消費者庁のネット監視で健康食品117事業者・126商品に改善指導|モール運営者にも協力依頼、EC表示の点検項目
- EC・物流インサイト
この記事は約14分で読めます
サプリメントの商品ページに「脂肪燃焼」「腸内環境を整える」と書いていないでしょうか。2026年9月4日、消費者庁はインターネット上の健康食品等の表示に対する監視結果を公表しました。同庁は7月にも食品表示の夏季一斉取り締まりを実施しており、表示への監視は年間を通して続いています。令和8年4月から6月までの3か月間で、117事業者による126商品に改善指導が入っています。しかも指導は事業者だけで終わらず、出店先のモール運営事業者にも通知されます。この記事では、指導の根拠と商品区分別の内訳を確認したうえで、EC事業者が自社のどこを点検すべきかを具体的に整理します。健康食品を扱う物流面の要件は発送代行完全ガイドとあわせてご覧いただくと全体像がつかめます。
消費者庁が令和8年4〜6月のネット監視結果を公表した
消費者庁は健康食品等の広告表示について、継続的なインターネット監視を実施しています。今回公表されたのは令和8年4月から6月までの分です。
117 事業者による 126 商品について、健康増進法第 65 条第1項の規定に違反するおそれのある文言等を含む表示を行っていた
出典:【News Release PDF】インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導について(令和8年4月~6月)
監視の方法は検索エンジンでの検索と目視確認
公表資料によれば、監視は一般的な検索エンジンでキーワード検索し、検索された商品のサイトを目視で確認するという方法で行われています。特別なクローラーや通報だけを起点にしているわけではありません。つまり、検索して上位に出る商品ページほど目に触れやすいということになります。SEOで露出を伸ばしている商品ほど、表示の精度が問われる構造です。
根拠となるのは健康増進法65条1項
指導の根拠は健康増進法第65条第1項です。同項は、食品として販売に供する物について広告その他の表示をするとき、健康の保持増進の効果等について著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させるような表示をしてはならないと定めています。違反した場合、同法66条により内閣総理大臣または都道府県知事が必要な措置をとるべき旨の勧告を行うことができ、正当な理由なく勧告に従わないときは命令に進みます。
今回の対象は勧告ではなく、その手前の改善指導です。とはいえ、同じ表示を続ければ次の段階に進む余地があるという構造は押さえておく必要があります。景品表示法の側面から表示を点検する考え方は消費者庁が環境ラベルの景表法上の考え方を公表でも扱っています。
商品区分別の内訳|指導の4分の3は「いわゆる健康食品」
126商品の内訳を見ると、対象は錠剤やカプセルだけではありません。生鮮食品や飲料も含まれています。
| 商品区分 | 商品数 | 指摘された表示の例 |
|---|---|---|
| いわゆる健康食品(カプセル・錠剤・顆粒状等) | 95商品 | ダイエット、脂肪燃焼、高血圧予防、免疫力向上、不眠改善、美肌形成 ほか |
| 加工食品(農産加工品等) | 23商品 | 花粉症対策、アレルギー症状抑制、血液サラサラ、腸内環境改善 ほか |
| 飲料等(茶・コーヒー・飲料水) | 5商品 | 血行促進、代謝アップ、動脈硬化予防、集中力向上 ほか |
| 生鮮食品(農産物・水産物) | 3商品 | 抗酸化作用、疲労回復、老化防止、肌のシミ・シワの予防 |
表1:令和8年4〜6月の改善指導の商品区分別内訳(消費者庁公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
錠剤・カプセル形状が全体の約75%を占める
126商品のうち95商品、およそ4分の3が「いわゆる健康食品」に分類される形状のものでした。錠剤やカプセルの形をしていると、消費者が医薬品的な効果を期待しやすいという前提があるため、表現の許容範囲が相対的に狭くなります。定期購入モデルで販売されることも多く、LPや同梱物での訴求が重なりやすい領域です。この商材の物流面の要件は健康食品・サプリメントECの発送代行選びとサプリメントEC×発送代行の費用と業者選び方で扱っています。
普通の食品でも対象になる
見落としやすいのが、生鮮食品と加工食品です。野菜や水産物に「抗酸化作用」「疲労回復」と書けば、それも健康増進法65条1項の射程に入ります。産地直送で健康価値を訴えたい事業者は特に注意が必要です。食品を扱う物流側の制約については食品ECの発送代行と温度帯別物流の実務ガイドにまとめています。なおSTOCKCREWが取り扱えるのは常温の食品のみで、冷蔵・冷凍には対応していません。医薬品も取り扱いの対象外です。
指導は出店先のモール運営事業者にも通知される
今回の公表でEC事業者が最も気にすべきなのは、指導の届き先です。消費者庁は、指導対象の事業者がショッピングモールに出店している場合、出店するモール運営事業者にも指導した旨を通知し、表示の適正化について協力を依頼しているとしています。
