65歳以上の消費生活相談が330,497件、全体の37.7%|通販の相談は65〜69歳が最多という構造
- EC・物流インサイト
この記事は約12分で読めます
シニア向けの商材を扱っていると、「高齢者のトラブルは訪問販売の話であって、うちの通販には関係ない」と考えてしまいがちです。国民生活センターが2026年9月16日に公表した2025年度のデータは、その前提を少し崩します。65歳以上の相談は330,497件で相談全体の37.7%、そして通信販売の相談比率が最も高いのは65〜69歳でした。本記事では、この構造をシニア顧客が多いECの同梱物・解約導線・受け取り設計に翻訳します。出荷体制の前提は発送代行完全ガイドに整理しています。
65歳以上の相談は330,497件、相談全体の37.7%
5年で約8万件増えている
まず推移を押さえます。契約当事者が65歳以上の相談件数は、2021年度が251,848件、2022年度が268,879件、2023年度が277,636件、2024年度が304,674件、そして2025年度が330,497件でした。5年で約8万件の増加で、直近1年でも約25,800件増えています。高齢化そのものの影響もありますが、シニア層がオンラインで買う機会が増えたことも当然含まれます。
契約当事者が65歳以上の相談件数は2025年度330,497件で、2024年度の304,674件と比べ約25,800件増加しました。
割合は37.7%で、前年度より下がっている
件数が増える一方で、相談全体に占める割合は37.7%と、2024年度の38.6%から下がりました。件数と割合が逆方向に動いているのは、65歳未満の相談も同時に増えているためです。この1年で見れば、シニアだけが突出して増えているわけではありません。ただし2021年度の34.1%からは一貫して高い水準にあり、相談全体の4割近くが65歳以上という構造そのものは変わっていません。
平均契約購入金額は約73万円
金額面では、平均契約購入金額が約73万円、平均既支払金額が約51万円でした。この2つの差は、契約はしたがまだ払い切っていない金額があることを示しています。定期購入のように支払いが分割されて続く形の契約が一定数含まれていると読めます。EC事業者にとっては、1件のトラブルが1回分の売上では終わらないという意味になります。
通販の相談比率が最も高いのは65〜69歳
年齢が上がるほど、通販の割合は下がっていく
ここが今回のデータで最も実務に効く部分です。販売購入形態別に見ると、「通信販売」が各年齢区分の相談全体に占める割合は65〜69歳が最も高く、年齢が上がるにつれて割合が下がります。逆に訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入は年齢が上がるほど割合が高くなります。つまり通販のトラブルが集中しているのは、シニアの中でも入口にあたる60代後半です。
85歳以上では訪問販売が逆転する
この傾向が交差するのが85歳以上で、ここで「通信販売」を抜いて「訪問販売」の割合が最も高くなります。EC事業者の観点で言えば、自社の顧客層が60代後半中心なのか、80代以上まで広がっているのかで、注意すべき点がまったく変わるということです。前者なら画面と同梱物の設計、後者なら家族や周囲を含めた連絡経路の設計に重心が移ります。
「シニア=訪問販売」という思い込みを外す
高齢者の消費者トラブルというと訪問販売や電話勧誘が真っ先に浮かびますが、少なくとも60代後半では通信販売が中心です。ここを取り違えると、「うちは通販だから関係ない」という結論になってしまいます。ネット利用そのものの動向はネットショッピング利用世帯が55.6%へ低下もあわせて見ると立体的になります。
| 年齢区分 | 相談で比率が高い販売形態 | EC事業者が重心を置く先 |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 通信販売(全区分で最も高い) | 最終確認画面・同梱物・解約導線 |
| 70代 | 通信販売が中心だが比率は低下 | 紙で残す情報・問い合わせ窓口 |
| 80〜84歳 | 訪問販売・電話勧誘が接近 | 連絡手段の複線化 |
| 85歳以上 | 訪問販売が通信販売を逆転 | 家族・周囲を含む受け取り設計 |
上位に並ぶのは化粧品・健康食品・医薬品類
相談の中身は「定期購入」に寄っている
商品・役務等別に見ると、上位は「商品一般」(不審な電話や身に覚えのない請求等)のほか、化粧品・健康食品・医薬品類が並びます。しかもこれらは定期購入関係として整理されています。販売方法・手口別でも「インターネット通販」や「定期購入」に関する相談が多く見られました。EC通販でシニア層に強い商材が、そのまま相談の上位に来ている構図です。
