物流業界のSDGs取り組み【2026年版】|脱炭素・モーダルシフト・再配達削減の実例とEC事業者
- EC・物流インサイト
この記事は約14分で読めます
2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、物流業界でも重要な取り組みテーマです。環境・労働・技術・ジェンダーなど、物流企業が直面する課題の多くがSDGsの目標と重なっています。本記事では物流業界が取り組める6分野の具体的な戦略と、物流の2024年問題後を見据えた実践方法を2026年版として解説します。EC事業者が発送代行を選ぶ際の評価軸にもなる視点を整理します。
SDGsとは:17の目標と169のターゲット
SDGsは貧困・環境・教育・技術・ジェンダーなど17の目標と169のターゲットを設定し、2030年までの達成を掲げた国際目標です。2015年9月の国連総会で全193カ国により採択され、世界規模の経済・社会・環境課題の統合的な解決を目指しています。
17の目標は次のとおりです。①貧困をなくそう②飢餓をゼロに③すべての人に健康と福祉を④質の高い教育をみんなに⑤ジェンダー平等を実現しよう⑥安全な水とトイレを世界中に⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに⑧働きがいも経済成長も⑨産業と技術革新の基盤をつくろう⑩人や国の不平等をなくそう⑪住み続けられるまちづくりを⑫つくる責任つかう責任⑬気候変動に具体的な対策を⑭海の豊かさを守ろう⑮陸の豊かさも守ろう⑯平和と公正をすべての人に⑰パートナーシップで目標を達成しよう。日本では政府がSDGs推進本部を2016年に設置し、SDGsアクションプランを毎年更新しています。日本のモデルは人材育成・ビジネス貢献・地方創生の3本柱で構成され、民間企業の自発的な取り組みを重視しています。
物流業界がSDGsに取り組む意義
物流業界は経済活動のインフラとして機能しており、直面する課題の多くがSDGsの目標と重なっています。労働力不足・環境負荷・安全管理など、物流企業が解決すべき課題は国際的な優先課題と一致しています。物流業界全体がSDGsへの取り組みを強化することで、企業の競争力向上と社会への貢献が同時に実現されます。
物流業界のSDGs対応は、単なる社会的責任ではなく事業戦略そのものです。2024年4月に施行された自動車運転業務の時間外労働の上限規制(年960時間)によるドライバー不足対応、ESG投資の拡大といった外部環境の変化に対応するためには、SDGs目標との整合性を持った経営戦略が欠かせません。
物流業界で取り組める6分野
①交通事故の減少(SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を)
物流業界における交通事故は死傷事故として多数発生しており、これらの削減がSDGs目標3に直結します。事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数は減少傾向にありますが、さらなる削減が求められています。ドライバーの安全教育徹底・運行記録の自動データ化・バックカメラの設置・追突防止システムの導入・ドライブレコーダーを活用したKYT(危険予知訓練)教育が有効な対策です。
②質の高い教育(SDGs目標4:質の高い教育をみんなに)
倉庫作業におけるフォークリフト操作・荷役作業には多くの危険が潜んでいます。安全面・品質面の研修を定期的に実施することが、SDGs目標4に対応した取り組みです。事故やヒヤリハットは品質問題にもつながり、積み荷の損傷は損害賠償リスク・生産計画変更・納期遅延という連鎖を生みます。定期的な安全教育への投資が、事業リスク低減につながる経営戦略として機能します。
③雇用の充実(SDGs目標8:働きがいも経済成長も)
ドライバー不足が深刻化するなか、物流DX化による業務効率化が人手不足解消の鍵です。DXで効率が上がれば長時間労働を改善し、コア業務への人員配置転換が可能になります。高度な物流管理システムの導入で作業スピード向上・ミスの削減が実現でき、従業員の満足度向上と企業の生産性向上が同時に達成されます。
④ジェンダー平等の実現(SDGs目標5:ジェンダー平等を実現しよう)
物流業界でも女性ドライバーの増加・女性管理職の登用が進んでいます。給与面での男女間の格差をなくすことに加え、性別に関わらず働きやすい職場環境の整備がSDGsに求められています。多様な人材の確保と育成は、人口減少時代の物流業界では競争力の源泉となります。
⑤環境に配慮する取り組み(SDGs目標7・13:クリーンエネルギー・気候変動対策)
トラック配送は環境負荷が大きく、日本全体のCO2排出量のうち運輸部門は約2割を占めます。国土交通省の試算では、1トンの貨物を1km運ぶ際のCO2排出量は営業用トラックを基準にすると鉄道は約10分の1、船舶は約5分の1にとどまります。つまりトラックから鉄道・船舶へ切り替えるモーダルシフトでは、鉄道利用で約9割、船舶利用で約8割のCO2排出削減が見込めます。低公害車・EV車への切り替え、照明のLED化、アイドリング廃止も重要施策です。
⑥物流DX化で効率改善(SDGs目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう)
