2026年度の都道府県別最低賃金が出そろう|10月発効に向けた発送拠点の人件費点検【2026年8月】
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倉庫での入出荷やピッキング、梱包といった作業は、多くをパート・アルバイトの人手が支えています。その時給の下限を決めるのが最低賃金です。2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,176円となる目安が示されました。前年度からの引き上げ幅は55円(4.9%)で、8月にかけて各都道府県の審議会が答申を出しそろえ、10月ごろから順次発効します。引き上げ幅はランク別にAが54円、B・Cが56円で、どの都道府県に発送拠点を置くかによって人件費の水準も上がり幅も変わります。自社で出荷を行うEC事業者にとって、これは出荷1件あたりのコストに直結する話です。この記事では、公表された一次情報をもとに、最低賃金の上昇がEC出荷コストに効く仕組みと、人件費に左右されにくい出荷体制のつくり方を整理します。
2026年度の最低賃金の目安とは
最低賃金と「目安」の関係
最低賃金は、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の下限額で、都道府県ごとに時給で定められています。毎年度、まず国の中央最低賃金審議会が引き上げの「目安」を示し、それを踏まえて各都道府県の地方最低賃金審議会が実際の金額を答申し、発効する、という二段構えで決まります。目安は全国一律の金額ではなく、都道府県を経済実態に応じてA・B・Cの3ランクに分け、ランクごとに引き上げ額の目安を示す仕組みです。
2026年度の目安が示された
2026年度については、2026年7月28日に中央最低賃金審議会が目安を取りまとめました。目安どおりに各都道府県が改定した場合、全国加重平均は1,176円となり、前年度から55円(4.9%)の引き上げとなります。金額の下限が全国的に底上げされることになり、時給で人を雇う出荷現場には直接効いてきます。
令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安について、全国加重平均で1,176円(対前年度55円の引き上げ)となる目安を提示。ランク別の目安額はAランク54円、B・Cランク56円。
参考までに、現行の2025年度(令和7年度)の全国加重平均は1,121円で、前年度から66円引き上げられ、全都道府県で1,000円を超えました。2026年度はここからさらに55円上乗せされる見込みで、時給1,100円台後半が全国的な下限になっていきます。
目安の中身:全国1,176円とランク別の引き上げ
ランク別の引き上げ額
2026年度の目安では、引き上げ額がAランクで54円、Bランクで56円、Cランクで56円とされました。対象はAランクが6都府県、Bランクが28道府県、Cランクが13県です。特徴は、地方が多く含まれるB・Cランクの引き上げ額(56円)が、東京・大阪などの大都市を含むAランク(54円)を上回っている点です。これは地域間の格差を縮める方向の目安で、地方に発送拠点を置く事業者ほど、引き上げ率としては大きな影響を受ける可能性があります。
「地域差」と「上がり幅の差」の両方を見る
最低賃金は、金額の水準そのものに地域差があるうえに、毎年の上がり幅にも差があります。たとえば大都市は水準が高い一方で今年の上げ幅は相対的に小さく、地方は水準が低い一方で上げ幅が大きい、という具合です。発送拠点をどこに置くか、複数拠点をどう配置するかを考えるときは、現在の時給水準と、今後の上がり方の両方を見ておく必要があります。最低賃金の全体像は最低賃金2026年度の目安もあわせて確認できます。
都道府県別に「出そろう」までの流れと発効
目安から発効までの二段構え
国の目安はあくまで「目安」であり、実際の金額は各都道府県の地方最低賃金審議会が決めます。目安が示されたあと、8月にかけて各地の審議会が審議し、都道府県ごとの改定額を答申します。これが順に出そろい、その後10月ごろから順次発効します。つまり8月は「金額が固まっていく時期」、10月は「実際に時給の下限が上がる時期」という関係です。発効日は都道府県ごとに異なるため、複数拠点を持つ事業者は拠点ごとに確認が必要です。
地域別最低賃金の全国一覧。各都道府県の最低賃金額と発効年月日を掲載。令和7年度の全国加重平均は1,121円で、全都道府県で1,000円を超えた。
確定額はどこで確認できるか