「商品一般」という入口の意味
上位に入る「商品一般」は特定の商品ではなく、身に覚えのない請求や不審な連絡が中心です。ここが多いということは、購入者が「どこから買ったか」を自力で特定できていないケースが相当数あることを意味します。裏を返せば、自社からの発送物に事業者名と連絡先が明確に残っていれば、無用な不安を減らせます。特商法に基づく表示の考え方は消費者庁の特定商取引法ガイド(通信販売)が基本になります。自社の規約整備はネットショップの法的ドキュメント整備と利用規約にまとめています。
定期購入の規制は、いま動いている最中
定期購入まわりの制度は現在進行形で見直しが進んでいます。運用の実態は改正特商法・定期購入規制の運用実態2026に、直近の議論はチャット勧誘に電話勧誘並みの規律へ、特商法の中間取りまとめ案と消費者契約法の見直しが中間取りまとめ案へに整理しています。物流側の設計は定期購入ECの物流設計が対応します。
同梱物が、シニア顧客には最初の接点になる
画面を見返せない人に、紙で何を残すか
スマートフォンで注文したあと、注文完了画面やメールをもう一度開ける人ばかりではありません。手元に残るのは届いた箱と、その中に入っている紙だけというケースは珍しくありません。そう考えると、同梱物は販促物ではなく連絡手段の冗長化として設計する余地があります。事業者名、問い合わせ先、次回発送の予定、解約の方法——このあたりが紙に残っているかどうかで、相談窓口に行く前に自社に電話が来るかどうかが変わります。
納品書・請求書の同梱には信書のルールがある
ただし何でも入れてよいわけではありません。納品書や請求書の同梱は郵便法の信書のルールとの関係を整理しておく必要があります。帳票ごとの同梱可否や、同梱を廃止して電子化する場合の進め方は納品書・請求書の同梱とは?EC発送での封入ルールで扱っています。電子化を進めるほど、シニア顧客の手元には何も残らなくなるという点は、コスト削減と裏表の関係にあります。
同梱物に何を載せるかは、相談の入口になっている項目から逆算すると決めやすくなります。上位に「商品一般」(身に覚えのない請求等)が来ているということは、購入したことは覚えていても、どこから買ったかが結びついていない状態が相当数あるということです。紙に残す優先順位は次のとおりです。
| 同梱物に載せる項目 | 何を防ぐか | 優先度 |
|---|---|---|
| 事業者名・ショップ名 | 「どこから届いたか分からない」不安 | 高 |
| 問い合わせ先(電話・メール) | 相談窓口へ行く前の自社接触 | 高 |
| 次回発送の予定日 | 「勝手に届いた」という認識のズレ | 高 |
| 解約の方法と締切 | 解約導線が分からないことによる離脱 | 高 |
| 定期の回数・残回数 | 契約内容の記憶違い | 中 |
| 販促チラシ・クーポン | (販促目的。上記が入ったうえで) | 低 |
同梱は出荷指示の設計で決まる
チラシや案内を入れる運用は、発送代行に委託していてもオプションとして組み込めます。重要なのは「誰に入れて、誰に入れないか」を出荷指示の側で出し分けられるかです。初回購入者だけ、定期2回目の人だけ、といった条件をつけられると同梱物の意味が一段上がります。受注データと出荷の連携はEC受注管理(OMS)と物流の連携ガイド、費用の内訳は料金表で確認できます。
解約導線と出荷サイクル、そして受け取り
「次回発送の何日前まで」が実務の分かれ目
定期購入の解約でトラブルになりやすいのが締切です。解約の申し出は受けたが、次回分はもう出荷準備に入っていたという状態は、購入者から見れば「解約したのに届いた」としか映りません。締切を出荷サイクルより手前に置き、その日付を購入者に見える形で示しておくことが前提です。出荷側のリードタイムをどう詰めるかはEC受注〜出荷リードタイムの短縮手順にまとめました。
受け取りにくさも、解約の理由になる
見落とされがちですが、受け取れないことが積み重なると契約そのものが負担になります。不在が続いて持ち戻りが発生し、再配達の連絡が面倒で、結局やめる——という流れは珍しくありません。配送会社側では受け取り方の事前設定が広がっており、ヤマト運輸ではクロネコメンバーズと連携した対応要望の事前登録も始まっています。
荷物お届け時の対応要望を事前に登録できるようになり
電話で受ける前提を残しておく
