個人輸入の免税特例が廃止へ|2026年度税制改正で変わる少額輸入・越境ECの課税と対応
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海外の通販サイトから安く商品を仕入れる——その前提が、2026年度の税制改正で大きく変わろうとしています。海外からの少額輸入が国内のEC取引より税負担の面で有利になっている状況を是正するため、個人輸入の課税を軽くする特例の廃止や1万円以下の少額輸入への消費税課税が打ち出されました。本記事では、何がどう変わるのか、なぜ見直されるのか、そして輸入仕入れや越境販売を行うEC事業者が取るべき対応を、制度の背景とあわせて整理します。海外仕入れを含む物流体制の見直しは発送代行の活用もあわせて検討するとよいでしょう。
何が変わるのか——少額輸入課税の見直し
2026年度税制改正で少額輸入の課税が強化される
2025年末に決定された2026年度(令和8年度)税制改正では、海外からの少額輸入に対する課税の見直しが盛り込まれました。柱は、個人輸入の課税価格を軽減する特例の廃止と、これまで免税だった少額輸入への消費税課税です。背景には、TemuやSHEINに代表される越境ECの急増があります。これまでは、海外の通販サイトから1点ずつ少額で取り寄せれば、課税価格が低く抑えられ、免税ラインにも収まりやすいという「税の抜け道」が存在していました。今回の改正は、その抜け道を段階的にふさぐものといえます。まずは変更の全体像を3つのポイントで整理します。
いずれも、海外の通販サイトを経由した少額輸入が、国内のEC取引よりも税負担の面で有利になっている状況を是正することを狙ったものです。少額免税の見直しは日本だけの動きではなく、越境ECの少額免税の世界的な見直しという大きな潮流の一部にあたります。なお、施行の具体的な時期は今後の法整備によって定まる見込みです。
変更点①:個人輸入の「0.6掛け特例」の廃止
現行ルール:課税価格を小売価格の6割で計算できる
現在、個人が自分で使う目的で輸入する商品(個人輸入)には、税額を計算する基準となる課税価格を軽くする特例があります。
個人的な使用に供される物品を輸入する場合、課税価格は、海外で実際に購入した価格(小売価格)に0.6を乗じた額とされる。また、課税価格の合計額が1万円以下の物品は、原則として関税および消費税が免除される。
出典:税関「個人輸入通関」
つまり、海外で1万円で買った商品でも、個人輸入なら課税価格は6,000円として計算され、関税・消費税が軽くなる仕組みです。今回の改正では、この0.6掛けの特例が廃止される方向です。廃止されれば、課税価格は実際の購入価格ベースで計算されるようになり、個人輸入にかかる関税・消費税の負担は実質的に増えます。関税の仕組みと計算方法を理解しておくと、改正後の負担増を具体的に試算できます。
改正の前後でどう変わるか
現行と改正後で、少額輸入の税の扱いがどう変わるかを整理します。
| 項目 | 現行(改正前) | 改正後の方向 |
|---|---|---|
| 個人輸入の課税価格 | 小売価格 × 0.6 | 0.6掛け特例を廃止 |
| 1万円以下の少額輸入 | 関税・消費税が免除 | 通販輸入は消費税の課税対象に |
| 消費税の納税者 | 主に税関での個別徴収 | 海外販売事業者の登録納税 |
| EC事業者への影響 | 小ロット輸入が割安 | 仕入れ原価・価格戦略の見直しが必要 |
表のとおり、改正は「課税価格の計算」「免税枠」「納税の主体」という3つの軸で同時に進みます。海外通販を使った少額輸入の税メリットは、全体として縮小していくと理解しておくとよいでしょう。
変更点②:1万円以下の少額輸入も消費税課税へ
税抜1万円以下の通販輸入を消費税の課税対象に
もう一つの大きな変更が、少額輸入の免税枠の見直しです。現行では課税価格1万円以下の輸入品は原則として関税・消費税が免除されますが、改正では通信販売により輸入される税抜1万円以下の物品(特定少額資産の譲渡)を消費税の課税対象とする方針が示されました。海外通販で1点ずつ少額の商品を取り寄せる場合でも、消費税がかかるようになるということです。たとえば数百円〜数千円の衣料品やアクセサリーを海外サイトで購入するケースは、まさにこの少額輸入にあたります。これまでは1万円以下なら税負担なく受け取れていたものが、改正後は消費税が上乗せされる前提で価格を見ることになります。消費者にとっては値ごろ感が変わり、こうした少額品を扱う越境ECの販売戦略にも影響が及びます。
