Shopify Functions移行と物流カスタマイズ再設計【2026年版】|Scripts廃止までの実務対策
- EC・物流インサイト
この記事は約18分で読めます
Shopify Scriptsの廃止期限は2026年6月30日。割引・配送・決済のカスタマイズをScriptsに依存してきたストアにとって、避けられない期限です。特に物流オペレーションを細かく制御してきた場合、この移行がビジネスに与える影響は小さくありません。本記事では、Shopify Functionsへの移行方法から、配送オプション最適化の再設計までを、実務的な対応ロードマップとして整理します。移行前に必ず確認すべき事項と、本番運用までスムーズに進めるための5ステップフローも紹介します。
Shopify Scripts廃止のスケジュールと影響範囲
2026年6月30日廃止——当初の2025年8月から延長された
Shopify Scriptsの廃止期限は2026年6月30日です。当初の廃止予定日は2025年8月28日でしたが、2025年4月に2026年6月30日へ延長された経緯があります。期限までにScriptsをShopify Functionsへ移行しなければ、チェックアウト・配送・決済のカスタマイズが停止します。
Shopify Scripts will be sunset on June 30, 2026. All existing Shopify Scripts will stop functioning after this date.(Shopify Scriptsは2026年6月30日に提供を終了し、既存のすべてのScriptsはこの日以降動作しなくなります)
出典:Shopify「Migrating from Shopify Scripts to Shopify Functions」
なお、Shopify Scripts(Script Editorアプリ)はShopify Plusプラン専用の機能です。Plusでカート・配送・決済をRubyスクリプトで制御してきたストアが、本記事の主な対象になります。既存カスタマイズの仕組みをきちんと文書化し、移行先(Shopify Functionsなのか外部アプリなのか)をいち早く決定する必要があります。EC運営の基礎知識を押さえたうえで、移行判断を下しましょう。
影響を受ける機能(割引・配送・決済カスタマイズ)
Scriptsが廃止されると、次の3つの機能領域が大きく影響を受けます。第1に割引系。Product/Cart割引の複雑なロジックをScriptで実装していたストアは、Discounts APIへの移行が必須です。第2に配送・物流。発送代行業者との連携、配送方法の動的変更、金額に基づいた送料調整などはすべてDelivery Customization APIで実装し直す必要があります。第3に決済。カスタム決済オプションやチェックアウトの条件付き表示は、Payment Customization APIで再構築します。
とりわけ物流領域は、EC事業の根幹を支える機能であるため、移行タイムラインは短くても2ヶ月〜3ヶ月の余裕を見ておく必要があります。Shopifyの基本情報もあわせて確認してください。
日本のEC市場は拡大を続けており、Shopifyは国内のEC構築プラットフォームとして採用が広がっています。市場全体が成長する中で、チェックアウト体験を支えるカスタマイズの移行は、売上に直結する重要なテーマです。
2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26兆1,225億円(前年比5.1%増)に達し、物販系分野は15兆2,194億円、物販系のEC化率は9.78%となった。
Shopify Functionsとは——Scripts廃止後の新アーキテクチャ
Ruby→WebAssemblyへの技術移行
Shopify Scriptsはサーバーサイド上でRubyで動作する仕組みでした。これに対してShopify Functionsは、WebAssemblyを採用した新型プラットフォームです。WebAssemblyでの実装により実行速度が向上し、レイテンシが小さくなるため、チェックアウト画面の応答性も改善します。その結果としてユーザー体験(UX)が向上し、カート放棄率の低下にもつながる可能性があります。
ただしTypeScriptまたはRustでのコード記述が必要になるため、既存のRuby Scriptをそのまま再利用することはできません。Shopify Functionsは単なる置き換えではなく、アーキテクチャそのものの再設計だと認識しておくべきです。
3つの主要API(Discounts/Delivery/Payment)
Shopify Functionsの中核を成すのが、これら3つのAPIです。Discounts APIは割引ロジックの制御を担い、複数条件の割引組み合わせ、顧客セグメント別の割引適用、期間に基づいた自動制御が可能になります。Delivery Customization APIは配送オプションの動的な管理を担い、配送先の地域・注文内容・顧客属性に基づいて配送方法の表示・非表示を切り替えられます。Payment Customization APIは決済オプションの制御を担い、特定条件下でのみ特定決済方法を表示するなど、チェックアウト画面の条件付き制御が実現します。
