SNS消費者行動調査2025|衝動買い1割未満・3,000円が許容ライン——EC事業者が取るべき物流対応
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2025年、EC利用者の購買行動に関する複数の調査が注目すべき実態を明らかにしました。創作品モールあるる(株式会社システムリサーチ)が2025年10月に公表した調査によれば、EC利用者の約8割が「計画的に購入している」と回答し、衝動的に購入する層は1割未満にとどまることが判明しています。一方、SNS広告を経由した購入では、約7割が「広告を見る前は買う予定がなかった」と回答しており(株式会社PRIZMA調査・2025年5月)、SNSという「偶発的な出会いの場」が衝動買いの主要経路になっている実態も浮かび上がっています。こうした消費者行動の二極化は、EC物流体制の設計にも直接影響します。本記事では2025年の主要調査データをもとに、SNS消費者行動の変化とEC物流との関連を解説します。
EC利用者の約8割が「計画的に購入」——衝動買いは1割未満の新実態(2025年調査)
EC利用者の約8割が「計画的に購入している」と回答し、衝動的に購入する人は1割未満にとどまることがわかりました。オンラインショッピングが生活に定着するなかで、消費者は"気分で買う"よりも「比較検討」や「必要性」を重視する傾向にあり、EC市場全体で"慎重消費"が進んでいることがうかがえます。
出典:株式会社システムリサーチ(創作品モールあるる)「ECサイトにおける購買行動実態調査」(2025年10月23日公表、全国20代〜90代男女300名対象)
この消費者行動の変化は、日本のEC市場の拡大と密接に関連しています。経済産業省の調査によれば、令和5年の国内BtoC-EC市場規模は24.8兆円に拡大し、EC化率は9.38%と年々上昇しており、消費者に十分な選択肢と比較環境が整いつつあります。こうした市場の成熟化が、「まず比較してから購入する」という計画的購買の構造的な背景となっています。
令和5年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、24.8兆円(前年22.7兆円、前々年20.7兆円、前年比9.23%増)に拡大しています。また、EC化率は、BtoC-ECで9.38%(前年比0.25ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展しています。
出典:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」(2024年9月公表)
EC利用が生活に完全に定着した現在、消費者はかつての衝動的なオンライン購買から計画的・合理的な購買行動へと明確に転換しました。インターネット環境の整備と価格比較サービスの普及により、「購入前に十分な情報収集を行う」ことが消費者の標準行動になりつつあります。同調査では比較検討を経て購入すると回答した割合が6割を超え、「まず検討、次に購入」というフローがEC購買の主流になっていることが示されています。
一方で、衝動買いが「後悔のない消費行動」として受け入れられている点も見逃せません。同調査では衝動買い後の満足度として63.2%が「満足している」「とても満足している」と回答し、「後悔した」との回答はゼロでした。衝動買いが「失敗」ではなく「気分転換・自分へのご褒美」として合理的に受け入れられていることがわかります。
この調査結果は、発送代行・3PL物流を活用するEC事業者にとって重要な示唆を含んでいます。計画購買が主流になるということは、消費者の購入決定から発送・受取までの期待値が高まるということです。「丁寧に検討して購入した商品が、期待通りに届かなかった」場合のダメージは、衝動買い商品の受け取り時よりも大きくなりやすいといえます。
衝動買いの許容ラインは「3,000円未満」——送料無料ラインと物流コストの交差点
衝動買いをする消費者は、どれくらいの金額を「ついつい買ってしまう」許容範囲と感じているのでしょうか。株式会社迅が2023年8月に実施した調査(全国300名対象)によれば、「衝動買いをしやすい値段の許容範囲」として3,000円未満が過半数という結果が示されています。この「3,000円未満」という数字は、EC物流設計の観点から見ると非常に示唆的です。
多くのECサイトが設定している「〇〇円以上で送料無料」のラインは、1,980円・2,000円・2,980円・3,000円台に設定されているケースが多く、衝動買い層が好む価格帯と「送料無料ライン」が交差していることになります。アスマーク調査(2025年3月・800名対象)でも、衝動買いの促進要因として「〇〇円以上で送料無料となるため追加で購入した」という回答が14.4%(全体2位)にランクインしています。つまり、送料無料ラインへの到達を目的とした「おまけ購入」が、ECサイトの平均注文単価を押し上げると同時に、物流側では荷物の重量・梱包サイズの増大を引き起こすという構造になっています。
