特商法の見直し議論が最終盤へ|EC事業者が今すぐ点検する事業者情報の表示と定期購入の最終確認画面
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「解約できないと言われた」「定期購入だと気づかなかった」——通販をめぐる相談は、2021年の特商法改正後も減っていません。消費者庁は2026年1月からデジタル取引・特定商取引法等検討会を開いており、8月24日に第8回が予定されています。議論は終盤に入りつつあり、方向性が具体化してきました。この記事では、公表資料から読み取れる論点を、EC事業者が今日から点検できる項目に翻訳します。ショップ運営全体の整備状況を確認するならネットショップ運営完全ガイド、出荷体制は発送代行の仕組みと費用で全体像を押さえられます。
検討会は第8回、議論は終盤へ
2026年1月から8か月で8回のペース
消費者庁は2026年8月17日、第8回検討会の開催を告知しました。
以下のとおり第8回デジタル取引・特定商取引法等検討会を開催しますので、お知らせいたします。
開催は2026年8月24日で、傍聴はオンラインのみです。検討会は2026年1月22日に第1回が開かれており、ほぼ毎月のペースで議論が重ねられてきました。第7回の議事録も8月13日に公開されています。議題は「事務局からの説明」と「自由討議」で、これは第7回と同じ構成です。事務局が論点を提示し、委員が意見を述べる形が続いており、資料と議事録は開催後に消費者庁のサイトへ順次掲載されています。EC事業者としては、開催のたびに公開される説明資料を追っておくと、方向性の変化に気づきやすくなります。
この記事で扱うのは「検討中の方向性」
先に前提を確認しておきます。ここで紹介するのは検討会で示された検討の方向性であり、確定した制度ではありません。法案の国会提出時期も現時点では公表されていません。
ただし、方向性が見えている段階で自社の状態を点検しておくことには意味があります。今の法律ですでに求められているのに満たせていない部分が見つかることが多いためです。2021年改正の運用実態は改正特商法・定期購入規制の運用実態に整理しました。
論点1:定期購入の誤認惹起に規律を広げる
改正後も手法が増えているという認識
検討会の資料で、はっきりと書かれているのがこの部分です。
定期購入等の取引条件を誤認させたまま契約締結に至らせる手法が法改正後も増加していることを踏まえ、インターネット上の表示・UIのうち、誤認惹起等の不当な働きかけにより消費者の意に反して契約を申し込ませるものについて、規律の具体化・拡張を図ることを検討している。
ここで注目すべきは「表示・UI」という書き方です。文言だけでなく、画面の作り方そのものが対象に含まれています。文字は書いてあるが小さい、色が薄い、スクロールしないと見えない、といった設計が論点になりうるということです。
SNS広告経由の相談が具体例として挙がっている
同じ資料では、SNSが関係する消費生活相談の例として、広告を見て申し込んだ定期購入に関する相談が紹介されています。1回で解約できると書いてあったのに事業者に連絡がつかない、初回で解約する場合は定価との差額を求められた、といった内容です。
定期購入モデルを運用しているなら、この2点は自社でも起こりうる論点です。サブスク型の物流設計は定期購入ECの物流設計とサブスクEC物流の自動化戦略で扱っています。
「解約できる」と書いてあるだけでは足りない
相談例から読み取れるのは、表示と実態の乖離が問題視されているという点です。「1回で解約できる」と書いてあっても、実際に電話がつながらなければ解約できません。「初回で解約する場合は定価との差額を支払う」という条件も、申込み時点で分かる形で示されていなければ、後から知らされたのと同じことになります。
物流側から見ると、解約の受付タイミングと次回出荷のタイミングがずれていることが原因になる場合もあります。締め日を過ぎてから解約を受け付け、それでも商品が出てしまえば、消費者からは「解約したのに届いた」という体験になります。解約受付の締め切りを出荷サイクルと揃えておくことが、表示の正確さを支える実務になります。
論点2:広告・SNSのプラットフォームにも要請
取引DPF以外にも対象を広げる方向
