佐川急便×日本郵便、初回配達前から受け取り先変更が可能に|EC事業者が取るべき対応と再配達削減策

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「荷物が届く前に受け取り先を変えられる」——2026年3月30日発送分から、佐川急便と日本郵便はそれを可能にするサービスを開始しました。これまで受け取り先の変更は不在通知が届いてから行うものでしたが、初回配達前から郵便局窓口・宅配ロッカー・店頭受け取りに切り替えられるようになっています。EC事業者にとって再配達は配送コストを押し上げ、顧客満足度を下げる慢性的な課題です。このサービス変更が物流フローと顧客体験にどう影響するか、発送代行の活用も含めて実務的な観点から整理します。

新サービスの全体像:初回配達前に受け取り先が選べるようになった

これまでの仕組みと変わったこと

従来の宅配便では、購入者が受け取り先を変更できるのは「不在通知(持ち戻り)が入ってから」というのが一般的な仕組みでした。仕事などで日中に受け取れない購入者は、不在票を持ってコンビニ受け取りに変更するか、再配達を依頼するかの二択しかなく、荷物が一度持ち戻られるという無駄なフローが生じていました。

2026年3月30日発送分から佐川急便と日本郵便が開始したサービスでは、購入者は荷物が届く前の段階で受け取り先を変更できます。佐川急便の会員サービス「スマートクラブ」に登録し本人確認を完了していれば、発送通知が届いた段階で郵便局窓口・宅配ロッカー・加盟店頭のいずれかに変更が可能です。不在を前提としていた従来フローが、初回で確実に受け取れる設計へと変わりました。

対応受け取り拠点と利用の前提条件

受け取り先として選択できる拠点は全国1,053拠点で、郵便局窓口を中心に宅配ロッカー・加盟店頭が含まれます。利用にあたっては以下の条件を満たす必要があります。

項目内容
会員登録佐川急便「スマートクラブ」への登録が必要
本人確認スマートクラブ内での本人確認完了が必要
対象荷物佐川急便が配達を担当する荷物
変更タイミング発送通知受信後〜初回配達試行前まで
受け取り場所郵便局窓口、宅配ロッカー、加盟店頭(全国1,053拠点)

これまでは、不在による再配達依頼時のみ受取先の変更が可能でしたが、2026年3月30日発送分より、初回配達前からお荷物の受取先をロッカー、店頭、郵便局などに変更いただけるようになります。お客さまのライフスタイルに合わせて、より便利にお受け取りいただけるサービスです。

出典:佐川急便荷物の"郵便局受取"サービス拡大のお知らせ

EC事業者側での追加システム投資は不要で、購入者が自ら変更を行う仕組みです。ただし、変更が有効活用されるには購入者がスマートクラブ登録を済ませているか、あるいは事業者が周知する機会を持っているかが鍵になります。佐川急便の公式案内でも会員登録と本人確認の完了が利用条件として明示されています。この点については第4節で詳しく触れます。

再配達問題の現状:EC成長が生み出した物流の歪み

宅配便取扱個数50億個時代の再配達率

宅配クライシスが取り沙汰され始めた2010年代後半から、EC市場の拡大とともに宅配便の物量は増え続けています。経済産業省の調査によれば、日本のEC市場規模は拡大の一途をたどっています。

令和5年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、24.8兆円(前年22.7兆円、前々年20.7兆円、前年比9.23%増)に拡大しています。また、EC化率は、BtoC-ECで9.3%となっています。

出典:令和5年度電子商取引に関する市場調査

近年の通信販売、特にインターネットを利用した通信販売(EC)の伸びとともに、宅配便の取扱個数は急伸しており、令和5年度は約50億個にのぼっています。

出典:宅配便の再配達削減に向けて(再配達の労働力・CO2換算)

年間50億個という物量の中で、大手6社の再配達率は2025年4月時点で8.4%。国土交通省が掲げる目標の6%を依然として上回っており、物流2024年問題から2年が経過した現在もドライバー不足と相まって解消には至っていません。

再配達のコスト:6万人分の労働力・年間25.4万トンのCO2

再配達は単なる「不便」ではなく、物流業界全体の経済損失とカーボン排出を生み出しています。

この約1割にのぼる再配達を労働力に換算すると、年間約6万人のドライバーの労働力に相当します。また、再配達のトラックから排出されるCO2の量は、年間でおよそ25.4万トン(令和2年度国交省試算)と推計されています。

