国交省がフェリー・RORO・内航コンテナの航路別積載率を公表|EC・卸の幹線輸送を船に振り替える判断材料
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国土交通省が2026年8月31日、中・長距離フェリー・RORO船・内航コンテナ船の航路別の積載率(令和8年1〜3月実績と4〜6月実績)を公表しました。トラックが確保しづらい局面で「船に載せられないか」と考えたとき、いちばん知りたいのはどの航路に空きがあるかです。それが上り下り別のレンジで出ているのは、荷主にとって珍しく使いやすい情報です。この記事では数字の読み方の注意点を先に押さえたうえで、EC・卸のB2B出荷を船に振り替えられる条件と、動かすべき順番を整理します。国内の出荷体制のスケール設計は、発送代行の仕組みと費用から確認できます。
8月31日に公表されたデータの範囲
公表したのは国土交通省海事局内航課です。中・長距離フェリーとRORO船はトラック輸送に係る積載率、内航コンテナ船はコンテナ輸送に係る積載率で、いずれも事業者へのアンケート調査によるものです。この公表は令和5年8月から継続しており、今回は令和8年1〜3月と4〜6月の2期分がまとめて出ています。
積載率にまだ余裕のある航路もありますので
出典:国土交通省「船舶へのモーダルシフト推進にご活用ください!~中・長距離フェリー、RORO船及び内航コンテナ船に係る積載率動向について~」(令和8年8月31日)
航路の定義も示されている
中距離フェリー航路は片道の航路距離100km以上〜300km未満で陸上輸送のバイパス的な役割を果たす航路、長距離フェリー航路は片道300km以上で同じ役割を果たす航路と定義されています。「陸上輸送のバイパス」という言い方が、そのまま使い道を表しています。長距離のトラック幹線を丸ごと置き換えるのではなく、区間を船に預けて前後をトラックでつなぐ発想です。
あわせて使える副資料が2つある
報道発表資料は、令和7年5月から公表している「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」と、各社が提供している航路情報をまとめた「航路情報一覧」も案内しています。積載率だけでは便名や締切時刻が分からないため、実務ではこの2つと組み合わせて初めて検討できる形です。データの一覧は国土交通省の報道発表資料(積載率動向)にPDFで掲載されています。
読み違えると判断を誤る3つの注意点
数字を見る前に、資料に付いている注記を確認しておきます。ここを飛ばすと、実際に問い合わせたときに話が合いません。
- 概算値である——アンケート調査を基にした対象期間中の概算値であり、実際には季節や曜日、ドック期間(定期整備)によっても変動するため、あくまで参考と明記されています。
- 全事業者の数字ではない——RORO船と内航コンテナ船については、現時点で協力が得られた一部事業者の数値を公表しているとされています。掲載がない航路が「便がない航路」を意味するわけではありません。
- 上りと下りは別に見る——同じ航路でも方向によって数字が大きく違います。片方が満載でも逆方向は空いている、という組み合わせが多数あります。
3つ目は特に重要です。空いている方向にだけ荷を載せるなら成立する、というケースが現実には多く、往復で考えると成立しないものも片道なら選択肢に入ります。
空いている航路と満載の航路
令和8年4〜6月実績から、余裕のある航路と満載に近い航路を抜き出します。公表値はレンジ表記なので、そのまま転記しています。
| 船種 | 航路・方向 | 積載率 | 見立て |
|---|---|---|---|
| 内航コンテナ船 | 東東北〜中京(上り) | 0〜5% | ほぼ空いている |
| 内航コンテナ船 | 京浜〜北九州(下り) | 0〜5% | ほぼ空いている |
| 内航コンテナ船 | 南中国〜北九州(上り) | 15〜20% | 余裕あり |
| 内航コンテナ船 | 京浜〜阪神(上り) | 35〜40% | 余裕あり |
| RORO船 | 京浜〜東東北(上り・下り) | いずれも40〜45% | 両方向に余裕 |
| RORO船 | 阪神〜北九州(下り) | 40〜45% | 余裕あり |
| RORO船 | 北陸〜北九州(上り) | 35〜40% | 余裕あり |
