6月貿易統計は輸入25.4%増で2か月連続赤字|円安下のEC仕入れ原価と価格・送料設計【2026年8月】
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「仕入れ値がまた上がった」「同じ商品なのに原価が去年より高い」——輸入品や輸入部材を扱うEC事業者にとって、仕入れ原価の上昇は利益を直接削る悩みです。その背景を映すのが、財務省が2026年7月22日に公表した貿易統計(2026年6月分・速報)です。輸入額は11兆3,359億円で前年同月比25.4%増、輸出額は10兆9,290億円で19.3%増となり、差し引きの貿易収支は4,069億円の赤字で2か月連続のマイナスでした。輸入額が膨らんでいる主因は、原油をはじめとする資源価格の高止まりと、円安による輸入コストの押し上げです。輸入物価が上がれば、仕入れ原価から販売価格、そして送料や在庫の持ち方まで、EC事業者の採算全体に波及します。この記事では、公表された一次情報をもとに、輸入コスト上昇がどこに効き、どう手を打てばよいかを整理します。
貿易統計と2026年6月分の結果
貿易統計とは
まず指標の性格を押さえます。貿易統計は、財務省が税関の通関実績をもとに毎月公表する、日本の輸出入の動きをとらえる統計です。輸出額から輸入額を差し引いたものが貿易収支で、プラスなら黒字、マイナスなら赤字です。金額は「価格×数量」で決まるため、円安で輸入価格が上がったり、原油など資源価格が上がったりすると、数量が同じでも輸入額は膨らみます。EC事業者にとっては、仕入れ原価が今後どちらに動きやすいかを読むうえでの土台になります。
2026年6月分の結果
2026年7月22日に公表された速報を見ると、輸入額は11兆3,359億円で前年同月比25.4%の増加(5か月連続の増加)、輸出額は10兆9,290億円で19.3%の増加(10か月連続の増加)でした。輸出も伸びていますが、輸入の伸びがそれを上回り、貿易収支は4,069億円の赤字で2か月連続のマイナスとなりました。輸出より輸入のほうが速く増えている点が、原価上昇圧力を示しています。
令和8年6月分の速報。輸出金額10兆9,290億円(+19.3%、10か月連続の増加)、輸入金額11兆3,359億円(+25.4%、5か月連続の増加)、貿易収支は4,069億円の赤字。
貿易収支の赤字そのものは景気の良し悪しを一義的に決めるものではありません。ただEC事業者にとって重要なのは、輸入額が数量ではなく価格の要因で膨らんでいる点です。数量が増えたのなら需要が旺盛という前向きな解釈もできますが、価格の上昇で金額が膨らんでいる場合は、同じ量を仕入れるのに以前より多くの支払いが必要になっているという意味になります。つまりこの数字は、仕入れ側にとってのコスト増を映す鏡でもあります。次章で見るように、その中身は仕入れ原価の先行きに直結します。
なぜ輸入額が膨らんでいるのか
資源価格の高止まりと円安
輸入額を押し上げている中心は、資源とハイテク部材です。6月は原油が前年同月比59.3%増と大きく伸び、半導体等電子部品が49.2%増、非鉄金属が74.4%増となりました。原油や資源は、企業が使う量を短期で大きく減らせないため、価格が上がるとそのまま輸入額に効きます。加えて円安が進むと、同じドル建て価格でも円換算した仕入れコストは重くなります。「資源高×円安」の二重の押し上げが、輸入額の膨張の正体です。
令和8年6月分(速報)の輸入で、原油は前年同月比59.3%増、半導体等電子部品は49.2%増、非鉄金属は74.4%増となった。
これらは一見、EC事業者と縁遠く見えます。しかし原油は物流の燃料費や梱包資材(プラスチック)の原料に、電子部品は家電・ガジェットの部材に、非鉄金属は幅広い工業製品の材料になります。川上の資源高は、時間差で川下の仕入れ値に伝わってきます。燃料コストの動きは燃料補助金の見直しと配送費への波及もあわせて確認しておくとよいでしょう。国内の給油所価格の推移は資源エネルギー庁の石油製品価格調査で確認できます。
円安がコストを底上げする
もう一つの要因が為替です。円安が進むと、海外の価格が同じでも、円に換算した仕入れ額は増えます。輸入品を扱うEC事業者にとって、円安は「何もしなくても原価が上がる」状況を生みます。輸出企業には追い風でも、輸入に頼る小売・EC側にはコスト増として跳ね返るのが円安の非対称な効き方です。円相場の推移は日本銀行の外国為替相場データで確認できます。為替は自社で動かせない外部要因だからこそ、価格・在庫・物流という自社で動かせる部分で採算を守る発想が重要になります。