出典:宅配便の再配達削減に向けて(再配達の労働力・CO2換算)

年間6万人分のドライバー労働力に相当するロスは、慢性的な人手不足が叫ばれる物流現場において見過ごせない規模です。EC事業者にとっても、再配達率が高まれば物流コストの可視化で見えてくる「配達完了率」「出荷費用あたりの配達効率」が悪化し、最終的には配送委託コストの上昇として跳ね返ります。グリーン物流の観点からもCO2削減への取り組みが荷主企業に求められており、再配達削減はコスト・環境の両面で不可避のテーマとなっています。

EC事業者への直接的影響

配達完了率向上とカスタマーサポート負担の軽減

EC事業者への最も直接的なメリットは配達完了率の向上です。購入者が初回配達前に受け取り先を変更できる環境が整うと、「届いていない」「荷物はどこにある」といった問い合わせが減少します。

特に影響が大きいのは以下のシナリオです。

  • 平日昼間に自宅不在の購入者が多い商材——アパレル・美容品・雑貨など、EC購入者のライフスタイルが多様なカテゴリでは、初回配達前の受け取り先変更を活用できる購入者割合が高く、配達完了率改善の効果が出やすいと考えられます。
  • 定期便・サブスクリプション商材——毎月定期的に届く商品の場合、購入者が一度スマートクラブ登録を済ませれば継続的に恩恵を受けます。再配達率の慢性的な高さが改善されやすい商材タイプです。
  • ギフト・贈答品——受取人が不在になりやすいシーンで利用頻度が高く、初回配達前の調整ができることで贈り先とのトラブルが減ります。

また、フルフィルメント全工程を俯瞰したとき、再配達によって発生する「持ち戻り→保管→再配達」のループが減少することは、倉庫在庫の動きとも連動します。EC物流の出荷後ステータス管理を行っている事業者では、「配達完了」ステータスへ到達するまでの日数が改善される効果が期待できます。

購入体験とLTVへの影響

初回配達が完了するかどうかは、購入者の体験品質に直結します。「届かなかった」「再配達を待つのが面倒」という体験はリピート購入率の低下につながります。発送代行を選ぶ際には出荷精度だけでなく、配達完了率を高める仕組みが整っているかも重要な評価軸になります。佐川急便便を主軸とした出荷フローを組んでいる場合、このサービスを最大限活用できる環境にあると言えます。

一方で、このサービスの恩恵を享受するには購入者自身がスマートクラブ登録を済ませていることが前提です。まだ登録していない購入者に対してどう周知するかがEC事業者側のアクションポイントになります。

EC事業者が今すぐ取るべき具体的対応策

発送通知メールへの周知文追加

最も即効性が高く、コストもかからないアクションが発送通知メールへの一文追加です。「佐川急便でお届けします。初回配達前に受け取り場所を変更できます」という案内を加えるだけで、スマートクラブ未登録の購入者に気づきを提供できます。記載する内容の例を示します。

追記箇所記載例
発送通知メール本文「佐川急便でお届けします。届く前に受け取り先を変更したい場合は、佐川急便スマートクラブ(要会員登録)から変更できます。」
注文確認メール補足「配送は佐川急便です。初回配達前の受け取り先変更サービスについては発送通知メールをご確認ください。」
サイトFAQページ「配達前に受け取り場所を変更できますか?」という質問と回答を追加

OMS(受注管理システム)やカートの発送メールテンプレートを更新するだけで対応可能なケースがほとんどです。マルチキャリア戦略として佐川急便以外のキャリアも使っている場合は、キャリアごとに案内文を分けることを推奨します。

チェックアウト画面・FAQの整備

中長期的には、チェックアウト画面における「配送に関するご案内」欄にこの仕組みを説明するリンクや一文を加えると効果的です。購入前に「届く前に受け取り場所を変更できる」と知っていれば、不在を心配して購入を躊躇する購入者の背中を押せます。