これらのFunctionは、Shopify CLIで開発し、Admin GraphQL APIと連携して有効化します。つまり単なるScriptsの置き換えではなく、Shopify APIエコシステムへの統合が前提となります。なお、Functionを含む公開アプリ(App Store経由)はどのプランでも利用できますが、Function APIを含むカスタムアプリの利用はShopify Plusプランに限られます。
Scripts→Functions置き換え対応表
既存ScriptsをFunctionsへ移行する際、どのAPIに対応するかを事前に整理しておくことで、移行計画の精度が上がります。以下にShopify公式の対応関係を整理しました。発送代行サービスを活用した配送制御も、Delivery Customization API経由で実装できます。
| 旧Scriptsの種類 | 移行先Function API | 実装言語 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Line item scripts(商品・カート割引) | Discounts API | TypeScript / Rust | 商品・カート合計への割引、クーポン制御 |
| Line item scripts(カート変換) | Cart Transform API | TypeScript / Rust | バンドル・商品のマージや追加 |
| Line item scripts(検証) | Cart and Checkout Validation API | TypeScript / Rust | カート内容の検証・特定条件での購入ブロック |
| Shipping scripts(配送制御) | Delivery Customization API | TypeScript / Rust | 配送方法の非表示・リネーム・並べ替え |
| Payment scripts(決済制御) | Payment Customization API | TypeScript / Rust | 決済方法の非表示・リネーム・並べ替え |
物流カスタマイズ再設計——Delivery Customization APIの実務
配送オプションの動的制御が可能に
物流オペレーションの観点から最も重要なのが、Delivery Customization APIです。従来のScriptsでも配送制御は可能でしたが、Functionsでの実装により、より精密で高速なリアルタイム制御が実現できます。具体的には、冷蔵品と常温品が混在する注文で専用の冷蔵配送を強制する、郵便番号から配送可能エリアを自動判定する、顧客ランク(VIP等)に応じて配送オプション表示を切り替えるといった制御が可能になります。
3PL・発送代行との新型連携パターン
発送代行業者との連携も、Functions移行で進化します。従来は静的な配送マスタにScriptsで簡易制御を加えるだけでしたが、Delivery Customization APIなら配送方法の出し分けロジックをコードで明確に管理できます。たとえば、特定の商品カテゴリでは特定の配送方法のみを表示する、地域や注文金額に応じて送料の表示を切り替えるなど、より高度な制御が実現します。
複数の3PLを組み合わせている場合、商品カテゴリごとに最適な配送方法のみを表示するなど、物流ネットワーク全体の最適化が可能になります。これにより配送効率が向上し、物流コスト削減と顧客満足度の向上を同時に実現できます。モール横断の発送代行を検討している事業者にとって、API連携の標準化は特に重要なテーマです。物流業界全体でも、システムの標準化・データ連携基盤の整備が進められており、EC物流のAPI連携はこの流れに合致しています。
Checkout Extensibility・追加スクリプトの期限整理
Shopify Scriptsと「追加スクリプト」は別物
移行を計画するうえで混同しやすいのが、本記事の主題であるShopify Scripts(Script Editor)と、注文ステータスページなどに使う追加スクリプト(Additional Scripts)の違いです。前者はカート・配送・決済を制御するPlus専用機能で、廃止は2026年6月30日。後者は注文確認・注文ステータスページに埋め込むスクリプトで、Checkout Extensibilityへの移行が求められています。
Plus店舗とNon-Plus店舗の期限差
追加スクリプト(およびScriptTags)のサポート終了時期は、プランによって異なります。Shopify Plusでは2025年8月28日にサポートが終了しており、未対応の場合は緊急対応が必要です。一方、Basic・Grow・Advancedなどのプランでは2026年8月26日にサポートが終了します。Scripts廃止日(6月30日)とは別の期限であるため、自社のプランと利用機能を整理し、どちらの期限が該当するかを早期に確認してください。8月下旬は夏季休暇と重なるため、実質的には8月上旬までの完了が安全です。外部決済サービスや配送システムとの統合がある場合はテスト期間も長くなります。
