完全失業率2.5%・人手不足下のEC出荷体制|自社発送の限界と発送代行への切替判断【2026年8月】
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「求人を出しても応募が来ない」「繁忙期のパートが埋まらない」——EC事業者の出荷現場でいま最も切実な悩みが、人手の確保です。その背景を客観的に示すのが、総務省が2026年7月31日に公表した労働力調査(基本集計・2026年6月分)です。完全失業率は2.5%と歴史的な低水準で推移し、4〜6月期平均の就業者数は6,880万人と前年同期より44万人増えました。失業率が低いということは、一見すると景気が良く聞こえます。しかし出荷現場から見れば、これは「働き手が余っていない」=採用がますます難しいという現実の裏返しです。人が採れなければ、受注が伸びても出荷が回らず、遅延や誤出荷、経営者自身の疲弊につながります。この記事では、公表された一次情報をもとに、人手不足がEC出荷に及ぼす影響と、自社発送から発送代行へ切り替える判断基準を整理します。
労働力調査と2026年6月分の結果
労働力調査とは
まず指標の性格を押さえます。労働力調査は、総務省統計局が毎月公表する、就業・失業の状況をとらえる基幹統計です。15歳以上の人口を「就業者」「完全失業者」「非労働力人口」に分け、そのうち労働力人口(就業者+完全失業者)に占める完全失業者の割合が完全失業率です。完全失業者とは、仕事がなく、実際に求職活動をしていて、すぐ働ける人を指します。EC事業者にとっては、パートやアルバイトを含む働き手をどれだけ確保しやすいかを映す物差しになります。
2026年6月分の結果
2026年7月31日に公表された結果を見ると、完全失業率(季節調整値)は2.5%でした。4〜6月期平均では、就業者数は6,880万人と前年同期に比べ44万人の増加、完全失業者数は185万人と3万人の増加、完全失業率(原数値)は2.6%で前年同期と同率です。就業者は増え続け、失業率は2%台半ばの低水準にとどまっています。
労働力調査(基本集計)2026年(令和8年)6月分及び4〜6月期平均。完全失業率、就業者数、完全失業者数等の結果を公表。
働き手を採れるかどうかをより直接に示すのが、求人数と求職者数の比である有効求人倍率です。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2026年5月の有効求人倍率は1.17倍で、1人の求職者に1件超の求人がある状態が続いています。とくに運輸・倉庫といった現場職は募集をかけても応募が集まりにくく、EC出荷の担い手の確保は年々難しくなっています。
令和8年5月の有効求人倍率は1.17倍。求職者1人あたりの求人数が1倍を上回る状態が続いている。
低い失業率が示す「人が採れない」構造
失業率2.5%は「人余り」ではない
完全失業率2.5%という数字は、裏を返せば働ける人のほとんどが、すでにどこかで働いている状態を意味します。募集をかけたときに応募してくれる「余っている働き手」がそもそも少ないため、時給や条件を上げても人が集まりにくくなります。景気の指標としては明るい数字でも、採用する側にとっては厳しい環境です。
構造的な担い手不足が背景にある
この人手不足は一時的なものではなく、生産年齢人口の減少という構造的な要因が背景にあります。物流や倉庫の現場は、EC市場の拡大で荷物が増える一方、担い手は減っていく「需要増・供給減」のはさみ状の圧力にさらされています。倉庫・物流の人手不足がこの先どう深刻化するかは倉庫・物流の人手不足は2026年以降どう深刻化するかに整理しています。採用難に加えて、最低賃金の引き上げによる人件費上昇も重なります。時給水準の動きは最低賃金2026年度の目安もあわせて確認しておくとよいでしょう。
「採れないのに人件費は上がる」二重の圧力
いまEC事業者が直面しているのは、採用は難しくなる一方で、一人あたりの人件費は上がり続けるという二重の圧力です。最低賃金は毎年引き上げられ、繁忙期に短期の人員を集めようとすれば、相場より高い時給を提示しないと応募が集まりません。求人広告費も年々かさみます。つまり「頑張って採用する」という従来の対処は、コスト面でも成立しにくくなっています。物価高が消費者の財布に与える影響もあわせて見ると需要側の全体像がつかめます(物価上昇下のEC価格戦略)。人件費が上がるほど、出荷1件あたりのコストは自社出荷のほうが割高になりやすく、外部化との損益差は年々開いていきます。1件あたりの出荷コストをどう下げるかはCPO(1件あたりコスト)削減の実務で確認できます。
