Amazon Supply Chain Services(ASCS)全解説|EC事業者が知るべき影響と物流選択肢の変化

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2026年5月、Amazonが「Amazon Supply Chain Services(ASCS)」を発表し、自社の巨大物流インフラをAmazon以外のすべての事業者に開放しました。貨物輸送・倉庫保管・フルフィルメント・ラストマイル配送・通関まで、これまでAmazonセラーとFBAを利用する企業にしか使えなかった物流機能が、医療・製造・小売を含む幅広い業種に解放されます。「物流版AWS」とも呼ばれるこの動きは、日本のEC物流の競争構図にも大きな変化をもたらす可能性があります。本記事では、ASCSの全貌・従来サービスとの違い・日本EC事業者が取るべき対応策を整理します。発送代行の選択肢がさらに広がる今、自社に合った物流体制を見直すきっかけにしてください。

Amazon Supply Chain Services(ASCS)とは

STOCKCREWの大型EC物流倉庫外観(航空写真)
STOCKCREWの大型EC物流倉庫外観(航空写真)

Amazon Supply Chain Services(ASCS)は、2026年5月にAmazonが発表した、自社物流ネットワークをAmazon出品者以外の全事業者に開放するサービスです。これまでAmazonの物流インフラは、主にAmazon.com上の出品者向けFBA(フルフィルメント by Amazon)、およびマルチチャネルフルフィルメント(MCF)として一部外部解放されていましたが、ASCSはその対象を大幅に広げます。

Amazon Supply Chain Servicesは、Amazonが世界中に構築した物流ネットワーク——貨物輸送、倉庫、フルフィルメントセンター、ラストマイル配送——をあらゆる規模・業種の事業者に提供するものです。初期パートナーにはP&G、3M、Lands' End、American Eagleが名を連ねています。

出典:Amazon「Introducing Amazon Supply Chain Services」(2026年5月)

Amazonはかつて、自社の巨大なITインフラを「AWS(Amazon Web Services)」として外部提供することで、クラウドコンピューティング市場を塗り替えました。ASCSはその物流版ともいえる戦略的拡張です。Amazonの米国内物流ネットワークは、フルフィルメントセンター・配送ステーション・デリバリーステーションを合わせて1,000拠点を超え、ロボット稼働台数は100万台以上に達しています。

このインフラをAmazon物流の外部向けサービスとして提供することで、Amazonは物流事業そのものを新たな収益源に転換しようとしています。

ジェトロの報告によれば、Amazonは2026年5月に全事業者向けのサプライチェーンサービスを発表。医療・自動車・製造・小売など複数業界への物流支援を開始した。

出典:JETRO ビジネス短信「米アマゾン、自社の物流網を全販売事業者に開放するサービスを発表」(2026年5月)

ASCSが提供する5つのサービス領域

ASCSは単一のサービスではなく、サプライチェーン全体をカバーする5つのサービス領域の総称です。

Amazon Supply Chain Services(ASCS):5つのサービス領域 貨物輸送 · 海上・航空・トラック · リアルタイム追跡対応 · 国際・国内輸送両対応 Freight 倉庫保管 · Amazon倉庫網を利用 · 在庫管理システム連携 · 全米・グローバル対応 Storage フルフィルメント · ピッキング・梱包・出荷 · 自社EC・他モール対応 · 出品者以外も利用可 ⚠ 競合影響大 ラストマイル配送 · 小口配送サービス · 翌日・当日配送対応 · FedEx・UPSと競合 Last Mile 通関・可視化 · 通関手続きの代行 · 輸送データの可視化 · 複数拠点の一元管理 Visibility ※ ASCSはAmazon出品者以外の全事業者(医療・製造・小売等)が利用可能。2026年5月より提供開始。

①貨物輸送(Freight)

海上・航空・トラックを組み合わせた国際・国内貨物輸送サービスです。リアルタイムの輸送追跡、コスト最適化のルーティングが特徴で、Amazonが自社の調達で培った規模の経済を活用します。

②倉庫保管(Storage)

Amazonが全米・グローバルに構築したフルフィルメントセンターを外部事業者の在庫保管に活用します。季節波動に対応した弾力的な保管スペースの確保が可能です。

③フルフィルメント(Fulfillment)

ピッキング・梱包・出荷を含む注文処理フルフィルメントサービスです。Amazon.com以外の自社ECや他モールへの出荷にも対応する点が、従来のFBAとの最大の違いです(FBAはAmazon販売専用)。この領域は、既存の外部3PL・発送代行業者と最も直接的に競合します。