指導は自社だけの問題として閉じない
つまり、行政から直接文書が届くだけでなく、楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングといった出店先にも情報が渡るということです。モール側は自主的な規約運用として、商品ページの修正要請や掲載停止といった措置を取りうる立場にあります。行政処分に至らない段階でも、販売チャネル側で先に影響が出る可能性があるという点が実務上の要点です。
モール運営事業者が行政の要請にどれだけ速く反応するかは、製品安全の分野で数字が出ています。製品安全誓約の枠組みでは、モール各社が削除要請から短期間で出品削除に対応している状況が公表されています。詳しくは製品安全誓約のKPI速報とモールの出品削除で扱っており、原資料は製品安全誓約(日本国)重要業績評価指標(KPI)令和8年実施分から確認できます。
複数モールに出している場合は影響が横に広がる
同じ商品説明文を複数のモールに展開している事業者は少なくありません。1つのモールで指摘された表現は、他のモールにもそのまま載っている可能性が高いということです。修正するときは、チャネルを横断して一括で直すことを前提に作業を組んでください。複数モール運営の管理設計は複数ECモール同時出店の物流一元管理と在庫配分設計、モールごとの特性はECモール5社の費用・物流サービスを徹底比較で整理しています。楽天市場での運用体制を見直すならRSLとSTOCKCREWを徹底比較、AmazonでFBAと外部倉庫のどちらに置くかはFBA vs 外部発送代行を選ぶ判断基準とFBAから発送代行への移行ガイド、Yahoo!ショッピングの要件はYahoo!ショッピング×発送代行の選び方が判断材料になります。出荷の遅れは表示以前に評価へ響くため、指摘対応で商品ページを止めるあいだも出荷体制は動かせる状態にしておいてください。
商品情報を複数チャネルに配信する仕組みを持っているなら、修正の反映も速くなります。CROSS MALL×発送代行の連携ガイドやGoQSystem×発送代行の連携設定と活用ガイドで扱っている一元管理の考え方が効いてきます。
前年度は589事業者・641商品|四半期ごとの定点監視である
この監視は一度きりの取り締まりではありません。四半期ごとに実施され、結果が継続して公表されています。令和7年度の実績を並べると、規模の感覚がつかめます。
| 監視期間 | 指導した事業者数 | 指導した商品数 |
|---|---|---|
| 令和7年4月〜6月 | 139 | 140 |
| 令和7年7月〜9月 | 142 | 155 |
| 令和7年10月〜12月 | 152 | 170 |
| 令和8年1月〜3月 | 156 | 176 |
| 令和7年度 合計 | 589 | 641 |
| 令和8年4月〜6月 | 117 | 126 |
表2:インターネット監視における改善指導件数の推移(消費者庁公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
年間で600件規模の事業者が指導を受けている
令和7年度は1年で589事業者・641商品が対象になりました。四半期あたり140から156事業者という水準で、四半期を追うごとに件数が増えています。健康食品を扱うEC事業者にとって、これは「たまたま運が悪ければ当たる」規模ではありません。継続的に商品ページを出している以上、いつ検索に拾われてもおかしくない前提で表示を設計する必要があります。
令和8年4〜6月は前年同期を下回った
今回の117事業者・126商品は、前年同期(139事業者・140商品)を下回っています。ただし前年度の四半期はいずれも139件以上で推移していたため、1四半期の数字だけで傾向を判断するのは早計です。次の四半期の公表とあわせて見るのが妥当なところです。
EC事業者が点検すべき5つの接点
表示の点検というと商品ページだけを見がちですが、消費者が目にする接点はそれだけではありません。物流側から出ていく紙も表示に含まれます。
- モールの商品ページと自社サイト——商品名、キャッチコピー、説明文、画像内の文字まで含めて確認します。画像に焼き込んだ文字は検索では拾いにくくても、目視の監視では見えます。
- ランディングページと広告文——定期購入の申込LPは訴求が強くなりやすい箇所です。運用型広告の見出しも対象です。
- 同梱物とパンフレット——商品に同梱するチラシや冊子も表示です。倉庫に預けている在庫の同梱物は、修正時に差し替えが必要になります。
- メールマガジンとSNS投稿——ステルスマーケティング規制と重なる領域です。投稿の転載についての整理はECモール商品ページのSNS投稿転載もステマ規制の対象ににまとめました。
- レビュー・お客様の声の引用——第三者の言葉であっても、事業者が広告に載せれば事業者の表示として扱われます。
同梱物の差し替えは在庫の場所で難易度が変わる
商品ページの文言はすぐ直せますが、倉庫に置いてある同梱物は物理的に入れ替える必要があります。旧版のチラシが何枚残っているか、いつまで出荷に混ざるかを把握できていないと、修正したつもりで旧表現が出荷され続けます。同梱作業の実務は発送代行の梱包サービスと流通加工の実務解説で扱っており、資材の在庫管理の考え方はEC事業者のための商品管理実務ガイドが土台になります。