物流の2024年問題を背景に、EC事業者にはデジタル技術の活用が一段と求められています。受注処理から配送管理までのシステム連携を見直し、API標準化とデータ連携基盤を整備することが、移行を機にした体制強化のポイントです。国土交通省も物流革新に向けた政策パッケージのなかで、テクノロジーを活用した物流効率化を推進しています。
移行プロジェクトの実務フロー5ステップ
Step 1-2:監査と選定
まずは自社のShopify Scriptsがどのような機能を担当しているかを把握することが第一歩です。Script Editorのメイン画面から、現在有効なすべてのScriptをリストアップします。それぞれが何の目的で実装され、どのビジネスプロセスに依存しているのかを文書化します。特に物流・配送関連のScriptについては、発送代行業者やシステム連携の詳細を確認しておくことが重要です。
Step 2では、移行方式を選定します。自社でShopify Functionsを開発するのか、既存の配送オプション制御アプリを導入するのか。選定基準は技術的難易度・費用・開発期間・保守性を総合判断します。大規模で複雑なカスタマイズであればFunctions開発が選択肢になりますが、一般的な物流制御であればアプリ導入がコスト効率的です。発送代行の導入ステップを踏まえ、移行と同時に物流体制を見直す方法もあります。
| 移行方式 | 初期コスト | 保守 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 自社Functions開発 | 高め(数十万〜数百万円) | 自社で継続対応が必要 | 独自ロジックが多い大規模・Plusストア |
| 既存アプリ導入 | 低め(月額数千〜数万円) | ベンダー側が継続対応 | 一般的な割引・配送・決済制御 |
| 発送代行連携ツール活用 | 低め(連携費用のみ) | 代行側と分担 | 配送・出荷の最適化を同時に進めたいケース |
Step 3-5:再設計・テスト・本番移行
Step 3では、選定した移行先に対して新しい実装設計を行います。Functionsであれば、TypeScript/Rustでのコード設計。アプリであれば、設定項目の洗い出しと要件定義です。既存のScriptロジックを新しい環境にマッピングし、機能的ギャップがないかチェックします。特に物流制御では3PLとの連携仕様が変わる可能性があるため、発送代行業者との打ち合わせが不可欠です。
Step 4はテストフェーズです。Shopify公式が推奨する方法では、テスト対象の顧客に「TESTER」などのタグを付与し、Functionの挙動をタグ付き顧客に限定して本番環境で安全に検証できます。本番同様の複雑な注文パターンで動作を検証し、配送費用の計算ロジックに誤りがないか細心の注意を払います。Step 5で本番移行を行いますが、スケジュールには余裕を持たせ、6月30日直前の移行は避けてください。6月中旬までに完了させ、2週間のモニタリング期間を確保することをお勧めします。
移行プロジェクトのタイムライン目安
以下は、中規模EC店舗(月商500万〜3,000万円)を想定した移行プロジェクトのスケジュール例です。自社のカスタマイズ複雑度に応じて調整してください。EC物流の課題整理も並行して進めると、移行後の運用設計がスムーズになります。
| フェーズ | 期間目安 | 主なタスク | 成果物 |
|---|---|---|---|
| Step 1:現状監査 | 1〜2週間 | 全Scriptsの棚卸し、依存関係の文書化 | Scripts一覧・機能マップ |
| Step 2:移行方式選定 | 1週間 | Functions自社開発 or アプリ導入の意思決定 | 移行方針書・ベンダー選定 |
| Step 3:再設計・実装 | 2〜4週間 | 新APIでの機能実装、3PL連携設計 | Functions実装コード・設定 |
| Step 4:テスト | 1〜2週間 | タグ付き顧客での本番検証、発送代行連携テスト | テスト結果レポート |
| Step 5:本番移行 | 1週間 | 本番デプロイ、旧Scripts停止、モニタリング開始 | 移行完了報告・監視体制 |
合計6〜10週間が標準です。4月中に着手すれば6月中旬の完了は射程圏内です。物流コスト削減の考え方も参考に、投資対効果を評価しましょう。
Functions移行で実現する物流効率化のメリット
リアルタイム配送制御による顧客体験向上
Shopify Functionsへの移行により、配送オプションの提示が高速化されます。WebAssemblyベースのFunctionsなら、ユーザーがカート内容を変更した瞬間に配送方法がスムーズに更新されます。この体験向上により購入完了率の向上が期待でき、特にモバイルコマースでは不要なオプションを非表示にすることでUX改善につながります。
発送代行連携の高度化
Delivery Customization APIの活用により、3PLや発送代行業者との連携が質的に向上します。Functionsなら商品の重量や大きさに応じて配送方法の出し分けをコードで管理でき、物流費用の圧縮と配送品質の向上を同時に追求できます。こうした細かな最適化の積み重ねがEC事業全体の利益率向上に寄与します。出荷量の段階別物流設計と組み合わせれば、事業規模に応じた最適なシステム構成を描けます。国土交通省も物流革新に向けた政策パッケージのなかで、テクノロジーを活用した物流効率化を推進しています。
