税関の輸入差止が上半期最高、点数は225.7%増の138万点|越境EC・海外仕入れで入荷が止まるリスク
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発注した商品が税関で止まると、在庫計画は根元から崩れます。財務省が2026年9月4日に公表した令和8年上半期の知的財産侵害物品の差止状況は、輸入差止件数が19,568件、差止点数が1,386,640点で、いずれも上半期として過去最高でした。点数は前年同期比225.7%増で、上半期としては初めて100万点を超えています。件数の伸びが12.6%にとどまっているのに点数が3倍を超えたということは、1回に止められるロットが大きくなっているという意味になります。この記事では数字を分解し、海外から仕入れるEC事業者が入荷リスクをどう織り込むかを整理します。倉庫に入ってからの費用構造は発送代行おすすめ25選にまとめています。
2026年上半期の差止状況|件数も点数も過去最高
全国の税関が差し止めた偽ブランド品などの実績が、2026年9月4日に速報として公表されました。上半期の実績公表は平成5年から続いており、今回で34回目にあたります。
輸入差止点数は1,386,640点で、前年同期と比べて225.7%増加し、上半期として初めて100万点を超え、過去最高となりました。
公表された2つの数字
| 指標 | 令和8年上半期 | 前年同期比 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 輸入差止件数 | 19,568件 | +12.6% | 上半期として過去最高 |
| 輸入差止点数 | 1,386,640点 | +225.7% | 上半期として初の100万点超・過去最高 |
表1:令和8年上半期の税関における知的財産侵害物品の差止状況(財務省の公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
「件数」と「点数」は別のものを数えている
この2つを混同すると読み違えます。公表資料の定義では、件数は侵害物品が含まれていた輸入申告または郵便物の数、点数は差し止めた物品そのものの数です。1件の輸入申告に20点入っていれば「1件20点」と数えます。つまり件数は止められた荷物の回数、点数は止められたモノの量を表しています。
速報値である点も押さえておく
今回の公表は速報です。確定値では数字が動く可能性があるため、社内資料に転記する場合は「令和8年上半期・速報」と併記しておいてください。統計の版を明示しておく習慣は、後から前提を確かめ直すときに効いてきます。あわせて、この数字は輸入の差止のみを集計したもので、輸出側の実績や通年の実績は別に公表される点も押さえておくと、社内で数字を引用するときの取り違えを防げます。
1件あたりの点数が約2.9倍に|差止が大口化している
件数と点数の伸び方が大きく違うので、割り算をしてみます。
逆算すると1件あたり約24.5点から約70.9点へ
- 今期は1,386,640点÷19,568件=約70.9点/件——差し止められた1回あたりの物品数です。
- 前年同期は約425,700点÷約17,400件=約24.5点/件——公表された増減率から割り戻した概算値です。
- 1件あたりは約2.9倍——止められる荷物1回あたりの規模が大きくなっています。
2と3はSTOCKCREWが公表値の増減率から割り戻した試算で、財務省が公表した数値ではありません。それでも方向は明確で、小口の個人輸入だけでなく、まとまったロットが止められている構図が読み取れます。
EC事業者にとって何が変わるか
まとまった数量が一度に止まるということは、1ロット丸ごと入荷しない事態が起こりうるということです。売れ筋を1つの仕入先に集中させていると、そのロットが止まった時点で欠品まで一直線になります。仕入れの分散については小ロット仕入れの探し方と物流コスト、国内調達への切り替えは問屋から仕入れる方法ガイドが参考にできます。
仕出国は中国が81.9%|どこから入ってくるか
仕出国(地域)別の差止件数も公表されています。構成は次のとおりです。
| 仕出国(地域) | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 中国 | 16,026件 | 81.9% |
| シンガポール | 1,027件 | 5.2% |
| ベトナム | 764件 | 3.9% |