現行の取引デジタルプラットフォーム消費者保護法では、オンラインモールなどの取引DPF提供者に対して、消費者庁が利用停止の要請などを行えます。検討会では、この要請の対象を、広告やSNSのプラットフォーム提供者にも広げる方向が示されています。
想定されている流れは、消費者庁が特商法に基づく行政処分を行った場合に、その事業者の誇大広告が基盤提供者の運営する場に表示されているとき、当該基盤提供者に対応を要請するというものです。
個別広告の削除にとどまらない可能性
もう一段踏み込んだ論点として、行政処分を受けた事業者については個別の広告の削除にとどまらず、アカウント削除等の事業者単位での対応を要請することも検討すべきではないか、という方向が示されています。
これは適正に運営している事業者にとっては直接の負担ではありませんが、広告表現の管理が事業継続に直結する度合いが上がることを意味します。個別のクリエイティブを差し替えれば済む話ではなくなる可能性があるからです。
広告運用の体制側で備えられること
実務としては、誰が広告表現を最終確認しているかを明確にしておくことが備えになります。運用代理店に任せきりで、出稿している文言を自社で把握していない状態は、指摘を受けたときに対応が遅れます。
あわせて、過去に出稿した広告の記録を残しておくことも有効です。いつ、どの媒体に、どの表現で出したかが追えれば、問題が指摘された際に影響範囲をすぐ特定できます。検討会の資料では、検索連動型広告が悪質な事案の入り口になっている実態も紹介されており、媒体を問わず管理が求められる流れにあります。
景品表示法の運用状況は消費者庁が景品表示法の運用状況を公表、SNS投稿の転載をめぐる論点はECモール商品ページのSNS投稿転載もステマ規制の対象に整理しています。
論点3:事業者情報の正確性を監視強化
住所・電話番号が実在するかを見られる
3つ目は、多くのEC事業者にとって最も直接的に効く論点です。特商法は、通販事業者の氏名・名称、住所、電話番号などを広告表示義務の対象としています。検討会では、所在に関する情報が不正確な販売業者に対して、行政処分・行政指導により厳正な対応を行うため、インターネット取引における監視を一層強化する方向が示されています。
さらに、所在情報が不正確な事業者がモールやSNSで広告している場合には、基盤提供者と情報共有し、表示の是正や削除を積極的に依頼するとされています。
個人事業主・小規模事業者ほど確認が要る
自宅を事業所にしている場合や、バーチャルオフィスを使っている場合は、記載内容が実態と合っているかを確認しておく必要があります。住所非公開の可否についてはネットショップで住所を非公開にする方法とBASEで自宅住所を公開せずに販売する方法で条件を整理しました。表記そのものの整備はネットショップの法的ドキュメント整備にまとめています。
なお、事業者情報のなりすましも実際に発生しています。偽通販サイトへの注意喚起で初動対応を扱いました。
表記の記載項目と、確認の観点
| 記載項目 | 確認の観点 | 不備になりやすいケース |
|---|---|---|
| 事業者の氏名・名称 | 登記や屋号と一致しているか | 屋号のみでどの法人か分からない |
| 住所 | 実在し、番地まで正確か | 移転後も旧住所のまま |
| 電話番号 | 実際につながり、応答できるか | 使われていない番号を掲載 |
| 問い合わせ窓口 | 送信が届き、返信できる体制か | フォームの通知先が退職者のアドレス |
| 販売価格・送料 | 総額が分かるか | 送料が「別途」のみで金額不明 |
とくに移転後の住所更新と問い合わせフォームの通知先は、日常業務のなかで見落とされやすい部分です。担当者が変わったときに引き継がれず、送信されたメールが誰にも届いていないケースは実際に起こります。
今すぐ点検できる2か所
1. 申込みの最終確認画面
特商法はすでに、最終確認画面に表示すべき事項を定めています。検討中の内容を待たなくても、現行法の水準を満たしているかは今日確認できます。
| 確認項目 | 見るポイント | よくある不備 |
|---|---|---|
| 分量 | 商品の数量・回数が書かれているか | 「定期便」とだけ書き回数がない |
| 金額 | 初回と2回目以降の総額がわかるか | 初回価格のみ大きく表示 |
| 支払時期・引渡時期 | いつ課金され、いつ届くか | 次回発送日の記載がない |
