「誰でもECをはじめられる時代」「ネットショップの簡単開業」etc...
ECの登場は多くの意味で働くという考え方を変えました。それは誰もが「簡単に」事業主になれる、という意味で過去のどの時代よりも「簡単に」なったからです。
しかし、この「簡単に」という言葉はあくまでも要件が簡単になっているという意味で「簡単に」成功するという意味ではありません。
ここではECサイト、ネットショップ運営をはじめるにあたって抑えておきたい基本の7つステップを紹介しておりますので、これからネットショップの開業を検討している人や既に開業して運用に悩んでいる人まで一度確認いただければ幸いです。
目次
個人でも開業OK!ネットショップとは?
では、まず初めにネットショップとは何かを解説します。いやそれは当然オンライン上のショップのことでしょ?と思われると思いますが、ネットショップの運営がほかのオフラインのショップ(実店舗)運営と何が違うかを改めて整理したいと思います。
ネットショップで販売する商品を決める
まずは、すべての計画のタネとなる販売する商品を決めなければなりません。この1ステップ目が今後の計画・実行・運用の全てに大きな影響を与えますので、ネットショップのコンセプト固めとして非常に重要なステップになります。
ここからどのような商品が今、ECで流通しているのかを説明しますが、一番重要なことを先にお伝えします。
自分が一番"こだわれる"商材が一番売れる!!
逆に非常に危ないのが「今、○○がすごい売れているから始めるなら○○系がいいよ」や「○○は仕入れが簡単だから失敗しないよ」というような既に結果の出ている商材に安易に飛びついてしまうことです。まずはこの部分について説明します。
「今、売れている商品!」が売れない理由
まず、ネットショップを運営する上で一番最初に頭を切り替えなければならないのは「今売れている商品!」ほど自社のネットショップで販売しても「売れない」可能性が高いということです。このことを理解するには「ネットワーク効果」という言葉を理解する必要があります。
ネットワーク効果(network effect, ネットワークエフェクト)、もしくはネットワーク外部性(network externality)とは、製品やサービスの利用者が増えるほど、その製品やサービスのインフラとしての価値が高まること。そのネットワーク外の者にとって価値が高まることから、ネットワーク外部性とも呼ばれる。
この言葉はもともとプラットフォームの利便性は参加者が増加すればするほど増加すること表現する言葉でした。代表的な事例は電話やオンラインゲームです。このあたりは別記事で改めて説明します。
実はネットショップでの小売販売でもこのネットワーク効果は発生します。例えば、商品をamazon.comに出店して販売した場合、販売実績はレビューやランキングに反映されます。では、みなさんが消費者として商品を探す時にどのように商品を探すでしょうか?多くの方が、ランキング上位順にレビューを参考にして購入を決定するというプロセスを踏んでいるのではないでしょうか?
その結果、ランキング順・レビューの評価が多い順に商品はより売れることになります。
ネットショップ運営では日本中の誰もがショップや商品にインターネットを通じてアクセスできるため、このネットワーク効果が非常に大きな影響を与えます。その結果、今売れている商品はより売れるようになり類似商品の新規参入はより難しくなります。
商品を選定する考え方として「売れている商品をリサーチする」という発想は危険度が大きいということを理解してください。
"こだわり"が重要な理由
先に「売れている商品」は危険と説明しましたが、ではどうやって商品を選定していけば良いのでしょうか?冒頭に記載した「こだわり」です。
ここでお伝えする「こだわり」というのはどれだけその商材に「偏った情報」を付加できるか、ということです。なぜ偏った情報が重要かというと答えは明確です。
偏った情報はSEO上有利!