人手不足がEC出荷の現場に及ぼす影響
繁忙期に出荷能力の天井が見える
人手不足がまず表面化するのが繁忙期です。セールや新商品の投入で受注が跳ねても、出荷を担う人員をその時だけ増やすことは容易ではありません。募集しても採れず、既存スタッフの残業でしのげば、疲労や離職を招きます。結果として受注は取れても当日中に出荷しきれないという、出荷能力の天井が見えてきます。出荷量の増加に体制が追いつかない場合の設計はEC出荷量の段階別物流設計に整理しています。
品質と時間の両方が削られる
人手が足りない現場では、一人あたりの作業量が増え、確認の手が薄くなります。これは誤出荷や遅延の増加に直結します。誤出荷は返品・再送のコストだけでなく、レビューやリピート率にも響きます。誤出荷を防ぐ実務は誤出荷率を下げる実務に、受注から出荷までの時間短縮は出荷リードタイムの短縮ガイドにまとめています。人手を増やしにくい以上、限られた人数でも品質と速度を保てる仕組みが不可欠です。とくに年末商戦のような繁忙期は、人手不足の影響が最も顕著に表れる局面です。
| 人手不足で起きやすいこと | 現場の兆候 | 事業への影響 |
|---|---|---|
| 出荷が回りきらない | 当日出荷が翌日以降にずれる | 顧客満足・評価の低下 |
| 確認が薄くなる | 誤出荷・欠品の増加 | 返品・再送コスト、信頼低下 |
| 残業でしのぐ | 休日出勤・長時間労働の常態化 | 離職・採用コストの悪循環 |
| 作業が属人化する | 特定の人しか出荷を回せない | その人の欠勤で出荷停止のリスク |
これらは個別のトラブルに見えて、根はいずれも「人手を前提に組んだ出荷体制」にあります。人が採れる前提が崩れているいま、体制そのものの見直しが必要です。
自社出荷が限界に来ているサイン
自社での出荷を続けるべきか、外部化を検討すべきか。判断の前に、まず自社の状態を客観的に点検します。以下のサインが複数当てはまるなら、人手を前提にした出荷体制がすでに限界に近づいている可能性があります。
とくに3つ目の「経営者が出荷作業に追われている」は見落とされがちですが、重大なサインです。出荷は事業の心臓部ですが、経営者が箱詰めや伝票発行に一日の多くを費やしていると、商品企画・集客・顧客対応といった本来伸ばすべき仕事に手が回りません。人手不足の局面では、この「時間の使い方」の見直しが成長の分かれ目になります。自社出荷にかかっている本当のコストを金額で把握するには自社発送のコストを可視化する実務ガイドが役立ちます。
発送代行への切り替えをどう判断するか
固定費を変動費に変える
人手不足への対処法は、大きく「採用を頑張る」「自動化投資をする」「外部化する」の3つです。採用は環境が厳しく、自動化は初期投資が重い。そこで現実的な選択肢になるのが、出荷を発送代行に委ねて固定費を変動費に変える方法です。人員の採用・教育・シフト管理を外部に委ね、出荷量に応じた費用だけを払う形にすれば、繁忙期の人員確保に悩まされず、閑散期に固定人件費が利益を圧迫することもなくなります。
損益分岐で「いつ切り替えるか」を見る
切り替えの判断は、感覚ではなく数字で行います。自社出荷にかかる人件費・資材費・スペース費と、発送代行に払う費用を、出荷件数ごとに並べて比較します。一般に出荷件数が一定を超えると、外部化のほうが総コストで有利になり、かつ品質と時間の安定性が増します。件数別の損益分岐は発送代行の損益分岐を出荷件数別にシミュレーションで試算でき、コストの内訳管理はEC物流コストの可視化と削減実務ガイドで整理できます。
| 対処法 | 人手不足下での現実性 | 留意点 |
|---|---|---|
| 採用を強化する | 低い(応募が集まりにくい) | 求人費・時給上昇でコスト増 |
| 設備を自動化する | 中(規模次第) | 初期投資が重く回収に時間 |
| 発送代行に外部化する | 高い(人員確保が不要) | 業者選びと連携設計が鍵 |
繁忙期の波動に強くなる
