EC倉庫の人時生産性(UPH)の計算式と改善手順【2026年版】|出荷1件あたりの工数を分解して発送代行費を見直す
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出荷にかかる人件費が増えているのに、何が原因かを説明できない。多くのEC事業者が「件数が増えたから」で片づけていますが、件数が増えたぶんだけ人件費が増えるなら、そもそも改善の余地はどこにもないことになります。人時生産性(UPH)は、この「件数」と「人件費」の間にある変換効率を数値にするKPIです。1人が1時間で何件出せているかがわかれば、増えたのが仕事量なのか、それとも1件あたりの重さなのかを切り分けられます。この記事では、基本の計算式と3つの分解軸、自社で測る4ステップ、伸びないときの原因の見極め方、そして委託先の見積をUPHの視点で読む方法までを順にまとめました。外注そのものの前提は発送代行の仕組みと費用から確認できます。
人時生産性(UPH)とは何を測るKPIか
UPHは Units Per Hour の略で、EC物流の現場では「1人が1時間あたり何件(何個)処理できたか」を指します。出荷件数や人件費といった単体の数字ではなく、その比を見るところに意味があります。
UPHの定義——1人1時間あたりの処理量
出荷波動の大きいECでは、出荷件数の増減と人件費の増減がずれます。繁忙期に件数が3割増えても人員を5割増やしていれば、売上は伸びても利益は痩せます。UPHはこのねじれを1つの数字で見せます。KPI全体の位置づけはEC物流KPIの一覧、指標の設計方法は物流KPIの設定と13指標の計算式にまとめてあります。
市場全体の出荷量は、事業者の努力とは無関係に増え続けてきました。
2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、26.1兆円(前年24.8兆円、前々年22.7兆円、前年比5.1%増)に拡大しています。また、2024年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前々年420.2兆円、前年比10.6%増)に増加しました。
市場が伸びれば自社の出荷も増えます。その増分を人員の追加で吸収し続けるのか、1時間あたりの処理量を上げて吸収するのか。UPHはこの分岐点を可視化する数字です。
出荷件数でも人件費でもなく、その比を見る理由
出荷件数だけを追うと、忙しさは伝わっても効率はわかりません。人件費だけを追うと、削減圧力が現場に向かい、誤出荷や遅延という別のコストに置き換わります。UPHは、品質を落とさずに1時間の中身を濃くできたかどうかを測る指標です。
そのため、UPHは単独では使いません。OTDレート(納期遵守率)や誤出荷率と並べて、速くなった代わりに何かが悪化していないかを同時に見るのが前提になります。
誰がこの数字を必要とするのか
自社出荷の事業者は、人員計画と外注判断の根拠としてこの数字を使います。すでに委託している事業者にとっては、見積の単価が妥当かどうかを判断する物差しとして働きます。自社倉庫と発送代行の損益分岐を考える場面では、この数字がないと比較の土台が作れません。
UPHの計算式と3つの分解軸
UPHの基本式は単純ですが、分母の「工数」に何を含めるかで数字が2倍近く変わります。定義を先に固定しておくことが、測定より重要です。
基本式——処理件数 ÷ 総投入工数
基本式は次のとおりです。
- UPH = 処理件数 ÷ 総投入工数(人時)
- 総投入工数 = 作業人数 × 実働時間
たとえば5人が6時間で900件を出荷した場合、総投入工数は30人時、UPHは30件/人時です。ここで注意したいのは、朝礼・準備・片付け・欠品対応・問い合わせ確認の時間を分母に入れるかどうかです。入れないと数字はきれいになりますが、改善余地が見えなくなります。実務では入れることをおすすめします。
分解軸①工程別——どの作業が時間を食っているか
全体のUPHだけでは打ち手が決まりません。工程ごとに分けて初めて、どこを触ればいいかがわかります。
| 分解軸 | 計算式 | この数字でわかること |
|---|---|---|
| 全体UPH | 出荷件数 ÷ 総投入工数 | 倉庫全体の効率水準と、その推移 |