2026年度の都道府県別の確定額と発効日は、答申・公示を経て、厚生労働省や各労働局のサイトで順次公表されます。自社の発送拠点がある都道府県の金額と発効日を、9月までに確認しておくと、10月からの人件費の見込みを立てやすくなります。なお参考として、現行の東京都最低賃金は時間額1,226円(令和7年10月3日発効)で、目安どおりに54円引き上げられれば1,280円程度になる計算です(確定額は答申・公示で決まります)。時給の上昇は求人の相場にも波及し、人手の確保しやすさにも影響します。人手不足と出荷体制の関係は完全失業率と人手不足下のEC出荷体制に整理しています。
最低賃金の上昇が発送拠点の人件費に効く仕組み
下限が上がれば全体が押し上げられる
最低賃金はあくまで「下限」ですが、下限が上がると、その少し上の時給帯もつられて上がります。最低賃金ぎりぎりで募集していた求人はもちろん、それより高い時給で人を集めていた現場も、相場の底上げに引きずられます。結果として、出荷作業にかかる人件費は最低賃金の上昇率以上に上がることも珍しくありません。とくに繁忙期に短期の人員を集める場合、相場より高い時給を提示しないと応募が集まらず、上昇分がそのまま出荷コストに乗ります。
「1件あたり」で見ると影響が見える
人件費の上昇は、総額だけでなく出荷1件あたりのコストで見ると影響がはっきりします。たとえば時給が5%上がれば、同じ作業量でも1件あたりの人件費は5%増えます。ここに配送費や資材費の上昇が重なると、送料無料や価格を据え置いたままでは利益がじわじわ削られます。自社発送に実際いくらかかっているかは自社発送のコストを可視化する実務ガイドで、1件あたりコストの下げ方はCPO削減の実務で確認できます。
目安どおりに4.9%の引き上げが実現した場合、出荷にかかる人件費がどの程度増えるかを、簡単な例で示します。あくまで単純化した目安ですが、据え置いた価格や送料無料ラインでは、この増分がそのまま利益から差し引かれることがわかります。
| 月間出荷件数 | 1件あたり人件費(現行の例) | 4.9%上昇後 | 月間の増加額の目安 |
|---|---|---|---|
| 1,000件 | 150円 | 約157円 | 約7,000円 |
| 3,000件 | 150円 | 約157円 | 約2万1,000円 |
| 5,000件 | 150円 | 約157円 | 約3万5,000円 |
金額そのものは小さく見えても、毎年積み上がる点が重要です。最低賃金は毎年引き上げられるため、価格や送料を据え置いたままだと、人件費の上昇分だけ利益率がじわじわ低下していきます。
人件費上昇に強い出荷体制のつくり方
まず自社の出荷人件費を数える
対策の第一歩は、出荷にどれだけの人件費がかかっているかを実額で把握することです。月間の出荷にかかった作業時間と時給から、出荷1件あたりの人件費を出しておくと、最低賃金の引き上げが自社の採算にどれだけ効くかを具体的に見積もれます。感覚で「なんとなく上がった」ではなく、数字で押さえることが、対策の精度を決めます。物流コストの内訳管理はEC物流コストの可視化と削減実務ガイドが役立ちます。
固定費を変動費に変える
人件費上昇への根本的な備えは、出荷にかかる費用を固定費から変動費に変えることです。自社で人を雇って出荷を回すと、最低賃金の引き上げや採用難の影響を正面から受けます。出荷を発送代行に委ねれば、人員の採用・教育・シフト管理を外部に任せ、出荷量に応じた費用だけを払う形にできます。時給が上がっても自社で人を抱えていなければ、その影響を直接受けにくくなります。閑散期に固定人件費が利益を圧迫することもありません。
| 対処法 | 最低賃金上昇局面での効き方 | 留意点 |
|---|---|---|
| 時給を上げて採用を続ける | 影響を正面から受ける | 採用難で応募が集まりにくい |
| 作業を効率化・自動化する | 1件あたりの作業時間を圧縮 | 初期投資と改善の手間がかかる |
| 発送代行に外部化する | 影響を受けにくい(変動費化) | 業者選びと連携設計が鍵 |
上がった人件費を価格に反映する
もう一つ忘れてはならないのが、上がった人件費を取引価格や販売価格に反映することです。国も、労務費の上昇分を適切に価格へ転嫁できるよう、価格交渉の環境整備を進めています。BtoBで卸している事業者は取引先との価格交渉、消費者向けに販売している事業者は送料や価格の見直しを、最低賃金の改定にあわせて検討する必要があります。コストを内部で吸収し続けるだけでは、いずれ利益が持ちません。
中小企業が労務費や原材料費などのコスト上昇分を適切に価格へ転嫁できるよう、価格交渉・価格転嫁の環境整備を進めている。
