公正取引委員会が物流特殊指定を改正|2027年4月施行の着荷主規制でEC事業者の荷待ち・附帯作業・運賃協議はどう変わるか
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「うちは荷物を送る側だから、物流の取引規制は関係ない」と考えているEC事業者ほど、今回の改正は確認しておく価値があります。公正取引委員会は2026年6月17日、独占禁止法にもとづく「物流特殊指定」の改正を公表しました。2027年4月1日の施行で、これまで規制対象だった発荷主(荷物を送る側)に加え、着荷主(荷物を受け取る側)が物流事業者を通じて契約外の荷待ちなどをさせる行為も新たに規制の対象になります。あわせて公表された令和7年度の調査を踏まえ、コスト上昇を反映せず運賃を据え置くなどの疑いで、公正取引委員会から荷主105社が立入調査を受けています。EC事業者は、仕入れ商品を受け取る場面では着荷主に、出荷を委託する場面では発荷主になり、どちらの立場でも物流事業者との取引適正化を求められます。この記事では、改正の中身と調査で問題になった行為を一次情報で整理し、EC事業者が荷主として何に備えるべきかを具体的に解説します。物流委託の全体像は発送代行の仕組みと費用・業者選びで確認できます。
物流特殊指定の改正で何が変わるのか
物流特殊指定は、正式には「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」といい、荷主が物流事業者に対して優越的地位の濫用を行うことを独占禁止法にもとづいて規制する告示です。今回の改正では、名称が「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の…」となり、この「等」に、これまで対象外だった着荷主(荷物を受け取る側の荷主)の行為が含まれるようになりました。公正取引委員会は施行日を明確にしています。
「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法」(以下「改正物流特殊指定」という。)……は、令和9年4月1日から施行されます。
改正案は2026年3月12日に公表され、4月13日までの意見公募で66件の意見が寄せられ、公聴会を経て6月17日に確定しました。1年近い準備期間を置いて2027年4月に施行されるのは、荷主・物流事業者の双方が体制を整える時間を確保するためです。従来と改正後の違いを整理すると次のようになります。
| 観点 | 従来の物流特殊指定 | 改正後(2027年4月〜) |
|---|---|---|
| 主な規制対象 | 発荷主(荷物を送る側) | 発荷主+着荷主(受け取る側) |
| 着荷主の荷待ち等 | 直接の対象外 | 物流事業者を通じ発荷主にさせる行為も対象 |
| 典型的な問題行為 | 買いたたき・支払遅延など | 同左+荷待ち・附帯作業をさせる行為 |
| 位置づけ | サプライチェーンの一部 | 受け取り側まで含めた全体最適 |
なぜ着荷主まで対象を広げたのか
荷待ちや附帯作業の負担は、実は荷物を受け取る側の都合で生じることが少なくありません。納品先の都合で待たされたり、契約にない荷降ろし作業をさせられたりしても、これまでは受け取る側の荷主に直接の規制が及びませんでした。物流の担い手不足が深刻化するなか、こうした負担を放置するとドライバーの労働環境が改善しません。改正は、送る側だけでなく受け取る側まで含めてサプライチェーン全体の取引適正化を進めるという方向を示しています。この流れは、国が運賃の考え方を整理し始めた適正な原価の議論や、総合物流施策大綱とも一貫しています。
令和7年度調査で問題になった6つの行為
公正取引委員会は令和7年度に、荷主向け・物流事業者向けのアンケートを実施し、その結果を踏まえてコスト上昇分を反映せず運賃を据え置くなどの疑いがある荷主105社に立入調査を行いました。さらに、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為をした荷主779社に注意喚起文書を送付しています。件数が多かったのは、順に「不当な給付内容の変更及びやり直し」「代金の支払遅延」「買いたたき」でした。
令和9年4月1日からは、改正後の物流特殊指定の施行により、着荷主が物流事業者を通じて発荷主に契約外の荷待ち等を行わせる行為が新たに規制対象となる。
「悪意がなくても問題になる」のが要注意