外部化のもう一つの利点は、繁忙期の波動を吸収できることです。自社出荷では、セール時の出荷急増に合わせて短期の人員を集める必要がありますが、いまはその人員こそ採れません。発送代行なら、複数の荷主の波動をならして人員を配置している倉庫の体制を使えるため、自社で人を抱え込まずに出荷のピークを乗り切れます。閑散期には支払いが出荷量に応じて下がるため、固定人件費が利益を圧迫する心配もありません。人手不足が続く前提では、この「波動に応じて伸縮する体制」こそが、安定して出荷を回し続ける現実的な答えになります。
発送代行の始め方や業者選びの基準は発送代行の始め方と業者選びに、STOCKCREWの対応範囲はSTOCKCREW完全ガイドにまとめています。まずは自社の月間出荷件数と、そこにかかっている人件費・時間を並べてみることが、判断の第一歩です。
まとめ:人手を前提にしない出荷体制へ
2026年6月の完全失業率は2.5%と低水準で、就業者数は増え続けています。景気の指標としては明るい一方、これは「働き手が余っていない」=採用がますます難しいという現実の裏返しです。有効求人倍率も1倍を上回り続け、運輸・倉庫の現場では人が採れません。人手不足は繁忙期の出荷能力に天井をつくり、誤出荷や遅延、経営者の疲弊を招きます。自社出荷が限界に近づくサイン(当日出荷のずれ込み、求人が埋まらない、経営者が出荷に追われる、残業の常態化、属人化)が複数当てはまるなら、出荷を発送代行に外部化して固定費を変動費に変えることが有効な選択肢になります。判断は感覚ではなく、出荷件数ごとの損益分岐で見るのが確実です。まずは自社の月間出荷件数と、そこにかかっている人件費・作業時間を並べ、外部化した場合の費用と比較してみてください。労働市場の最新の動きは総務省統計局の労働力調査のページで確認できます。出荷体制の見直しや外部化の具体的なご相談はお問い合わせや資料ダウンロードから承っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 労働力調査とは何ですか?
A. 総務省統計局が毎月公表する、就業・失業の状況をとらえる基幹統計です。15歳以上の人口を就業者・完全失業者・非労働力人口に分け、労働力人口に占める完全失業者の割合が完全失業率です。EC事業者にとっては、パートやアルバイトを含む働き手をどれだけ確保しやすいかを映す物差しになります。
Q. 2026年6月の完全失業率はどのくらいですか?
A. 季節調整値で2.5%でした。4〜6月期平均の就業者数は6,880万人と前年同期比44万人増、完全失業者数は185万人で3万人増、完全失業率(原数値)は2.6%で前年同期と同率です。失業率は2%台半ばの低水準が続いています。
Q. 失業率が低いのに、なぜ人手不足なのですか?
A. 失業率が低いということは、働ける人のほとんどがすでにどこかで働いている状態を意味します。募集に応じてくれる「余っている働き手」が少ないため、時給や条件を上げても人が集まりにくくなります。加えて生産年齢人口の減少という構造要因があり、とくに運輸・倉庫の現場は採用が年々難しくなっています。
Q. 人手不足はEC出荷にどう影響しますか?
A. 繁忙期に出荷を担う人員を確保できず、受注は取れても当日中に出荷しきれない「出荷能力の天井」が見えてきます。人手が薄いと確認の手が減り、誤出荷や遅延も増えます。残業でしのげば疲労や離職を招き、出荷が特定の人に依存する属人化も進みます。
Q. 自社出荷から発送代行に切り替える判断基準は?
A. 感覚ではなく数字で判断します。自社出荷にかかる人件費・資材費・スペース費と、発送代行に払う費用を出荷件数ごとに並べて比較し、外部化のほうが総コストで有利になり品質と時間の安定性が増す水準を見ます。当日出荷のずれ込みや求人が埋まらない状態、経営者が出荷に追われる状況が続くなら、外部化を具体的に検討する時期です。
この記事の監修者
保阪涼子
株式会社KEYCREW 営業部長。物流会社で10年間、EC物流の現場担当・営業事務を経験し、EC・物流業界で通算10年以上のキャリアを持つ。STOCKCREWではサービス開始初期から商談を担当し、500社以上のEC事業者への導入支援を一貫して手がけてきた。YFF(Yahoo!フルフィルメント)移管時には1,000社超の顧客接点・フロー設計を主導。月間10万件以上の出荷管理に携わり、顧客の物流費を平均15%削減する成果を上げている。成約率50%を達成した営業手法には、「『売る』より『解く』」という顧客課題解決型のアプローチが根底にある。物流メディア(Logistics Today、ECのミカタ)へのインタビュー掲載実績も持つ。