拠点の置き方も選択肢になる
複数拠点や新規拠点を検討している場合は、地域ごとの最低賃金水準も判断材料の一つになります。ただし、人件費だけで拠点を選ぶと、配送リードタイムや採用のしやすさとのバランスを欠くことがあります。発送代行を使えば、こうした拠点戦略や人員確保を自社で抱え込まずに、出荷量の増減にあわせて体制を伸縮させられます。出荷量が増えたときの体制設計はEC出荷量の段階別物流設計に、切り替えの損益分岐は発送代行の損益分岐シミュレーションに整理しています。STOCKCREWの対応範囲はSTOCKCREW完全ガイドで確認できます。
まとめ:時給の下限が上がる前提で設計する
2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,176円(前年度比55円・4.9%の引き上げ)となる目安が示され、8月にかけて各都道府県の答申が出そろい、10月ごろから順次発効します。引き上げ幅はAランク54円、B・Cランク56円で、地方を含むB・Cの上げ幅が大都市のAを上回る構図です。最低賃金は下限ですが、下限が上がれば周辺の時給帯も押し上げられ、出荷作業の人件費は上昇率以上に増えることもあります。EC事業者に必要なのは、「時給の下限は毎年上がる」ことを前提に出荷体制を組み直すことです。まず出荷1件あたりの人件費を実額で把握し、効率化や、必要なら発送代行への外部化で固定費を変動費に変える。自社の発送拠点がある都道府県の確定額と発効日は、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」で順次確認できます。人件費に左右されにくい出荷体制のご相談はお問い合わせや資料ダウンロードから承っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 2026年度の最低賃金はいくらになりますか?
A. 2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、目安どおりに各都道府県が改定した場合、全国加重平均で1,176円となります。前年度の1,121円から55円(4.9%)の引き上げです。実際の金額は都道府県ごとに異なり、各地の審議会の答申を経て確定します。
Q. ランク別の引き上げ額はどうなっていますか?
A. 引き上げ額の目安は、Aランクが54円、Bランクが56円、Cランクが56円です。対象はAランクが6都府県、Bランクが28道府県、Cランクが13県で、地方を多く含むB・Cランクの引き上げ額が、大都市を含むAランクを上回っています。地域間の格差を縮める方向の目安です。
Q. 新しい最低賃金はいつから発効しますか?
A. 目安が示されたあと、8月にかけて各都道府県の審議会が改定額を答申し、順に出そろいます。その後、10月ごろから都道府県ごとに順次発効します。発効日は都道府県によって異なるため、発送拠点がある地域の金額と発効日を個別に確認する必要があります。
Q. 最低賃金の上昇はEC出荷にどう影響しますか?
A. 倉庫の入出荷や梱包はパート・アルバイトの人手が支えているため、時給の下限が上がると出荷作業の人件費が増えます。最低賃金は下限ですが、下限が上がると周辺の時給帯も押し上げられ、出荷1件あたりのコストは上昇率以上に増えることもあります。送料や価格を据え置いたままだと利益が削られます。
Q. 人件費の上昇に強い出荷体制にするには?
A. まず出荷1件あたりの人件費を実額で把握します。そのうえで、作業の効率化や、出荷を発送代行に外部化して固定費を変動費に変える方法が有効です。自社で人を雇って出荷を回すと最低賃金の引き上げや採用難の影響を正面から受けますが、外部化すればその影響を受けにくくなり、閑散期の固定費負担も避けられます。
この記事の監修者
保阪涼子
株式会社KEYCREW 営業部長。物流会社で10年間、EC物流の現場担当・営業事務を経験し、EC・物流業界で通算10年以上のキャリアを持つ。STOCKCREWではサービス開始初期から商談を担当し、500社以上のEC事業者への導入支援を一貫して手がけてきた。YFF(Yahoo!フルフィルメント)移管時には1,000社超の顧客接点・フロー設計を主導。月間10万件以上の出荷管理に携わり、顧客の物流費を平均15%削減する成果を上げている。成約率50%を達成した営業手法には、「『売る』より『解く』」という顧客課題解決型のアプローチが根底にある。物流メディア(Logistics Today、ECのミカタ)へのインタビュー掲載実績も持つ。