ネットショップを運営するにあたって最初にして最大の関門は「集客」です。集客ができなければどれだけ良い商品をどれだけ良い価格で提供しようとしても売れることはありません。店の入り口がわからなければモノが売れることはないからです。
ネットショップを運営し始めた当初にブランドや商品名を直接検索されて消費者を集客することはとても難しいことです。"こだわり"が強いというのは、愛着がある、好きなので続けられる、魅力を伝えられるなど、さまざまな表現はありますが、一言で表すならば「SEO上有利」これに尽きます。
ネットショップでは"ネットワーク効果"が働くので「今売れている商品」を後発で売るのはより難しく、継続的に「売れる」ことを目指すには統計データよりも"こだわり"を持てる商品の方がSEO上有利になることを考えて商品を選びましょう。
キャッシュフローが重要な理由
次に収益構造の観点から選ぶべき商材を説明していきます。ネットショップの運営を始めるにあたって財務面で一番意識しなければならないのはキャッシュフローです。
ネットショップ運営は非常にキャッシュフローが悪い商売
ネットショップ運営を勧める場合に、この部分は軽視されているように感じます。ネットショップは店舗を開設しやすくなった、ということを除けば伝統的な在庫販売事業であって、キャッシュフローはむしろ実店舗よりも悪いです。そのため、キャッシュフローは商材選定でもとても重要な要素になります。キャッシュフローの良い商材の特徴は以下のような点があります。
- 使用頻度が一定であり、複数回の購入が期待できる
- 原材料が一般的であり、仕入に特殊な運用を必要としない
例として、健康食品系のサプリメントや化粧品、アパレル商材が該当することが多くなっています。一方でこのあたりはEC市場でもかなり過当競争ですので、安直に売れているからという理由で選択するのではなく、こだわれる内容があるかを含めて検討する必要があります。
使用頻度が一定である商材の逆は「季節波動」の強い商材になります。ネットショップは小資本で運営することが多いので季節波動が強いと閑散期にキャッシュフローが悪化する懸念があり、避けたいところです。
利益率が重要な理由
次に重要な指標は利益率です。利益率が重要になるのは先ほどのキャッシュフローと同じネットショップ運営での利益率の改善は2つの方法があります。
- 仕入れ方法を見直して、原価率を下げる。
- ブランディングを強化して販売単価を上げる。
- 販売セット率を上げて販管費比率を下げる。
基本的な事項ですが、ネットショップの売上高は以下の数式で説明できます。
売上高=客単価(販売単価×販売セット率)×客数
原価率を下げずに利益率を上げようと思えば、販売単価も同時に引き上げる必要があります。この際、特にこだわりを持って取り組みたいのは、2番のブランディングによる販売単価を上げるという方法です。1番の仕入方法を見直して原価率を下げる方法については、多くの場合、競合他社と仕入れ元が競合することになり、過当競争から販売価格の下落につながり結果として利益率の改善に至らないケースが多くなりがちです。
また、物流経費の圧縮を狙って、販売セット率を上げていく(3番)のも効果的です。販売セット率を上げる代表的な手法としては以下のような方法があります。
- 送料無料設定ラインを設けてセット率向上を図る。
- 関連商材の取扱を増やし、併売需要を高める。
「関連商材の取扱を増やし、併売需要を高める」については、単品販売ではなく、ブランディングを進めることで提供する世界観やライフスタイルを提案していく意識を持つことで改善していく手法ですが、長期的な取り組みが求められます。短期的には送料無料の設定を行い、1受注毎の物流経費等の販売管理費を圧縮できるラインを設け、消費者・事業主がwin-winの関係で購買意欲を高めていく手法、上記1番の方法になります。
商品選定のポイント
商品選定のポイントをここまで説明してきました。以下にポイントをまとめておきます。
- 「今、売れている」に安易に飛びつかない。
- SEOを意識して「こだわり」を情報提供できる商材にする。
- キャッシュフローを意識して特殊すぎる原材料や季節波動のある商材を避ける。
- 利益率を意識して関連商材の展開しやすさや送料設定の可否を柔軟に検討できる商材にする。
個人運営でもしっかり資金計画を策定!
