パート時間給は1,460円、最低賃金1,177円との差は283円|EC倉庫の採用単価を実勢で見直す
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倉庫のパート求人を出しても応募が来ない。時給を上げたが、いくらが相場なのか判断材料がない。こうした悩みを抱えるEC事業者にとって、実勢の賃金水準を示すデータは貴重です。厚生労働省が2026年9月8日に公表した毎月勤労統計調査の7月分速報で、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,460円となりました。9月3日に答申された地域別最低賃金の全国加重平均1,177円との差は283円です。この記事では、この2つの数字の差が何を意味するのか、自社出荷を続けるか発送代行完全ガイドで扱っているような外部委託に切り替えるかの判断にどう効いてくるのかを整理します。
2026年7月の賃金統計で何が公表されたか
まず公表されたデータそのものを確認します。毎月勤労統計調査は事業所を対象にした国の基幹統計で、毎月上旬に前々月分の速報が出ます。
パートタイム労働者 ・時間当たり給与(所定内給与) 1,460 円(5.7%増)※61 ヵ月連続プラス
パート時給は5年以上ずっと上がり続けている
注目すべきは金額そのものよりも61カ月連続プラスという継続期間です。5年1カ月にわたって前年同月を下回った月がありません。これは景気の一時的な波ではなく、労働力の需給構造そのものが変わったことを示しています。倉庫のパート採用が年々難しくなっている実感は、統計にもそのまま表れています。人手が集まらない構造的な背景は物流2026年問題とは?EC事業者への影響と対策で扱っています。
正社員側も同時に上がっている
同じ速報では、就業形態計の現金給与総額が436,401円(4.7%増)、所定内給与が280,797円(4.1%増)と報告されています。パートだけが上がっているのではなく、庫内の社員・パートの双方で単価が動いています。人件費の上昇は出荷1件あたりの原価に直結するため、人時生産性(UPH)のような工数指標とセットで見る必要があります。
実質賃金も7カ月連続でプラス
物価上昇分を差し引いた実質賃金指数も117.6(2.4%増)で7カ月連続プラスでした。名目だけが上がって手取りの購買力が横ばい、という局面ではありません。消費側の動きについては実質賃金6か月連続プラスと夏季賞与で整理しています。
| 指標 | 2026年7月 | 前年同月比 | 継続期間 |
|---|---|---|---|
| パートタイム 時間当たり給与 | 1,460円 | 5.7%増 | 61カ月連続プラス |
| 現金給与総額(就業形態計・5人以上) | 436,401円 | 4.7%増 | — |
| きまって支給する給与 | 301,582円 | 4.1%増 | — |
| 所定内給与 | 280,797円 | 4.1%増 | — |
| 実質賃金指数(現金給与総額) | 117.6 | 2.4%増 | 7カ月連続プラス |
最低賃金1,177円との283円差をどう読むか
この統計を単独で見ても採用の判断には使いにくいので、法定下限である最低賃金と並べます。
改定額の全国加重平均額は1,177円(昨年度1,121円)
283円は「法定下限では人が採れない」幅
1,460円と1,177円の差は283円、率にすると法定下限に対して約24%上乗せされた水準で実際の取引が成立しているということです。最低賃金ぎりぎりで求人を出しても市場から見れば下位にあたります。最低賃金の改定そのものへの対応は最低賃金1,177円へ、中小企業庁が支援策パッケージを公表にまとめています。
最低賃金が上がると実勢も押し上げられる
283円という差は固定ではありません。最低賃金が上がれば下位帯が押し上げられ、その上の帯も連鎖して動きます。法定下限の改定は、下限だけでなく賃金分布全体を動かすと考えたほうが実態に合います。中小企業向けの支援策も同時に打たれています。
全国加重平均については、1,177円となりました。
地域差は自分の拠点で確認する
1,177円も1,460円も全国の平均値です。実際の採用単価は拠点の所在地で大きく変わります。首都圏の物流適地では平均を上回り、地方では下回ります。最低賃金も都道府県ごとに額が決まるため、自社拠点の都道府県の最低賃金と、その地域の求人サイトに出ている実際の倉庫求人の時給を突き合わせるのが、平均値を見るより確実です。拠点をどこに置くかの判断軸は発送代行倉庫の立地・設備の評価基準で扱っています。
