SHEIN・TEMU時代に国内EC事業者が取るべき戦略

SHEIN(シーイン)やTEMU(テム)といった中国発の越境ECプラットフォームが日本市場で急速にシェアを拡大しています。圧倒的な低価格で消費者を取り込むこれらのプラットフォームに対し、国内EC事業者はどのような戦略で競争力を維持すべきでしょうか。この記事では、SHEIN・TEMU台頭の背景、日本市場への影響、デミニミスルール見直しの最新動向、そして発送代行を活用した物流面での差別化戦略を解説します。

SHEIN・TEMUの日本市場における現在地

SHEINとTEMUは、いずれも中国を拠点とするグローバルECプラットフォームですが、ビジネスモデルには違いがあります。

項目 SHEIN TEMU
運営元 SHEIN Group(シンガポール本社) PDD Holdings(拼多多)
主力カテゴリ アパレル・ファッション雑貨 雑貨・日用品・家電小物
ビジネスモデル SPA型(企画〜販売を一気通貫) マーケットプレイス型
価格帯 超低価格(トップス300〜1,000円台) 超低価格(日用品100円台〜)
日本での存在感 利用者数がZOZOTOWNを超過 月間アクティブユーザー数急増中
日本出品者プログラム SHEIN Marketplace(β版) Local-to-Local(2025年〜)

両プラットフォームの急成長を可能にしているのは、製造原価の低さ・大量広告投資・デミニミスルール(少額免税)の活用という3つの構造的優位性です。とくにデミニミスルールについては、後述のとおり日本でも見直しの議論が進んでおり、今後の競争環境に大きく影響する可能性があります。

越境ECの基本的な仕組みについては、越境ECの基礎知識で解説しています。

国内EC事業者への影響|価格競争の構造変化

SHEIN・TEMUの台頭が国内EC事業者に与える影響は、単なる「安い競合が増えた」という次元にとどまりません。

影響①:消費者の価格基準の変化

SHEIN・TEMUで買い物をする消費者層は、「同等の商品がこの価格で買える」という新たな価格基準を持つようになります。とくにアパレル・雑貨カテゴリでは、国内EC事業者の商品が相対的に「割高」に映るリスクがあります。

影響②:広告コストの上昇

SHEIN・TEMUはデジタル広告に巨額の予算を投下しており、Google・Meta(Instagram/Facebook)・TikTokなどの広告オークションでCPCやCPAを押し上げる要因になっています。国内EC事業者は同じ広告予算で獲得できる顧客数が減少する構造的な課題に直面しています。

影響③:モール内での競争激化

楽天グループは電子商取引サイト「楽天市場」に海外事業者の出店を増やす方針を打ち出した。海外事業者の誘致活動を強化し、日本語表記や販促面のサポートを充実させることで、SHEINやTemuに対抗する戦略をとっている。

出典:日本経済新聞「楽天、SHEINやTemuに危機感 海外事業者誘致へ販促支援でテコ入れ」

楽天やAmazon Japanも海外セラーの取り込みを進めており、国内モール内でも海外事業者との競争が激化する見通しです。

デミニミスルール見直しの最新動向【2026年版】

SHEIN・TEMUの低価格を支える構造的な要因の一つが、デミニミスルール(少額免税制度)です。日本では現在、1万円以下の輸入品に対して関税と消費税が免除されており、SHEIN・TEMUの商品の多くがこの恩恵を受けています。

日本の動向

財務省は2025年5月、少額輸入品への免税措置を見直す検討に入りました。具体的には、消費税の課税を導入し、ECプラットフォーム事業者に税務当局への登録と申告納税を義務づける案が検討されています。関税については課税の事務負担を考慮し、免税措置を維持する見通しです。

2024年の1万円以下の少額輸入貨物は1億6,966万件・4,258億円に達し、5年間で約5倍に拡大した。政府・与党は国内外の事業者の競争条件を平等にするため、2026年度税制改正での対応を目指している。

出典:日本経済新聞「個人輸入品の税優遇廃止へ TemuやSHEIN巡り政府・与党が対策」

各国の動き

  • 米国——2025年5月2日、中国からの少額貨物に対するデミニミス免税(800ドル以下)を撤廃。SHEIN・TEMUの米国事業に直接的な打撃。
  • EU——150ユーロ以下の免税措置を2026年までに廃止する方向で議論が進行中。
  • 日本——消費税の課税を2026年度中に実施する見通し。関税は当面免税を維持。

デミニミスルールが見直されれば、SHEIN・TEMUの価格優位性は一定程度縮小します。国内EC事業者にとっては競争環境がやや改善される好機ですが、価格差が完全に解消されるわけではないため、引き続き独自の差別化戦略が必要です。デミニミスルールの影響については、デミニミスと越境ECのリスクの記事も参考にしてください。

国内EC事業者が取るべき4つの差別化戦略

SHEIN・TEMUとの価格競争に正面から挑むのは非現実的です。国内EC事業者が取るべき戦略は、価格以外の軸で顧客に選ばれる理由を作ることです。

商品の独自性 PB・限定商品で価格競争を回避 ブランドストーリーで付加価値 配送スピード 翌日配送・時間指定で差別化 物流品質がリピート率を左右 アフターサービス 返品対応・カスタマーサポート 顧客体験で海外勢と明確に差別化 マルチチャネル展開 楽天・Amazon・自社ECの併売 顧客接点の分散でリスク低減 SHEIN・TEMUとの差別化を実現