| 工程別UPH | 工程処理数 ÷ 工程投入工数 | ボトルネックがどの作業にあるか |
| チャネル別UPH | チャネル別件数 ÷ 該当工数 | 特定モール・自社サイトの出荷が重いか |
| SKU別UPH | 該当SKU出荷数 ÷ 該当工数 | 特定商品が全体の足を引っぱっているか |
工程別に見ると、ピッキングよりも移動と探索に時間が溶けているケースがよくあります。この場合に梱包台を増やしても効果は出ません。ピッキング方式の違いや倉庫レイアウトの基本原則が効いてくる領域です。
分解軸②チャネル別・SKU別——注文の中身で工数は変わる
同じ1件でも、1行1個の注文と、10行20個でギフト対応が付く注文では工数がまるで違います。件数を分母にしている限り、この差はUPHの悪化として現れます。チャネル別・SKU別に割ると、悪化の正体が「効率低下」ではなく「注文構成の変化」だったと判明することは珍しくありません。
この切り分けができると、改善の対象が現場から商品設計や販売設計に移ります。セット販売の組み方、同梱物の点数、在庫回転率の低いSKUの整理といった上流の判断が、そのままUPHに返ってきます。
自社出荷のUPHを実測する4ステップ
測定の目的は、精密な数字を出すことではありません。同じ定義で継続して並べ、変化に気づける状態を作ることが目的です。初回から完璧を狙わないほうが続きます。
ステップ1〜2:対象期間を決め、工数を漏れなく拾う
- 対象期間を決める——最低4週間。1週間だと波動に飲まれて傾向が読めません。
- 工数を全部拾う——出荷に関わった人の実働時間を、役割を問わず合算します。社員・パート・スポットの区別なく入れてください。
工数の集計では、兼務者の扱いが最大の落とし穴です。午前は受注処理、午後は出荷という働き方の人は、按分してでも出荷ぶんだけを分母に入れます。ここを丸めると、後から改善効果が見えなくなります。人員構成そのものの設計は倉庫人材の確保と物流スタッフの採用に整理しました。
ステップ3〜4:件数の定義を固定し、週次で並べる
- 件数の定義を固定する——「注文件数」か「出荷個口数」か。どちらでも構いませんが、途中で変えないことが条件です。
- 週次で並べる——日次だと曜日変動でぶれます。週次で12週ぶん並べると傾向が読めるようになります。
| 記録項目 | 取得元 | 頻度 |
|---|---|---|
| 出荷件数(定義を固定) | OMS・カートの出荷実績 | 日次 |
| 作業人数・実働時間 | 勤怠データ・作業日報 | 日次 |
| 工程別の投入工数 | 作業日報・WMSの作業ログ | 日次(可能な範囲で) |
| 誤出荷・遅延の件数 | 問い合わせ・出荷実績 | 週次 |
工程別の工数は、紙の日報からでも始められます。精度を上げたい段階になったら、ハンディターミナルやWMSの作業ログから自動で取る設計に移していくと、集計工数そのものを減らせます。
測定でよくある3つの誤り
- 分母を「直接作業時間」だけにする——数字は良くなりますが、削れる余地の大半を視界から外すことになります。
- 繁忙期だけを測る——最も条件の悪い時期の数字が基準になり、平常時の悪化に気づけません。
- 品質指標を並べない——UPHだけが改善して検品が甘くなっていないかを、同じ表で確認してください。
UPHが上がらないときの原因を切り分ける
数字が伸びない理由を「人の頑張りが足りない」に帰着させると、そこで改善は止まります。UPHの停滞は、たいてい作業そのものではなく作業の前後で起きています。
波動——同じ人数でも件数が動けばUPHは動く
セール日と閑散日で件数が2倍以上ぶれるなら、UPHの上下は効率ではなく人員配置と件数のミスマッチを表しています。この場合の打ち手は現場改善ではなく、シフト設計とスポット人員の使い方です。最低賃金の動きが人件費に直接効くため、倉庫パート時給の上昇と自社出荷の損益分岐もあわせて見ておくと判断しやすくなります。
複雑性——注文の中身が重くなっている
行数の増加、オプションの追加、SKU数の膨張。いずれも1件あたりの作業量を増やします。効率が落ちたのではなく、仕事の中身が変わったのであれば、責める先を間違えないことが大切です。SKU別UPHを出せば、どの商品が重いのかが数字で示せます。
