危害・危険情報15,899件の1位は化粧品、前年度比5.3%増|化粧品・健康食品ECのロット管理と回収の備え
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自社の化粧品やサプリで「使ったら肌が荒れた」という連絡が入ったとき、同じロットをどの購入者に送ったかを、その日のうちに一覧にできるでしょうか。国民生活センターは2026年9月16日、2025年度の危害・危険情報をまとめた資料を公表しました。件数は15,899件で前年度比5.3%増、そのうち危害情報の上位3商品は化粧品・医療サービス・健康食品です。本記事では、この統計をEC事業者の物流側の点検リストに翻訳します。出荷体制そのものの考え方は発送代行完全ガイドが土台になります。
2025年度の危害・危険情報は15,899件、5.3%増
「危害情報」と「危険情報」は別物として数えられている
まず用語を整理します。国民生活センターのいう危害・危険情報は、商品・役務・設備に関連して実際にけがや病気が生じた「危害情報」と、けがには至っていないがそのおそれがある「危険情報」を合わせたものです。前者は事故が起きた後の話、後者は事故の一歩手前の話であり、EC事業者にとっての意味はまったく違います。危険情報は「まだ間に合う」段階の声が可視化されたものだと捉えると、読み方が変わります。
全国の消費生活センター等から収集した「危害・危険情報」は15,899件で、対前年度比でみると5.3%増となりました。
危害情報13,432件の上位3つは化粧品・医療サービス・健康食品
内訳を見ると、危害情報は13,432件で、上位3商品・役務等は化粧品、医療サービス、健康食品でした。前年度から624件の増加で、増加分には医療サービスの184件増が効いています。被害を受けた人の性別は女性が7割以上を占めました。ECの商材構成で言えば、化粧品と健康食品はまさに通販で伸びてきたカテゴリであり、統計の上位と自社の主力商材が重なっている事業者は少なくないはずです。
危険情報2,467件は生活まわりに寄っている
一方の危険情報は2,467件で、上位は四輪自動車、調理食品、賃貸アパート・マンションでした。前年度からは172件の増加です。こちらはECの主力カテゴリとは少しずれます。つまりECが向き合うべきなのは主に危害情報の側だと、この数字は示しています。なお、このデータは2026年5月末日までにPIO-NETへ登録された分が対象で、消費生活センター等からの経由相談は除かれています。
化粧品と健康食品がECの物流課題になる理由
相談は「商品名」ではなく「体に起きたこと」から始まる
危害情報の相談は、消費者が「この商品が不良でした」と申し出るところから始まるとは限りません。多くは「使ったら湿疹が出た」「飲んだら気分が悪くなった」という体の変化が先にあり、そこから商品が特定されていきます。つまり事業者側は、どの商品のどのロットが問題なのかを自分で絞り込む必要があるということです。ここで在庫と出荷の記録がどこまで細かいかが効いてきます。化粧品ECの運用全体は化粧品ECの発送代行実務ガイドと業者選定の基準に整理しています。
STOCKCREWが扱えるのは医薬部外品・化粧品まで
前提として、発送代行に預けられる範囲も確認しておきます。STOCKCREWでは医薬品は取り扱えません。一方で医薬部外品と化粧品は対応可能で、サプリメントも同様です。薬機法まわりの商材をまとめて「全部だめ」と考えている方が時々いますが、線はここに引かれています。温度帯については冷蔵・冷凍に対応しておらず常温のみのため、要冷蔵の美容液などは別の選択肢を検討することになります。サービスの範囲はSTOCKCREW完全ガイドで確認できます。
女性が7割以上という構成が示すもの
危害情報の被害者は女性が7割以上でした。化粧品・健康食品の購買層と重なる構成であり、統計の山と自社の顧客層の山が同じ形をしている可能性が高いことを意味します。自社には相談が来ていないから無関係、とは言い切れません。消費生活センターに入った声は事業者に直接届かないまま統計に計上されるためです。なお製品安全の枠組みそのものは動きが続いており、2026年9月には製品安全誓約の対象に労働安全衛生法の保護具9品目が追加されています。誓約の取組状況は重要業績評価指標(KPI)として月次で公表されており、モールからの出品削除がどの程度動いているかを追えます。
製品安全に係る法的枠組みを超えた「官民協働の自主的な取組」です。
回収が必要になった日に問われること
「どのロットを、いつ、誰に送ったか」に答えられるか
