DHL×USPSが100億ドル超の長期独占契約を締結|米国向け越境EC配送はどう変わる?日本セラーの対応
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米国向けの越境EC配送に、大きなニュースが飛び込んできました。2026年5月28日、DHLグループの小包部門であるDHL eCommerceと米国郵政公社(USPS)が、総額100億ドル(約1.5兆円規模)を超える複数年の独占契約を締結したと発表したのです。米国内のラストマイル(最終区間配達)を担うUSPSの配達網が長期契約で固定されたことは、米国向けにエコノミー配送を使う日本のEC事業者にとっても無関係ではありません。本記事では契約の中身と背景、日本セラーへの影響と対応策を整理します。国内の出荷体制も含めた物流全体の見直しは発送代行の基礎知識から確認しておきましょう。
何が発表されたのか——DHL eCommerce×USPSの契約概要
25年超のパートナーシップを「複数年・独占」に格上げ
DHL eCommerceとUSPSは25年以上にわたり協業してきましたが、これまでの契約は比較的短期のものでした。今回の合意は、その関係を複数年・独占(exclusive)の長期契約へ格上げするもので、契約金額は最低でも100億ドルを超える見込みと公表されています。
米国郵政公社とDHL eCommerceは、予想総額が「100億ドルを優に超える」複数年契約に合意した。DHL eCommerceが集荷・仕分け・輸送した小包は、引き続きUSPSへ独占的に引き渡され、最終顧客へのラストマイル配達が行われる。
出典:Supply Chain Dive「USPS, DHL eCommerce ink $10B-plus long-term contract」(2026年5月28日)
契約のポイントを整理する
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年5月28日 |
| 契約当事者 | DHL eCommerce(DHLグループ)/USPS(米国郵政公社) |
| 契約金額 | 最低100億ドル超(USPS側の説明では「下限」の位置づけ) |
| 期間 | 複数年(具体的な年数は非公表) |
| 内容 | DHL eCommerceが集荷・仕分け・幹線輸送した小包のラストマイル配達をUSPSへ独占的に委託 |
| 従来との違い | 長期契約化により、DHL側が自社顧客と長期の料金・サービス契約を結びやすくなる |
DHL eCommerce Americasのスコット・アッシュボーCEOは「初めて複数年の合意を得たことで予見性が高まり、顧客に長期的な安心を提供できる」と述べ、USPSのデビッド・スタイナー総裁も「全米の配達網を成長のてこにする取り組みの一例」と双方にとって利益のある契約であることを強調しています。
契約の中身——「集荷・輸送はDHL、最終配達はUSPS」の分業モデル
なぜDHLは自前のラストマイル網を作らないのか
DHL eCommerceは大口荷主向けの国内・国際小包サービスを手がけ、全米に19の完全自動化ハブを持ちますが、最終配達網は持ちません。買収や自社構築という選択肢もあるなか、同社が選んだのは「USPSの活用継続」でした。アッシュボーCEOは理由を「USPSはすでに週6日、すべてのアメリカ人の玄関先に到達しており、これ以上効率的なモデルは存在しない」と説明しています。幹線輸送と仕分けは民間の自動化で磨き、面のカバーは郵政網に任せる——宅配コストが世界的に上昇するなかでの、現実的な分業の形といえます。
「独占」の意味に注意
今回の「独占(exclusive)」は、DHL eCommerceが集荷した小包の最終配達をUSPSだけに委ねるという意味です。USPSが他社の荷物を扱えなくなるわけではなく、実際にUSPSはAmazonやUPSとも個別の配送契約を維持しています。物流網の構造を理解するうえでは、EC物流の全体像とあわせて押さえておきたいポイントです。
背景——USPSの経営再建と相次ぐ大口配送契約
赤字体質からの転換を急ぐUSPS
USPSは近年、郵便物の減少と人件費上昇で厳しい財務状況が続いており、収益源として小包配送の拡大を急いでいます。週6日・全米をカバーする配達網は他社が容易に複製できない資産であり、これを民間物流会社に「売る」ことで稼働率と収益を高める戦略です。スタイナー総裁は今回の発表に際し「これは1つの契約の話ではなく、より協調的で、より有能で、長期的な成功に向けて態勢を整えた郵政公社を作るという取り組みの一例だ」と述べています。