物流DX化は配車管理システム(TMS)・倉庫管理システム(WMS)・検品作業のロボット化などを含みます。デジタル技術の導入でミスが減り、余剰人員を他業務に充当でき、生産性向上による利益を従業員へ還元してモチベーション向上につなげられます。物流AIとロボット活用によるDX推進は目標9の中核的な取り組みです。
SDGsに取り組むメリット
| メリット分類 | 具体的な効果 | 対応目標 |
|---|---|---|
| 企業評価向上 | ESG投資家からの資金調達、大手荷主との取引継続 | 目標8・17 |
| 人材獲得 | 環境意識の高い優秀人材の採用、定着率向上 | 目標4・5・8 |
| コスト削減 | LED化・アイドリング廃止で運営コスト削減 | 目標7・13 |
| 事業継続性 | 規制対応による事業リスク低減、新規ビジネス創出 | 目標9・17 |
SDGsは国際社会全体での取り組みであるため、賛同・実践することで企業評価が高まります。環境問題・差別・食料危機といった課題は世界規模で共有・解決していくものです。社会的意義を含めて企業として取り組むことが、今後のビジネス継続性に直結します。物流アウトソーシングとサステナビリティ戦略の関係は発送代行完全ガイドでも整理しています。
取り組まないことで、新規ビジネスチャンスの喪失・優秀な人材の採用難・取引先からの評価低下というリスクが現実化しています。特にESG投資が拡大するなかで、SDGsに対応していない企業は資金調達の機会を失うリスクが高まっています。
物流業界のSDGs具体的実践事例
物流企業が実践しているSDGsの取り組みの具体例を紹介します。これらの事例は、規模の大小を問わず参考になります。
モーダルシフトによるCO2削減
トラック輸送を鉄道・船舶輸送に切り替える「モーダルシフト」は、物流業界で最も効果的なCO2削減手段の一つです。前述のとおり営業用トラックと比較して鉄道利用では約9割、船舶利用では約8割のCO2排出量削減が見込め、特に長距離輸送での効果が顕著で、SDGs目標13(気候変動対策)に直結します。中小企業でも共同配送の導入によってモーダルシフトのメリットを得られます。輸送手段別の排出原単位(貨物1トンを1km運ぶ際のCO2量)の目安は次のとおりです。
| 輸送手段 | CO2排出原単位(トンキロあたり) | 営業用トラック比 |
|---|---|---|
| 営業用トラック | 約195g | 基準(1) |
| 船舶 | 約41g | 約5分の1(約8割削減) |
| 鉄道 | 約19g | 約10分の1(約9割削減) |
※ 国土交通省の試算(営業用貨物車を基準とした輸送量当たりのCO2排出量)に基づく目安です。
ペーパーレス化と業務効率化の実現
EDI(電子データ交換)やWMS(倉庫管理システム)の活用により、発注書・納品書・請求書を電子化することがペーパーレス化につながります。紙の削減は環境負荷の軽減だけでなく、業務効率化とコスト削減に直結します。デジタル化による作業時間短縮は、そのまま従業員の労働時間短縮につながり、SDGs目標8(雇用の充実)にも対応します。
再生可能エネルギーと電動化
倉庫・物流施設の屋根に太陽光パネルを設置する動きが広がっています。これは電力の自給により固定費削減と環境負荷低減を同時に達成します。電気自動車(EV)の配送車導入も進んでおり、運用コストの長期的な削減と脱炭素化が両立可能です。初期投資は必要ですが、中長期的な運営コスト削減で回収できるケースが増えています。
ホワイト物流への賛同と2024年問題対応
物流企業がSDGsに取り組む際の参考となるのが「ホワイト物流」推進運動です。これは深刻化するドライバー不足に対して官民一体で物流業務の効率化を目指した取り組みで、運動としての公式期限はトラックドライバーの時間外労働の上限規制が始まる2024年3月末まででした。国土交通省によると、運動期間終了後も賛同表明(自主行動宣言の提出)の受付は継続しており、2024年12月時点で約3,395社が賛同しています。
2024年4月から施行された自動車運転業務の年間960時間以内の時間外労働規制は、罰則が科される本格的な規制です。この「2024年問題」によってドライバーの長時間労働が制限され、物流企業は業務効率化を迫られています。労働環境の改善と取引適正化は、改正貨物自動車運送事業法でも書面交付義務などとして制度化されました。
改正法第4条では、貨物自動車運送事業における取引環境の適正化を図るため、主に、1.運送契約締結時等の書面交付義務、2.委託先の健全な事業運営の確保に資する取組(健全化措置)を行う努力義務、当該取組に関する運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務、3.実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成・保存義務などについて規定し、これらの規定については、令和7年4月1日から施行することとされているところです。
労働環境の改善と物流効率化を同時に進めることが、企業評価の向上と事業継続につながります。再配達の削減も、環境負荷とドライバー負担の双方を軽くする重要なテーマです。