輸入コスト上昇がEC事業者に伝わる経路
粗利が静かに削られる
輸入原価の上昇が怖いのは、売価を変えなければ、気づかないうちに粗利が削られていく点です。仕入れ値が5%上がっても売価が同じなら、その5%はまるごと利益から差し引かれます。とくに原価率の高い商材ほど影響が大きく、少しの原価上昇で利益が吹き飛ぶこともあります。まずは自社の原価率の計算方法を確認し、仕入れ値の変化が利益にどう効くかを数字で把握することが出発点です。
輸入・仕入れのコスト構造を見える化する
輸入品を扱う場合、仕入れ原価は商品代金だけでなく、関税・国際輸送費・決済コストなどの積み上げで決まります。円安局面ではこれらすべてが同時に膨らむため、「どこがどれだけ効いているか」を分解しておくと打ち手を絞れます。輸入決済の仕組みは信用状(L/C)の仕組みとコストで、販売価格への落とし込みは仕入れ単価と販売価格の決め方で整理できます。
仕入れ原価の上昇を価格にどう反映するか
一律値上げより「メリハリ」で
原価が上がったからといって全商品を一律に値上げすると、価格に敏感な顧客が離れます。効くのは、原価上昇の大きい商品に絞って売価を見直し、影響の小さい商品は据え置くというメリハリです。原価率の高い商材から優先的に手を入れ、値上げの理由を丁寧に伝えれば、納得感を保ちながら粗利を守れます。価格転嫁そのものの進め方は価格転嫁の実務に、物価高局面での価格戦略は物価上昇下のEC価格戦略にまとめています。
| 打ち手 | ねらい | やりすぎたときのリスク |
|---|---|---|
| 原価上昇の大きい商品を値上げ | 粗利を効率よく守る | 説明不足だと客離れ |
| 送料無料ラインの引き上げ | まとめ買いで送料を回収 | 「あと少し」が届かずカゴ落ち |
| セット・同梱販売 | 1件あたりの利益を厚くする | 不要な抱き合わせで不信感 |
| 内容量・仕様の見直し | 実質的な価格調整 | 品質低下と受け取られる恐れ |
送料の設計とセットで考える
原価が上がる局面では、送料の負担が購入の最後のひと押しを妨げやすくなります。客単価と送料無料ラインをセットで設計することで、まとめ買いを促しながら送料を回収できます。送料の考え方は送料の設定で、料金体系の全体像は物流の料金体系で確認できます。値上げ一辺倒ではなく、送料と単価の設計で「支払いの納得感」を保つことが、原価上昇局面で客数を落とさない鍵になります。
値上げは「タイミング」と「伝え方」で受け止めが変わる
同じ値上げでも、いつ・どう伝えるかで顧客の受け止めは大きく変わります。原価が上がってから慌てて上げるより、先に告知して余裕をもって切り替えるほうが、不信感を招きにくくなります。値上げ前に「◯月から価格を改定します」と予告すれば、既存顧客の駆け込み需要も取り込めます。伝え方としては、単に「値上げします」ではなく、原材料や輸送費の上昇という背景を具体的に説明することが有効です。理由が腑に落ちれば、消費者は価格の変化を受け入れやすくなります。逆に、こっそり内容量を減らすといった不透明な調整は、気づかれたときの信頼低下が大きく、長い目で見ると損になりがちです。原価上昇局面ほど、価格の変更を誠実に開示する姿勢が、リピーターとの関係を守ります。
在庫と物流コストで利益を守る
「価格転嫁」と「コスト削減」は両輪
原価上昇に値上げだけで対応しようとすると、客離れのリスクが高まります。だからこそ、価格の見直しと物流コストそのものの削減を両輪で進めるのが現実的です。1件あたりの送料・梱包費・保管費を下げられれば、値上げ幅を小さく抑えられ、価格競争力を保てます。出荷コストの内訳管理はEC物流コストの可視化と削減実務ガイドで、1件あたりコストの下げ方はCPO削減の実務で確認できます。
在庫の持ちすぎ・持たなすぎを避ける
原価が上がる局面では、在庫の持ち方が利益を左右します。値上がりを見越して仕入れすぎれば、資金が在庫に固定され、保管費もかさみます。逆に切らせば販売機会を逃します。売れ筋と滞留在庫を見分け、適正な水準で回すことが重要です。円安・資源高がいつまで続くかを完全に読むことはできないため、過度な先買いに賭けず、回転で利益を積むのが堅実です。
| 在庫の判断 | メリット | リスク・留意点 |
|---|---|---|
| 値上がり前提で多めに仕入れる | 原価上昇を先取りで回避 | 資金が固定・保管費増・読み外れ |