④ラストマイル配送(Last Mile Delivery)

Amazonの宅配インフラを使った小口配送サービスです。当日・翌日配送に対応し、FedExやUPSなどの既存宅配大手と真正面から競合する領域となります。

⑤通関・輸送可視化(Customs & Visibility)

越境ECや国際調達における通関手続きの代行と、輸送全体のリアルタイム可視化を提供します。国際物流のブラックボックスを透明化することで、在庫計画の精度向上につながります。

FBA・MCFとASCSの違いを整理する

ASCSを理解するうえで、既存のFBA(フルフィルメント by Amazon)およびMCF(マルチチャネルフルフィルメント)との違いを整理しておく必要があります。

比較軸 FBA MCF ASCS
対象ユーザー Amazon出品者のみ Amazon出品者のみ 全事業者(Amazon外の企業も可)
出荷先 Amazon経由注文のみ 他チャネルも対応 全チャネル対応
貨物輸送 なし(入庫は自己手配) なし 含む(海上・航空・国内)
通関サポート なし なし 含む
対象業種 EC(Amazon出品) EC 医療・製造・小売・EC等全業種

最も重要な違いは、ASCSがAmazonへの出品を前提としない点です。FBAやMCFはあくまでAmazonプラットフォームの延長線上にありますが、ASCSは完全にプラットフォーム独立型の物流サービスです。これにより、Amazonと競合する可能性があるブランドや小売業者も、Amazonの物流インフラを利用できるようになります。

日本EC事業者への影響:何が変わるのか

日本のEC事業者にとって、ASCSの影響は短期と中長期に分けて考える必要があります。

短期(2026年中):日本市場への直接影響は限定的

ASCSは現時点では主に米国市場を対象としており、日本でのサービス展開は未発表です。初期パートナーがP&G・3M・Lands' End・American Eagleといった大企業であることからも、当初はグローバル規模の大企業向けサービスとして展開されることが予想されます。月間出荷数十万件規模の事業者を主なターゲットとしており、月間数百〜数千件規模の日本の中小EC事業者が直接利用できる状況には当分ならないでしょう。

日本国内の発送代行サービスを活用している月間出荷**260〜1,000件**規模のEC事業者にとっては、当面は大きな選択肢の変化はありません。

中長期(2027〜2028年以降):競争環境の変化に備える

AWSが当初は大企業向けとして始まりつつも、段階的に中小・スタートアップ向けに展開した歴史があるように、ASCSも同様の拡張が予想されます。将来的には以下の変化が起こりうることを念頭に置いておくべきです。

  1. 大手小売・ブランドのEC物流コストが低下する——国内の独立系3PLへの圧力が高まる可能性があります。
  2. 越境EC物流のコストと複雑さが変わる——Amazonの国際ネットワークを使った越境物流が合理化されることで、EC物流の国際競争環境が変化します。
  3. FBA依存からの脱却を検討している事業者に新たな選択肢が生まれる——FBAからの移行を検討する際、ASCSも将来的な選択肢として視野に入ってきます。

日本のEC市場規模と物流の現状

令和6年度のBtoC-EC市場規模は26兆1,654億円(前年比5.81%増)で、物販系分野は14兆6,760億円となった。

出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月)

日本のEC市場が安定的な成長を続ける中、物流コストの比率は年々上昇しており、EC事業者にとって物流効率化は経営直結の課題となっています。ASCSのような大規模物流サービスの動向は、競合企業の物流コスト構造に影響を与えるため、間接的に市場競争にも波及します。

ASCS台頭期に日本EC事業者が取るべき物流戦略

コンベアラインが複数交差する出荷フロア全景(広角)
コンベアラインが複数交差する出荷フロア全景(広角)

ASCS登場を踏まえても、日本の中小EC事業者に求められる物流戦略の基本は変わりません。しかし、物流選択肢の多様化・競争環境の変化を見越した体制整備が重要になります。以下に、今から着手できる具体的なアクションをまとめます。

①現在の物流コスト構造を把握する

まず、現在の出荷コスト・在庫保管コスト・作業コストを正確に把握しておくことが前提です。Amazon物流や独立系発送代行との比較判断は、自社コストの透明性がなければ始まりません。

②Amazon依存を分散させる

FBAだけに物流を依存していると、Amazon側の料金改定(たとえば燃料サーチャージの導入)や規約変更に対してリスクが集中します。Amazon向け発送代行と自社発送体制のバランスを検討することが、長期的な安定運営につながります。