動線と手戻り——探す・待つ・戻るの時間
ロケーション管理が甘いと、作業者は棚の前で探す時間を使います。在庫データが実物と合っていなければ、欠品に当たって戻る手戻りも発生します。在庫差異率が高い倉庫でUPHが伸びないのは偶然ではありません。保管効率KPIとラックの選び方は、この層の打ち手にあたります。
UPHを上げる4層の改善手順
改善は、コストが低く効果が早い層から順に手を付けます。いきなり設備投資に向かうと、投資後も間接作業が残ったままになります。
第1層:レイアウトとロケーション(歩く距離を短くする)
費用がほとんどかからず、効果が最も早く出る層です。出荷頻度の高いSKUを取りやすい高さと近い位置に集める、通路を一方通行にして交錯を減らす、ピッキング順とロケーション番号の並びを一致させる。この3つで移動時間は確実に縮みます。
第2層:システムと機器(探す・数えるを機械に渡す)
バーコード検品を入れると、数える時間と確認の心理的負荷が同時に減ります。ピッキングリストの並び順をロケーション順に変えるだけでも効きます。ここから先は自動化と人の役割分担の設計に入っていきます。
第3層:作業設計と標準化(人によるバラつきを減らす)
同じ作業でも人によって所要時間が2倍違うことがあります。差が出ているのは技能ではなく、手順が決まっていない部分であることがほとんどです。梱包材のサイズ選択、緩衝材の量、伝票を貼る位置。判断を要する場面を減らすほど、平均は上がり、ばらつきは縮みます。体系的な知識づけには日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」のような外部講座も選択肢になります。
第4層:出荷そのものを軽くする(上流で決める)
最も効果が大きく、最も時間がかかる層です。セット商品を事前に組んでおく、同梱物を減らす、梱包パターンを3種類に絞る。倉庫の外で決まっていることを変える改善であり、実行には販売側の合意が要ります。
| 層 | 主な打ち手 | 費用 | 効果が出るまで |
|---|---|---|---|
| 第1層 レイアウト | ロケーション再配置・動線整理 | ほぼ不要 | 数日〜数週間 |
| 第2層 システム・機器 | バーコード検品・リストの並び替え | 小〜中 | 1〜3か月 |
| 第3層 作業設計 | 手順の標準化・判断の削減 | ほぼ不要 | 1〜3か月 |
| 第4層 出荷設計 | セット化・同梱削減・梱包の集約 | 小 | 3か月〜 |
なお、宅配便の総量は高い水準のまま推移しており、外部環境が緩む前提は置けません。
令和6年度の宅配便取扱個数は、50億3147万個で、前年度と比較して2414万個・約0.5%の増加となった。令和6年度のメール便取扱冊数は、33億4477万冊で、前年度と比較して2億6531万冊・約7.3%の減少となった。
荷主側にも効率化の責任が及ぶ流れは制度としても進んでおり、国土交通省「物流効率化法について」では一定規模以上の荷主が特定事業者として指定され、中長期計画の作成が義務付けられています。自社の出荷効率を数字で説明できることは、この文脈でも意味を持ちます。
発送代行の見積をUPHで読み解く
委託先を比べるとき、多くの事業者は出荷1件あたりの単価だけを並べます。しかし単価が安いことと、自社の出荷が軽いことは別の話です。UPHの視点を持つと、見積の裏側にある作業量が見えてきます。
委託先に聞くべき4つの質問
- 1件の定義は何か——注文単位か、個口単位か。同梱物や明細行が増えたときの扱いはどうなるか。
- 作業料が上がる条件は何か——セット組み、ラベル貼り、ギフト対応など、どこからオプション課金になるか。
- 波動時の体制はどうなるか——件数が急増した日に、リードタイムを守るための人員をどう確保しているか。
- 品質指標を開示してもらえるか——出荷精度と納期遵守を、契約後に定期的に共有できるか。
これらは3PL契約で確認すべき条項と重なります。契約前に決めておかないと、運用が始まってから交渉することになります。3PLの費用体系と業者選定もあわせて押さえておくと、質問の精度が上がります。
「単価が安い」と「工数が軽い」は別問題
