すればよいですか?
返送にかかる国際送料の負担ルール(購入者負担か出品者負担か)を事前に決め、購入ページに明記しておくことがトラブル防止の基本です。低価格商品の場合は「返品不要・返金対応」とする事業者も増えています。
Q. 越境ECで売れやすい日本商品のジャンルは?
アニメ・キャラクターグッズ、化粧品・スキンケア、文房具、お菓子・食品、伝統工芸品、ゲーム関連商品、ファッション(ストリート系)などが海外で人気です。ただし化粧品は輸入規制が厳しい国が多いため事前の規制確認は必須です。
Q. 越境ECの物流を発送代行に任せる場合、最低何件から対応してもらえますか?
STOCKCREWのように1点から対応可能なサービスもあります。初期費用・固定費0円の完全従量課金制であれば、越境ECのテスト販売段階から無理なく利用でき、最短7日で利用開始できます。
この記事の監修者
北原一樹
株式会社KEYCREW オペレーション部長。大手物流会社にて現場担当からセンター長を経て、営業・管理職を12年間歴任。物流業界での経験は24年に及ぶ。大規模顧客の初のEC・DCが併設された10,000坪規模の大型倉庫の立ち上げを主導した実績を持ち、月間100Mの赤字を抱えていた物流センターをわずか3か月で黒字化に転換させた。現在はSTOCKCREWにおいて部門管理・各拠点の収支管理・業務改善を統括。「現地・現物」「数字で現場を見る」「何事にも基準を作る」を信条に、年間5千万点の入出荷を支える高品質な物流オペレーションを実現している。