また同調査では、衝動買い時の支払い方法としてクレジットカードが6割を占める結果が出ています。「今月の決済は来月になる」という心理的距離感がクレカ払いでは生じやすく、それが衝動的な購買判断を後押しするメカニズムとして機能していると考えられます。EC事業者がクレジットカード決済・後払い決済を充実させることは、衝動買い型注文の獲得率向上につながる可能性があります。
| 観点 | 衝動買い型注文の特徴 | 計画購買型注文の特徴 |
|---|---|---|
| 購入単価 | 3,000円未満が過半数(許容ライン調査) | 比較検討後のため幅広い(日用品から高額品まで) |
| 配送スピード期待 | 高い(気分が高揚している間に届けてほしい) | 標準〜やや高い(必要な時までに届けばよい) |
| 梱包への期待 | ギフト的な演出・開封体験を重視するケースも | 機能的・破損防止重視が基本 |
| 返品リスク | やや高め(冷静になると再検討が生じやすい) | 低め(十分に検討した上での購入のため) |
| 主な購入経路 | SNS広告・動画広告(7割超が「買う予定なし」から) | 検索・比較サイト・メルマガ・再購入 |
| 物流への示唆 | 当日・翌日配送・返品対応の充実が重要 | 出荷精度・梱包品質・在庫管理の安定性が重要 |
この二つの購買タイプを意識した上で、EC事業者はどちらの需要をどの商品・チャネルで取りに行くかを設計することが、物流コストの最適化にもつながります。衝動買い型需要には即配対応・返品体制の充実が、計画購買型需要には安定したWMS連携と正確な在庫管理が求められます。
SNS広告起点の衝動購入——7割超が「買う予定なし」から購入へ
SNS広告と購買行動の関係について、株式会社PRIZMAが2025年5月にZ世代(15〜27歳)・Y世代(28〜42歳)・X世代(43〜58歳)の計621名に実施した調査では、注目すべきデータが明らかになっています。「購入した商品はSNS広告で見る前から買う予定はありましたか?」という設問に対し、「買う予定はなかった」という回答が2024年・2025年ともに約7割で推移しており、SNS広告が「消費者が知らなかった購買需要を創出する」媒体として一貫して機能していることが示されています。
購買を動かすSNS広告の形式——動画とストーリーが主役
最も購買につながるSNS広告の形式は「動画広告」(52.5%)が2年連続トップ。次いで「ストーリー形式」(32.9%、前年比6ポイント超増加)が続きます。「見てすぐ理解できる」訴求力と「続きが気になる」物語性が、衝動的な購買決定を促す上で特に有効であることが示されています。消費者にとって最も印象に残る広告の要素は「商品そのものの魅力」(48.3%)が最多で、過剰な演出よりも「納得と関心」が購買を動かす時代になっていることもわかります。
EC事業者・ブランドにとってこのデータが意味するのは、SNS経由の注文はピーク予測が難しいという点です。特定のコンテンツが短時間で拡散した際に発生する「フラッシュ注文」は、発送代行・3PLの出荷処理能力を短時間で圧迫するリスクがあります。平常時の出荷数に対して数倍〜数十倍の注文が短期間に集中するケースは、自社での出荷体制では対応しきれないことが多く、外部3PLを活用することで波動出荷に対応できる体制を構築することが重要になります。
また、SNS経由の衝動買い注文は返品率が計画購買型と比べてやや高くなりやすい傾向があります。購入後に「冷静になって考えると必要なかった」という心理が生じやすいためです。返品・交換への対応体制を整えておくことが、SNS集客を積極的に行うEC事業者には特に重要なポイントとなります。
購買意欲に影響するSNS・動画——年代別特性とEC事業者の読み方
SNSが購買意欲に与える影響は、年齢層によって大きく異なります。アスマーク調査(2025年3月)では、衝動買いの購買意欲に影響を与えた情報源として「SNSの投稿・広告(Instagram・X・TikTokなど)」と「動画コンテンツ(YouTube・動画配信サービスなど)」が高い影響力を持つことが確認されています。性年代別では、SNSの投稿・広告の影響力が女性の20代・30代に顕著で、動画コンテンツは男性の20代・30代で特に高い影響を示しています。
衝動買いの商品カテゴリ(アスマーク調査・2025年3月)には明確な性差があり、男性の1位は「食品・飲料」、女性の1位は「ファッション(服・靴・バッグなど)」、次いで「美容・コスメ」という結果が出ています。これはEC事業者が取り扱う商品カテゴリと、注力すべきSNSプラットフォーム・クリエイティブ戦略を考える際の重要な判断材料になります。
年代別SNSプラットフォームの利用傾向と購買カテゴリ特性