回収や自主点検の判断が必要になったとき、最初に求められるのは対象範囲の特定です。全出荷分を対象にすれば確実ですが、費用も信用への影響も跳ね上がります。逆に対象を絞れるかどうかは、出荷データにロット情報が残っているかどうかだけで決まります。ここを設計していない場合、実務上は「その商品を買った全員」に連絡するしかなくなります。返品・返送が発生したあとの流れはEC返品物流(リバースロジスティクス)ガイド【2026年版】にまとめています。
出荷検品でロットNoをスキャンする仕組み
STOCKCREWでは、商品マスタでロット管理を有効にした商品について、出荷検品時にロットNoをスキャンし、どのロットがどの出荷に使われたかを記録しています。在庫に存在しないロットNoをスキャンした場合は検品エラーとなり発送できません。作業者の注意力ではなく仕組みで止まる形になっているため、後からデータを突き合わせたときに欠けが出にくくなります。出荷に使われたロットは出荷済み情報のCSVエクスポートで確認できますが、既定のエクスポート項目には「ロットNo」が含まれていないため、事前にCSVエクスポート設定で項目を追加しておく必要があります。
| 問われること | 記録がない場合 | ロット管理がある場合 |
|---|---|---|
| 対象範囲の特定 | 該当商品の全購入者 | 該当ロットの購入者のみ |
| 連絡の通数 | 販売開始からの累計 | 当該ロットの出荷件数 |
| 在庫側の止め方 | SKU単位で全止め | ロット単位で出荷停止 |
| 仕入先への確認 | 製造時期が絞れない | 製造時期が特定できる |
ロット管理を後から有効にしたときの注意
すでに在庫がある状態で商品マスタのロット管理を後から有効にすることもできます。ただしロット管理の有無で在庫の引き当て順が変わることはありません。ロット管理と引当ロジックは連動していないため、「古いロットから自動的に出ていくはず」という前提で運用すると想定とずれます。先入先出を徹底したい商材では、引当の考え方そのものを別途詰めておく必要があります。在庫データの精度を保つ方法はEC倉庫の棚卸の進め方と在庫差異の潰し方【2026年版】で扱っています。
入荷の時点で、回収できるかどうかが決まる
ロットNoは入荷予定登録のときに入れる
ロット管理で見落とされがちなのが、記録の起点は出荷ではなく入荷だという点です。入荷予定を登録する時点で商品明細内のロットNoを必ず入力しておかないと、出荷検品でスキャンする対象そのものが在庫に存在しません。なお前提として、商品にロットナンバーが記載されたバーコード等が印字されていることが必要です。ここはメーカー・OEM先との取り決めの話になるため、物流側だけでは完結しません。入荷から出荷までの流れ全体はEC物流完全ガイドに通しでまとめています。
受け入れ基準を決めておくと、後の判断が速くなる
入荷時点で決めておくと後が楽になる項目を整理します。
- ロットNoの表示場所——外装か個装か。個装にしかない場合、開封しないと確認できず入荷検品の工数が変わります。
- 使用期限・賞味期限の有無——期限がある商材は、ロットと期限を1対1で対応させておくと出荷停止の判断が一段速くなります。
- ロット混在の可否——同一SKUで複数ロットを同じロケーションに入れてよいか。混ぜない運用にすると保管効率は落ちますが、追跡は確実になります。
- 仕入先への連絡経路——製造ロットの照会を誰に、どの窓口で出すか。事故発生時に探し始めると数日を失います。
入荷ルールから外れた商品は返送になる
入荷のルールが適用できていない商品は倉庫内で滞留してしまうため、発送元へ返送する対応になります。ロットNoの記載漏れや事前登録なしの持ち込みは、単に手間が増えるだけでなく入庫自体が成立しません。ここは委託前に必ず擦り合わせておくポイントです。委託先を比較検討している段階であれば、発送代行の見積書を項目別に読み解く7つのチェックポイントで費目の切り方を揃えてから比べると判断しやすくなります。
連絡と返送の受け皿をどう設計するか
返送は「物流起因」と「消費者起因」で扱いが分かれる
商品が倉庫に戻ってくる経路は一つではありません。長期不在・受取拒否・住所不明などで配送会社から返送されてくるものと、購入者から返品として送られてくるものがあり、STOCKCREWではいずれも良品として在庫へ戻す作業に対応しています。一方で、返品を受け付けるかどうかの判断や返金といった購入者対応そのものは事業者側の仕事です。この線引きを曖昧にしたまま委託すると、事故対応の場面で誰も動かない時間が生まれます。返品の条件設計はEC返品ポリシーの書き方に整理しています。
着払いでは受け取れない
実務で事故になりやすいのがここです。着払いの返品は受け付けておらず、着払いで到着した商品は受取拒否となります。購入者に「そのまま送り返してください」と案内してしまうと、商品が宙に浮きます。回収の連絡文を用意するときは、送料の負担方法と送り状の書き方をセットで指定してください。返品処理そのものは倉庫到着後3営業日以内に完了し、在庫一覧に反映されます。なお返品情報は返品処理日から1年を過ぎると閲覧できなくなるため、長期の追跡が必要な案件は別途手元に控えを残す運用が要ります。
