改正貨物自動車運送事業法2026年4月施行—EC荷主が整えるべき3点|白トラ規制・管理簿・書面交付の実務対応
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「荷物を運んでくれれば誰でもいい」という発想が、2026年4月から通用しなくなりました。改正貨物自動車運送事業法が2026年4月1日に施行され、これまで運送事業者側だけに課されていた義務が、荷主であるEC事業者にも直接及ぶようになったのです。
特に変化が大きいのは3点です。(1)無許可の白トラ業者を使っていた場合に荷主も社名公表の対象になること、(2)実運送体制管理簿の作成義務が利用運送事業者にも拡大されること、(3)利用運送との契約でも書面交付が必須になること——これらは発送代行を外注しているEC事業者にも無関係ではありません。
本記事では、改正内容の要点と、EC事業者・荷主が今すぐ取るべき実務対応を整理します。
改正貨物自動車運送事業法とは—2026年4月施行の背景
令和5年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、24.8兆円(前年22.7兆円、前々年20.7兆円、前年比9.23%増)に拡大しています。
急拡大するEC市場に比例して、宅配便の輸送量も記録的水準に達しています。
近年の通信販売、特にインターネットを利用した通信販売(EC)の伸びとともに、宅配便の取扱個数は急伸しており、令和5年度は約50億個にのぼっています。
宅配便の急増に対し、トラックドライバーの絶対数は減少の一途をたどっています。物流の2024年問題で時間外労働上限規制が施行されてから2年が経過した今も、倉庫・物流の人手不足は解消されていません。この構造的な矛盾を放置すれば輸送インフラ自体が崩壊するという危機感から、政府は物流関連法の大幅な改正に踏み切りました。
改正の流れ——2025年改正公布から2026年4月施行まで
今回の改正貨物自動車運送事業法は、2025年4月に改正が公布され、同年6月には「トラック適正化関連法」として追加改正が成立。主要な施行日は以下のとおりです。
| 施行時期 | 主な内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 2025年4月〜 | 実運送体制管理簿の作成義務化(第1弾) | 一般貨物自動車運送事業者 |
| 2026年4月1日〜 | 白トラ荷主規制・管理簿義務拡大・書面交付義務・2次請け制限(努力義務) | 荷主・利用運送事業者を含む全関係者 |
| 2026年以降 | 許可更新制・適正原価運賃制度の本格運用 | 全事業者 |
また、改正物流効率化法(流通業務総合効率化法)と総合物流施策大綱2026〜2030年度とセットで施行されており、物流制度全体の構造改革が同時進行しています。貨物自動車運送事業法改正はその中でも「取引適正化・多重下請け是正」を主眼とした法律です。
改正法第4条では、貨物自動車運送事業における取引環境の適正化を図るため、主に、1.運送契約締結時等の書面交付義務、2.委託先の健全な事業運営の確保に資する取組(健全化措置)を行う努力義務、当該取組に関する運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務、3.実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成・保存義務などについて規定し、これらの規定については、令和7年4月1日から施行することとされているところです。
【変更①】白トラ利用で荷主も処罰対象に—確認義務の新設
「知らなかった」では済まされない確認義務
「白トラ」とは、国土交通省の許可を受けずに有償で運送業を行う白ナンバーのトラックのことです。これまでは白トラを使った場合、処罰されるのは主に運送事業者側でした。しかし2026年4月1日以降は、違法な白トラ業者に運送を依頼した荷主も行政処分の対象になります。
具体的には、国土交通大臣から以下の順序で措置が講じられます。
- 要請——是正するよう行政的に求められる段階
- 勧告——要請に従わない場合に発令。より強制力がある
- 社名公表——勧告に応じない場合、違反企業名がパブリックに公開される
コンプライアンスが企業評価に直結する今日、「違法業者を使っていた企業」として社名が公表されれば、取引先・顧客・投資家からの信頼を一気に失うリスクがあります。法的な罰金の問題にとどまらず、ブランドへのダメージは長期にわたります。
EC事業者が特に注意すべきケース
問題になりやすいのは、コスト削減や急ぎ対応を理由として「格安の軽貨物業者」「知人の個人運送業者」「マッチングアプリで見つけた個人ドライバー」に荷物を任せているケースです。これらは貨物軽自動車運送事業の届出がなく、白トラに該当する場合があります。
EC物流全体の流れをおさえたうえで、配送委託先の許可状況を今一度確認してみましょう。特に以下の点を押さえておきましょう。
- 一般貨物自動車運送事業の許可証——現物または写しで確認する
