インコタームズ2020 EC実務早見表|DDP/DAP/CIF/FOBの判断フロー【2026年版】

インコタームズ2020 EC実務早見表 アイキャッチ画像

経済産業省の令和5年度EC市場調査によると、日本のBtoC-EC市場規模は24.8兆円に達し、越境ECの認知・活用は年々拡大しています。越境ECで仕入れや海外販売を行うとき、「インコタームズ(Incoterms)」の理解は避けては通れません。輸送費・保険料・通関手続きを売り手と買い手のどちらが負担するかを定めるこの国際ルールを誤って解釈すると、予期しないコスト発生や顧客クレームにつながります。

本記事ではインコタームズ2020の全11規則を一覧で整理したうえで、越境EC事業者が実務でよく使うDDP・DAP・CIF・FOB・EXWの5条件を詳しく解説します。2025年8月のデミニミス廃止や米国・EUの関税強化を受け、インコタームズ選択の重要性はかつてないほど高まっています。

インコタームズ2020とは?EC事業者が知るべき基礎知識

国際商業会議所(ICC)が定める国際貿易条件の統一ルール

インコタームズ(Incoterms:International Commercial Terms)は、国際商業会議所(ICC)が制定した国際貿易における取引条件の統一解釈ルールです。輸出入取引において「費用(Cost)」「リスク(Risk)」「通関手続き(Customs)」をそれぞれ売り手と買い手のどちらが負担するかを、アルファベット3文字のコードで明示します。

例えば、仕入れ先から「FOB条件で発注してください」と言われた場合、売り手は本船積込みまでの費用とリスクを負い、それ以降の費用・リスクは買い手(あなた)が負担することを意味します。インコタームズをあいまいにすると、航空運賃・海上保険・輸入関税のどれが追加請求されるか予測できなくなります。

インコタームズ規則は、売主と買主との間の物品の引渡義務、費用の負担及び物品の滅失・損傷リスクを規定するものである。

出典:日本税関「実行関税率表」より関連定義を参照

インコタームズ2020の概要:2010年版からの主な変更点

現在の最新版は2020年1月1日に発効したインコタームズ2020です。前版の2010年版から主に2点が変更されました。

最大の変更はDATの廃止とDPU(目的地荷下ろし渡し)の新設です。DATは「ターミナル(Terminal)」での引き渡しに限定されていましたが、DPUでは「任意の場所(Place)」での荷下ろしまで売り手が責任を持つことになりました。もう1点は、FCA条件での船荷証券(B/L)取得に関するルールの明確化です。信用状(L/C)決済を利用する輸出取引で重要な変更となっています。

なお、インコタームズ2020は2010年版の11規則と同数の11規則を維持しており、既存の取引慣行との互換性は保たれています。

EC事業者にとってインコタームズが重要な3つの場面

インコタームズは大手貿易会社だけの話ではありません。EC事業者が直接関わるケースは主に3つあります。第一に海外サプライヤーからの仕入れ(輸入)です。中国・東南アジアから商品を輸入する際、どの条件で発注するかによって、実際の輸入コストと手間が大きく変わります。第二に越境ECでの海外消費者への販売です。欧米向けにDDPで販売すれば関税サプライズをゼロにでき、顧客満足度が高まります。第三にフォワーダーや物流会社との契約です。越境EC向け発送代行を選定する際、対応するインコタームズ条件の確認は必須です。

インコタームズ2020 全11規則 一覧早見表

全輸送手段に適した7規則(マルチモーダル対応)

インコタームズ2020の11規則は、輸送手段によって2つのグループに分類されます。下記の7規則は航空・海上・鉄道・トラックなどすべての輸送手段に適用できる規則です。越境ECの実務では、このグループからDAP・DDP・FCAが特に多用されます。