戦略①:商品の独自性とブランド力

SHEIN・TEMUで販売されている商品は、基本的に汎用品・コモディティです。独自の商品企画、限定コラボ、ストーリー性のあるブランディングで「この店でしか買えない」価値を作ることが最大の差別化要因です。D2C(Direct to Consumer)モデルによるブランド構築は、D2Cのメリットと始め方の記事で詳しく解説しています。

戦略②:配送スピードと物流品質

SHEIN・TEMUの最大の弱点は配送リードタイムです。中国直送の場合は5〜14日かかるため、「今すぐ欲しい」ニーズには対応できません。国内EC事業者が翌日配送・当日出荷を実現すれば、配送スピードで明確な優位性を確保できます。

戦略③:アフターサービスと顧客体験

SHEIN・TEMUは低価格を実現するためにカスタマーサポートを最小化しています。問い合わせへの迅速な対応、きめ細かなフォローアップ、日本語でのサポート体制は、国内事業者ならではの強みです。購入後の体験設計(同梱物・メッセージカード・丁寧な梱包)も差別化につながります。

戦略④:マルチチャネル展開と顧客接点の多様化

SHEIN・TEMUは自社アプリが主な販売チャネルですが、国内EC事業者は楽天・Amazon・Yahoo!ショッピング・自社ECサイト・実店舗など複数の顧客接点を活用できます。チャネル横断で在庫と物流を一元管理し、顧客がどこで購入しても同じ品質の体験を提供する仕組みが重要です。

物流品質で差をつける|発送代行を活用したブランド体験の設計

SHEIN・TEMUに対する差別化として、物流は最も即効性がある領域です。EC物流の全体設計を見直すことで、以下の顧客体験の向上が実現できます。

  1. 翌日配送の実現——関東圏に倉庫を持つ発送代行を活用すれば、本州の大部分に翌日配送が可能です。「すぐ届く」という安心感はSHEIN・TEMUには実現できない価値です。
  2. 梱包品質の標準化——AMR(自律走行ロボット)やAI多重検品を導入している発送代行を利用すれば、出荷精度の高さがブランドの信頼性を担保します。
  3. 同梱物によるブランド体験——メッセージカード、使い方ガイド、クーポン、サンプル同梱など、開封時の体験を設計することで、リピート率の向上が期待できます。
  4. コスト構造の最適化——初期費用0円・固定費0円の発送代行を活用すれば、物流コストを変動費化し、利益率を維持しながら配送品質を高められます。

2024年のBtoC-EC市場規模は26兆1,654億円に拡大し、EC化率は9.38%に達した。市場拡大のなかで、物流品質は顧客体験と差別化の両面で競争力の核心になりつつある。

出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」

まとめ:価格ではなく「体験」で勝つEC戦略

SHEIN・TEMUの台頭は、国内EC事業者にとって脅威であると同時に、自社の強みを再定義する機会でもあります。この記事のポイントを振り返ります。

  • SHEIN・TEMUの低価格は、製造原価の低さ・広告投資・デミニミス免税の3つの構造的優位性に支えられている
  • デミニミスルールの見直しにより競争環境は改善方向だが、価格差の完全解消は見込めない
  • 国内EC事業者の差別化軸は、商品の独自性・配送スピード・アフターサービス・マルチチャネル展開の4つ
  • 物流面では、翌日配送の実現・梱包品質・同梱施策・コストの変動費化が即効性のある施策
  • 価格競争ではなく「体験の総合力」で選ばれるEC事業者を目指すことが長期的な勝ち筋

EC物流の見直しや発送代行の導入を検討している方は、発送代行サービスの選び方ガイドをご参照ください。STOCKCREWのサービス詳細もあわせてご確認いただけます。具体的なご相談は、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. SHEIN・TEMUの台頭で国内EC事業者は何が変わりましたか?

消費者の価格基準が変化し、デジタル広告のコストが上昇しています。とくにアパレル・雑貨カテゴリでは、国内EC事業者の商品が相対的に割高に映るリスクがあります。一方で、配送スピードやアフターサービスではまだ国内事業者に優位性があります。

Q. デミニミスルールが見直されるとSHEIN・TEMUの価格はどうなりますか?

日本で検討されているのは消費税の課税です。1万円以下の輸入品に10%の消費税が課されれば、SHEIN・TEMUの商品は現在より約10%値上がりする計算です。ただし、もともとの価格差が大きいため、完全な競争力の解消には至らないと見込まれます。

Q. 国内EC事業者がSHEIN・TEMUに勝てる領域はどこですか?

配送スピード(翌日配送vs5〜14日)、アフターサービス(日本語サポート・返品対応)、商品の独自性(オリジナル商品・限定コラボ)、ブランド体験(梱包品質・同梱物)の4つが国内事業者の競争優位領域です。物流品質の向上は最も即効性があります。

Q. 物流の差別化で具体的にどんな効果がありますか?

翌日配送の実現によるCVR(転換率)の向上、丁寧な梱包と同梱物によるリピート率の向上、出荷精度の高さによるクレーム削減が期待できます。発送代行を活用すれば、自社で物流チームを抱えることなくこれらの品質を実現できます。

Q. SHEIN・TEMUに出品する戦略も有効ですか?

両プラットフォームへの出品は販路拡大の選択肢の一つです。TEMUはLocal-to-Localモデルで日本国内の出品者を受け入れており、SHEINもMarketplace機能を展開しています。ただし、低価格帯での競争に巻き込まれるリスクがあるため、自社ECやモール出店との並行運用が現実的です。