2026年に入ってからは1月にUPSの「Ground Saver」配送の取り扱いを約1年ぶりに再開し、4月にはAmazonとも新たな配送契約に合意しました。今回のDHL eCommerceとの長期契約は、こうした大口顧客の囲い込み戦略の総仕上げと位置づけられます。日本でも進む「郵政×民間」の再編
配達網を持つ郵政事業者と民間物流会社の連携強化は、日本でも同じ構図で進んでいます。日本郵便の赤字転落が国内のEC配送コストに波及しつつあるように、「ラストマイルの担い手をどう確保するか」は世界共通の課題になっており、米国の動きは日本のEC物流の将来を考えるうえでも示唆に富みます。国内配送の値上げ基調については宅配便値上げの動向もあわせてチェックしてください。
日本のEC事業者への影響——米国向けエコノミー配送の安定化
「米国内はUSPS配達」型サービスの予見性が高まる
日本から米国の消費者へ商品を届ける場合、DHLやFedExの express(クーリエ)だけでなく、米国内の最終配達を郵政網に委ねるエコノミー型の配送サービスが広く使われています。国際区間は民間キャリアが輸送し、米国に到着した荷物を仕分けして郵政網へ「投入(インジェクション)」する方式で、クーリエより日数はかかるものの配送単価を大幅に抑えられるのが特徴です。低単価・軽量の商材を扱うセラーにとっては、この方式が使えるかどうかで米国販路の採算が変わると言っても過言ではありません。
今回の長期契約により、DHL eCommerce経由で米国内に投入される小包の配達体制が長期にわたって固定されたため、この型のサービスを使う荷主にとっては料金・リードタイムの予見性が高まる方向に働きます。DHL側も「顧客と長期契約を結びやすくなる」と明言しており、運賃の乱高下リスクが一定程度抑えられることが期待できます。
デミニミス撤廃後のコスト環境では「配送費の安定」が一層重要に
米国では2025年8月にデミニミス(少額免税)制度が撤廃され、少額貨物にも関税が課されるようになりました。少額免税の見直しは世界的な潮流であり、関税コストの増加分を吸収するためにも、配送費そのものの安定確保は日本セラーの生命線です。米国関税政策の動向と合わせて、配送・関税の両面からコスト管理を組み立てる必要があります。
なお、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」が示すとおり、日米中3カ国間の越境EC市場は拡大基調が続いており、米国向け販路の物流設計は今後も重要性を増していきます。商材別の需要構造まで踏み込んだ越境EC市場規模のデータとあわせて、自社の販路計画を点検しておきましょう。
米国向け物流設計で押さえるべき3つの論点
今回の契約はあくまで「配達網の安定」というプラス材料であり、米国向け物流の設計課題そのものが消えるわけではありません。具体的には次の3点です。
- 関税・通関コストの織り込み——デミニミス撤廃後は少額貨物にも関税・通関手数料が発生します。米国の追加関税動向を含め、ランディングコスト(総到着原価)で採算を計算する習慣が不可欠です。
- 3PL・配送網の選定——米国向けは「日本から直送するか、現地在庫を持つか」で物流設計が大きく変わります。アメリカ越境物流の全体設計を踏まえて、自社の出荷量に合うモデルを選びましょう。
- 返品・未着対応の体制——エコノミー配送は追跡精度がクーリエに劣る場合があり、未着問い合わせへの対応フローをあらかじめ用意しておく必要があります。
日本セラーが取るべき対応——配送手段ポートフォリオの再点検
米国向け配送手段を「速度×コスト」で棚卸しする
| 配送手段 | 速度 | コスト | 向いている商材・場面 |
|---|---|---|---|
| クーリエ(DHL Express・FedEx・UPS) | 最速(2〜5日) | 高い | 高単価品・B2B・急ぎの補充 |
| EMS(国際スピード郵便) | 速い(3〜7日目安) | 中 | 中単価品・小口出荷 |
| エコノミー型(米国内は郵政網配達) | 遅い(1〜3週間) | 安い | 低単価品・軽量品・余裕のある納期 |
| 米国内在庫型(現地3PL・FBA等) | 現地即日〜2日 | 在庫リスクあり | 販売量が安定したSKU |
重要なのは、1つの手段に依存せず商材・単価・納期要件ごとに使い分けるポートフォリオ設計です。EMSと代替手段の使い分けの基準を整理したうえで、海外発送代行のような外部リソースも選択肢に含めると、為替や運賃の変動に強い体制を作れます。小規模から始める場合は個人・小規模輸出者向けの国際発送代行という入り口もあります。