海上・内陸水路輸送専用の4規則

一方、下記の4規則は海上輸送・内陸水路輸送にのみ使用できる規則です。コンテナ船を使った大量仕入れの場面で登場します。FOB・CIFはアジア—欧米間の海上貨物取引で今もよく使われますが、コンテナ船の場合はFCA・CIPへの移行が推奨されています(貨物のリスク移転タイミングの問題から)。

インコタームズ2020 全11規則の分類 全輸送手段に対応 󿂇7規則( EXW 工場渡し(買い手が全負担) FCA 運送人渡し(指定場所) CPT 輸送費込み(目的地) CIP 輸送費・保険料込み(目的地) DAP 仕向地持込渡し(通関は買い手) DPU 目的地荷下ろし渡し(2020新設) DDP 関税込み持込渡し(売り手が全負担) 海上・内陸水路輸送のみ 󿂇4規則( FAS 船側渡し(本船の横まで売り手負担) FOB 本船渡し(積込み後リスク移転) CFR 運賃込み(保険は買い手) CIF 運賃・保険料込み(積地港まで) ※ コンテナ船使用時はFCA・CIPへの 切り替えが推奨(ICC公式見解)
インコタームズ2020 全11規則 一覧
規則 正式名称(和訳) 輸送手段 輸出通関 輸入通関・関税 主な利用場面
EXW 工場渡し 全手段 買い手 買い手 国内取引・買い手主導の輸入
FCA 運送人渡し 全手段 売り手 買い手 航空・コンテナ船仕入れ
CPT 輸送費込み 全手段 売り手 買い手 複合輸送・内陸向け
CIP 輸送費・保険料込み 全手段 売り手 買い手 複合輸送・高額貨物
DAP 仕向地持込渡し 全手段 売り手 買い手 越境EC販売(関税は顧客負担)
DPU 目的地荷下ろし渡し 全手段 売り手 買い手 特定場所での荷下ろし指定
DDP 関税込み持込渡し 全手段 売り手 売り手 越境EC販売(関税込み・顧客体験重視)
FAS 船側渡し 海上のみ 売り手 買い手 バルク・大型貨物の海上取引
FOB 本船渡し 海上のみ 売り手 買い手 アジア発の海上コンテナ仕入れ
CFR 運賃込み 海上のみ 売り手 買い手 海上輸送(保険コスト節約)
CIF 運賃・保険料込み 海上のみ 売り手 買い手 海上輸送・信用状(L/C)決済

EC事業者がよく使う5条件の詳細解説

EXW(工場渡し):売り手の負担が最小

EXW(Ex Works)は、売り手が自社工場・倉庫・事業所などの指定場所で商品を用意した時点で義務を果たす条件です。輸出通関・輸送・保険・輸入通関・関税のすべてを買い手が手配・負担します。

越境ECでの活用場面:EXWは買い手側のコントロールが最大限で、フォワーダーを自前で持つ大手輸入事業者が使うケースが多いです。海外のメーカーから「EXW・中国工場」で見積もりが来た場合、工場から日本の倉庫までの輸送費・通関費はすべてあなたが負担します。小規模EC事業者には荷が重い条件といえます。

FOB(本船渡し):アジア仕入れで最もよく使われる条件

FOB(Free on Board)は、売り手が輸出港で本船に商品を積み込んだ時点でリスクが買い手に移転する条件です。輸出通関は売り手が担当します。日本のEC事業者が中国・東南アジアから商品を仕入れる際、「FOB上海」「FOB広州」のような形でよく登場します。

本船積込み後の海上運賃・保険料・日本側の輸入通関費・関税はすべて買い手負担です。仕入れ原価に「FOBコスト+日本着までの費用」を加えた総コストで試算することが重要です。海外発送代行を利用する場合は、FOB条件での発注が一般的なスタートポイントになります。

CIF(運賃・保険料込み):仕向港まで売り手がカバー

CIF(Cost, Insurance and Freight)は、FOBに加えて仕向港(日本側の港)までの海上運賃と保険料を売り手が負担する条件です。日本の輸入港に到着した後の輸入通関・国内配送は買い手が手配します。