調査で示された事例の多くは、意図的な買いたたきではなく「請求されなかったから払っていなかった」という受け身の対応でした。たとえば、出荷準備の遅れで荷待ちをさせたのに追加費用の算定方法を決めておらず、物流事業者からの請求もなかったため支払っていなかった、というケースです。コスト上昇局面で運賃の引き上げ要請がないからと協議の場を設けずに据え置くのも買いたたきに該当し得ます。「相手から言われなかった」は理由にならないという点が、EC事業者を含むすべての荷主が押さえるべきポイントです。価格転嫁の実務は物流費・労務費の転嫁でも整理しています。
EC事業者は「荷主」として何に該当するか
物流特殊指定が直接の規制対象とするのは、物流事業者に対して優越的地位に立つ「特定荷主」です。取引相手より規模が小さい小規模なEC事業者が、大手配送会社に対して優越的地位に立つ場面は限られます。とはいえ、取引適正化の流れはサプライチェーン全体に及んでおり、EC事業者も無縁ではありません。自社がどの立場になるのかを整理しておきましょう。
発荷主としての立場
EC事業者が商品を出荷し、配送会社や倉庫・発送代行に運送・保管を委託するとき、EC事業者は発荷主です。委託先に対して、契約にない附帯作業をさせたり、コスト上昇を反映せず運賃・料金を据え置いたりすれば、規模によっては問題になり得ます。とくに継続的に委託する倉庫や発送代行との関係では、料金改定の協議に応じる姿勢が求められます。
着荷主としての立場
一方、EC事業者がメーカーや卸から商品を仕入れて受け取るとき、EC事業者は着荷主です。入荷のバース(荷降ろし場所)が混雑して配送ドライバーを長時間待たせたり、契約にない検品・棚入れを手伝わせたりすると、改正後は着荷主の行為として問題になり得ます。自社倉庫や委託倉庫での入荷受け入れ体制を見直しておくことが、2027年4月に向けた備えになります。改正物流効率化法によるCLO(物流統括管理者)選任などの動きは改正物流効率化法の実務対応や物流2026年問題で整理しており、今回の改正と合わせて理解しておくと全体像がつかめます。
いま備えるべき取引適正化の実務
施行は2027年4月ですが、準備は早いほど安全です。「請求がなくても、生じた費用は払う」「コスト上昇局面では協議の場を設ける」という2つを軸に、契約と運用を整えておきましょう。調査で確認された「望ましい取組」を参考に、実務を整理します。
| 場面 | NGになりやすい対応 | 望ましい対応 |
|---|---|---|
| 荷待ちが発生 | 請求がないから追加費用を払わない | 算定方法を事前に定め、生じた費用を支払う |
| 附帯作業を依頼 | 運賃に含まれると考え対価を払わない | 作業範囲と対価を契約で明示する |
| コスト上昇局面 | 要請がないので運賃を据え置く | 定期的に協議の場を設け、必要性を確認する |
| 支払い | 社内手続の遅れで支払期日を過ぎる | 期日どおりの支払いを運用で担保する |
契約と運用に落とし込む
実務の要は、口約束をやめて書面化することです。荷待ちや附帯作業が生じたときの追加費用の算定方法、料金改定の協議ルール、支払期日を契約や覚書に明記しておけば、「請求がなかったから払わなかった」という受け身の事故を防げます。委託先の選定・契約時に確認すべき項目は発送代行の契約書チェックリストにまとめています。調査では、少なくとも年1回は運賃協議の場を設け、相手から引き上げ要請がなくても「この価格で問題ないか」を確認している荷主の取組が望ましい例として紹介されました。受け身ではなく、荷主側から声をかけるのがこれからの標準です。
関連する制度も合わせて確認
今回の改正は単独の動きではありません。2026年1月1日には下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が施行され、運送を委託する「特定運送委託」が新たに対象に加わりました。公正取引委員会・中小企業庁・国土交通省が連携して執行にあたる体制も強化されています。荷主105社への立入調査のように実際の執行も進んでいるため、「まだ先の話」ではなく、いま整える課題として捉えるのが安全です。荷主に求められる物流改善の全体像は国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者向け)」で確認できます。自社の物流をどう組み立てるかという全体像は3PLとEC物流外注の全体像も参考になります。
とくに繁忙期は荷待ちや附帯作業が発生しやすく、無自覚のうちに問題行為につながりがちです。日々の入荷・出荷のオペレーションを標準化し、想定外の作業が生じたら費用として記録・精算する運用にしておくと、施行後も慌てずに済みます。ヤマト・佐川など委託先ごとの取引条件は、ヤマト運輸の配送サービスと料金のような基礎情報も踏まえて整理しておきましょう。