表2:仕出国(地域)別の輸入差止件数 上位3カ国(財務省の公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
中国仕入れをしている事業者はどう受け止めるか
中国が8割を超えるという構成は、中国からの輸入そのものが問題という意味ではありません。取引量が圧倒的に多い以上、絶対数も大きくなります。ただし母数が大きいぶん、書類や商標の確認が甘いと当たる確率も上がるのは事実です。調達実務はアリババ・1688仕入れ実務ガイドや個人でできる中国仕入れサイト10選比較、輸送手配は中国輸入向けフォワーダー選定ガイドで整理しています。
個人輸入の枠組みでも止まる
件数は輸入申告だけでなく郵便物も数えます。小口で取り寄せたサンプルや、テスト販売用の少量仕入れも対象です。個人輸入の扱いはタオバオで個人輸入する方法、税制面の変更は個人輸入の免税特例が廃止へで扱いました。越境の取引環境そのものも動いており、海外プラットフォームへの消費税の納税義務とあわせて見ておく必要があります。
最多品目は「シール、ステッカー」|資材の輸入も止まる
品目別で輸入差止めが最も多かったのは「シール、ステッカー」でした。完成品ではなく、貼るものが1位という点に意味があります。
なぜラベルが最多になるのか
ブランドのロゴが入ったシールやタグは、それ単体で商標権を侵害します。無地の製品と侵害ラベルを別々に輸入し、国内で貼り合わせるという流れが想定される以上、ラベルの段階で止められることになります。EC事業者の実務に引き直すと、商品そのものだけでなく、同梱物やラベルの調達先も点検の対象だということです。
化粧品・食品・電池は安全面でも見られている
公表資料は、使用または摂取することで健康や安全を脅かす危険性のある「化粧品」「食品」「電池」などの差止めが続いていると指摘しています。これらは知的財産の観点と製品安全の観点の両方から見られる商材です。電池を含む商品の発送ルールはリチウムイオン電池を含む商品のEC発送ルールにまとめており、輸送段階でも別途の制約がかかります。
モール側の削除対応も速くなっている
水際で止められなかったものについても、販売面での監視は強まっています。製品安全誓約のKPI速報ではモール9社が要請から2営業日で出品を削除しており、警察庁と主要モールの不正取引情報の共有も始まりました。仕入れた商品に疑義があれば、入荷前に止まるか、出品後に消えるかのどちらかという環境になりつつあります。偽通販サイトへの注意喚起のように、正規の事業者が名前を使われる側に回るケースも増えています。
入荷が止まる前提で仕入れを設計する
差止の総量が増えている以上、確率はゼロにはなりません。止まらないようにする努力と、止まっても回るようにする備えの両方が要ります。
2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、26.1兆円(前年24.8兆円、前々年22.7兆円、前年比5.1%増)に拡大しています。また、2024年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前々年420.2兆円、前年比10.6%増)に増加しました。
市場が拡大すれば取引の総量も増え、水際でのチェック対象も増えます。取引が伸びている局面ほど、仕入れ側の管理が問われます。
リードタイムに差止リスクを織り込む
通関で止まった場合、確認や手続きに時間がかかります。売り切る予定日から逆算した最短のスケジュールだけで発注しないのが基本です。通関手続きの流れは通関とは?越境ECで必須の手続きの流れと必要書類と輸入通関手続きの流れと必要書類にまとめました。
書類と分類を先に固める
品目分類や申告内容の不備は、侵害の疑い以前に足止めの原因になります。分類はHSコードの調べ方ガイド、税額の見積もりはEC輸入の関税計算 実務ガイドが具体的です。個人輸入通関の手続き区分は税関「個人輸入通関手続」、商品ごとの輸出入手続きはJETRO「商品ごとの輸出入手続き」にまとまっています。
仕入先に確認しておく3つのこと
発注の前に、相手方へ書面で確認しておくと後の判断が速くなります。とくに新しい仕入先と取引を始めるときは、価格や納期より先にここを詰めておいてください。
| 確認する項目 | 聞き方の例 | 回答が曖昧なときの扱い |
|---|---|---|
| ブランド・商標の権利関係 | 誰の商標か、使用許諾はあるか | 発注を保留する |
| ラベル・タグの調達元 | 本体と同じ工場か、別調達か | 現物サンプルを取り寄せる |
| 製造元・工場の所在 | 実際に製造している工場はどこか | 取引量を絞って様子を見る |