| 回転重視で小まめに仕入れる | 在庫リスクを抑え資金を確保 | 発注頻度と物流手間が増える |
| 売れ筋に絞って厚く持つ | 欠品による機会損失を防ぐ | 死に筋の見極めが前提 |
出荷を発送代行に委ねて保管と出荷を一体で最適化すれば、保管効率と出荷品質を同時に高められます。出荷量の増減に応じた体制設計はEC出荷量の段階別物流設計に、対応範囲はSTOCKCREW完全ガイドにまとめています。固定費を変動費に変えることで、原価が読みにくい局面でも損益を安定させやすくなります。
まとめ:原価上昇を前提に採算を組み直す
2026年6月の貿易統計は、輸入額が前年同月比25.4%増、貿易収支は2か月連続の赤字となりました。輸入額を押し上げているのは原油や電子部品などの資源・部材で、資源高と円安の二重の圧力が仕入れ原価に効いています。この流れは時間差でEC事業者の仕入れ値・資材費・燃料費に伝わり、売価を変えなければ粗利を静かに削っていきます。打ち手は、①原価率を把握して影響の大きい商品から売価を見直す、②送料無料ラインと客単価をセットで設計する、③在庫と物流コストの両輪で利益を守る、という順です。円安・資源高の先行きは読み切れないからこそ、過度な先買いに賭けず、原価上昇を前提に採算を組み直すことが、この局面を乗り切る現実的な備えになります。まずは主力商材の原価率と、仕入れ値が数%動いたときの利益への影響を試算し、値上げ・送料・在庫のどれで、どの順に吸収していくかを決めておきましょう。備えを先に決めておけば、原価が動いても慌てずに対応できます。出荷体制や保管の見直し、外部化の具体的なご相談はお問い合わせや資料ダウンロードから承っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 貿易統計とは何ですか?
A. 財務省が税関の通関実績をもとに毎月公表する、日本の輸出入の動きをとらえる統計です。輸出額から輸入額を差し引いたものが貿易収支で、プラスなら黒字、マイナスなら赤字です。金額は価格×数量で決まるため、円安や資源高で輸入価格が上がると、数量が同じでも輸入額は膨らみます。EC事業者にとっては仕入れ原価の先行きを読む土台になります。
Q. 2026年6月の貿易統計はどんな結果でしたか?
A. 速報で輸入額は11兆3,359億円と前年同月比25.4%増(5か月連続増)、輸出額は10兆9,290億円で19.3%増(10か月連続増)でした。輸入の伸びが輸出を上回り、貿易収支は4,069億円の赤字で2か月連続のマイナスとなりました。
Q. なぜ輸入額が膨らんでいるのですか?
A. 中心は資源とハイテク部材です。6月は原油が前年同月比59.3%増、半導体等電子部品が49.2%増、非鉄金属が74.4%増となりました。原油や資源は短期に使う量を減らせないため価格上昇がそのまま輸入額に効き、加えて円安が円換算の仕入れコストを押し上げます。
Q. 輸入原価の上昇はEC事業者にどう影響しますか?
A. 原油は燃料費や梱包資材の原料、電子部品は家電・ガジェットの部材というように、川上の資源高は時間差で川下の仕入れ値に伝わります。売価を変えなければ、上がった原価はそのまま粗利から差し引かれます。原価率の高い商材ほど影響が大きく、利益が静かに削られていきます。
Q. 原価上昇に対して何から手を打てばよいですか?
A. まず原価率を把握し、仕入れ値の変化が利益にどう効くかを数字で確認します。そのうえで、原価上昇の大きい商品に絞って売価を見直し、送料無料ラインと客単価をセットで設計します。あわせて送料・梱包・保管などの物流コストを削減し、在庫の持ちすぎ・持たなすぎを避けて回転で利益を積むことが有効です。
この記事の監修者
保阪涼子
株式会社KEYCREW 営業部長。物流会社で10年間、EC物流の現場担当・営業事務を経験し、EC・物流業界で通算10年以上のキャリアを持つ。STOCKCREWではサービス開始初期から商談を担当し、500社以上のEC事業者への導入支援を一貫して手がけてきた。YFF(Yahoo!フルフィルメント)移管時には1,000社超の顧客接点・フロー設計を主導。月間10万件以上の出荷管理に携わり、顧客の物流費を平均15%削減する成果を上げている。成約率50%を達成した営業手法には、「『売る』より『解く』」という顧客課題解決型のアプローチが根底にある。物流メディア(Logistics Today、ECのミカタ)へのインタビュー掲載実績も持つ。