- 貨物軽自動車運送事業の届出済証——軽貨物業者の場合はこちら
- 契約書への適法性保証条項の記載——「依頼先が無許可営業でないことを保証する」条項を盛り込む
取引先が複数の場合は、一覧化して許可証番号を記録・管理する体制を整えておきましょう。この「確認記録」が、万が一の監査時に荷主側の誠意ある対応を示す証拠となります。
【変更②】実運送体制管理簿の義務が利用運送事業者にも拡大
管理簿とは何か——2025年4月から始まっていた第1弾義務
「実運送体制管理簿」とは、元請事業者がどの事業者(何次請け)が実際に荷物を運んでいるかを記録する台帳です。多重下請け構造の是正を目的として作られました。
一般貨物自動車運送事業者については2025年4月から義務化されており、すでに1年が経過しています。作成対象となるのは「真荷主から依頼された1.5t以上の貨物」で、自社が全便自力で運ぶ場合は作成不要です。
2026年4月から「利用運送事業者(フォワーダー)」にも拡大
今回の改正の新しい点は、自社でトラックを持たない「貨物利用運送事業者(フォワーダー)」にも同義務が適用されたことです。利用運送事業者は自ら荷物を運ばず、他の運送事業者に委託して物流を組み立てます。こういった中間業者の多重下請け構造が見えにくかった問題に対応するための措置です。
合わせて、「再委託の回数を2回以内(実運送は3次請けまで)とする努力義務」も導入されました。電話一本で手数料だけを取るような実態のない「水屋」と呼ばれる仲介業者の排除を目的としています。
EC事業者が発送代行会社を選ぶ際には、その会社が実際に何次請けまで委託しているかを確認しておくことが求められるようになりました。発送代行の契約書にも、下請け体制に関する条項を盛り込むことを検討してください。
なお、管理簿には実運送体制の記録だけでなく、荷主から提供された貨物の重量・内容・区間などの正確な情報も不可欠です。荷主側もこれらの情報を正確に提供する義務が間接的に生じることを把握しておきましょう。
【変更③】利用運送との契約書面交付が義務化
口頭・包括契約から「項目別書面」への転換が必須に
従来、トラックを持たない利用運送事業者との契約は、口頭や曖昧な発注書で行われることが多くありました。2026年4月以降はトラック事業者と同様に、利用運送事業者との契約でも書面(またはメール等の電磁的方法)による交付が義務付けられます。
書面に記載しなければならない項目は以下の5点です。
| 記載必須項目 | 具体例 |
|---|---|
| 運賃 | 距離・重量・サイズ別の基本運賃 |
| 有料道路利用料 | 高速道路代、通行料の負担区分 |
| 燃料サーチャージ | 燃料価格変動に応じた付加料金 |
| 附帯業務とその対価 | 積込・取り卸し・横持ち・仕分けなどの作業と料金 |
| その他役務ごとの対価 | 荷姿の変更、再配達、保険料の区分など |
特に見落としやすいのが附帯業務(荷役・仕分け・横持ちなど)の無償強要が下請法違反になる点です。「荷役はサービスでやってよ」という慣行は、今後は書面不備(法的義務違反)かつ買いたたき(下請法違反)の二重リスクを招きます。
発送代行を利用しているEC事業者の場合、発送代行会社が利用運送事業者に委託している部分にも書面化が求められる場合があります。現在の契約内容を確認し、2026年度の物流契約見直しの観点から書面の整備を進めましょう。
また、適正原価運賃制度の整備により、燃料費・人件費・安全投資を反映した運賃水準への転換が法的に後押しされます。これはEC事業者にとって発送代行の隠れコストが増加する可能性を意味します。物流コストをKPIで可視化し、運賃上昇を見越した事業計画を立てておくことが重要です。
EC荷主が今すぐ取るべき実務対応3点
対応①:取引先の許可証・届出状況を一覧化して確認する
最優先で取り組むべきは、現在取引している運送会社・発送代行会社が適法な許可業者かどうかの確認です。以下の手順で実施します。
- 取引先リストの作成——定期的に荷物の運送を委託している会社をすべて洗い出す
- 許可証の取得・保管——一般貨物自動車運送事業の許可証(または貨物軽自動車の届出済証)の写しを提出してもらう
- 許可番号の記録——国土交通省の許可番号を社内データベースに登録し、更新を管理する
- 契約書への条項追加——反社会的勢力排除条項と並んで「無許可営業禁止・適法性の保証」条項を追加する
フルフィルメント品質のKPI管理を行っている企業であれば、コンプライアンス状況もKPIの一項目として組み込む形が効率的です。
対応②:運送会社・発送代行との契約書を書面化・更新する
次に、現在の口頭合意や曖昧な包括契約を見直す作業に着手しましょう。運賃・附帯業務対価・有料道路代・燃料サーチャージを個別に明記した新フォーマットの契約書を作成し、取引先に締結してもらいましょう。
特に「今まで無料でやってもらっていた附帯作業」の洗い出しがポイントになります。発送代行の請求書を読み解いて、どの費用が現在どのような根拠で発生しているか把握しておくと、契約書改定の交渉がスムーズになります。
対応③:自社の物流体制と発送代行の役割を整理する
