「システム利用料」名目で一律1.1%を減額、公取委が勧告|EC事業者が委託先支払いから引いてはいけないもの
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支払明細に並んでいる控除項目を、最後に点検したのはいつでしょうか。公正取引委員会は2026年9月9日、委託先への代金から「システム利用料」の名目で例外なく一律1.1%を差し引いていた事業者に勧告を行いました。差し引かれていた金額は判明分だけで1億4,741万1,330円です。ポイントは、控除に名前が付いていても代金の減額は減額として扱われるという一点にあります。この記事では勧告の中身を確認し、EC事業者が委託先へ払うときに何を引いてよくて何を引けないのかを整理します。物流を外に出すときの費用構造は発送代行おすすめ25選にまとめています。
何が起きたのか|「システム利用料」の名目で一律1.1%を控除
公正取引委員会は2026年9月9日、株式会社トリドールホールディングスに対して勧告を行いました。卸売業者を介して受注者37名に食品の製造を委託し、その代金から一定率を差し引いていた事案です。
例外なく一律に当該代金の額に1.1パーセントを乗じて得た額を減じた
対象と金額
公表された事実関係を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年9月9日(公正取引委員会) |
| 対象となった取引 | 卸売業者を介した食品の製造委託 |
| 受注者の数 | 37名(下請事業者または中小受託事業者) |
| 期間 | 令和6年8月〜令和8年7月 |
| 控除の内容 | 「システム利用料」の名目で、代金の額に一律1.1%を乗じた額 |
| 判明している減額分 | 1億4,741万1,330円(令和6年8月〜令和7年12月分) |
表1:勧告の概要(公正取引委員会の公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
求められた対応
勧告では、受注者37名それぞれに対して、代金から減じた額を公正取引委員会の確認を得たうえで速やかに支払うことが求められています。あわせて、改正後の取適法第6条第2項に基づく遅延利息の支払いも対象に含まれました。返せば終わりではなく、時間の経過分まで負担するという構図です。
適用された条文は2本
期間が法改正をまたいでいるため、違反として挙げられた条文も2本になっています。改正前は下請法第4条第1項第3号、改正後は取適法第5条第1項第3号で、いずれも「代金の減額の禁止」を定めた規定です。条文番号は変わっても、禁止されている行為は同じでした。
なぜ「システム利用料」なら許されないのか
発注側から見れば、受発注システムの運用にはコストがかかります。その分を受注者と分け合うという発想自体は珍しくありません。それでも問題になったのは、行為の形が「代金から引く」だったためです。
禁止されているのは「減じること」そのもの
代金の減額の禁止は、控除の名目を問いません。システム利用料でも、手数料でも、協力金でも、いったん決めた代金から差し引けば減額として扱われます。必要な費用であれば、代金と切り離して別途請求し、受注者が支払うかどうかを個別に判断できる形にするのが筋になります。
合意していても免れない
「事前に説明して同意を得ている」という反論も通りにくい領域です。発注側と受注側には交渉力の差があるという前提で作られた規定のため、合意の有無だけでは適法にならないと考えておいてください。同じ構図は振込手数料の差引きを「報酬の減額」とした勧告でも現れており、少額であっても認定されています。
「例外なく一律」が決め手になっている
公表文にある「例外なく一律に」という表現は重い意味を持ちます。個別の事情を見ずに機械的に一定率を引いていたことは、受注者の責めに帰すべき理由がなかったことの裏返しになるためです。システムに控除ルールを組み込んで自動処理していると、この形になりやすい点には注意してください。
2026年1月に下請法は取適法へ|押さえる3点
今回の勧告で条文が2本並んだ理由が、この法改正です。下請代金支払遅延等防止法は令和7年法律第41号によって改正され、名称も変わりました。
本改正法は、令和8年1月1日から施行されます。
名称と呼び方の整理
改正後の正式名称は長いため、実務では取適法と略されます。呼び方が変わっただけで規制が緩んだわけではなく、代金の減額の禁止はそのまま引き継がれました。物流委託の視点から見た全体像は取適法(中小受託取引適正化法)で物流委託が変わるにまとめています。