販売者が登録して納税する「特定少額資産販売事業者」制度
注目すべきは、課税の方法です。消費者一人ひとりが納税するのではなく、海外の販売事業者(プラットフォーム)が「特定少額資産販売事業者」として登録し、納税義務を負う仕組みが導入される見込みです。これは、すでに国境を越えるデジタルサービスで導入されている考え方を、物品の少額輸入にも広げるものといえます。これにより、税関での個別徴収に頼らず、販売側で消費税を捕捉する体制が整えられます。
なぜ「販売者課税」という形をとるのか
少額輸入は1件あたりの金額が小さく件数が膨大なため、税関がすべての荷物に個別課税するのは現実的ではありません。免税となる少額貨物には基本的に徴税事務が生じない構造になっており、ここが「税の抜け穴」になっていました。そこで、取引の入口である販売事業者にまとめて納税義務を負わせることで、効率的に消費税を捕捉しようというのが今回の設計思想です。すでに国境を越えるデジタルサービス(電子書籍・アプリ・広告など)では、海外事業者が登録して納税する仕組みが定着しており、その考え方を物品の少額輸入にも応用する形になります。プラットフォーム側に納税義務が生じれば、結果として最終的な販売価格に税が反映され、消費者が支払う実質負担は増える方向に働きます。
なぜ見直されるのか——Temu・SHEIN急増と世界的潮流
少額貨物の急増と「税の不公平」
見直しの最大の背景は、TemuやSHEINといった中国発の越境ECプラットフォームの急成長です。低価格の商品を1点ずつ国際郵便・少額貨物で送る形態が急増し、その多くが免税ラインに収まることで、国内のEC事業者が納める消費税との不公平が問題視されてきました。日本のEC市場の規模を踏まえると、その影響は無視できません。
2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年比5.1%増)に拡大し、物販系分野のEC化率は9.8%となった。
世界では米国がデミニミス(少額免税)を撤廃済み
少額免税の見直しは世界的な潮流です。米国では、少額貨物を免税とする「デミニミス制度」が2025年8月29日に全世界を対象として撤廃されました。EUでも少額小包への定額関税の導入が進むなど、デミニミス改正と越境ECの動きは各国に広がっています。米国の動向は米国の追加関税の解説でも整理しており、日本の今回の改正もこの国際的な流れの一環として理解できます。輸入の前提となる通関手続きの流れもあわせて確認しておきましょう。輸入の基本的なルールや必要書類はJETRO「日本への輸入に関するQ&A」でも確認できます。
各国が足並みをそろえる理由
各国が少額免税の見直しに動く背景には、共通の事情があります。第一に、少額貨物の通関件数が爆発的に増え、税関の処理能力を超えつつあること。第二に、免税ラインに収まる少額輸入が国内事業者との競争条件を不公平にしていること。第三に、本来課税されるべき取引が免税で素通りすることによる税収の逸失です。日本の2026年度税制改正も、これらの課題に対応する国際的な制度調整の一環と位置づけられます。
EC事業者・越境セラーへの影響と取るべき対応
影響:仕入れ原価と価格競争力の見直しが必要に
海外から商品を仕入れて国内で販売するセラーにとって、今回の改正は仕入れ原価の上昇を意味します。0.6掛け特例の廃止と少額免税の縮小により、これまで税負担を抑えられていた小ロットの輸入仕入れのコストメリットは縮小します。中国輸入ビジネスやタオバオでの個人輸入を前提にした事業設計は、改正後の税負担を織り込んで再計算する必要があります。
特に影響が大きいのは、個人輸入の体裁で小ロットを繰り返し取り寄せていた事業者です。0.6掛け特例を前提に利益率を組んでいた場合、その前提が崩れます。また、海外プラットフォームに納税義務が生じれば、商品価格自体が上がる可能性もあり、これまで「安さ」で選ばれていた商材ほど価格優位が薄れます。一方で、正規に商用輸入し、適切に通関・納税してきた事業者にとっては、競争条件がむしろ公平に近づくとも言えます。自社がどちらの立場に近いかを見極め、改正後に有利になるのか不利になるのかを早めに棚卸ししておくことが大切です。