③国内発送代行との連携を最適化する

STOCKCREWのような国内発送代行は、初期費用0円・固定費0円・最短7日導入という機動性があり、月間数十件〜数万件規模の出荷に対応しています。ASCSが日本市場に本格参入するまでの間、国内発送代行の活用は引き続き現実的な最適解です。国内3PLは3PL物流として日本語サポート・ヤマト運輸・佐川急便との連携・小ロット対応という強みを持っており、ASCSが中小事業者向けに本格展開する数年後まで、その優位性は変わりません。

④将来の越境EC展開を見据えた準備

将来的に越境ECへの展開を検討するEC事業者にとって、ASCSの動向は注目に値します。Amazonの国際物流ネットワークを活用した越境物流サービスが将来展開された際、そのコスト競争力は現在の越境EC物流の構造を変える可能性があります。現時点では国内の物流基盤を安定させることが優先ですが、中長期のロードマップに越境対応を加えておくことは戦略的に有効です。

比較軸 国内発送代行(例:STOCKCREW) ASCS(将来的な日本展開時)
導入スピード 最短7日 未定(大企業向け先行)
初期費用 0円 未定
小ロット対応 1点から対応 大規模向けが主
日本語サポート 充実 限定的な可能性
配送網 ヤマト運輸・佐川急便 Amazon独自ネットワーク

まとめ:物流版AWSの登場でEC物流競争は新局面へ

Amazon Supply Chain Services(ASCS)は、Amazonが物流インフラをプラットフォームとして外部提供するという、EC・物流業界の歴史的な転換点です。AWSが世界のITインフラを塗り替えたように、ASCSは長期的に物流インフラの競争環境を変えていく可能性を持っています。

ただし、日本の中小EC事業者への直接影響は当面限定的であり、今すぐ対応を迫られる状況ではありません。重要なのは、物流コストの透明化・Amazon依存リスクの分散・現在の物流アウトソーシング体制の最適化を今のうちに進めておくことです。ASCSの台頭は、自社物流戦略を見直す好機でもあります。

自社の物流コスト構造を整理し、Amazon物流や国内3PLとのコスト比較を今のうちに行っておくことが、中長期の競争対応の第一歩です。FBAとの比較やコスト試算はお問い合わせから承っています。

よくある質問(FAQ)

Q. Amazon Supply Chain Services(ASCS)はいつから日本で使えますか?

2026年5月時点では、ASCSは主に米国市場を対象として展開が始まっており、日本でのサービス開始時期はAmazonから公式に発表されていません。初期段階では大企業向けの展開が予想されており、日本の中小EC事業者が利用できるようになるまでには一定の時間がかかる見込みです。

Q. ASCSとFBAは何が違うのですか?

FBAはAmazon.comへの出品者のみが利用できる倉庫・出荷サービスです。一方ASCSは、Amazonに出品していない企業(医療・製造・小売業者など)も利用でき、貨物輸送や通関まで含む包括的なサプライチェーンサービスです。Amazon以外のプラットフォームへの出荷にも対応する点が最大の違いです。

Q. ASCSが普及したら、国内の発送代行サービスは不要になりますか?

当面の間、国内の発送代行サービスの優位性は維持されます。ASCSは大企業向けの大規模物流に特化しており、月間数十件〜数千件規模の中小EC事業者には初期費用0円・最短7日導入の国内発送代行が引き続き最適解です。また、ヤマト運輸・佐川急便との長年の関係に基づく配送品質・日本語サポートの面でも、国内サービスが強みを持ち続けます。

Q. FBAからの移行を検討していますが、ASCS登場でどう変わりますか?

現時点では、FBAからの移行先として現実的なのは国内の独立系発送代行(3PL)です。ASCSが将来的に日本の中小事業者向けに展開された場合、選択肢のひとつになる可能性はありますが、料金体系・対応規模・日本語サポートが明確になるまでは判断を保留して、現在利用可能な選択肢で最適化を進めるほうが現実的です。

Q. ASCSを利用している企業(P&G、3Mなど)の事例はありますか?

Amazonの公式発表によると、初期パートナーにP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)、3M、Lands' End、American Eagleが名を連ねています。これらは主に米国の大手消費財・アパレルブランドであり、年間数百万件規模の出荷を持つ大企業です。日本企業の参加事例は2026年5月時点では未発表です。

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