解約導線をフォームやマイページに寄せると、運用は楽になります。ただしシニア層の比率が高い商材では、電話でしか解約を伝えられない購入者が一定数残ります。窓口をフォームだけに絞ると、その層は「解約できなかった」という体験になり、相談窓口へ流れます。通販の相談比率が最も高いのが65〜69歳という今回のデータは、まさにこの層が通販を使いこなしている一方で、つまずいたときの逃げ道を必要としていることを示しています。電話番号を同梱物とサイトの両方に残し、受付時間を明示しておくだけでも、初動の行き先が変わります。
置き配は現時点では非対応
ここは誤解を招きやすいので明記します。STOCKCREWでは置き配に現時点で対応していません。購入者がクロネコメンバーズ等でご自身で設定する形になります。「置き配で対応します」と案内してしまうと出荷指示との齟齬が出るため、案内文面を作る段階で確認してください。配送サイズや各社の違いは宅配便のサイズ規格をヤマト・佐川・日本郵便で徹底比較に、連休をまたぐ納期の案内はシルバーウィークの配送遅延と受注締切の設計にまとめています。
まとめ:年齢構成を出荷データから見る
2025年度の65歳以上の相談は330,497件、相談全体の37.7%、平均契約購入金額は約73万円でした。そして通信販売の相談比率が最も高いのは65〜69歳で、85歳以上で訪問販売に逆転します。この構造を自社に当てはめる出発点は、出荷データから顧客の年齢構成を把握することです。60代後半が中心なら、点検するのは最終確認画面・同梱物・解約締切の3点。80代以上まで広がっているなら、受け取りと連絡の経路を複線化する話になります。
問い合わせが増えたときの捌き方はECカスタマーサポートのAI自動化実務ガイド、返品の条件設計はEC返品ポリシーの書き方ガイドが対応します。出荷体制そのものを見直す場合は発送代行完全ガイドとEC物流完全ガイド、ショップ運営全体はネットショップ運営完全ガイドが入口です。サービスの範囲はSTOCKCREW完全ガイドで確認でき、個別の相談はお問い合わせ、全体像の把握にはサービス紹介資料をご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 65歳以上の相談は本当に増えているのですか?
A. 件数は増えています。2021年度251,848件から2025年度330,497件まで、5年で約8万件増えました。一方で相談全体に占める割合は2024年度の38.6%から2025年度は37.7%へ下がっています。65歳未満の相談も同時に増えているためです。
Q. 高齢者のトラブルは訪問販売が中心ではないのですか?
A. 年齢区分によって変わります。通信販売の相談比率が最も高いのは65〜69歳で、年齢が上がるにつれて下がり、85歳以上で訪問販売に逆転されます。60代後半のシニア層に関しては、通信販売が中心と考えたほうが実態に近くなります。
Q. シニア顧客向けに同梱物を入れる意味はありますか?
A. 注文完了画面やメールを見返さない購入者にとって、手元に残る情報は同梱物だけになります。事業者名・問い合わせ先・次回発送予定・解約方法を紙で残すことは、相談窓口に行く前に自社へ連絡してもらうための設計です。ただし納品書・請求書の同梱には信書のルールがあります。
Q. 定期購入の解約締切はどう決めればよいですか?
A. 次回分の出荷準備に入る前の日付に置き、その日付を購入者から見える形で明示してください。締切が出荷サイクルより後ろにあると「解約したのに届いた」という状態が発生します。締切と出荷指示の反映タイミングは委託先と事前に擦り合わせてください。
Q. 受け取りやすさを上げるために置き配は使えますか?
A. STOCKCREWでは置き配に現時点で対応していません。購入者がクロネコメンバーズ等でご自身で設定する形になります。案内文面に「置き配で対応します」と書くと出荷指示と食い違うため、事前にご確認ください。
この記事の監修者
保阪涼子
株式会社KEYCREW 営業部長。物流会社で10年間、EC物流の現場担当・営業事務を経験し、EC・物流業界で通算10年以上のキャリアを持つ。STOCKCREWではサービス開始初期から商談を担当し、500社以上のEC事業者への導入支援を一貫して手がけてきた。YFF(Yahoo!フルフィルメント)移管時には1,000社超の顧客接点・フロー設計を主導。月間10万件以上の出荷管理に携わり、顧客の物流費を平均15%削減する成果を上げている。成約率50%を達成した営業手法には、「『売る』より『解く』」という顧客課題解決型のアプローチが根底にある。物流メディア(Logistics Today、ECのミカタ)へのインタビュー掲載実績も持つ。