消費者契約法の中間取りまとめが確定、パブコメは10月31日まで|解約妨害の禁止と約款変更の個別通知
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定期便の解約連絡を受けたあと、次回分の出荷を止めて返金するまでの手順は決まっているでしょうか。消費者庁の消費者契約法検討会は2026年9月10日に中間取りまとめを確定し、9月16日から意見募集が始まりました。締切は10月31日です。柱は解約妨害の禁止、自動更新時の事前通知、そして約款変更時の個別通知の義務化で、いずれも出荷サイクルや返金のオペレーションに直結します。本記事では中間取りまとめの中身を実務の言葉に置き換えます。出荷側の前提は発送代行完全ガイドに整理しています。
9月10日に確定、意見募集は10月31日まで
「案」ではなく「中間取りまとめ」になった
8月末の時点では中間取りまとめ(案)が議題に載った段階で、中身は公表されていませんでした。今回令和8年9月10日付で中間取りまとめそのものが公表され、内容を読める状態になりました。検討会は令和7年11月以降、ワーキンググループでの議論を挟みながら計9回の審議を重ねています。前段の経緯は消費者契約法の見直しが中間取りまとめ案へにまとめています。
意見募集は特商法側と同時、締切も同じ10月31日
意見募集は令和8年9月16日から10月31日までです。同じ日に、デジタル取引・特定商取引法等検討会の中間取りまとめについても意見募集が始まっており、締切も同日です。2件とも消費者庁のパブリック・コメントのページから e-Gov の受付画面に進めます。2つの検討会が並行して動いているため、EC事業者から見ると同じ導線に2本の規律が同時にかかる形になります。特商法側の中身はチャット勧誘に電話勧誘並みの規律へ、特商法の中間取りまとめ案で扱っています。
サブスクの相談は5年でおよそ2.7倍
背景として、中間取りまとめはサブスクリプションに関する相談件数を挙げています。国民生活センターが全国の消費生活センター等と結んでいるPIO-NETに登録された相談は、2021年度7,461件、2022年度9,924件、2023年度12,534件、2024年度15,752件、2025年度20,174件と推移しました。5年でおよそ2.7倍です。現行の消費者契約法は契約の締結過程と契約条項の内容を中心とした枠組みで、契約の継続・終了の場面に対処できる適切な規律がないと整理されています。
現行の消費者契約法は、契約の締結過程(不当勧誘を理由とする取消権(第4条))と契約条項の内容(不当条項の無効(第8条から第 10 条まで))を中心とした枠組みであって、これらの課題に対処できる適切な規律がない。
解約妨害の禁止が、行為のリストとして書かれた
禁止される行為の具体像
中間取りまとめは、継続的な消費者契約から離脱する場面で禁止すべき行為を列挙しています。挙がっているのは次のような行為です。
- 不実告知——解約するかどうかの判断に通常影響を及ぼす事項について、事実と異なることを告げる。
- 断定的判断の提供——将来の変動が不確実な事項について断定的に告げる。
- 退去妨害・不退去——解約しようとしている場所から帰らせない、あるいは居座る。
- 解約の申入れを受けることの拒否・不当遅延——申し出そのものを受け付けない、受付を引き延ばす。
- 健全な商慣習に照らし不当に解約を妨げる行為・環境設計——上記以外で、解約をしにくくする仕組み全般。
このほか、解約に関して消費者を欺く行為や、威迫して困惑させる行為も対象に挙げられています。特商法側の中間取りまとめでも、返品をめぐって同じ方向の規律が示されています。
返品特約のみを理由として法令又は契約上の権利が存在しない旨を告げる行為を、新たに行政処分の対象として規制することが適当である。
つまり契約法の側からは解約妨害として、特商法の側からは行政処分の対象として、同じ場面に別々の規律がかかる形になります。「規約に書いてある」という一点で押し切る運用は、どちらから見ても通らなくなる方向です。
「環境設計」という言葉が入っている
注目したいのは、個別の言動だけでなく「行為・環境設計」という書き方がされている点です。担当者が何かを言ったかどうかではなく、解約フォームの置き場所や手順の組み方そのものが評価対象になりうるという含みがあります。具体的な行為は下位法令で規律することが想定されており、いまの段階で細部は確定していません。関連する導線の点検はネットショップの法的ドキュメント整備と利用規約とあわせて進めると整理しやすくなります。
民事上の効果は置かず、差止請求の対象へ