EC倉庫の採用単価に置き換えて考える
統計の数字を、自社の求人票に落とし込むとどうなるかを考えます。
募集時給は実勢より上に置かないと動かない
庫内作業は立ち仕事で、繁忙期には波動もあります。同じ地域の小売やサービス業と応募者を取り合う関係にあるため、実勢の1,460円を下回る募集は不利になりやすいと考えるのが現実的です。求人チャネルの選び方や定着施策はEC倉庫・物流スタッフの採用方法ガイドにまとめました。
時給だけでなく総人件費で見る
実際の負担は時給そのものではありません。社会保険料の事業主負担、交通費、募集広告費、教育期間中の低生産性分が乗ります。時給1,500円の人を1人雇えば、実質的な負担は1,800円前後まで膨らむのが一般的な感覚です。求人票の時給と実質負担の差を埋めないまま原価を組むと、期末に想定外の赤字が出ます。原価率の計算方法に沿って、人件費を賦課率まで含めて分解しておくと精度が上がります。
出荷1件あたりに換算する
採用単価の議論を出荷原価に接続するには、時給を出荷1件あたりの人件費に換算します。1時間に20件出荷できる体制で時給1,460円なら、単純計算で1件あたり73円です。ここに間接費が乗ります。件数あたりで管理する考え方はCPO(1件あたり配送コスト)の指標に整理されています。時給の議論を「月いくら払うか」で止めず、「1件いくらになるか」まで落とすと、外部委託の料金表と同じ土俵で比べられるようになります。委託料金は1件あたりで提示されるのが通例だからです。倉庫の料金相場そのものはEC・物流倉庫の料金相場【2026年版】にまとめました。
自社出荷の損益分岐はどこで動くか
人件費が上がると、自社出荷と外部委託の比較そのものが動きます。
自社出荷は「固定費」、発送代行は「変動費」
自社倉庫でパートを雇う場合、出荷が少ない月でも人は確保しておく必要があります。一方、発送代行は出荷件数に応じた課金が中心です。人件費が上がるほど、固定費として抱えるリスクが大きくなるという関係があります。この構造は物流を「固定費」から「変動費」へ──身軽なEC経営の設計思想で詳しく扱っています。
損益分岐点は年々下がってきている
人件費が上がれば自社出荷のコスト曲線が上にずれるため、外部委託が有利になる出荷件数のラインは下がります。以前は月1,000件を超えないと合わないと言われていた水準が、賃金上昇によって前倒しされているという見方ができます。件数別の試算は発送代行の損益分岐を出荷件数別にシミュレーションで確認できます。
自社発送の本当のコストを可視化してから比べる
比較の前提として、自社発送のコストが正確に出ていないケースが少なくありません。経営者や社員が出荷を手伝っている時間は帳簿に出てこないためです。可視化の手順は自社発送のコストを可視化する実務ガイド2026年版にまとめています。委託側の見えにくい費目は発送代行の隠れコスト完全マッピング2026年版で整理しました。
| 比較軸 | 自社出荷 | 発送代行 |
|---|---|---|
| 人件費の性質 | 固定費(出荷ゼロでも発生) | 変動費(件数連動が中心) |
| 賃金上昇の影響 | 直撃する | 料金改定を通じて遅れて反映 |
| 繁忙期の波動 | 採用・シフトで自力対応 | 委託先のキャパで吸収 |
| 採用リスク | 自社が負う | 委託先が負う |
| 作業品質の管理 | 自社でコントロール可能 | 契約とSLAで担保 |
「採れなかった月」の損失は帳簿に出ない
比較表に現れにくいのが、募集をかけても人が集まらなかった月の損失です。出荷が滞れば発送リードタイムが延び、レビュー評価やモール上の配送スコアに響きます。人件費が上がっている局面では、コストだけでなく「採用が成立しないリスク」も自社側に積み上がると考えたほうが実態に近くなります。出荷が集中する時期の設計はEC通販の年間出荷波動管理ガイド2026で扱っており、遅延が売上に跳ね返る構造はEC物流の誤出荷率を下げる方法と合わせて見ると輪郭がつかめます。
省力化投資という第三の選択肢
自社出荷を続けながら人時生産性を上げる道もあります。設備投資への公的支援も用意されており、省力化投資補助金 第8回の公募要領が公開で公募スケジュールを扱っています。採用単価が下がる見込みが薄い以上、人を増やさずに件数を伸ばす設計が現実的です。
この数字を使うときの3つの注意点
統計を社内資料や交渉に使う場合、前提を外すと誤った結論になります。公表資料に明記されている留意点を押さえてください。
- 1,460円は全国・全産業の平均——倉庫業や運輸業に限定した数値ではありません。産業別の内訳は同じ報道発表資料には含まれておらず、統計表を別途参照する必要があります。