資金の計画はネットショップ運営に限らず事業運営上、とても重要な要素です。ここでは以下の項目に沿って資金計画の作り方を説明します。
- 創業資金を把握する。
- 損益分岐点を把握する。
- 事業計画を策定する。
創業資金を把握する
ネットショップを開業するにあたって最低限必要になる項目をリストアップしましたので、ご確認ください。
- PC等ハードウェアの購入費用
- オフィスや倉庫等の設備賃料
- 運用に関わる人件費
- 発送に関わる資材・配送費
- 広告宣伝費
- 許認可関連費用
- カート・モール利用料
ネットショップ開業については「開業しやすくなった」とは言え、上記のような費用は必ず発生しますので、しっかりと把握しておくことが重要です。また、スモールスタートの場合、「自分がやればいい」ということで人件費や発送費用等を考慮せずに価格を設定してしまうケースがあります。そうした場合、事業拡張時にどうしても無理が発生してしまうため、あとで行き詰まらないように現実に費用発生するかどうかではなく、厳密にコストを把握しておくことが重要です。
PC等ハードウェアの購入費用
パソコンやプリンター等のネットショップを開業する上で必ず必要になってくるハードウェアは費用としてもかさんできます。ほかにも撮影機材や画像編集ソフト、カスタマーサポート対応用の固定電話や、配送会社とのやり取りで利用率の高いFAXなどが必要になる場合があります。
オフィスや倉庫等の設備賃料
ネットショップは在庫運営のビジネスですので、在庫の置き場所というのは必ず発生します。最初期は自宅やオフィスで対応することも可能ですが、事業規模が大きくなると別に在庫保管場所を用意する必要があります。
運用に関わる人件費
最初期においては自分自身で対応するため発生しないというように見えますが、拡張時には必ず運用担当が必要になります。このコストは事業設計上、必ず必要になってきますので、当初よりコストとしての把握をしておく必要があります。
発送に関わる資材・配送費
受注時に発生する配送費用です。発送費用は取扱う商材によって変わってきますので、自身の取扱う商材の物流経費はしっかりと把握しておきましょう。最近では規模感を問わない物流アウトソーシング・発送代行サービスも増えておりますので、変動費化することで固定費負担を減らすことも検討したいです。
広告宣伝費
広告宣伝費には有料と無料のものがありますが、スタートアップの時点で広告費を全く使わずに認知を高めるのは難しいです。具体的にはコンテンツSEOやSNSやYoutube利用などの無料で行える自社施策から、Googleのリスティング広告やSNS広告などの有料のものをうまく組み合わせて認知を拡大していく必要があります。
- コンテンツSEO
- SNS利用
- youtube等動画投稿サイト
- Google広告
- SNS広告
許認可関連費用
取扱う商材によっては許認可の申請が必要になるものもあります。
- 食品:食品衛生責任者/食品衛生法に基づく営業許可
- 健康食品:食品衛生責任者
- 中古品:古物商許可
- 酒類:酒類の販売業免許
- 医薬品:薬剤師、登録販売者/薬局開設許可、医療品販売許可、特定販売届出
- 化粧品:化粧品製造販売許可、医薬部外品製造販売許可
ネットショップは仕入れから販売自体は簡単に開業できるようになりましたがこういった商材を扱う際には関連法規をしっかりと確認する必要があるので、要注意です。
損益分岐点を把握する。
創業資金を把握した次は損益分岐点の把握です。正しくコストを把握すると、利益を得るためにどのような単価でどの程度の数量を販売する必要があるかが分かってきます。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
損益分岐売上高とは売上高が○○円の時、利益がちょうど±0になる売上高を指します。固定費とは創業資金でみた費用のうち、売上があろうがなかろうが必ず発生する費用のことです。具体的にはオフィスの賃料や人件費、各種設備の減価償却費などがこれに当たります。限界利益率は売上高が1単位増加した時に増加する変動費の割合のことですが、ネットショップの場合、(商品原価+1点の物流経費)/販売単価で計算しておけば大丈夫です。
事業計画を策定する。
最後に事業計画の策定に進みます。事業計画は経営が軌道に乗るまでに銀行や政策金融公庫等から借入れをする際にも必ず提出を求められますので、上記で記載されている内容を踏まえて販売計画からキャッシュフロー計算書、損益計算書の予測が作成されていると融資もスムーズに進みます。実際、このような基礎的な部分で情報が欠落していると事業性が不安視され融資されづらくなるので注意が必要です。事業計画の作成には最低でも以下のような項目が必要になりますので、常々準備しておくと良いかと思います。
- 決算書(貸借対照表、損益計算書)
- 創業計画書
- 企業概要書
- 収支計画書(キャッシュフロー計算書・貸借対照表、損益計算書の予算)
在庫管理を行う
「在庫管理」の基本は、仕入れた商品=在庫の保管に加えて自社の経営規模に応じた適切な在庫、つまり「適正在庫」の確保にあります。しかし、ネットショップと実店舗においては、営業時間のしばりがないという大きな違いがあり、在庫管理は実店舗以上にしっかり行い「適正在庫」を確保する必要があります。