効果の設計も押さえておきます。解約妨害があった場合に消費者へ新たな解約権を発生させる形にはしない方向です。もともと解約権を持っている場面を前提にした規律だからです。そのうえで、同じ妨害行為の未然防止・拡大防止のために適格消費者団体による差止請求の対象とする方向が示されています。行政処分ではなく、差止めという形で効いてくることになります。
返金・返送の遅れも名指しされている
「解約によって事業者に生じる債務の履行の不当な拒否・遅延」
物流側にとって最も直接的なのがここです。中間取りまとめは、解約が成立したあとであっても解約によって実現されるべき状態を妨げる行為を禁止対象に含めています。具体的には、解約により事業者に生じた債務の履行を不当に拒んだり遅らせたりする行為です。返金の遅れ、返送受付の放置が、契約法の側から名指しされた形になります。
出荷済みと入れ違いになったときの扱い
実務で起きるのは、解約の申し出を受けた時点で次回分がすでに出荷準備に入っていたという入れ違いです。届いてしまった商品をどう扱うかを事前に決めていないと、購入者から見れば「解約したのに届いたうえ、返金の話が進まない」という状態になります。解約受付の締切を出荷サイクルより手前に置くのが基本で、締切日を購入者に見える形で示しておくことが前提になります。出荷までの時間設計はEC受注〜出荷リードタイムを24時間以内に短縮する実務ガイド、定期便の物流設計は定期購入ECの物流設計が対応します。
返送の受け皿は先に決めておく
戻ってくる商品の受け皿も事前設計の対象です。STOCKCREWでは、長期不在・受取拒否・住所不明などで配送会社から返送されたものと、購入者から返品されたものを良品として在庫へ戻す作業に対応しています。ただし着払いの返品は受け付けておらず、着払いで到着した商品は受取拒否となります。返送を案内する文面を作る段階で、送料の負担方法をあわせて指定してください。返品処理は倉庫到着後3営業日以内に完了し、在庫一覧へ反映されます。条件面の設計はEC返品ポリシーの書き方ガイド、戻ってきた後の流れはEC返品物流(リバースロジスティクス)ガイド【2026年版】とEC返品率の計算・改善実務ガイドにまとめています。
| 局面 | 放置すると該当しうる行為 | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 解約の受付 | 申入れの拒否・不当遅延 | 受付窓口と受付日の記録方法 |
| 次回分の出荷 | 解約後の発送継続 | 締切日と出荷指示の反映タイミング |
| 返金 | 債務の履行の不当な拒否・遅延 | 返金の起算日と処理期限 |
| 返送の受け入れ | 返送先を案内しない | 送料負担・着払い不可の明記 |
| 在庫への反映 | — | 返品処理後の在庫戻しの確認手順 |
自動更新の事前通知と、約款変更の個別通知
自動更新は「努力を促す」方向
自動更新については、更新に際して消費者が更新しない旨の申出をする機会を確保するため、あらかじめ必要な情報を通知するよう努めるという形が示されています。必要な情報として想定されているのは、申出の時期・方法、更新後の契約期間などです。契約期間の長さも更新頻度も契約によって違うため、一律に通知を義務づけることには馴染みにくいという整理で、努力を促す規律にとどまる方向です。
約款変更の個別通知は「義務」の方向
一方で、こちらは強く書かれています。定型約款の変更のうち消費者の一般の利益に適合する場合以外で、かつ契約の重要事項の変更にあたる場合には、変更前に現に契約関係にある消費者へ個別に通知しなければならないとする方向です。実務では多くの事業者がすでに個別通知を行っているものの、一部で通知がされず被害が生じていることから、努力義務としてではなく義務とする方向が示されています。
重要事項は「対価の増加」と「解約条件の厳格化」に絞る案
ここで言う重要事項は絞り込む案が出ています。事業者に通知義務を課すものである以上、より一層の明確化が求められるとして、消費者が支払う対価が増えること、解約条件が厳しくなることに限定する考え方が示されました。ECの文脈に置き換えると、送料の改定、定期便価格の値上げ、解約締切の前倒しあたりが該当します。送料改定を規約の更新だけで済ませている場合は、通知の運用を見直す対象になります。料金の内訳は発送代行の見積書の読み方で費目ごとに分解しています。
ECでよくある変更を、通知の要否で並べるとこうなります。
| 変更の内容 | 重要事項に当たるか | 個別通知 |
|---|---|---|
| 送料の値上げ | 対価が増える → 該当しうる | 必要になる方向 |
| 定期便の価格改定(値上げ) | 対価が増える → 該当しうる | 必要になる方向 |
| 解約締切の前倒し | 解約条件が厳しくなる → 該当しうる | 必要になる方向 |
