猛暑で「出荷が止まる」EC物流リスク|熱中症対策義務化2年目に委託先で見るべき点
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「注文は入っているのに、出荷が追いつかない」——2026年の夏、EC事業者を悩ませているのは需要ではなく、猛暑による出荷現場の失速です。運輸・倉庫業では半数以上が猛暑で業務に支障が出たと回答し、2025年6月からは職場の熱中症対策が事業者の義務になりました。本記事では、猛暑が出荷を止める仕組みと、自社倉庫・発送代行のどちらを使う場合でも「止まらない出荷」を保つために確認すべきポイントを整理します。
2026年夏、猛暑が「出荷」を止めるという新しいリスク
これまでEC物流で「夏のリスク」といえば、チョコレートやサプリなど常温品の品質劣化が主な論点でした。しかし2026年の夏に浮上しているのは、それ以前の問題——倉庫で働く人が暑さで動けなくなり、出荷そのものが遅れるという供給側のリスクです。商品が無事でも、出荷が止まれば売上は立ちません。
運輸・倉庫の54.7%が「業務に支障」——数字で見る現実
物流専門メディアの調査では、猛暑がすでに現場の生産性を削っている実態が示されています。単なる体感ではなく、事業活動として数値化されている点が重要です。
運輸・倉庫業では54.7%が「猛暑によって業務に支障が出た」と回答し、荷主に対して納期や作業時間への協力を求める声も出ている。
半数を超える事業者が影響を受けているということは、猛暑は一部の倉庫だけの問題ではなく、物流ネットワーク全体の共通課題だということです。EC事業者にとっては、自社が委託している倉庫も例外ではないと考えるのが自然でしょう。宅配の現場でも同様で、ドライバー不足と配送遅延が続くなかに猛暑が重なれば、ラストワンマイルの遅れはさらに広がります。
熱中症対策は2025年6月から「義務」になった
背景には制度の変化もあります。改正労働安全衛生規則により、2025年6月1日から職場の熱中症対策が事業者の義務となりました。暑さ指数(WBGT)28℃以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業が見込まれる場合が対象です。屋外だけでなく、空調が効きにくい屋内の常温倉庫も対象に含まれる点がEC物流にとって見落としやすいところです。
事業者に求められるのは、体調不良を早期に見つける体制の整備、重篤化を防ぐための対応手順の作成、そして作業者への周知の3点です。これは「やった方がよい」推奨ではなく、対応を怠れば罰則の対象となりうる義務です。つまり倉庫運営者は、暑さのなかで「人を守ること」と「出荷を止めないこと」を同時に成立させる設計を求められるようになりました。この構造を図にすると次のとおりです。
なぜ「常温倉庫」ほど夏に弱いのか
猛暑に弱いのは、実は屋外よりも屋内の常温倉庫かもしれません。EC物流の多くは冷蔵・冷凍ではなく常温での保管・出荷で成り立っており、そこには空調のジレンマが潜んでいます。
庫内温度は外気を超える——常温品と作業者の二重リスク
天井が高く開口部の多い大型倉庫は、全体を冷房で一定温度に保つのが難しく、直射日光や機器の発熱で庫内が外気温を上回ることも珍しくありません。ここで二つのリスクが同時に立ち上がります。ひとつは温度管理が必要な商材の品質劣化、もうひとつは作業者の熱中症です。物流大手も、この夏に向けて現場を止めないための対策を打ち出しています。
佐川急便は、冷却グッズや空調ウェアの支給、休憩・水分補給の徹底など、働く人を守りながら「物流を止めない」ための熱中症対策を公表した。
大手がここまで踏み込むのは、対策なしでは現場が回らないと判断しているからです。保管設計や設備投資の余力がある大手に対し、中小の倉庫や自社出荷の現場ほど、この夏の備えに差が出やすいと言えます。
出荷が遅れると何が起きるか