金額の大小は問われない
差し引いた額が小さければ見逃されるという性質のものではありません。2026年9月1日に取り上げた振込手数料の差引きを「報酬の減額」とした勧告では、実際に金融機関へ支払う手数料を超える分を差し引いていた点が問題とされました。配達委託167名への条件明示を欠いた勧告のように、手続き面の不備だけでも公表の対象になります。取引適正化の相談窓口や関連資料は中小企業庁「取引適正化、価格交渉・価格転嫁」にまとまっています。
遅延利息まで含めて求められる
今回の勧告では、減じた額に加えて遅延利息の支払いも対象になりました。是正コストは元本だけで済まないという前提で見積もっておくのが安全です。支払い条件そのものも厳しくなる方向にあり、経済産業省は約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について事業者団体等に要請を行っています。期限と実務への影響は約束手形の最終振出期限と支払サイト60日への短縮で整理しました。
EC事業者が「委託する側」になる場面
今回の事案は食品の製造委託で、物流の話ではありません。それでもEC事業者にとって他人事ではないのは、商品を売るまでの間に複数の委託関係が発生しているためです。
自社ブランド商品のOEM製造
企画は自社、製造は外部という形は、D2Cブランドでは標準的な構成です。仕様を指定して作らせている以上、発注側としての立場が生まれます。工場選定の実務はOEM工場の選び方で整理しています。
梱包資材・同梱物の製造委託
専用の化粧箱、オリジナルの緩衝材、ブランドカード、封入するリーフレット。これらを仕様指定して作らせている場合も同じ枠に入ります。資材の調達設計はEC通販の梱包資材選定と費用最適化実務ガイドにまとめました。
物流・付帯作業の外注
倉庫作業や流通加工を外に出す場合の扱いは、契約の形態によって変わります。適用範囲の考え方は取適法で物流委託が変わると3PL契約の実務ガイドで扱っており、契約書に落とすべき項目は発送代行の契約書に含むべき14項目チェックリストが具体的です。委託の進め方そのものはEC物流の業務委託の進め方と業者選定のポイントにあります。
荷主としての立場も同時に問われている
発注側としての行為は、別の枠組みでも監視が強まっています。公正取引委員会は荷主105社への立入調査を行い、物流特殊指定の改正で着荷主も対象に加えました。大規模小売と納入業者の取引実態調査も並行しています。払う側の行為が見られているという点で、いずれも方向は同じです。
支払明細の控除項目を洗い出す
点検の入口は難しくありません。委託先へ払っている明細を1枚出して、代金以外の行を全部並べるところから始めてください。
控除項目を全部書き出す
- 直近3か月分の支払明細を集める——委託先ごとに、支払額の内訳が分かる形で用意します。
- 代金から引いている行を抜き出す——名称を問わず、マイナスで立っている行はすべて対象です。
- 「一律か個別か」を分類する——率や定額で機械的に引いているものは、優先して見直す対象になります。
引ける/引けないの線引き
| 控除の名目 | 典型的な性質 | 見直しの優先度 |
|---|---|---|
| システム利用料・EDI利用料 | 発注側の都合で発生。一律控除になりやすい | 高 |
| 振込手数料 | 発注側の都合による費用。勧告事例で「報酬の減額」と認定された例がある | 高 |
| 協力金・販促協賛金 | 対価との対応関係が説明しにくい | 高 |
| 不良品・欠品分の相殺 | 受注者側の理由がある場合は事情が異なる | 中(根拠の記録が必要) |
| 前払金の精算 | もともと支払済みの分の調整 | 低(内訳の明示は必要) |
表2:委託先への支払いから引いている項目の点検リスト(STOCKCREW作成。個別の判断は取引の実態によります)
契約書と実際の運用を突き合わせる
契約書に書いていない控除が運用で走っているケースは珍しくありません。逆に、契約書に書いてあるから問題ないと考えるのも危険です。合意の有無だけでは適法にならないためです。契約全体の点検はEC事業者の2026年度物流契約見直し完全チェックリスト、見積の読み方は発送代行の見積書を項目別に読み解く7つのチェックポイントが使えます。
個別の理由がある控除は、根拠を残しておく