また、PRIZMA調査(2025年5月)では、Z世代ではInstagramの利用率が高水準(61.16%)を維持する一方、X(旧Twitter)の利用率がZ世代で減少傾向(57.4%→52.5%)にあります。TikTokはZ世代全体では横ばい傾向ですが、「ファッション・美容」への関心はZ世代で大幅増加(35.4%→47.3%)しており、インフルエンサーではなく自分と同じ消費者目線のコンテンツへの共感が購買を後押しするケースが増えています。
EC事業者の物流面では、こうした性年代別の購買傾向の違いが梱包仕様や梱包資材の選定に直結します。女性向けファッション・コスメ商品はブランドロゴ入り梱包・同梱物(サンクスカード・試供品)への期待が高い傾向があります。一方、食品・飲料は配送スピードと梱包強度が優先されます。SNS広告経由の衝動買い需要を物流面で最大化するには、商品カテゴリ・ターゲット層に応じた梱包仕様の最適化が欠かせません。
EC事業者が取るべき対応:衝動買い型需要を物流で活かす実践策
2025年の調査データが示す購買行動の変化を踏まえ、EC事業者が物流面で取るべき具体的な対応を整理します。「計画消費8割・衝動買い1割未満」という調査結果は、衝動買い型需要が「少ない」ことを示しているのではなく、衝動買い型の注文を適切に設計・捕捉するための戦略がより重要になったことを示しています。
①送料無料ラインの戦略的な設計
衝動買いの許容額「3,000円未満」と送料無料ラインの交差を意識した価格・物流設計が重要です。3,000円未満の商品を送料無料ラインに引き上げるための「おまけ購入」を促す設計(関連商品レコメンド・カート内表示)は、注文単価の向上と同時に物流コストの分散にも寄与します。ただし、送料無料ライン設定の変更は物流アウトソーシングコストの再計算と一体で行うことが重要です。STOCKCREWでは1出荷あたりの費用シミュレーションをEC事業者と共同で行い、送料無料ラインの最適設計を支援しています。
②SNS経由の波動注文への対応体制構築
SNS広告・インフルエンサー投稿がバズった際に発生する突発的な注文集中(フラッシュ需要)への対応は、自社出荷体制では物理的に限界があります。専門の3PL物流を活用することで、通常期の数倍規模の出荷にも人員・設備を柔軟に対応させることが可能です。キャンペーン実施前には、発送代行会社への事前通知と必要な入荷・在庫確保を行うことが重要です。特に、SNS施策のローンチタイミングと在庫入荷タイミングを合わせる「物流連携の事前設計」が、機会損失を防ぐ鍵となります。なお、国土交通省によれば宅配便の取扱個数は令和5年度に約50億個にのぼっており、EC拡大に伴う物流への負荷は構造的に増大しています。SNS施策の急拡大が物流現場を直撃するリスクを想定した体制設計が欠かせません。
③衝動買い後の返品・交換体制の整備
SNS経由の衝動買い注文はリターン率が計画購買型と比べてやや高くなりやすいため、スムーズな返品・交換体制が顧客満足度に直結します。なお、消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、通信販売では商品受領後8日以内の返品・契約解除が原則可能です(事業者があらかじめ返品特約を広告に表示していた場合はその特約が優先)。返品ポリシーは法的要件を踏まえた上で設計し、返品ラベルの同梱・返品専用ポータルの設置・返品後の迅速な在庫再整備まで一貫した体制を整えることが重要です。発送代行会社が返品処理(入庫・検品・再出荷可否判定)まで一元対応できるかどうかは、SNS集客を積極的に行うEC事業者にとって業者選定の重要な判断軸となります。
④計画購買型顧客への出荷品質の安定化
全体の8割を占める計画購買型顧客は、比較検討を経て購入しているため、商品・梱包・配送に対する期待値が高い傾向があります。WMSと連携した在庫精度の維持・誤出荷率の低減・EC物流品質のKPI管理を継続的に行うことが、リピート購入率と口コミ評価を高める基盤になります。
まとめ:「慎重消費」主流時代のEC物流戦略
2025年の調査データが示す消費者行動の実態は、EC事業者にとって二つの重要なメッセージを含んでいます。一つは「EC購買の8割は計画的であり、出荷品質の高さがリピートを生む」こと。もう一つは「SNS広告が依然として衝動買いの主要経路であり、波動対応と返品体制が差別化要因になる」ということです。
衝動買い許容額「3,000円未満が過半数」という数字は、低単価商品の物流コスト管理の難しさを改めて示しています。送料設計・梱包コスト・返品対応コストを含めた1注文あたりの収益構造を精緻に設計するためには、信頼できる発送代行パートナーとの連携が欠かせません。消費者行動が変化する中でも、「確実に届ける」「問題を素早く解決する」という物流の本質的な価値はますます重要性を増しています。
よくある質問(FAQ)