CIFは見積もり価格の比較がしやすいため、複数の海外サプライヤーと交渉する際に便利です。ただし注意点として、CIF条件の保険は売り手が付保するため、保険内容が薄いことがあるという点が挙げられます。高額商品を仕入れる場合はCIPへの変更を検討するか、別途保険を付保することを検討してください。

DAP(仕向地持込渡し):顧客の戸口まで届けるが通関は顧客負担

DAP(Delivered at Place)は、売り手が指定の仕向地(顧客の住所・倉庫など)まで輸送費・リスクを負担する条件です。輸入通関・関税の支払いは買い手(越境EC販売の場合は顧客)が行います。

DAPで越境EC販売を行う場合、商品が顧客の国の税関で止められ、顧客が関税支払い通知を受け取るケースが発生します。「聞いていなかった」という顧客クレームになりやすく、購入体験を大きく損なうリスクがあります。ただし海外発送代行コストを抑えたい場合や、BtoB取引・法人顧客向けでは合理的な選択肢です。

DDP(関税込み持込渡し):越境EC販売で顧客体験を最大化

DDP(Delivered Duty Paid)は、11規則の中で売り手の負担が最大の条件です。輸出通関・輸送・保険・輸入通関・関税のすべてを売り手が負担し、指定場所まで引き渡します。顧客は商品代金だけ支払えばよく、追加費用がゼロです。

欧米向け越境ECでは、DDP対応が「当然のサービス」として期待されるケースが増えています。特に2025年8月の米国デミニミス廃止以降、関税が免税にならないため、DDP対応なしでは顧客が関税通知メールに驚いて注文をキャンセルするリスクが高まっています。DDPを実現するには、現地通関代理人(カスタムブローカー)との契約または越境EC対応の物流会社(3PL)の活用が前提となります。

自動テープ封緘機で段ボール箱を封緘する工程
越境EC出荷では、国際輸送に耐えられる梱包・封緘が品質維持の要となる

費用負担とリスク移転ポイントの比較

どの時点でリスクが移転するか

インコタームズを理解する上で最も重要なのが「リスク移転のタイミング」です。貨物が輸送中に損傷・紛失した場合、リスクの移転時点以降に発生した損害は引き受けた側(売り手または買い手)が保険で対応しなければなりません。

例えばFOBの場合、輸出港の船上に積み込まれた瞬間にリスクが売り手から買い手に移ります。積込み前に港で商品が破損した場合は売り手の責任、積込み後の海上での事故は買い手の責任となります。この境界を明確にしないままフォワーダーと契約すると、保険のカバー範囲に隙間ができる場合があります。

コスト負担の全体像:EXWからDDPまでの費用構造

売り手の費用・リスク負担範囲(EXW → DDP) 買い手の負担 大 売り手の負担 大 EXW FOB CIF DAP DDP 工場渡し 本船渡し 運賃・保険込 仕向地持込 関税込持込 商品準備のみ 輸出通関+積込 運賃+保険+積込 仕向地まで輸送 関税+通関まで全て ← 買い手の負担・コントロール大 EXW / FCA / FOB / CFR 売り手の負担・顧客体験向上 → CIP / DAP / DPU / DDP ※ 全輸送手段対応の代表的な5条件のみ表示。左が買い手有利、右が売り手の負担最大(=越境EC顧客体験最高)。
インコタームズ主要5条件 費用・リスク・通関 比較表
条件 輸出通関 輸送費(出荷→仕向地) 海上保険 輸入通関 関税 リスク移転タイミング
EXW 買い手 買い手 買い手 買い手 買い手 工場・倉庫での引き渡し時
FOB 売り手 買い手 買い手 買い手 買い手 本船積込み完了時
CIF 売り手 売り手(仕向港まで) 売り手(最低限) 買い手 買い手 本船積込み完了時(リスクのみ)
DAP 売り手 売り手(仕向地まで) 売り手 買い手 買い手 指定仕向地で荷下ろし可能になった時
DDP 売り手 売り手(仕向地まで) 売り手 売り手 売り手 指定仕向地での引き渡し時