出荷の遅れは、単なる「1日の遅延」では終わりません。出荷リードタイムが延びると、モールの配送品質指標が下がり、レビューやショップ評価に響きます。さらに猛暑日は宅配側の集荷・配送も遅れがちで、倉庫の遅れと配送の遅れが積み重なります。焦って出荷を急げば検品が甘くなり、誤出荷や再送というコストも発生します。夏の出荷停止は、売上機会の損失と顧客体験の低下を同時に招くのです。こうした損失を見える化するには、物流コストとKPIの可視化が出発点になります。
具体的に想像してみましょう。1日あたり200件を出荷しているショップで、猛暑による休憩増と人員不足で出荷能力が2割落ちたとします。1日40件が翌日以降に繰り越され、それが数日続けば数百件の遅延が積み上がります。夏のギフトやセール需要が重なる時期であれば、遅延は雪だるま式に膨らみ、当日出荷を前提にしていた広告やモール施策の効果も削がれてしまいます。猛暑対策は「福利厚生」ではなく、売上と直結した出荷能力の維持策だと捉える必要があります。出荷件数の増減にどう備えるかは、フルフィルメントの全体設計のなかで考えると整理しやすくなります。
委託先で確認すべき「暑熱レジリエンス」5項目
ここからは実務です。すでに発送代行を利用している、あるいは検討しているEC事業者が、委託先の「暑さに強い出荷体制(暑熱レジリエンス)」を見極めるための確認項目を整理します。ポイントは、人を守る備えと出荷を止めない仕組みの両輪がそろっているかです。
①作業環境の整備(空調・休憩・教育)
第一に、作業者を守る環境が整っているかです。次の点を確認しましょう。
- 作業エリアの温度対策——全体空調が難しくても、スポットクーラーや大型送風機、遮熱対策で作業ゾーンの温度を下げているか。
- 休憩と水分補給の運用——涼しい休憩場所があり、こまめな休憩・給水がルール化されているか。
- 教育と体制——熱中症の初期症状の周知や、体調不良を早期に見つける体制が整備されているか(義務化への対応状況)。
②稼働継続の仕組み(自動化・シフト・平準化)
第二に、暑さのなかでも出荷量を維持する仕組みです。作業を機械が肩代わりする度合いが高いほど、人の負担と稼働の変動は小さくなります。物流の自動化の観点では、AMR(自律走行搬送ロボット)による歩行の削減、自動仕分け・自動封緘による省人化が、猛暑下の作業負荷を直接下げます。加えて、出荷を朝の涼しい時間に前倒しする運用や、出荷波動の平準化ができるかも重要です。これらを2軸で整理すると、委託先の位置づけが見えてきます。
③〜⑤リスク分散・情報連携・実績
残る3項目も押さえておきましょう。③配送キャリアの分散——ヤマト運輸・佐川急便など複数キャリアを使い分け、1社の遅延に引きずられない体制か。④出荷情報の連携——遅延の兆候を早く把握できるよう、出荷ステータスがOMSやカートと連携しているか。⑤繁忙期・猛暑期の実績——過去のピーク期に出荷を止めずに乗り切った実績があるか。自社倉庫と発送代行では、これらの備えの水準が変わります。特に⑤の「実績」は言葉だけでは判断しづらいため、可能であれば繁忙期の当日出荷率や遅延の発生状況といった物流KPIを数字で示してもらうと、暑さに強い体制かどうかを客観的に見極められます。「猛暑でも止められない」という前提で運営してきた事業者ほど、こうした数値を持っているものです。
| 比較軸 | 自社出荷・小規模倉庫 | 自動化された発送代行 |
|---|---|---|
| 作業環境 | 空調投資の余力が限られやすい | スポット冷房・送風・休憩運用を整備 |
| 省人化 | 人手依存で猛暑の影響を受けやすい | AMR・自動仕分けで作業負荷を軽減 |
| 波動対応 | 人員増が難しく遅延しやすい | 平準化・シフトで出荷量を維持 |
| キャリア | 1社依存になりがち | ヤマト・佐川の複数キャリア |
※ STOCKCREWは常温での保管・出荷に対応し、日本郵便は出荷配送手段として非対応(2026年時点、出荷はヤマト運輸・佐川急便が中心)。冷蔵・冷凍の保管配送には対応していません。
自社出荷の事業者が今夏すぐできる対策
「委託はまだ先」という自社出荷の事業者も、この夏を乗り切るためにできることがあります。自社発送のコストと稼働の両面から、負荷を下げる工夫を重ねましょう。
出荷の前倒し・波動の平準化