| フェリー | 北東北〜北海道(下り) | 40〜45% | 余裕あり |
| RORO船 | 京浜〜中京(下り) | 95〜100% | 満載 |
| RORO船 | 京浜〜北九州(下り) | 95〜100% | 満載 |
| 内航コンテナ船 | 阪神〜北陸(上り) | 95〜100% | 満載 |
| フェリー | 京浜〜北九州(上り) | 85〜90% | ほぼ満載 |
京浜〜東東北のRORO船は両方向に空きがある
この表でいちばん目を引くのは、RORO船の京浜〜東東北が上り下りともに40〜45%という点です。往復で空いている航路は珍しいため、東北に定期的に卸す事業者や、東北から仕入れる事業者にとっては検討価値があります。反対に京浜〜中京の下りは95〜100%で、この区間を船で取ろうとしても枠が出てこないと考えたほうが現実的です。
内航コンテナ船の0〜5%は使えるのか
東東北〜中京の上りと京浜〜北九州の下りは0〜5%です。ほぼ空荷ということですが、これは需要がない方向を意味します。便数や寄港頻度が限られている可能性が高く、空いているから安く早く運べる、とは直結しません。それでも交渉の起点にはなります。片荷の解消は船社側の課題でもあるため、こちらの荷が定期的であれば話が通りやすい方向です。
1〜3月から4〜6月で動いた航路
今回は2期分が同時に出たため、変化が読めます。四半期単位の動きなので確定的な傾向とは言えませんが、方向感の参考にはなります。
| 船種 | 航路・方向 | 1〜3月 | 4〜6月 | 動き |
|---|---|---|---|---|
| RORO船 | 京浜〜北九州(上り) | 75〜80% | 90〜95% | 混み合ってきた |
| RORO船 | 京浜〜北四国(上り) | 60〜65% | 75〜80% | 上昇 |
| 内航コンテナ船 | 京浜〜北海道(上り) | 90〜95% | 55〜60% | 大きく空いた |
| 内航コンテナ船 | 北海道〜東東北(上り) | 60〜65% | 90〜95% | 上昇 |
| RORO船 | 阪神〜北四国(上り) | 95〜100% | 85〜90% | やや緩んだ |
| フェリー | 阪神〜北海道(上り) | 65〜70% | 60〜65% | やや緩んだ |
内航コンテナ船の京浜〜北海道が空いた意味
上りが90〜95%から55〜60%へと下がっています。四半期で30ポイント以上の振れ幅であり、季節性かドック期間の影響かは資料から判断できません。注記にあるとおり、ドック期間中は運航便数が減るため率の分母が変わります。数字が動いた理由を推測して記事に書くよりも、問い合わせて直近の状況を確かめるほうが早い部分です。
数字は「いま空いているか」を保証しない
4〜6月実績の公表が8月末なので、データと現在の間に2か月以上の時差があります。使い方としては、候補航路を絞り込むフィルタと考えるのが妥当です。絞り込んだあとの確認は航路情報一覧から船社に直接あたる流れになります。
ECや卸が船に載せられる条件
ここからは自社に当てはめる話です。船に振り替えられるのはB2Bの幹線輸送であって、消費者向けの宅配便ではありません。この線引きを最初に置いておくと、検討が空回りしません。
条件1:B2Bの出荷を持っていること
卸売や店舗への納品、モールのフルフィルメント拠点への納品といったB2Bの流れがあるなら対象になります。国内のBtoB-ECの規模は消費者向けをはるかに上回ります。
2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、26.1兆円(前年24.8兆円、前々年22.7兆円、前年比5.1%増)に拡大しています。また、2024年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前々年420.2兆円、前年比10.6%増)に増加しました。
B2B側の物流を組み直す論点はShopifyのB2B機能で卸売ECに参入する実務とメーカー直送と自社在庫型の比較にまとめています。取引先との条件面は大規模小売と納入業者の取引実態調査で確認できます。
条件2:リードタイムに数日の余裕を作れること