改正法が求める義務は荷主自身が管理するのは手間がかかります。物流アウトソーシングにより認可を持つ3PLに委託することで、コンプライアンス管理の一部を専門家に委ねることができます。
発送代行会社を選定する際は、許可証の有無だけでなく、実運送体制管理簿の整備・書面交付義務への対応状況を選定基準に加えましょう。発送代行導入後の社内運用体制についても、法改正を踏まえた見直しも進めましょう。
発送代行活用でコンプライアンス対応を効率化する
認可済み3PLに委託することでリスクを低減できる
EC事業者が発送代行を活用する最大のメリットの一つが、「許可済みの専門事業者に物流を任せることで、白トラリスクを回避できる」ことです。大手の発送代行会社は一般貨物自動車運送事業(または倉庫業法に基づく許可)を取得しており、荷主側が確認義務を果たしやすい構造になっています。
この約1割にのぼる再配達を労働力に換算すると、年間約6万人のドライバーの労働力に相当します。また、再配達のトラックから排出されるCO2の量は、年間でおよそ25万トンになります。
ドライバー不足・CO2排出問題という社会課題に対して、EV配送車の普及やグリーン物流への義務化が進んでいます。これらすべての動きは「安くて速いだけ」を求める物流から、「安全・適法・環境配慮」を前提とした物流への転換を迫るものです。
STOCKCREWはAMR(自動搬送ロボット)110台を稼働させた物流倉庫を運営し、2,200社以上のEC事業者に発送代行サービスを提供しています。初期費用・固定費0円、全国一律**260円〜**の配送料金で利用できるため、中小EC事業者でもコンプライアンス対応を意識した物流体制を整えやすくなっています。詳細はSTOCKCREWのサービス詳細をご確認ください。
また、物流の仕組みと全体像を改めて整理したうえで、自社が関わる物流の各段階でどの事業者が関与しているかを「見える化」することが、今後の法改正対応の基盤となります。
まとめ:「知らなかった」では済まされない2026年の物流法改正
改正貨物自動車運送事業法が2026年4月1日に施行され、EC荷主に求められる義務が大幅に強化されました。3つの主要変更点を整理すると以下のとおりです。
- 白トラ利用時の荷主処罰——委託先が適法な緑ナンバー事業者か確認する義務が荷主にも課された。違反は社名公表のリスクがある
- 実運送体制管理簿の義務拡大——利用運送事業者にも管理簿作成が義務付けられ、3次請けまでを上限とする努力義務も導入された
- 書面交付義務の新設——利用運送事業者との契約では、運賃・附帯業務対価・燃料サーチャージ等を明記した書面が必須
これらは、長年の慣行だった口頭合意・多重下請け・コスト隠蔽を解消し、物流取引を透明化するための抜本的な制度変更です。「知らなかった」では通用しない以上、今すぐ取引先の許可状況確認と契約書の整備に取りかかることが求められます。
物流コンプライアンスの強化は、同時に発送代行を活用して認可済み専門事業者に任せることの合理性を高めています。自社の物流体制を法改正に照らして見直したい方は、ぜひSTOCKCREWへお問い合わせください。導入の流れや費用感は資料ダウンロードからも確認いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 改正貨物自動車運送事業法はどのEC事業者に関係しますか?
运送会社や発送代行会社に荷物の運送を委託しているEC事業者すべてが荷主として関係します。白トラ規制では業者の許可確認義務が荷主に課されるため、どんな規模のEC事業者でも例外ではありません。
Q. 白トラかどうかはどうやって確認すればよいですか?
委託先の業者から「一般貨物自動車運送事業の許可証」または「貨物軽自動車運送事業の届出済証」の写しを提出してもらい、記載の許可番号を確認します。許可番号は「国土交通省 運送事業者情報検索」で照会することも可能です。
Q. 実運送体制管理簿の作成は荷主自身がしなければいけませんか?
管理簿の作成義務は元請けとなる運送事業者・利用運送事業者に課されており、荷主自身の直接的な作成義務ではありません。ただし荷主は正確な貨物情報(重量・区間・内容等)を運送事業者に提供する責任があり、管理簿の開示要求も認められています。
Q. 発送代行(3PL)を使っていれば白トラリスクは回避できますか?
大手の発送代行会社は一般貨物自動車運送事業の許可を取得しているケースがほとんどですが、委託先が許可を持っているか必ず許可証で確認してください。「大手だから大丈夫」という思い込みではなく、書面での確認記録を残すことが基本の対策となります。
Q. 書面交付義務に違反した場合、どのような罰則がありますか?
書面交付義務を怠った場合、勧告・是正命令・事業停止命令の対象となる可能性があります。また附帯業務を無償強要すると下請法違反にも該当するため、二重のリスクが生じます。早めに契約書フォーマットを整備することが最善の対策です。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。