取るべき対応:仕入れ・物流・価格の3点を見直す
- 仕入れ方法の見直し——少額・小ロットの個別輸入から、まとめて輸入して国内在庫を持つ形へ。1回の輸入量を増やすことで、通関や物流のコスト効率を高められます。
- 物流体制の整備——国内に在庫を置いて出荷する体制に切り替えるなら、保管・出荷を発送代行に委託することで、自社倉庫の固定費を抑えながら対応できます。
- 価格戦略の再設計——コスト増を価格にどう反映するか、あるいは付加価値で差別化するかを検討します。価格勝負だけでは、改正後の競争を勝ち抜くのは難しくなります。
国内EC事業者にとっては、海外勢の「税の優位」が縮むことは追い風にもなります。SHEIN・Temu時代の国内EC戦略を踏まえ、配送品質や顧客体験で差をつける好機と捉えることもできます。
特に、これまで価格だけで競合してきた商材を扱う事業者は、改正を契機に納期の速さ・国内在庫からの即日出荷・返品対応の手厚さといった、海外直送では実現しにくい価値で勝負する余地が広がります。海外から数週間かけて届く商品に対し、国内倉庫から翌日届く体制は、それ自体が強力な差別化要素です。仕入れは海外で行いつつ、販売は国内在庫を起点にするハイブリッド型へ移行することで、税負担の変化を吸収しながら競争力を保てます。改正後の事業環境を見据え、早めに在庫・物流の設計を見直しておくことが、変化を機会に変える鍵になります。
まとめ:少額輸入の「税の優位」は終わりつつある
2026年度税制改正による少額輸入課税の見直しは、個人輸入の0.6掛け特例の廃止、1万円以下の少額輸入への消費税課税、そして販売事業者の登録納税制度という3つの変更を柱とします。背景にはTemu・SHEINの急増と、米国のデミニミス撤廃やEUの定額関税導入に代表される世界的な潮流があります。海外仕入れに依存するセラーは、仕入れ方法・物流体制・価格戦略の3点を改正後の税負担を前提に再設計することが求められます。改正は脅威であると同時に、国内在庫からの速い配送で勝負する事業者には追い風にもなります。国内在庫を持つ体制への移行を検討するなら、発送代行の活用が有力な選択肢です。STOCKCREWの対応範囲や料金はサービス資料で確認でき、輸入後の保管・出荷体制に関する個別のご相談はお問い合わせから受け付けています。なお、税務の具体的な取り扱いは、改正法令の確定内容と顧問税理士への確認に基づいて慎重に判断してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人輸入の0.6掛け特例とは何ですか?
個人が自分で使う目的で輸入する商品について、税額計算の基準となる課税価格を、実際の海外小売価格の60%(0.6掛け)として計算できる特例です。これにより関税・消費税が軽減されてきましたが、2026年度税制改正でこの特例の廃止が打ち出されました。
Q. 1万円以下の輸入はこれまで完全に非課税だったのですか?
現行制度では、課税価格の合計が1万円以下の輸入品は原則として関税・消費税が免除されています(革製品など一部例外あり)。改正では、通信販売で輸入される税抜1万円以下の物品を消費税の課税対象とする方針が示されており、少額輸入の免税枠が縮小します。
Q. 消費者と販売者のどちらが納税するのですか?
改正では、海外の販売事業者が「特定少額資産販売事業者」として登録し、納税義務を負う仕組みが導入される見込みです。消費者一人ひとりが個別に納税するのではなく、販売側で消費税を捕捉する体制を整えることで、税関での個別徴収に依存しない仕組みを目指しています。
Q. 改正はいつから始まりますか?
2026年度(令和8年度)税制改正の方針として打ち出されたもので、具体的な施行時期は今後の法整備によって定まります。最新の確定情報は、関係省庁の公表資料や顧問税理士を通じて確認することをおすすめします。
Q. 輸入仕入れをするEC事業者は何をすべきですか?
少額・小ロットの個別輸入はコストメリットが縮小するため、まとめて輸入して国内在庫を持つ形への移行や、価格戦略の再設計が有効です。国内在庫の保管・出荷は発送代行に委託することで、固定費を抑えながら出荷体制を整えられます。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。