単価だけを下げに行くと、オプション課金や最低利用料で戻ってくることがあります。見るべきは月間の物流費総額を出荷件数で割った実効単価で、その分解にはCPO(1件あたり配送コスト)の考え方が使えます。保管側の課金方式も総額に効くため、保管料の4方式とセットで確認してください。大口であれば発送代行コストの7つの最適化軸が交渉の材料になります。
STOCKCREWは初期費用・固定費0円、基本配送料全国一律260円〜、導入は最短7日で、AMRを110台稼働させた体制で運用しています。導入実績は2,200社以上です。料金の内訳は料金ページ、設備と運用の詳細はSTOCKCREW完全ガイドに整理しています。
まとめ:UPHは倉庫を責めるための指標ではない
人時生産性は、出荷件数と人件費のあいだにある変換効率を1つの数字にするKPIです。分母に間接作業まで含めて測ると、削れる余地の大半が「商品に触れていない時間」にあることが見えてきます。数字が伸びないときは、波動・複雑性・動線・作業設計の4つに切り分ければ、打ち手の順番が決まります。
そしてUPHが示す答えが「自社では上げきれない」だったときに、外注が選択肢に入ります。そのときも比べるべきは単価ではなく、自社の出荷が相手の設備と運用でどれだけ軽くなるかです。全体像は発送代行完全ガイドとEC物流完全ガイド、物流という機能そのものの整理は物流の仕組みと6大機能にまとめてあります。
自社の数字を持ったうえで比較したい場合は、資料ダウンロードで料金と運用の考え方を確認できます。出荷構成を伝えたうえで試算したいときは、お問い合わせから相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 人時生産性(UPH)の目安はどのくらいですか?
A. 商材・注文構成・設備が違いすぎるため、業界共通の目安値は使えません。他社の数字と比べるのではなく、同じ定義で自社の推移を12週ぶん並べ、自社の平常時を基準にしてください。基準ができれば、悪化と改善を判断できます。
Q. 分母の工数には準備や片付けも含めるべきですか?
A. 含めることをおすすめします。除くと数字は良く見えますが、削減余地の大半がその時間に含まれているためです。朝礼、準備、片付け、欠品対応、問い合わせ確認まで入れると、改善のネタが数字の中に残ります。
Q. UPHが上がったのに人件費が下がりません。なぜですか?
A. 件数が同時に増えている可能性があります。UPHは効率の指標なので、効率が上がっても仕事量が増えれば総額は下がりません。人件費を判断したいときは、UPHと出荷件数と総工数を並べて、どれが動いたのかを見てください。
Q. 小規模EC(月間数百件)でも測る意味はありますか?
A. あります。むしろ規模が小さいうちのほうが、測る手間が軽く済みます。外注に切り替えるかどうかを判断する場面で、自社の実力値を数字で持っているかどうかが判断の質を決めます。紙の日報からでも始められます。
Q. 発送代行に委託した場合、UPHは自社で測れますか?
A. 委託先の内部工数は通常わかりません。代わりに、月間の物流費総額を出荷件数で割った実効単価を追ってください。これが実質的にUPHと同じ役割を果たします。契約時に、出荷精度と納期遵守を定期共有してもらえるかも確認しておくと安心です。
Q. UPHとOTIF・誤出荷率はどう使い分けますか?
A. UPHは効率、OTIFと誤出荷率は品質を見る指標です。UPHだけを追うと品質が犠牲になりやすいため、必ず同じ表に並べます。効率が上がって品質が落ちていなければ改善、片方だけ動いていれば無理が出ていると判断できます。
この記事の監修者
北原一樹
株式会社KEYCREW オペレーション部長。大手物流会社にて現場担当からセンター長を経て、営業・管理職を12年間歴任。物流業界での経験は24年に及ぶ。大規模顧客の初のEC・DCが併設された10,000坪規模の大型倉庫の立ち上げを主導した実績を持ち、月間100Mの赤字を抱えていた物流センターをわずか3か月で黒字化に転換させた。現在はSTOCKCREWにおいて部門管理・各拠点の収支管理・業務改善を統括。「現地・現物」「数字で現場を見る」「何事にも基準を作る」を信条に、年間5千万点の入出荷を支える高品質な物流オペレーションを実現している。