現地在庫型(FBA・米国3PL)を検討する場合
販売量が安定してきたSKUは、米国内に在庫を置く方がトータルコストで有利になるケースがあります。Amazon.comでの販売ならFBAが第一候補になりますが、手数料体系や納品制限を踏まえた比較が必要です。Amazon物流の選択肢比較とFBAからの移行判断の考え方は国内ECと共通する部分が多いため、まず国内で判断軸を固めてから米国に応用するのが失敗の少ない順序です。
国内物流の効率化が越境ECの原資をつくる
- 米国向け出荷の比率と配送費を可視化する——月次で「米国向け1件あたりの配送費・関税・梱包費」を把握し、値上げ・制度変更の影響を早期に検知できる状態を作りましょう。
- 配送手段の見直しサイクルを決める——契約環境が動いている時期こそ、半年に1回は料金とリードタイムの実績を見直すルールが有効です。越境EC×発送代行の始め方も参考にしてください。
- 国内出荷を外部化してリソースを越境に振り向ける——国内の梱包・出荷作業を発送代行に委託すれば、浮いた時間とコストを米国販路の開拓・現地対応に充てられます。STOCKCREWは初期費用0円・固定費0円・全国一律260円〜の公開料金で、海外発送向けのオプションにも対応しています。
まとめ:米国向け配送網の「長期安定」は追い風、ただし依存は禁物
DHL eCommerceとUSPSの100億ドル超・複数年独占契約は、米国内エコノミー配送の土台が長期に固定されたことを意味し、米国向け越境ECに取り組む日本セラーにとっては配送の予見性が高まる追い風です。一方で、デミニミス撤廃や関税政策など米国向け物流のコスト環境は流動的であり、単一の配送手段への依存はリスクが残ります。クーリエ・EMS・エコノミー型・現地在庫型を商材ごとに使い分け、国内側の出荷体制は発送代行の活用で軽くしておく——この二段構えが2026年の現実解です。STOCKCREWの料金・サービス詳細は資料ダウンロードで確認でき、自社の出荷条件に合わせた相談はお問い合わせから受け付けています。
よくある質問(FAQ)
Q. DHL eCommerceとUSPSの契約はいつ発表されましたか?
2026年5月28日に両社が発表しました。契約金額は最低でも100億ドルを超える見込みの複数年契約で、DHL eCommerceが集荷・仕分け・輸送した小包のラストマイル配達をUSPSへ独占的に委託する内容です。契約の具体的な年数は公表されていません。
Q. この契約は日本のEC事業者に関係がありますか?
米国向けの越境EC配送では、米国内の最終配達を郵政網に委ねるエコノミー型サービスが広く使われています。今回の長期契約でこの型の配達体制が長期に固定されたため、料金やリードタイムの予見性が高まる方向に働き、米国向け販路を持つ日本セラーには間接的な追い風となります。
Q. USPSはDHLの荷物しか配達しなくなるのですか?
いいえ。「独占」はDHL eCommerce側が最終配達をUSPSだけに委ねるという意味で、USPSは引き続きAmazonやUPSなど他社とも配送契約を結んでいます。USPSにとっては大口顧客を長期で確保し、財務改善につなげる狙いがあります。
Q. 米国向けの配送手段はどう選べばよいですか?
速度とコストのバランスで使い分けるのが基本です。高単価品や急ぎはクーリエ、中単価の小口はEMS、低単価・軽量品はエコノミー型、販売量が安定したSKUは米国内在庫型が向いています。単一手段への依存を避け、商材ごとのポートフォリオとして設計しましょう。
Q. 越境ECを強化したいのですが、国内の出荷作業が手一杯です。
国内向けの保管・梱包・出荷を発送代行に委託し、社内リソースを越境EC の販路開拓に振り向ける方法があります。STOCKCREWは初期費用0円・固定費0円・全国一律260円〜の公開料金で、導入実績は2,200社以上。海外発送向けのオプションにも対応しています。
この記事の監修者
重光翔太
株式会社KEYCREW 営業管掌取締役。ヤマト運輸にて本社営業部長を歴任し、物流業界で16年以上のキャリアを積む。法人営業・コスト最適化・業者比較選定を専門とし、累計1,500社以上のEC事業者への物流支援を手がけてきた。数百万件/日規模の出荷オペレーション管理や、6,000社が利用するフルフィルメントサービスの構築、温度帯コールドチェーンの大規模荷主向け事業設計など、業界でもトップクラスの実績を持つ。STOCKCREWでは営業戦略全体を統括し、「数字で語り、ROIで証明する」をモットーに、EC事業者の物流コスト最適化を推進している。