| 送料の値下げ・無料化 | 消費者の一般の利益に適合 | 対象外 |
| 問い合わせ窓口の名称変更 | 重要事項に当たらない | 対象外 |
契約者が亡くなったときの対応手順
もう一つ、継続的な契約に固有の論点として消費者の死亡時の対応手順が挙がっています。事業者が死亡の事実を把握することは困難なため、一律の対応を求めるのではなく、相続人から問い合わせがあったときに円滑に対応できるよう、あらかじめ手順を定めて周知するよう努める方向です。定期便を扱う事業者にとっては、シニア顧客が増えるほど現実味を帯びる話になります。
「解約料」は今回見直さない
A案・B案・折衷案とも共通認識に至らなかった
キャンセル料・違約金といった「解約料」については、立証責任を事業者に移すA案、原状回復賠償に相当する部分とそれ以外で分けるB案、両者を組み合わせた折衷案が検討されました。しかしいずれも委員間で共通認識が形成されるには至っていません。「平均的な損害の額」というメルクマールを基礎にしつつ、多種多様な解約料を精緻化して一律の基準を設けることが困難であることが、検討の過程で次第に明らかになったと整理されています。
第9条第1項第1号は維持、説明責任の強化へ
結論として、今回は消費者契約法第9条第1項第1号の見直しは行わず、まずは事業者の説明責任を強化する方向が示されました。現行規定が不当な解約料設定の抑止に一定の役割を果たしていることも踏まえた判断です。したがってキャンセル料の条項そのものは、当面いまの考え方で点検すればよいことになります。点検の手順は消費者契約法の見直しが中間取りまとめ案へで扱っています。なお解約料に関する相談は直近10年間で3万件を超える水準で推移しており、論点が消えたわけではありません。
まとめ:10月31日までにできること
中間取りまとめは令和8年9月10日に確定し、意見募集は9月16日から10月31日までです。まだ法改正ではありませんが、方向性は読めます。優先度の高い順に並べると、①解約の申入れを受けて記録する窓口があるか、②解約受付の締切が出荷サイクルより手前にあるか、③返金と返送受付に期限を決めているか、④送料・価格・解約条件を変えるとき個別通知しているかの4点です。①〜③は解約妨害の禁止に、④は個別通知の義務化方向に対応します。
受注から出荷までのデータをつなぐ設計はEC受注管理(OMS)と物流の連携ガイドとEC向けOMS比較ガイド、連携方式の選び方はEC物流のAPI連携とCSV連携の違いが対応します。問い合わせ増への備えはECカスタマーサポートのAI自動化実務ガイド、同梱物での告知は納品書・請求書の同梱ルールに整理しています。出荷体制の全体像は発送代行完全ガイドとSTOCKCREW完全ガイド、ショップ運営全般はネットショップ運営完全ガイドが入口です。個別の相談はお問い合わせ、資料はサービス紹介資料からご覧いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 中間取りまとめが出たということは、法改正が決まったのですか?
A. 決まっていません。2026年9月10日に確定したのは検討会の中間取りまとめであり、条文にはなっていません。ただし意見募集が10月31日まで行われており、方向性はこの線から大きくは動かないと見てよい段階です。
Q. 解約妨害の禁止に違反すると、どうなるのですか?
A. 消費者に新たな解約権を発生させる形にはしない方向です。そのうえで、同様の行為の未然防止・拡大防止のため、適格消費者団体による差止請求の対象とする方向が示されています。行政処分ではなく差止めという形で効いてきます。
Q. 返金が遅れることも規制の対象になりますか?
A. 中間取りまとめは、解約によって事業者に生じる債務の履行を不当に拒んだり遅らせたりする行為を、解約妨害として禁止する対象に含めています。返金の遅れや返送受付の放置が該当しうるため、処理期限を先に決めておく必要があります。
Q. 送料を改定するとき、個別に通知しなければいけませんか?
A. 定型約款の変更のうち、消費者の一般の利益に適合する場合以外で、かつ重要事項の変更にあたる場合は個別通知を義務とする方向です。重要事項は、消費者が支払う対価が増えることと解約条件が厳しくなることに限定する案が示されており、送料の値上げはこれに該当しうる内容です。
Q. キャンセル料の条項は見直しが必要ですか?
A. 今回は消費者契約法第9条第1項第1号の見直しは行わず、事業者の説明責任を強化する方向とされました。したがってキャンセル料の条項そのものは、現行の「平均的な損害の額」の考え方で点検すれば足ります。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。