返品・解約条件の表示もあわせて点検する
健康食品は定期購入との相性が高く、解約条件をめぐるトラブルが起きやすい商材でもあります。表示を見直すタイミングで、特定商取引法上の返品特約の記載もあわせて確認しておくと二度手間になりません。返品特約の基本的な考え方は、消費者庁の特定商取引法ガイドに整理されています。
通信販売では、商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。もっとも、事業者が広告であらかじめ返品特約を表示していた場合は、特約によります
広告の表示事項をどこまで省略できるかは通信販売広告Q&A(Q15〜Q19・住所/氏名/電話番号の表示と省略)に整理があります。特定商取引法をめぐる直近の議論はチャット勧誘に電話勧誘並みの規律へ、特商法の中間取りまとめ案で扱っています。なおSTOCKCREWが対応するのは物流起因の返送(不在・住所不明等)で、消費者都合の返品処理は受託していません。
化粧品を併売している場合は化粧品ECの発送代行実務ガイドと業者選定の基準、BtoBや定期便の出荷設計はサプリメントECのBtoB・定期便出荷ガイドが対応します。表示だけでなく在庫や出荷の設計まで含めて見直すならEC物流完全ガイドが全体の地図になります。
まとめ:表示の点検は商品ページだけでは終わらない
消費者庁は令和8年4月から6月の監視で、健康食品等を販売する117事業者・126商品に改善指導を行いました。うち95商品が錠剤・カプセル等の「いわゆる健康食品」で、生鮮食品や飲料も対象になっています。根拠は健康増進法65条1項で、勧告・命令に進む余地を持つ規定です。
実務上の要点は2つです。1つは、監視が検索エンジンでの検索と目視という素朴な方法で行われていること。露出が大きい商品ほど当たりやすくなります。もう1つは、指導が出店先のモール運営事業者にも通知されること。行政対応の前にチャネル側で影響が出る可能性があります。
点検の対象は商品ページ、LP・広告、同梱物、メールとSNS、レビュー引用の5つです。このうち同梱物だけは倉庫の在庫を物理的に入れ替える必要があり、対応に時間がかかります。旧版のチラシが出荷に混ざり続けないよう、在庫数と切り替え日を押さえておいてください。物流面の体制づくりは発送代行完全ガイドとSTOCKCREW完全ガイドにまとめています。ネットショップ全体の運営設計はネットショップの始め方もあわせてお使いください。
同梱物の切り替えや在庫の取り扱いについてのご相談はお問い合わせから、サービスの詳細をまとめた資料は資料ダウンロードからご覧いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 消費者庁のネット監視ではどのような表示が指摘されましたか?
A. いわゆる健康食品ではダイエット、脂肪燃焼、高血圧予防、免疫力向上、不眠改善、美肌形成などの効果を標ぼうする表示が挙げられています。加工食品では花粉症対策やアレルギー症状抑制、生鮮食品では抗酸化作用や疲労回復といった表示が対象になりました。
Q. 改善指導の根拠となる法律は何ですか?
A. 健康増進法第65条第1項です。食品として販売に供する物について広告その他の表示をするとき、健康の保持増進の効果等について著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示をしてはならないと定めています。違反時は同法66条により勧告、さらに命令へ進む枠組みです。
Q. 指導を受けると出店しているモールにも伝わりますか?
A. 伝わります。消費者庁は、指導対象の事業者がショッピングモールに出店している場合、そのモール運営事業者に対しても指導した旨を通知し、表示の適正化について協力を依頼していると公表しています。行政対応の前に販売チャネル側で影響が出る可能性があります。
Q. 監視はどのくらいの頻度で行われていますか?
A. 四半期ごとに実施され、結果が公表されています。令和7年度は年間で589事業者・641商品が改善指導の対象となり、四半期あたり139から156事業者という水準で推移しました。令和8年4月から6月は117事業者・126商品でした。
Q. 商品ページ以外で点検すべき箇所はどこですか?
A. ランディングページと広告文、商品に同梱するチラシや冊子、メールマガジンとSNS投稿、レビューやお客様の声の引用が対象になります。特に同梱物は倉庫の在庫を物理的に入れ替える必要があるため、旧版が出荷に混ざらないよう残数と切り替え日の管理が必要です。
Q. 健康食品の発送代行を依頼するときの注意点はありますか?
A. 温度帯と取扱品目の確認が先に必要です。STOCKCREWは常温のみの対応で、冷蔵・冷凍および医薬品は取り扱いの対象外です。医薬部外品・化粧品・サプリメントは対応しています。同梱物の差し替えに対応できるか、賞味期限や製造ロットの管理ができるかもあわせて確認してください。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。