近年、多様化するライフスタイルとともに電子商取引(以下EC)が急速に拡大し、令和5年度には、EC市場が全体で24.8兆円規模、物販系分野で14.6兆円規模となっています。また、ECの拡大に伴い宅配便の取扱個数は約50億個(令和5年度)となっています。一方で、我が国の物流は、トラックドライバーの時間外労働の上限規制等により、トラックドライバーの担い手不足が顕在化し今後も深刻化することが見込まれる中、再配達率の高止まりによる宅配事業者の負担の増加等により物の持続可能な提供が困難となる事態などに直面しています。
EC事業者がサプライチェーンのSDGsを意識する視点
EC事業者として発送代行業者を選定する際、その業者のSDGs・サステナビリティへの取り組み状況も評価軸の一つになります。SDGsに積極的に取り組んでいる発送代行業者は、①DX化による業務品質の高さ②従業員の定着率と教育の充実③CO2削減への具体的な行動という3点で優位性があることが多いです。EC市場は2024年に26.1兆円規模(経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」)まで拡大しており、その膨大な物流を持続可能にする責任は、EC事業者にも及びます。
発送代行完全ガイドでも解説したとおり、STOCKCREWなどのDX対応発送代行業者では、AMRを活用した効率化・WMSとECカートのAPI連携による自動化・省エネへの取り組みを進めています。発送代行業者のSDGs対応状況が自社ブランドの価値に直結することを認識しておきましょう。
関連リソースとして、物流システム選定ガイド、物流KPI管理と効率化、コールドチェーン物流のSDGs対応も整理しています。
まとめ
物流業界が取り組めるSDGsは、①交通事故の減少(目標3)②質の高い教育(目標4)③雇用の充実(目標8)④ジェンダー平等の実現(目標5)⑤環境に配慮した取り組み(目標7・13)⑥物流DX化(目標9)の6分野です。これらはどれも今後の物流業界の課題であり、SDGsへの取り組みは企業評価向上・新規ビジネスチャンス創出・優秀な人材獲得という複合的なメリットをもたらします。
EC物流完全ガイドでも解説したとおり、EC事業者として発送代行業者のSDGs・DX対応状況を評価に加えることで、長期的に高品質なパートナーを選定できます。2024年問題後の物流業界では、ホワイト物流への賛同とSDGsの実践が、事業継続と成長の前提条件になりつつあります。
物流のSDGs対応について詳しく知りたい場合は、お問い合わせからご相談ください。また、STOCKCREW完全ガイド(無料ダウンロード)も活用できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 小規模な物流会社でもSDGsに取り組めますか?
はい、規模に関係なく取り組めます。大規模な設備投資が必要な取り組みは難しくても、アイドリング廃止・照明のLED化・5S活動の徹底・ドライブレコーダーの導入といった取り組みはすぐに始められます。小さな行動の積み重ねがSDGsへの貢献になります。
Q. SDGsへの取り組みをEC事業者として発信すべきですか?
積極的に発信することをおすすめします。環境意識の高い消費者が増えており、発送代行業者のSDGs対応状況がショップ選びの判断材料になるケースも増えています。自社サイトやSNSで取り組みを発信することがブランド価値向上につながります。
Q. SDGsへの取り組みでコストはかかりますか?
取り組みによってコストは異なります。照明のLED化・アイドリング廃止・不要な照明を消すといった取り組みはほぼコストゼロで始められます。EV配送車や太陽光パネルは初期投資が必要ですが、中長期的なランニングコスト削減と企業評価向上で回収できるケースがほとんどです。
Q. ホワイト物流に賛同するメリットは何ですか?
ホワイト物流推進運動への賛同(自主行動宣言の提出)により、大手荷主からの取引継続の確保・2024年問題への対応姿勢の明示・企業ブランド価値の向上・従業員満足度の向上といったメリットが得られます。運動の公式期限は2024年3月末でしたが、宣言の提出は引き続き受け付けられています。
Q. 発送代行業者を選定する際にSDGs対応を確認すべき項目は何ですか?
WMS・TMSなどの物流DXツールの導入状況、従業員研修・教育体制、CO2削減の具体的施策、労働環境改善の実績、ISO取得や業界認証といった要件を確認することが有効です。これらの項目は、SDGsへの取り組み度合いを示す指標として機能します。
この記事の監修者
重光翔太
株式会社KEYCREW 営業管掌取締役。ヤマト運輸にて本社営業部長を歴任し、物流業界で16年以上のキャリアを積む。法人営業・コスト最適化・業者比較選定を専門とし、累計1,500社以上のEC事業者への物流支援を手がけてきた。数百万件/日規模の出荷オペレーション管理や、6,000社が利用するフルフィルメントサービスの構築、温度帯コールドチェーンの大規模荷主向け事業設計など、業界でもトップクラスの実績を持つ。STOCKCREWでは営業戦略全体を統括し、「数字で語り、ROIで証明する」をモットーに、EC事業者の物流コスト最適化を推進している。