DDP vs DAP:越境EC事業者の選び方実務ガイド

DDPが向く場面:顧客体験を最優先する越境EC販売

DDPは越境ECで「関税サプライズ」をゼロにできる唯一の条件です。特に次の場面でDDP対応が競合優位になります。①欧米・豪州向けのBtoC越境EC販売(個人消費者は通関対応が不得手)、②高リピート率が重要なサブスクリプション型D2C、③プレミアム価格帯のブランド商品(顧客体験の一貫性が価格正当化につながる)。

ただしDDPには売り手が輸入国の通関実務・税務コンプライアンスを担うという高い責任が伴います。現地の税番(HSコード)申告・VAT登録・関税の立替払いが必要で、これらに対応した越境EC向けの物流パートナー(国際3PL・フォワーダー)の選定が前提です。

2025年8月の米国デミニミス廃止後、米国向け越境EC販売でのDDPの重要性が特に高まっています。以前は800ドル以下の小口輸入は関税が免税でしたが、廃止後は全品目に関税が課されます。DAPのまま販売を続けると、顧客が想定外の関税通知を受け取りキャンセルが急増するリスクがあります。

デミニミス制度の廃止は越境EC事業者にとって、インコタームズの見直しを迫る転換点だ。DDPへの移行なしに米国向け越境ECのリピート率を維持することは難しくなっている。

出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」・関連市場動向より編集部要約

DAPが向く場面:コスト最適化・BtoB取引

DAPが合理的な選択となるのは次のケースです。①輸入通関に慣れた法人・事業者向けBtoB取引(輸入者側が自社でフォワーダーを持つ場合)、②輸入規制が複雑で売り手が現地通関代理を立てにくい新興国向け輸出、③DDPのコスト(通関手数料・立替関税の金利コスト)が利益率を圧迫する低価格商品。

eBay越境ECなど個人間・BtoB色が強いプラットフォームでは、DAPでも購入者がトラブルなく対応できるケースが多いです。一方、Amazon・Shopifyなどの個人消費者向け越境EC販売ではDDPへの移行が標準化しつつあります。

ケーススタディ:サプリメントEC事業者のDDP移行事例

月商500万円規模のサプリメントEC事業者Aは、米国向けShopify越境ECをDAP条件で運用していました。2025年9月(デミニミス廃止直後)の顧客アンケートで「関税の請求が届いて驚いた」という回答が全購入者の31%に達し、同月のリピート購入率が前月比18%低下しました。

A社はDDP対応の越境EC向け発送代行会社に切り替えを行い、2か月後のリピート購入率はDDP移行前水準を回復しました。通関代行コストは1件あたり200〜400円増加しましたが、リピート率改善によるLTV向上がコスト増を十分に上回ったとのことです。

出荷コンベアライン上に複数段ボール箱が整列
DDP対応の発送代行では、梱包から通関書類作成まで一貫したオペレーションが求められる

取引パターン別 条件選択マトリクス

仕入れ(輸入)か販売(輸出・越境EC)かで判断が変わる

インコタームズの条件選択は、「あなたが売り手か買い手か」という立場によって最適解が異なります。仕入れ側(輸入者)としての立場と、販売側(越境EC輸出者)としての立場では考え方が逆転します。仕入れ時にDDPを選べば「便利だが仕入れ原価が高くなる」一方、販売時にDDPを選べば「コストはかかるが顧客体験が上がる」という構造です。