また、サイトFAQには以下の質問セットを追加することを検討してください。

  • 「配達前に受け取り場所を変更できますか?」——スマートクラブ登録の説明・1,053拠点への変更が可能である旨を案内
  • 「不在で荷物が持ち戻りになった場合は?」——これまで通り不在票経由での再配達依頼・コンビニ受け取りも引き続き可能である旨を案内

2026年度の物流契約見直しを進めている事業者は、このサービス変更を顧客コミュニケーション改善の好機として捉えるとよいでしょう。

発送代行を活用した再配達率低減の全体設計

佐川急便メイン出荷を軸にした配達完了率の向上

佐川急便×日本郵便の初回配達前受け取り先変更サービスを最大限活用するには、佐川急便での出荷比率を高めるか、少なくとも購入者ニーズに合わせてキャリアを選択できる体制を整えることが効果的です。

自社出荷の場合、荷量交渉・キャリア選定・発送オペレーションをすべて自前で担う必要があります。一方、発送代行を利用する場合、複数キャリアとの大口契約を倉庫会社がまとめて持っているため、事業者単体では交渉しにくい配送レートと複数キャリアの柔軟な使い分けを享受できます。STOCKCREWは佐川急便・ヤマト運輸での出荷に対応しており、商材・サイズ・届け先地域に応じた最適なキャリア選択が可能です。

なお、STOCKCREWでは日本郵便(ゆうパック・ゆうパケット等)は2026年4月時点で非対応です。日本郵便ゆうパケットの翌日配達短縮など日本郵便絡みのサービス改善が続く中、利用可能なキャリアの特性を把握した上で発送代行業者を選定することが重要です。

出荷後のステータス連携と顧客体験の統合

発送代行を活用しても、出荷後のトラッキング体験はEC事業者が整備する部分です。購入者が「荷物がどこにあるか」をリアルタイムで把握し、必要に応じて受け取り先変更の操作ができる状態にするには、以下の整備が有効です。

  1. 発送通知メールへの追跡URL自動挿入——OMS連携でトラッキング番号を自動取得し、メール本文に差し込む。購入者が佐川急便のマイページにたどり着きやすくなります。
  2. 配送ステータス変化に連動した通知設計——「出荷済み」「配達中」のステータス変化時にSMS・プッシュ通知を送ることで、受け取り準備を促します。
  3. スマートクラブ登録の誘導——まとめ買い・定期便購入者向けのフォローメールで、スマートクラブ登録のメリットを訴求します。

出荷量が増えるにつれて、配達完了率の1〜2%の差が顧客対応コストに大きく影響するようになります。倉庫・物流の人手不足が深刻化する中、出荷後の再配達を減らすことは業界全体の持続可能性にも貢献します。

業界全体の受け取り利便化トレンドと今後の展望

ヤマト運輸・Amazon・コンビニ受け取りの動向

受け取り先の多様化はEC物流業界のメガトレンドです。佐川急便×日本郵便のサービスと並行して、各プレーヤーが受け取り利便性向上に注力しています。

事業者受け取り多様化の取り組み特徴
佐川急便×日本郵便初回配達前からの受け取り先変更(2026年3月〜)全国1,053拠点対応、スマートクラブ登録必須
ヤマト運輸宅急便ロッカー・PUDOステーション連携コンビニ・駅前ロッカー等でのスムーズな受け取り
AmazonAmazon Hub(コンビニ・ロッカー)、置き配標準化自社配送網と外部キャリアの組み合わせで多拠点展開
全業界共通置き配の標準サービス化(国交省が推進)2026年度内に標準運送約款を改正予定

佐川急便の配送サービス全体像を把握した上で、各キャリアの受け取り多様化施策を組み合わせることで、EC事業者はより幅広い購入者ニーズに対応できます。置き配の標準サービス化も2026年度施行に向けて議論が進んでおり、「不在でも荷物が届く仕組み」の整備は今後さらに加速します。

国土交通省「再配達削減PR月間」との関係

国土交通省は2026年4月を「再配達削減PR月間」と位置づけ、関係省庁・自治体・宅配事業者・EC事業者が一体となって再配達削減の啓発活動を推進しています。これは2026年3月31日に閣議決定された総合物流施策大綱(2026〜2030年度)に基づく取り組みの一環です。