在庫管理についての詳細は、ぜひ「もっと重要視すべき!ネットショップの在庫管理」にてご確認ください。
ネットショップのカート利用でおすすめ3選
続いて、カート利用でのおすすめ4選を紹介します。
まずはカートとは何かを簡単に説明すると、ネットショップを開設するために必要な決済や受注管理システム機能が備わった機能を提供しているサービスです。モール(楽天市場やAmazon)と比較すると、サイトの見た目や決済方法など自由度が高くかつ、初期費用も抑えられるメリットがあります。
一方、個人で開設するため集客力が低いデメリットもあります。SNSや広告を活用し販促で工夫をしていく必要があります。
現在、カートで人気があるおすすめ4選はこちらです。
Shopify
- 世界175カ国 100万ショップの利用実績
- ノーコードでサイトデザインを作成
- 2500以上のアプリ連携
- チャット・電話対応が英語
サイトデザインの豊富さとわかりやすい操作で、エンジニアやデザイナーに依頼しなくても独自のショップを開設することが可能です。また多言語・多様な通貨・決済方法に対応していることから、越境ECを検討する場合はメリットがあるカートシステムです。
また、ただ販売するだけの決済付きシステムではなく、多様なアプリの種類も強みのひとつです。例えば、SEO・マーケティング機能について。GoogleやFacebook広告をそれぞれ設定する必要はなく、Shopifyの画面上で設定が可能になり、かつ広告の効果はShopifyでまとめて分析できます。
機能の充実により多様なことがShopify上で完結する一方、不明点があった場合のサポートについては海外企業特有のデメリットがあります。それは、チャットやメールによるサポートは英語対応のみとなります。ヘルプページではわからない、確認したい内容はすぐにでもチャットで相談したくなるかと思います。
しかしながら直接の問合せは英語対応のみのため、Shopifyのサポートに頼ることはハードルが上がります。
STOCKCREWではShopifyのAPIと連携できるため、Shopifyで作成したネットショップの発送自動化が可能です。
BASE
- 170万ショップの利用実績
- 豊富なデザインテンプレート
- 日本独自の通信キャリアに対応して決済システム
CMでもおなじみの日本企業が提供するカートシステムです。170万ショップの開設実績があり、簡単にネットショップを開設できることで人気があります。デザインも豊富なテンプレートがあり、各種設定も個人で簡単に操作できる操作性も強みの1つです。
ショップの初期費用や月額固定費が発生しないことも特徴的です。まずネットショップを開設してみたいというときには固定費が発生しない部分は導入のハードルが下がるメリットになります。
一方、すべての販売に手数料が発生します。売上金額に対する料率が発生します。(スタンダードプラン:サービス利用料3%+決済手数料3.6%+40円)料率に関しては他のサイトと比較検討が必要になります。
STORES
- 70万ショップの利用実績
- 最短2分でネットショップの開設が可能
- 定期購入機能が無料プランから利用可能
- 決済完了から発送までの期間が半年
続いても日本製のカートシステムです。STORESの特徴はサイトの作成が容易であり、誰でも簡単にネットショップを開設(商品登録も含む)ができるという点をより重視している点です。一方でフリープランでの手数料は5%と比較的高めなので、ある程度の規模感を見込める場合は有料プランか他社サービスを検討した方が良いかと思います。
個人でもできる商品の仕入れ方法
ネットショップで商品を仕入れる方法にはいくつかありますが、一般的な手法としては、以下のようなものがあります。
- メーカーや卸売業者から直接購入する: 自分が販売したい商品のメーカーや卸売業者に直接連絡をし、商品を購入する方法です。
- 代理店を通じて購入する: 代理店は、複数のメーカーや卸売業者から商品を購入し、小規模な店舗やネットショップ向けに販売することができます。
- 海外からの仕入れ: 海外からの商品を購入するためには、通貨や調達能力、物流などに関する知識が必要ですが、様々な商品を手軽に購入することができます。
- オークションサイトから購入する: オークションサイト上で商品を入札し、落札した商品を購入する方法です。
- 仕入れ代行業者を利用する: 仕入れ代行業者は、お客様の要求に応じて、商品の調達、検品、配送までを一括で行ってくれるサービスを提供しています。
上記の方法は一般的なものであり、自分に合った方法を選んで実行することが重要です。また、仕入れ先や商品によっては、特別な手順や手数料などがかかる場合がありますので、事前に調べておくことが必要です。
なお、仕入れについての詳細は「個人開業のネットショップの仕入れはどうすればいい?その方法を解説」にて紹介していますので、ぜひご参照ください。
送料の設定はネットショップの売上を左右する
ネットショップ販売を始めるときに必ず決めなければいけないのが送料です。送料設定は配送パターンを踏まえると以下の5つに分けられます。
- 送料無料
- 全国一律料金
- 一定額以上送料無料
- 配送先別の送料設定
- 発送方法別の送料設定