船は速さでは勝てません。トラックで1日の区間が2〜3日になる前提で、在庫の置き方を先に変える必要があります。納品日を後ろにずらせないなら、船は選べません。在庫を前倒しで置く設計はEC在庫管理の基本と改善と在庫回転日数(DOI)の改善手順に手順があります。複数拠点で持つ選択肢はマルチFC複数拠点戦略で扱っています。
条件3:荷姿がまとまっていること
RORO船とフェリーはトラックやシャーシ単位、内航コンテナ船はコンテナ単位です。バラ積みの小口では枠に載りません。パレット化ができているかが実質的な入口条件になります。標準仕様パレットの導入には補助金があり、締切は2026年10月2日です。内容は標準仕様パレット補助金の4次公募にまとめました。パレットの種類と保管料の関係は保管料4方式の比較、発注ロットの考え方は輸送ロットと保管ロットの考え方で確認できます。
条件4:物量が定期的であること
スポットで1回だけ載せたい、という相談は船社側にとって扱いづらいものです。逆に月に数回の定期便であれば、片荷を埋めたい方向とかみ合えば話が進みます。波動が大きい商材の場合は、出荷波動の管理設計でならしてから交渉に入るほうが条件を取りやすくなります。
検討を始める4ステップ
順番を間違えると時間を失います。積載率の表を眺めることから始めるのではなく、自社の区間を特定してから表を見るのが正解です。
| 順 | やること | 使う資料 | 判断すること |
|---|---|---|---|
| 1 | 年間の幹線輸送を区間別に集計する | 自社の出荷データ | 金額と本数の大きい上位3区間 |
| 2 | その区間に該当する航路があるか調べる | 航路情報一覧 | 便の有無・寄港地・所要日数 |
| 3 | 該当航路の積載率と方向を確認する | 積載率動向(4〜6月実績) | 空いている方向はどちらか |
| 4 | 船社・フォワーダーに現在の空き状況を確認する | 利用検討ガイド | 締切時刻・料金・最小単位 |
ステップ1を飛ばす失敗が多い
「船が安いらしい」から入ると、自社にとって小さい区間の検討に時間を使ってしまいます。上位3区間で全体の何割を占めるかを先に出しておけば、投じる労力の上限が決まります。物流費全体の分解は発送代行コストを下げる7つの最適化軸、運賃が上がり続ける構造は宅配運賃の構造分解で扱っています。
陸側の拠点整備も同時に進んでいる
船に振り替えるかどうかとは別に、陸の幹線ネットワーク側も動いています。
東京都江東区に敷地面積8.7万m²・処理能力1時間5万個の関東ハブセンターを新設し2026年7月21日に本格稼働。幹線輸送の集約・仕分け拠点。今後関西・九州にも順次展開。
拠点集約が進むと、区間ごとの所要日数の前提が変わります。影響は関東ハブセンター本格稼働とリードタイムへの影響にまとめました。鉄道や新幹線を使う動きも出ており、新幹線輸送とモーダルシフトの事例、業界全体の潮流は物流業界の最新トレンドと物流業界のSDGsとモーダルシフトの実例で追えます。物流の基本機能を整理し直したい場合は物流5大機能(輸送・保管・荷役・包装・流通加工)が土台になります。
まとめ:空いている船は交渉材料になる
2026年8月31日に公表された積載率動向は、航路ごと・方向ごとの空き具合がレンジで分かるという点で、荷主が使える形になっています。令和8年4〜6月実績では、内航コンテナ船の東東北〜中京の上りと京浜〜北九州の下りが0〜5%、RORO船の京浜〜東東北が上り下りともに40〜45%と余裕がある一方、RORO船の京浜〜中京の下りと京浜〜北九州の下りは95〜100%で満載でした。同じ国内幹線でも状況はこれだけ違います。
ただし数字は概算値であり、RORO船と内航コンテナ船は協力が得られた一部事業者の値です。公表と現在の間に2か月以上の時差もあるため、候補を絞るフィルタとして使い、最後は船社に確認する流れが現実的です。振り替えの入口条件はB2Bの幹線があること、数日のリードタイムを許容できること、パレット単位に荷姿がまとまっていること、物量が定期的であることの4つです。国内の保管と出荷を含めて体制から見直すなら、比較の観点は発送代行の業者選びと導入手順、STOCKCREWの倉庫と料金はSTOCKCREW完全ガイドで確認できます。自社の区間と物量での試算はお問い合わせから、検討用の資料は資料ダウンロードで受け取れます。
よくある質問(FAQ)