この流れの中で佐川急便×日本郵便の新サービスが3月30日に開始されたのは、政策と民間サービスが連動して再配達削減を後押しするタイミングとして象徴的です。EV配送車の普及グリーン物流義務化の文脈でも、再配達削減による環境負荷低減が評価される方向性は変わりません。物流業界全体のDX推進において、受け取り多様化は荷主・運送会社・消費者の三方よしを実現する基盤です。

再配達削減への要請が高まる背景には、人件費コストの上昇もあります。運輸業は賃上げ率が高い業種のひとつで、再配達のたびに発生するドライバーの追加稼働コストが以前より重くなっています。

産業別では、賃上げ率「5%以上」の構成比の最大は農・林・漁・鉱業の52.1%。次いで、運輸業が40.5%、情報通信業が39.6%と高かった。上位産業は人手不足が深刻な傾向が高く、高率の賃上げに踏み切る企業が多い。

出典:2026年度の「賃上げ」 実施予定は83.6% 賃上げ率「5%以上」は35.5%と前年度から低下

EC事業者としては、このPR月間を機に社内の配送設計と顧客向けコミュニケーションを見直す好機と捉えてください。ゴールデンウィーク期間に向けた配送設計と合わせて、不在リスクへの対応策を固めておくことを推奨します。

まとめ:初回配達完了率を高めるEC事業者の3ステップ

佐川急便×日本郵便の初回配達前受け取り先変更サービス(2026年3月30日〜)は、EC事業者にとって配達完了率を高める追い風です。再配達率8.4%(大手6社、2025年4月)という現状を改善するために、以下の3ステップで対応を進めましょう。

  1. 発送通知メールへの周知文追加(即日対応可)——スマートクラブ登録を促す一文をメールテンプレートに追加する。システム投資不要で最も素早く実行できるアクションです。
  2. チェックアウト・FAQの整備(1〜2週間)——初回配達前変更が可能であることをサイト内に明示し、購入前の不安を取り除きます。特に平日昼間の不在率が高い購入者層がいる商材では効果が高いと考えられます。
  3. 発送代行を通じた出荷フローの最適化(中期)——発送代行を活用してキャリア選択を最適化し、配達完了率を高める仕組みを整えます。出荷件数が月100〜200件を超える段階では、自社オペレーションよりも発送代行を通じた大口運賃活用と出荷自動化が配送コスト削減に直結します。

再配達削減は物流業界全体の課題ですが、EC事業者がすぐに実行できる施策もあります。まずは発送通知の文面見直しから着手し、購入者が受け取りやすい環境を整えましょう。発送代行の選び方・費用感について相談するか、資料ダウンロードで概要を把握してから検討を進めることをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q. 佐川急便×日本郵便の初回配達前受け取り先変更サービスはいつから始まりましたか?

2026年3月30日発送分より開始しています。佐川急便の荷物を日本郵便の窓口・宅配ロッカー・加盟店頭で受け取れるようになり、変更は初回配達試行前の段階から行えます。

Q. 受け取り先を変更できる場所は全国でどれくらいありますか?

全国1,053拠点が対応しています。郵便局窓口を中心に、宅配ロッカー・加盟店頭が含まれます。利用には佐川急便の会員サービス「スマートクラブ」への登録と本人確認の完了が必要です。

Q. EC事業者側で特別なシステム対応は必要ですか?

EC事業者側での特別なシステム投資は不要です。受け取り先の変更は購入者がスマートクラブのマイページから行います。事業者がすべきことは、発送通知メールやサイトFAQで購入者にこのサービスの存在を周知することです。

Q. 再配達率が高い場合、EC事業者の物流コストにどう影響しますか?

再配達が発生すると、1回の配達に対して複数回の配送費用が実質的に発生します。再配達率が高いほど配送委託コストの増加につながるほか、顧客からの問い合わせ対応コストも増えます。再配達率の1〜2%の改善でも、月間出荷件数が多い事業者では年間の物流費に影響します。

Q. 発送代行を利用している場合でもこのサービスは使えますか?

利用できます。受け取り先変更は購入者が行う手続きであり、出荷側の体制(自社発送・発送代行のいずれか)に関わらず、佐川急便で発送された荷物であれば対象になります。発送代行経由で佐川急便を利用している場合も、購入者がスマートクラブに登録していれば変更が可能です。

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