発送代行・倉庫委託との関係で見直す点
透明な料金体系のパートナーを選ぶ
取引適正化の流れが強まるなかで、料金が不透明な委託関係はリスクになります。項目ごとに料金が明示され、改定の条件やタイミングが分かるパートナーであれば、「知らないうちに買いたたきになっていた」「附帯作業の対価が曖昧なままだった」という事態を避けられます。STOCKCREWは初期費用0円・固定費0円で、全国一律260円からの明瞭な料金体系を公開しており、料金の中身をあらかじめ把握したうえで委託できます。サービスの全体像はSTOCKCREW完全ガイドで確認できます。
入荷・附帯作業のルールを握っておく
着荷主規制を意識すると、入荷(仕入れ商品の受け入れ)と附帯作業のルールを委託先とあらかじめ決めておくことの重要性が増します。どこまでが基本料金の範囲で、どこからが追加費用なのかを契約で明確にしておけば、現場での「言った・言わない」を防げます。物流全体を体系的に理解したい場合はEC物流完全ガイドを、配送会社の使い分けはマルチキャリア戦略を参照してください。取引適正化は、コストではなく持続可能な物流への投資と捉えるのが、これからの荷主の姿勢です。
まとめ:施行前にEC事業者がやるべきこと
公正取引委員会は2026年6月17日に物流特殊指定の改正を公表し、2027年4月1日から着荷主が物流事業者を通じて荷待ち等をさせる行為も規制対象になります。令和7年度の調査を踏まえ、荷主105社が立入調査を受け、779社に注意喚起文書が送られました。多くは「請求されなかったから払っていなかった」という受け身の対応で、悪意がなくても問題になり得る点が要注意です。EC事業者は、出荷を委託する発荷主としても、仕入れを受け取る着荷主としても取引適正化を求められます。やるべきことは、①荷待ち・附帯作業の追加費用の算定方法を事前に決める、②コスト上昇局面では荷主側から協議の場を設ける、③料金・作業範囲・支払期日を書面化するの3つ。委託先選びの全体像は発送代行の始め方と業者選びで、料金や取引条件のご相談はお問い合わせや資料ダウンロードからご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 物流特殊指定の改正はいつ施行されますか?
A. 2026年6月17日に公表され、2027年(令和9年)4月1日から施行されます。改正案は2026年3月12日に公表され、意見公募と公聴会を経て確定しました。約1年の準備期間を置いての施行です。
Q. 「着荷主規制」とは何ですか?
A. これまで物流特殊指定は荷物を送る発荷主を主な対象としていましたが、改正で荷物を受け取る着荷主が、物流事業者を通じて発荷主に契約外の荷待ちなどをさせる行為も規制対象になります。受け取り側の都合で生じる負担にも目を向ける趣旨です。
Q. 小規模なEC事業者も対象になりますか?
A. 直接の規制対象は物流事業者に対して優越的地位に立つ荷主で、小規模事業者が大手配送会社に優越する場面は限られます。ただし取引適正化の流れはサプライチェーン全体に及び、倉庫や発送代行との継続取引では協議に応じる姿勢が求められます。仕入れを受け取る際は着荷主の立場にもなります。
Q. 調査ではどんな行為が問題になりましたか?
A. 令和7年度の調査で、荷待ちの追加費用を払わない「不当な給付内容の変更及びやり直し」、「代金の支払遅延」、協議せず運賃を据え置く「買いたたき」の順に多く、荷主105社が立入調査、779社が注意喚起文書の対象となりました。
Q. 施行前にEC事業者は何を準備すべきですか?
A. 荷待ち・附帯作業の追加費用の算定方法を事前に決め、コスト上昇局面では荷主側から運賃協議の場を設け、料金・作業範囲・支払期日を書面化しておくことです。透明な料金体系の委託先を選ぶことも、将来の取引リスクを下げます。
この記事の監修者
重光翔太
株式会社KEYCREW 営業管掌取締役。ヤマト運輸にて本社営業部長を歴任し、物流業界で16年以上のキャリアを積む。法人営業・コスト最適化・業者比較選定を専門とし、累計1,500社以上のEC事業者への物流支援を手がけてきた。数百万件/日規模の出荷オペレーション管理や、6,000社が利用するフルフィルメントサービスの構築、温度帯コールドチェーンの大規模荷主向け事業設計など、業界でもトップクラスの実績を持つ。STOCKCREWでは営業戦略全体を統括し、「数字で語り、ROIで証明する」をモットーに、EC事業者の物流コスト最適化を推進している。