まずは作業を涼しい時間帯に寄せることです。朝のうちにピッキングと梱包を進め、日中の最も暑い時間の作業量を減らします。セールやキャンペーンの出荷が集中しないよう、受注の締め時間や発送日を調整して1日の出荷量をならすことも有効です。物流の2026年問題で人手が細るなか、猛暑期の無理な稼働は事故と品質低下の両方を招きます。国も物流効率化の施策を進めており、労働環境の改善と輸送力の確保は表裏一体の課題とされています。
委託という選択肢を持っておく
それでも出荷が回らなくなる前に、外部委託という選択肢を検討しておく価値があります。自社倉庫と発送代行の比較では、月間数百件を超えたあたりから外注のメリットが出やすいとされます。有事に物流を止めない備えという意味では、大手物流各社が進めるBCP連携や、物流BCPの考え方も参考になります。猛暑もまた、地震や災害と並ぶ「出荷停止リスク」のひとつとして設計に組み込む時代になりました。STOCKCREWの倉庫・設備では、AMRや自動仕分けによる省人化で作業負荷を抑えています。
まとめ:猛暑を「止まらない出荷」の設計で乗り切る
2026年の夏、猛暑はEC物流にとって「商品を守る」課題から「出荷を止めない」課題へと広がりました。運輸・倉庫の半数超が業務への支障を訴え、熱中症対策は事業者の義務になっています。重要なのは、人を守る備え(空調・休憩・教育)と出荷を止めない仕組み(自動化・シフト・平準化)の両輪を、自社でも委託先でも確認することです。発送代行の全体像は発送代行の仕組みと選び方で、STOCKCREWのサービス内容はサービス全体像で確認できます。自社の出荷体制に不安があれば、まずはお問い合わせや資料ダウンロードで、猛暑でも止まらない物流の選択肢を確かめてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 猛暑で本当にEC出荷は遅れるのですか?
運輸・倉庫業では54.7%が猛暑で業務に支障が出たと回答しており、出荷遅延は現実のリスクです。作業者の休憩増による稼働時間の減少や、宅配側の遅延が重なることで、通常より出荷リードタイムが延びる可能性があります。
Q. 熱中症対策の義務化は倉庫も対象ですか?
対象です。2025年6月施行の改正労働安全衛生規則により、WBGT28℃以上または気温31℃以上で一定時間以上の作業が見込まれる場合、屋内の常温倉庫も含めて事業者に予防措置が義務づけられました。体制整備・手順作成・作業者への周知が求められます。
Q. 常温倉庫と冷蔵倉庫では夏のリスクは違いますか?
常温倉庫は全体空調が効きにくく、庫内が外気温を上回ることもあります。そのため常温品でも品質劣化と作業者の熱中症という二重のリスクが生じます。冷蔵・冷凍はSTOCKCREWでは対応しておらず、常温での保管・出荷が前提です。
Q. 発送代行に委託すれば猛暑の出荷停止は避けられますか?
委託先の備え次第です。空調や休憩などの作業環境と、AMRなどの自動化・シフト・出荷平準化の仕組みが両立している事業者ほど、猛暑でも出荷を維持しやすくなります。過去の繁忙期に止めずに乗り切った実績を確認するとよいでしょう。
Q. 自社出荷のままできる猛暑対策はありますか?
あります。ピッキングや梱包を朝の涼しい時間に前倒しし、受注締めや発送日の調整で1日の出荷量を平準化することが有効です。それでも回らなくなる前に、外部委託という選択肢を持っておくとリスクを分散できます。
この記事の監修者
北原一樹
株式会社KEYCREW オペレーション部長。大手物流会社にて現場担当からセンター長を経て、営業・管理職を12年間歴任。物流業界での経験は24年に及ぶ。大規模顧客の初のEC・DCが併設された10,000坪規模の大型倉庫の立ち上げを主導した実績を持ち、月間100Mの赤字を抱えていた物流センターをわずか3か月で黒字化に転換させた。現在はSTOCKCREWにおいて部門管理・各拠点の収支管理・業務改善を統括。「現地・現物」「数字で現場を見る」「何事にも基準を作る」を信条に、年間5千万点の入出荷を支える高品質な物流オペレーションを実現している。