Q. 積載率が低い航路なら安く運べるのですか?
A. 直結はしません。積載率が低い方向は需要が少ない方向であり、便数や寄港頻度が限られている場合があります。ただし片荷の解消は船社側の課題でもあるため、定期的な物量を出せるなら交渉の起点になります。実際の料金と最小単位は船社やフォワーダーへの確認が必要です。
Q. 公表されている数値はいつの実績ですか?
A. 令和8年1〜3月実績と令和8年4〜6月実績の2期分です。公表日が2026年8月31日なので、最新の4〜6月実績でも公表時点で2か月以上の時差があります。候補航路を絞り込むフィルタとして使い、最終確認は直接問い合わせる流れが現実的です。
Q. 掲載されていない航路は便がないということですか?
A. いいえ。RORO船と内航コンテナ船については、現時点で協力が得られた一部事業者の数値を公表しているとされています。掲載がないことは便の有無を示しません。航路の存在は国土交通省が公表している航路情報一覧で確認してください。
Q. 宅配便の荷物を船に振り替えられますか?
A. この調査が対象にしているのはトラック輸送やコンテナ輸送であり、消費者向けの宅配便を個別に船に載せる話ではありません。振り替えの対象になるのは倉庫から倉庫、あるいは倉庫から店舗といったB2Bの幹線輸送です。消費者への最終配送は従来どおりトラックが担います。
Q. パレット化ができていないと使えませんか?
A. RORO船とフェリーはトラックやシャーシ単位、内航コンテナ船はコンテナ単位で扱うため、バラ積みの小口では枠に載りません。実質的にはパレット単位に荷姿がまとまっていることが入口条件になります。標準仕様パレットの導入には補助金があり、2026年度は10月2日締切の公募が実施されています。
Q. 上りと下りで数字が違うのはなぜですか?
A. 方向によって荷の量が違うためです。生産地から消費地へ向かう方向は荷が多く、逆方向は空きが出やすくなります。同じ航路でも片方が満載で逆が半分以下という組み合わせが多数あるため、往復での利用が難しくても片道なら成立する場合があります。
Q. どのくらいリードタイムが延びますか?
A. 公表資料に区間別の所要日数は含まれていません。一般にトラック直行より日数が増えるため、在庫を前倒しで置くか、納品日を後ろにずらす調整が必要になります。具体的な所要日数は航路情報一覧で候補を特定し、船社に確認してください。
この記事の監修者
重光翔太
株式会社KEYCREW 営業管掌取締役。ヤマト運輸にて本社営業部長を歴任し、物流業界で16年以上のキャリアを積む。法人営業・コスト最適化・業者比較選定を専門とし、累計1,500社以上のEC事業者への物流支援を手がけてきた。数百万件/日規模の出荷オペレーション管理や、6,000社が利用するフルフィルメントサービスの構築、温度帯コールドチェーンの大規模荷主向け事業設計など、業界でもトップクラスの実績を持つ。STOCKCREWでは営業戦略全体を統括し、「数字で語り、ROIで証明する」をモットーに、EC事業者の物流コスト最適化を推進している。