| 過去の通関実績 | 日本向けの出荷実績があるか | 初回ロットを小さくする |
表3:新規の海外仕入先に確認しておく項目(STOCKCREW作成)
とくに2つ目のラベル・タグの調達元は、今回の統計で品目別1位が「シール、ステッカー」だったことを踏まえると優先度が上がります。本体は問題がなくても、あとから貼るものが別ルートで調達されているというケースは起こりえます。自社ブランドで作らせている場合の工場選定はOEM工場の選び方にまとめました。
在庫を1本のロットに賭けない
- 売れ筋は複数の仕入先を確保する——同じ商品を1つのルートだけに依存しない構えです。
- 入荷予定日ではなく着荷確認で在庫計上する——予定を在庫として扱うと、欠品の発見が遅れます。
- 止まったときの代替商品を決めておく——販売ページ側の差し替え手順まで含めて用意します。
在庫の持ち方そのものはEC在庫管理の基本と改善方法、関税や消費税の支払いを繰り延べる選択肢は保税倉庫とは?関税・消費税を繰り延べる仕組みで扱っています。越境の全体像は越境EC市場規模と商材別需要構造と越境EC個人事業主向けガイドにまとめました。
まとめ:止まるのは商品だけではない
令和8年上半期の輸入差止は、件数19,568件(+12.6%)、点数1,386,640点(+225.7%)で、いずれも上半期として過去最高でした。点数は初めて100万点を超えています。件数の伸びに対して点数の伸びが大きいことから、1件あたりの規模が約2.9倍に拡大しているという試算になります。仕出国別では中国が81.9%(16,026件)で最多、品目別では「シール、ステッカー」が最多でした。
読み取るべきは、止まるのが完成品だけではないという点です。ロゴ入りのラベルや同梱物も対象になるため、商品の調達先と同じ精度で資材の調達先も点検する必要があります。実務としては、リードタイムに余裕を持たせること、品目分類と書類を先に固めること、そして売れ筋を1本のロットに賭けないことの3点になります。入荷後の保管と出荷までを含めて体制を見直すなら発送代行おすすめ25選とSTOCKCREW完全ガイド、物流全体の設計はEC物流完全ガイドが出発点になります。自社の商材で試算したい場合はお問い合わせ、条件を先に確認したい場合はサービス資料のダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 令和8年上半期の輸入差止はどれくらいの規模でしたか?
A. 輸入差止件数が19,568件で前年同期比12.6%増、輸入差止点数が1,386,640点で同225.7%増でした。いずれも上半期として過去最高で、点数は上半期として初めて100万点を超えています。財務省が2026年9月4日に速報として公表したものです。
Q. 「差止件数」と「差止点数」は何が違うのですか?
A. 件数は侵害物品が含まれていた輸入申告または郵便物の数、点数は差し止めた物品そのものの数です。1件の輸入申告に20点の侵害物品が含まれていれば「1件20点」と数えます。件数は止められた回数、点数は止められた量を表していると考えてください。
Q. どの国からの輸入で差止が多いのですか?
A. 仕出国(地域)別の輸入差止件数では中国が16,026件で全体の81.9%を占め最多でした。次いでシンガポールが1,027件で5.2%、ベトナムが764件で3.9%です。取引量そのものが多い国ほど絶対数も大きくなる点は割り引いて読む必要があります。
Q. 差止が多い品目は何ですか?
A. 品目別では「シール、ステッカー」の輸入差止めが最多でした。あわせて、使用または摂取することで健康や安全を脅かす危険性のある「化粧品」「食品」「電池」などの差止めも続いていると公表資料に記載されています。
Q. ラベルやタグだけを輸入する場合も対象になりますか?
A. 品目別で「シール、ステッカー」が最多になっていることからも分かるとおり、ブランドのロゴが入ったシールやタグは単体で対象になります。商品本体だけでなく、同梱物やラベルの調達先も同じ精度で確認しておく必要があります。
Q. 海外仕入れをしているECは何から備えればよいですか?
A. 3点あります。通関で止まる可能性を見込んでリードタイムに余裕を持たせること、品目分類と申告書類を発注前に固めること、そして売れ筋商品を1つの仕入先・1つのロットに依存させないことです。入荷予定日ではなく着荷確認で在庫計上する運用も効きます。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。