問い合わせ窓口と出荷データをつなぐ
危害の申し出は多くの場合、カスタマーサポートの窓口に最初に入ります。そこから出荷データへたどり着くまでの手数が多いほど初動が遅れます。受注番号から出荷ロットまで一気に引ける状態にしておくのが理想で、EC受注管理(OMS)と物流の連携ガイドやEC物流のAPI連携とCSV連携の違いが設計の参考になります。問い合わせ全体の捌き方はECカスタマーサポートのAI自動化実務ガイドにまとめています。
| 局面 | 事業者がやること | 発送代行側でできること |
|---|---|---|
| 申し出の受付 | 内容の聞き取り・記録 | — |
| 対象の特定 | ロットの絞り込み指示 | 出荷済み情報のロットNo抽出 |
| 出荷の停止 | 停止範囲の決定 | 該当在庫の出荷停止 |
| 回収の連絡 | 文面作成・送信 | — |
| 返送品の受け入れ | 返送条件の案内(着払い不可) | 受領・検品・在庫戻し |
まとめ:統計を自社の点検リストに変える
2025年度の危害・危険情報は15,899件で5.3%増、危害情報13,432件の1位は化粧品でした。数字そのものより、この構成が自社の商材と重なっているかどうかが読みどころです。重なっているなら、点検すべきは商品開発だけではありません。入荷時にロットNoを登録しているか、出荷検品でロットを記録しているか、出荷済み情報からロットNoを抽出できる設定になっているか——この3点が、回収が必要になった日に連絡する相手を「全購入者」にするか「該当ロットの購入者」にするかを分けます。あわせて、リチウムイオン電池のように保管・発送そのものに注意が要る商材や、海外仕入れで入荷が止まるリスクも、同じ在庫データの上で管理されます。
ロット管理を前提にした出荷体制を委託で組む場合の全体像は発送代行完全ガイドと物流完全ガイド2026年版に整理しています。自社の商材でどこまで対応できるかを確認したい場合はお問い合わせから、料金や運用の全体像を先に把握したい場合はサービス紹介資料をご利用ください。ネットショップ運営全体の設計はネットショップ運営完全ガイドが入口になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 危害情報と危険情報は何が違うのですか?
A. 危害情報は商品・役務・設備に関連して実際にけがや病気が生じたもの、危険情報はけがには至っていないがそのおそれがあるものです。2025年度は危害情報が13,432件、危険情報が2,467件で、合計15,899件でした。EC通販の主力カテゴリと重なるのは主に危害情報の側です。
Q. 化粧品や健康食品は発送代行に預けられますか?
A. STOCKCREWでは医薬部外品・化粧品・サプリメントに対応しています。医薬品は取り扱いできません。また冷蔵・冷凍には対応しておらず常温のみのため、要冷蔵の商材は別の選択肢の検討が必要です。
Q. ロット管理は後から有効にできますか?
A. すでに在庫がある状態でも、商品マスタの編集からロット管理を有効にできます。ただしロット管理の有無で在庫の引き当て順は変わりません。ロット管理と引当ロジックは連動していないため、先入先出を徹底したい場合は引当の考え方を別途整理してください。
Q. 出荷に使われたロットはどこで確認できますか?
A. 出荷済み情報をCSVエクスポートすると確認できます。ただし既定のエクスポート項目にロットNoは含まれていないため、事前にCSVエクスポート設定で項目を追加しておく必要があります。回収の連絡が必要になってから設定するのでは間に合いません。
Q. 購入者に着払いで返送してもらってもよいですか?
A. 着払いの返品は受け付けておらず、着払いで到着した商品は受取拒否となります。回収を案内する際は、送料の負担方法と送り状の書き方をあわせて指定してください。返品処理は倉庫到着後3営業日以内に完了し、在庫一覧に反映されます。
この記事の監修者
北原一樹
株式会社KEYCREW オペレーション部長。大手物流会社にて現場担当からセンター長を経て、営業・管理職を12年間歴任。物流業界での経験は24年に及ぶ。大規模顧客の初のEC・DCが併設された10,000坪規模の大型倉庫の立ち上げを主導した実績を持ち、月間100Mの赤字を抱えていた物流センターをわずか3か月で黒字化に転換させた。現在はSTOCKCREWにおいて部門管理・各拠点の収支管理・業務改善を統括。「現地・現物」「数字で現場を見る」「何事にも基準を作る」を信条に、年間5千万点の入出荷を支える高品質な物流オペレーションを実現している。