不良品の相殺のように、受注者側の事情に基づく調整まで一律に禁じられているわけではありません。分かれ目になるのは、その回ごとに理由を説明できるかです。何月何日の納品分で、どの検品基準に照らして、何個が不適合だったのか。ここが記録として残っていれば、機械的な一律控除とは性質が異なると示せます。逆に「例年この率で引いている」という説明しかできないなら、名目が何であれ危うい位置にあります。検品や不良の扱いを委託先と共有する仕組みは発送代行の賠償・保険・リスク管理ガイドにまとめました。
相手の規模で判断を止めない
適用対象かどうかは資本金や取引の類型で決まるため、すべての取引先に同じ規定が及ぶわけではありません。それでも、対象外の相手にだけ一律控除を続けるという運用は現実的ではないでしょう。社内ルールとしては相手を問わず「代金からは引かない」に統一するほうが、管理コストも説明コストも下がります。外注全体の設計は3PLとは?EC物流外注の全体像、隠れた費用の見つけ方は発送代行の隠れコスト完全マッピングで扱っています。
まとめ:名目ではなく、引いた事実で判断される
公正取引委員会は2026年9月9日、委託先37名への代金から「システム利用料」の名目で例外なく一律1.1%を差し引いていた事案に勧告を行いました。判明している減額分は1億4,741万1,330円で、遅延利息の支払いも求められています。適用されたのは改正前の下請法第4条第1項第3号と、2026年1月1日に施行された取適法第5条第1項第3号です。控除に名前が付いていても、決めた代金から引けば減額として扱われる——読み取るべきはこの一点になります。
EC事業者は、OEM製造・梱包資材の製造・倉庫作業の外注という形で日常的に発注側に立っています。まずは直近3か月の支払明細を開いて、代金から引いている行を全部並べてみてください。一律で引いているものが見つかったら、代金と切り離して別建てで請求する形に組み替えられないかを検討する順序になります。委託先との条件を含めて物流費を洗い直すなら発送代行おすすめ25選とSTOCKCREW完全ガイド、制度変更の年間スケジュールはEC事業者の2026年度 制度変更・コスト増カレンダーが起点になります。料金と作業範囲の見積もりが必要な場合はお問い合わせ、先に条件を確認したい場合はサービス資料のダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 今回の勧告はどのような内容ですか?
A. 公正取引委員会が2026年9月9日、卸売業者を介して食品の製造を委託した受注者37名への代金から「システム利用料」の名目で例外なく一律1.1%を差し引いていた事案に勧告を行いました。判明している減額分は1億4,741万1,330円で、遅延利息を含めた支払いが求められています。
Q. 委託先の同意があれば代金から差し引いてもよいのですか?
A. 同意があっても適法になるとは限りません。代金の減額の禁止は、発注側と受注側の交渉力に差があるという前提で設けられた規定です。合意の有無ではなく、決めた代金から実際に差し引いたかどうかで判断されると考えておいてください。
Q. システム利用料そのものを受け取ってはいけないということですか?
A. 費用を受け取ること自体が禁じられているわけではありません。問題になったのは、代金から差し引くという方法です。必要な費用であれば代金は満額支払ったうえで別途請求し、受注者が支払うかどうかを個別に判断できる形にするのが安全な組み立てになります。
Q. 下請法と取適法はどう違うのですか?
A. 下請代金支払遅延等防止法が令和7年法律第41号によって改正され、2026年1月1日から施行されました。実務では取適法と略されます。代金の減額の禁止は引き継がれており、今回の勧告でも改正前の下請法第4条第1項第3号と改正後の取適法第5条第1項第3号の両方が挙げられています。
Q. 振込手数料を委託先に負担してもらうのは問題ありますか?
A. 慎重に扱うべき項目です。委託先への報酬から、実際に金融機関へ支払う振込手数料を超える額を差し引いていた事案では、公正取引委員会が「報酬の減額」として勧告を行っています。金額の大小で判断されるわけではないため、振込手数料は発注側の負担として運用を整理しておくのが確実です。
Q. EC事業者はどこから点検すればよいですか?
A. 直近3か月分の支払明細を委託先ごとに集め、代金から引いている行を名称を問わずすべて抜き出してください。そのうえで「率や定額で機械的に引いているもの」と「個別の理由があって引いているもの」に分け、前者から見直します。契約書の記載と実際の運用がずれていないかも同時に照合してください。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。