| 解約の条件 | 解約方法・期限・違約金の有無 | 解約手段が電話のみ |
| 視認性 | スクロールせず読めるか | 小さい文字・薄い色で下部に配置 |
返品・解約の条件をどう書くかはEC返品ポリシーの書き方ガイドに例をまとめています。
2. 特商法に基づく表記
もう1か所は事業者情報です。次の3点を実際に試してみることをおすすめします。
- 記載した住所を地図で検索する——実在し、表記が正確か
- 記載した電話番号にかけてみる——つながるか、事業者名で応答できるか
- 問い合わせフォームから自分で送信する——届くか、返信できる体制か
連絡がつかない状態は、検討会の資料でも問題として取り上げられている論点です。ショップ全体の信頼性設計はEC事業のブランディング戦略と発送体験の設計で扱いました。
まだ決まっていないことと、決まっていること
決まっていないこと
- 改正法案の国会提出時期
- 規律の具体的な条文と適用範囲
- 広告プラットフォームへの要請の要件と手続き
すでに決まっていること
- 最終確認画面の表示義務は現行法にある
- 事業者の氏名・住所・電話番号の表示義務も現行法にある
- 検討会は2026年8月24日に第8回を開催する
つまり、今回の点検項目のほとんどは改正を待つ必要がありません。現行法の要求を満たしているかを確かめる作業です。2026年度に効いてくる制度変更の全体像は制度変更・コスト増カレンダー、個人情報の取扱いは改正個人情報保護法2026に整理しています。
制度の条文そのものは通信販売(特定商取引法ガイド・消費者庁)、住所や電話番号の表示と省略の考え方は通信販売広告Q&A(Q15〜Q19・住所/氏名/電話番号の表示と省略)で確認できます。
まとめ:改正を待たずに直せる部分から
消費者庁のデジタル取引・特定商取引法等検討会は2026年8月24日に第8回を迎えます。示されている方向は3つで、定期購入の誤認惹起に対する表示・UIへの規律拡張、広告・SNSプラットフォームへの要請対象の拡大、そして事業者情報の正確性に対する監視強化です。
いずれも検討中の内容であり確定した制度ではありませんが、点検すべき項目の多くは現行法ですでに求められています。最終確認画面の5項目と、住所・電話番号・問い合わせ窓口が実際に機能しているか。この2か所は今日から確認できます。
まずは自社の申込み画面を購入者の目で通しで見て、記載した電話番号に実際にかけてみるところから始めてみてください。ショップ運営の全体像はネットショップ運営完全ガイド、出荷体制の見直しは発送代行完全ガイドとSTOCKCREW完全ガイドで確認できます。定期便の出荷を含めて相談したい方はお問い合わせ、まず資料で検討したい方は資料ダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 特商法はいつ改正されるのですか?
A. 改正法案の国会提出時期は現時点で公表されていません。消費者庁のデジタル取引・特定商取引法等検討会が2026年1月から議論を続けており、2026年8月24日に第8回が開催されます。
Q. 定期購入について何が変わりそうですか?
A. 検討会では、取引条件を誤認させたまま契約させる手法が法改正後も増加しているとして、インターネット上の表示・UIのうち消費者の意に反して申し込ませるものについて、規律の具体化・拡張を図る方向が示されています。確定した内容ではありません。
Q. 広告プラットフォームへの規制は自社に関係しますか?
A. 検討されているのは、行政処分を受けた事業者の広告について、広告やSNSのプラットフォーム提供者に対応を要請できるようにする仕組みです。適正に運営していれば直接の負担にはなりませんが、広告表現の管理の重要性は上がります。
Q. 特商法に基づく表記で何を確認すべきですか?
A. 記載した住所が実在し表記が正確か、電話番号が実際につながるか、問い合わせフォームが機能しているかの3点です。検討会では所在情報が不正確な事業者への監視強化が示されています。
Q. 改正を待ってから対応すればよいですか?
A. 最終確認画面の表示義務も事業者情報の表示義務も現行法にすでにあります。点検項目の多くは改正を待つ必要がなく、今の法律を満たしているかの確認作業になります。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。