移行事例:配送制御のScriptをFunctionsへ移したケース
たとえば、月商2,000万円規模のShopify Plusストアが、Rubyの配送Scriptで「特定地域は特定配送方法のみ表示」「一定金額以上で送料無料」を制御していたケースを考えます。この事例では、まず配送Scriptを棚卸ししてロジックを文書化し、Delivery Customization APIへ移植。Shopify公式が推奨する「TESTERタグを付けた社内アカウントで本番検証する」手法で、既存顧客に影響を与えずに挙動を確認しました。移行後は配送オプションの更新が高速化し、物流コストの可視化とあわせて配送条件の見直しを継続できる体制になりました。Plus以外のストアでも、こうした配送制御は発送代行連携ツールと組み合わせることで実装の難易度を下げられます。
まとめ:6月30日までに移行を完了させるために
Shopify Scripts廃止は、逃げられない期限です。2026年6月30日までに、すべてのScriptに代わる機能を実装する必要があります。特に物流・配送オペレーションを担うScriptは、ビジネスへの影響が直結するため、優先順位を高く設定して対応を急ぐべきです。
本記事で紹介した5ステップのフロー——監査、選定、再設計、テスト、本番移行——に従えば、計画的な移行が実現できます。ただし、3PLとの調整や外部パートナーの支援が必要な場合もあります。物流・配送の最適化ガイドや3PL・発送代行の外注ポイントを踏まえながら、自社に最適な移行戦略を立案してください。
STOCKCREWのような発送代行連携プラットフォームを活用すれば、Scripts廃止後のAPI連携もスムーズに進みます。初期費用0円・全国一律260円〜の料金で、2,200社を超える導入実績があります。システム連携一覧で対応状況を確認し、導入ガイド資料もダウンロードしてください。最短7日で稼働開始できるため、移行スケジュールに合わせた導入も間に合います。具体的な相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. Scripts廃止後、既存のカスタマイズはどうなりますか?
2026年6月30日をもって、すべてのShopify Scriptsは動作を停止します。既存のScriptで実装していた割引・配送・決済のカスタマイズはすべて機能しなくなり、デフォルトの動作に戻ります。割引が適用されなくなったり、配送オプションが固定化したりするため、売上への影響は深刻です。そのため、今からの移行準備が必須です。
Q. Functions移行にかかる費用と期間は?
移行方式によって大きく異なります。シンプルな配送制御であれば、既存アプリの導入で完結し、月額数千円〜数万円の範囲に収まります。一方、複雑なカスタムFunctions開発の場合は、開発パートナーへの外注費用として数十万円〜数百万円を要することもあります。期間は、簡易的な移行であれば1〜2週間、複雑なシステム連携であれば2〜3ヶ月の見積もりが現実的です。
Q. 自社開発とアプリ導入のどちらが良いですか?
意思決定のポイントは、技術チームの規模・カスタマイズの複雑性・メンテナンス負荷の許容度です。社内にTypeScript/Rustの開発経験者がいて継続的な保守を担当できるなら自社開発も選択肢になります。そうでない場合は、アプリ導入が推奨されます。アプリはベンダー側が継続的にメンテナンスするため、将来的なShopify仕様変更への対応も行われるメリットがあります。広告費と物流コストの損益分岐も含めた総合的なコスト判断が重要です。
Q. 発送代行との連携はFunctions移行で変わりますか?
変わります。従来のScriptsでは配送方法の制御ロジックがRubyで分散しがちでしたが、Delivery Customization APIを使えば、配送方法の出し分けや送料表示の制御をコードで明確に管理できます。これにより、発送代行を含めた配送オプションの最適化がしやすくなり、物流効率の向上につながります。日本郵便の赤字問題とEC配送コストも踏まえた配送戦略の見直しが有効です。
Q. 移行期限に間に合わない場合のリスクは?
6月30日を過ぎると、Scriptsに依存する全機能が停止します。その時点で代替機能を実装していなければ、ユーザーへの影響は即座に出ます。割引が適用されず、配送方法が制御されず、決済オプションがカスタマイズされない状態になり、顧客体験が大きく低下します。結果として売上減少や顧客流出につながるため、期限遵守が必要です。
この記事の監修者
金子将大
株式会社KEYCREW ソリューション部門の責任者。大手ECプラットフォーム会社にてEC構築に関する開発・PM業務を7年間担当し、EC業界での豊富な技術知見を持つ。応用情報技術者・証券外務員2種の資格を保有。UIリニューアルやサービスリニューアルのプロジェクトマネジメント、Temu・ShopifyなどのEC外部API連携の新規開発・リプレイスを手がけてきた。クラウド環境のアプリログコストを60%程度削減するなどの技術的成果も上げている。KEYCREWではソリューション部門全体を統括し、技術で組織の仕組みを改善し、安定した運営と今後の成長につながる基盤づくりに注力。API連携・システム統合・EC自動化・DX推進に関する実践的な知見を記事に反映している。