- 2026年1月に調査対象事業所の入替えがある——公表資料には、入替え前後で現金給与総額に-1,582円(-0.5%)の断層が生じていると明記されています。前年同月比を単純に受け取らず、断層を織り込んで読んでください。
- 速報値であり確報で改訂されうる——同じく公表資料に記載があります。契約交渉や価格改定の根拠に使う場合は、確報が出た段階で数値を確認し直すのが安全です。
比較する相手を間違えない
最低賃金は法律上の下限、毎月勤労統計は実際に支払われた金額の平均です。性質の違う2つの数字を並べていることを理解したうえで使ってください。「最低賃金を守っているから問題ない」と「市場で人が採れる」はまったく別の話です。
価格転嫁の材料としては使いやすい
取引先との価格交渉では、自社の事情ではなく公的統計を根拠にしたほうが通りやすくなります。国の基幹統計で5年以上連続の上昇が確認できるという事実は、説明材料として扱いやすい部類です。委託先からの料金改定通知を受ける側の視点は宅配便値上げが止まらない【2026年版】で扱っています。
まとめ:法定下限ではなく実勢で設計する
2026年7月のパートタイム労働者の時間当たり給与は1,460円で61カ月連続の上昇、最低賃金の全国加重平均1,177円との差は283円でした。この差は、法定下限を守るだけでは人材が確保できない現実を示しています。EC倉庫を自社で回すなら、募集時給を実勢に合わせたうえで、出荷1件あたりの人件費に換算して原価に組み込む作業が必要です。そのうえで、固定費として人を抱え続けるか、件数連動の外部委託に切り替えるか、省力化投資で件数あたり工数を下げるかを選ぶことになります。委託を検討する場合の全体像は発送代行の仕組みと費用、STOCKCREWの料金体系や対応範囲はSTOCKCREWのサービス内容にまとめています。自社の出荷件数での試算をご希望ならお問い合わせ、判断材料を先に手元に置きたい場合は資料ダウンロードからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. パートタイム労働者の時間当たり給与1,460円はいつの数字ですか?
A. 2026年7月分の速報値で、厚生労働省が2026年9月8日に公表しました。前年同月比5.7%増で、61カ月連続のプラスです。ただし速報値のため確報で改訂される可能性があると公表資料に明記されています。
Q. 1,460円は倉庫業のパート時給ですか?
A. いいえ。全国・全産業のパートタイム労働者の時間当たり所定内給与の平均です。倉庫業や運輸業に限定した数値ではありません。産業別の内訳を見るには、同調査の統計表を別途参照する必要があります。
Q. 最低賃金1,177円との差283円はどう解釈すればよいですか?
A. 法定下限に対して約24%上乗せされた水準で実際の賃金が支払われている、という意味です。最低賃金ぎりぎりで求人を出すと市場では下位に位置づけられるため、応募が集まりにくくなる可能性があります。
Q. 賃金上昇は発送代行の料金にも反映されますか?
A. 反映されます。ただし自社出荷のように即座には効かず、委託先の料金改定を通じて遅れて表れるのが一般的です。自社出荷は人件費が上がった月からそのまま原価に乗ります。
Q. 人件費が上がると自社出荷と発送代行の損益分岐はどう動きますか?
A. 自社出荷のコスト曲線が上にずれるため、外部委託が有利になる出荷件数のラインは下がる方向に動きます。ただし判断には自社発送の実コストを正確に把握することが前提になります。
Q. 2026年1月の調査対象事業所の入替えとは何ですか?
A. 毎月勤労統計調査では定期的に調査対象事業所を入れ替えます。2026年1月の入替えでは、前後の比較で現金給与総額に1,582円(0.5%)の断層が生じたと公表資料に記載されています。前年同月比を読む際はこの点を考慮してください。
この記事の監修者
重光翔太
株式会社KEYCREW 営業管掌取締役。ヤマト運輸にて本社営業部長を歴任し、物流業界で16年以上のキャリアを積む。法人営業・コスト最適化・業者比較選定を専門とし、累計1,500社以上のEC事業者への物流支援を手がけてきた。数百万件/日規模の出荷オペレーション管理や、6,000社が利用するフルフィルメントサービスの構築、温度帯コールドチェーンの大規模荷主向け事業設計など、業界でもトップクラスの実績を持つ。STOCKCREWでは営業戦略全体を統括し、「数字で語り、ROIで証明する」をモットーに、EC事業者の物流コスト最適化を推進している。