判断マトリクス:4つのパターン別推奨条件

取引パターン別 インコタームズ選択マトリクス 費用重視・自社でコントロール 手間省略・体験・確実性重視 仕入れ(輸入) あなたが買い手 FCA / FOB 輸出通関は売り手。 海上運賃・通関は自社手配。 DDP 通関・関税含め売り手が全手配。 仕入れ価格は高め。 販売(越境EC) あなたが売り手 DAP 仕向地まで輸送費は負担。 ※ 顧客に関税通知が届く DDP ★推奨 顧客への追加課金ゼロ。 デミニミス廃止後は特に重要 ※ 海上輸送(コンテナ船)でL/C決済の場合はFOB・CIF も検討。航空・複合輸送の場合はFCA・CIPへの移行を推奨(ICC公式)。
DDP vs DAP:越境EC販売における主要コスト・メリット比較
比較軸 DDP(関税込み持込渡し) DAP(仕向地持込渡し)
輸入通関手配 売り手(あなた)が手配・費用負担 買い手(顧客)が手配・費用負担
関税・VAT 売り手が立替払い(商品価格に転嫁可能) 顧客への別途請求(サプライズ発生リスク)
1件あたりコスト +200〜500円/件(通関代行料・立替) 通関代行なし(顧客が個別対応)
顧客体験 ◎ 追加請求ゼロ・リピート率向上 △ 関税通知メールで混乱・返品増のリスク
デミニミス廃止後の影響 ◎ 全額課税でも顧客に影響なし ✕ 顧客が全額関税を支払う必要あり
推奨用途 BtoC越境EC・欧米・豪州向け・D2C BtoB取引・法人顧客・新興国向け

越境ECで最も悩ましいのが「DDPのコスト増をどう吸収するか」という問題です。1件あたりの通関代行コストは配送先や業者によって異なりますが、商品価格への転嫁(表示価格に関税コストを含める)、または出荷量増加による規模の経済でコスト削減が実現できます。発送代行サービスの中にはDDP対応の国際物流オプションを持つ会社もあります。

よくあるインコタームズ関連トラブル事例

事例①:FOB条件なのに輸出通関を買い手がやってしまった

国内のEC事業者Bが中国サプライヤーと「FOB上海」で契約したところ、中国側のフォワーダーが輸出通関を怠り、輸出許可証の取得ミスが発生しました。FOB条件では輸出通関は売り手(中国サプライヤー)の義務ですが、担当者がEXW条件と誤解して「日本側が全部やる」と思い込んでいたことが原因です。

対策として、発注書や契約書にインコタームズ条件と輸出通関責任者を明記することが重要です。「FOB Shanghai, China(Incoterms 2020)」のように正式な表記(条件コード+地名+バージョン)を使うことが国際標準です。

事例②:DAPで販売→顧客が関税通知に驚いて返品・クレーム

美容品EC事業者CがドイツへDAP条件で販売していました。EU域内向け輸入では付加価値税(VAT)の申告・支払いが必要で、顧客が通関通知を無視したまま放置した結果、貨物が税関で留め置かれ2週間後に返送されてくる事態が発生しました。

DAP販売を続ける場合は、購入確認メールに「関税・VATの支払いはお客様負担です」という説明を必ず記載することが必須です。またEUの少額関税制度変更(2026年7月)により、EU向けDAP販売では新たな対応が求められています。中長期的にはDDP移行を検討する価値があります。

事例③:CIF保険の保険金額が低く、水濡れ損害を回収できなかった

電子機器を輸入していた事業者Dが、CIF条件でコンテナ船輸送中に海水浸入による水濡れ損害が発生しました。ところが売り手が付保していたCIF保険は「最低カバー(Institute Cargo Clauses C)」であり、水濡れリスクが免責となっていたため損害を回収できませんでした。

CIF条件での保険はICCのMinimum coverしか義務付けられていません。高額商品・水濡れリスクが高い商品の輸入時は、CIF→CIPへの変更(CIPはICC(A)の全リスクカバーが義務付け)か、買い手側で追加保険を付保することを検討してください。国際物流保険の体系はキャリア保険・CIF保険・独自保険の3層で整理できます。