Q. EC利用者の衝動買いの割合はどのくらいですか?
2025年10月に公表された調査(あるるモール・株式会社システムリサーチ、全国300名対象)によれば、EC利用者の約8割が「計画的に購入している」と回答し、衝動的に購入する人は1割未満にとどまることが明らかになっています。ただし、SNS広告経由の購入に限ると、約7割が「広告を見る前は買う予定がなかった」と回答しており、SNS文脈では衝動買いが依然として主要な購買経路となっています。
Q. 衝動買いの許容金額で最も多いのはどの価格帯ですか?
株式会社迅が2023年8月に実施した調査(全国300名対象)によれば、「衝動買いをしやすい値段の許容範囲」として3,000円未満が過半数という結果が出ています。この価格帯は多くのECサイトが設定する送料無料ラインとも交差しており、「送料無料まであと少し」という動機が追加の衝動買いを促すケースも多く報告されています。
Q. SNS広告が購買行動に与える影響はどのくらいですか?
株式会社PRIZMAが2025年5月に実施した調査(Z世代・Y世代・X世代の621名対象)では、SNS広告経由で購入した商品について「広告を見る前から買う予定はなかった」と回答した割合が全年代を通じて約7割に達しています。これはSNS広告が新たな購買需要を創出する媒体として機能していることを示しており、2024年から2025年にかけて一貫した傾向として確認されています。
Q. SNS経由の衝動買い注文が増えると物流にどんな影響がありますか?
SNS広告・インフルエンサー投稿がバズった際には「フラッシュ注文」と呼ばれる突発的な注文集中が発生します。これは自社物流体制では対応しきれないケースが多く、機会損失や出荷遅延につながるリスクがあります。外部3PL(発送代行)を活用することで、通常期の数倍規模の出荷にも柔軟に対応できる体制を構築できます。また、SNS経由の衝動買い注文はリターン率がやや高い傾向があるため、返品対応体制の整備も重要です。
Q. 計画購買型と衝動買い型では物流設計はどう変えるべきですか?
計画購買型(全体の8割)は比較検討を経た購入のため、出荷精度・在庫管理・梱包品質の安定性が顧客満足度に直結します。一方、衝動買い型(1割未満)は購入後の気持ちの変化から返品リスクがやや高く、配送スピードへの期待も高い傾向があります。発送代行サービスを活用する際は、日常的な出荷品質の安定化と、SNS施策時の波動対応力の両方を担保できる業者選定が重要になります。
この記事の監修者
仲井暉人
株式会社KEYCREW オペレーション部DX推進リーダー。IT業界でシステムエンジニアとして客先常駐・受託開発に約1年従事した後、KEYCREWに入社。現在は物流の仕組みづくりと改善を担当し、現場とシステムの両面から効率的な物流設計を支援している。倉庫出荷件数10倍拡大に伴うシステム連携・アーキテクチャ設計、自社ハンディ端末の機能設計・開発・導入、YFF移管1,000社超のシステム移管責任者として大規模プロジェクトを完遂。高負荷になるDB・インフラの見直しにより月額50万円のコスト削減も実現した。「心頭滅却」を信条に、バックエンド・フロントエンド・インフラの幅広い技術領域をカバーし、WMS・倉庫DX・庫内効率化・自動化技術に関する実装経験に基づいた記事を発信している。