まとめ:条件選択を制して越境ECの利益率を守る

インコタームズ2020の11規則は、費用・リスク・通関手続きを誰が負担するかを決める国際ルールです。EC事業者にとって特に重要なのは次の3点です。

第一に、仕入れ(輸入)時はFCA/FOBで自社コントロールを持ちつつ、DDP仕入れで手間を省くかをコスト比較で判断することです。第二に、越境EC販売はDDPへの移行が顧客体験向上とリピート率維持のカギであり、特にデミニミス廃止後の欧米向けではDDPなしではリピート率を維持しにくくなっています。第三に、CIF保険の最低カバー条件を把握し、必要に応じてCIPへの変更または追加保険を検討することです。

国内での在庫保管・出荷は発送代行サービスに委託し、越境EC向けの国際物流と組み合わせることで、国内はSTOCKCREWでスピード出荷・越境ECはDDP対応フォワーダーで顧客体験を担保するという二段階体制が、2026年以降の越境ECに最適なモデルです。

出荷コンベア上を流れるフラットベルトと梱包済み商品

越境ECのEC物流全体の設計や、国内の発送代行から一元管理したい方はSTOCKCREWのサービス詳細サービス資料を参照してください。個別の物流体制相談はお問い合わせから受け付けています。

よくある質問(FAQ)

Q. インコタームズ2020と2010の一番大きな違いは何ですか?

最大の変更点はDATの廃止とDPUの新設です。DATはターミナル(Terminal)限定でしたが、DPUでは指定された任意の場所(Place)への荷下ろしまで売り手が責任を持てるようになりました。また、FCA条件でのオンボードB/L(船荷証券)の取得に関するルールが明確化された点も実務上重要な変更です。インコタームズ2020は2020年1月1日から有効です。

Q. 越境ECでDDP販売するには何が必要ですか?

DDPで販売するには、輸出入国の通関手続き・関税支払い・必要に応じたVAT登録を売り手(あなた)が担う体制が必要です。具体的には、輸入国での通関代理業者(カスタムブローカー)との契約、または輸入通関・ドア配送まで対応するDDP対応の国際フォワーダー・越境EC物流会社との契約が必要になります。Amazonセラーの場合、FBA輸出を活用するとDDP相当の体験を実現しやすくなります。

Q. 中国サプライヤーからFOB条件で仕入れる場合、日本側で必要な手配は何ですか?

FOB条件で仕入れる場合、買い手(あなた)が担当するのは①海上(または航空)輸送の手配と費用、②貨物保険の付保、③日本の輸入通関(関税申告・関税・消費税支払い)、④日本国内の配送手配の4つです。これらを一括で代行してくれる輸入貨物向け発送代行やフォワーダーを選定することで、FOB仕入れのコスト効率を保ちながら手間を削減できます。

Q. CIF条件の保険はなぜ不十分と言われるのですか?

CIF条件では、売り手はInstitute Cargo Clauses(ICC)のC条件以上の保険を付保する義務がありますが、ICC(C)は免責事項が多く、水濡れ・盗難などのリスクはカバーされません。対してCIP条件ではICC(A)(全リスクカバー)が義務付けられています。高額商品・精密機器・水濡れ被害を受けやすい商品を輸入する場合はCIF→CIPへの変更を売り手に交渉するか、買い手側でICC(A)の独自保険を追加することを検討してください。

Q. インコタームズはどこに記載すれば良いですか?

インコタームズは発注書(Purchase Order)・売買契約書・見積書・インボイスに明記するのが標準です。正式な表記は「条件コード+引き渡し地点(都市名や住所)+Incoterms 2020」の形式です。例:「DDP Tokyo, Japan(Incoterms 2020)」「FOB Shanghai, China(Incoterms 2020)」。インコタームズのバージョン(2020)を明示しないと古いバージョンとの混同が生じる場合があるため、必ずバージョンを記載してください。

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