特定荷主の中長期計画は10月末が期限|指定リスト公表でEC事業者・発送代行が確認すべきこと
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2026年4月に全面施行された物流効率化法で、一定規模以上の荷主が「特定事業者」に指定されました。その事業者には10月末日までに中長期計画を提出する義務があり、指定された事業者のリストも公表されています。期限まで2か月あまりです。この記事では、自社が対象になるのかをどう判断するか、指定されなかった大多数のEC事業者に何が残るのかを、国土交通省の一次資料をもとに整理します。出荷体制の見直しを含めて考えるなら発送代行の仕組みと費用もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
10月末日までに中長期計画の提出が必要
3省が連名で提出期限を明示した
国土交通省・経済産業省・農林水産省は令和8年8月3日付で、中長期計画の作成方法と提出方法についての説明会を開催すると告知しました。この資料のなかで、提出期限が明確に示されています。
特定事業者に指定された事業者については、事業所管省庁に対して、10月末日までに中長期計画を作成し、電子システムにて提出することが必要となります。
提出先は事業所管省庁で、原則としてe-Gov電子申請によるオンライン手続きです。申請にはGビズIDが必要で、アカウント種別は原則としてプライムでの取得が推奨されています。まだ取得していない場合は、この準備だけで数日かかることがあります。
指定された事業者のリストも公表されている
国土交通省は、特定事業者として指定した事業者を公表しています。区分は特定第一種荷主、特定第二種荷主、特定連鎖化事業者等、特定貨物自動車運送事業者等、特定倉庫業者の5つで、今後追加で指定された事業者についても随時更新されるとされています。
自社が指定されているかどうかは、通知が届いているかで判断するのが基本です。ただし取引先が指定されている場合、そちらから協力を求められる可能性があるため、主要な取引先の名前がリストにあるかを確認しておくと状況を把握しやすくなります。
特定事業者になる基準は3つの数字で決まる
荷主は年間9万トンが分かれ目
誰が特定事業者になるのかは、事業者向けのリーフレットで明示されています。
2026年4月から施行された物流効率化法により、一定規模以上の荷主・物流事業者は「特定事業者」として指定されます。
この「一定規模以上」の中身が、次の3つの数字です。
| 区分 | 指定基準 | 該当しやすい事業者 |
|---|---|---|
| 特定荷主・特定連鎖化事業者 | 取扱貨物の重量 9万トン以上 | 大手メーカー・大手小売・大手チェーン本部 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数 150台以上 | 中堅以上の運送会社 |
| 特定倉庫業者 | 貨物の保管量 70万トン以上 | 大手倉庫事業者 |
大多数のEC事業者は届かない
年間9万トンという数字は、EC事業者の感覚ではかなり大きな量です。1個あたり1kgの荷物として換算すると年間9,000万個に相当するため、一般的なEC事業者が単独で到達する水準ではありません。
なお、荷主には発荷主(送り出す側)と着荷主(受け取る側)の両方が含まれます。届出の入力画面では第一種荷主が委託状況、第二種荷主が受渡状況にあたり、どちらの区分でも基準重量を超えている場合は両方を届け出る必要があるとされています。
制度の全体像は改正物流効率化法の2026年4月全面施行、届出そのものの手順は届出実務のQ&Aとチェックリストに整理しています。
特定事業者に課される3つの義務
中長期計画・定期報告・CLO選任
特定事業者に指定されると、次の3つが義務になります。
- 中長期計画の作成(10月末日までに提出)
- 定期報告
- 物流統括管理者(CLO)の選任(特定荷主・特定連鎖化事業者のみ)
3つ目のCLO選任は、荷主と連鎖化事業者だけに課されるものです。運送事業者や倉庫業者には求められていません。
物流統括管理者の届出には順序がある
物流統括管理者の選任届出には、実務上の注意点があります。特定荷主の指定通知を受け取った日以降でなければ提出できず、様式に書く選任日付も通知を受け取った日以降にする必要があるとされています。社内で先に人を決めていた場合でも、届出上の日付は通知後になります。
中長期計画に書く内容
計画に盛り込むのは、荷主の判断基準を踏まえた取組です。具体的には積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮という3つの方向が示されています。詳しい制度背景は総合物流施策大綱でEC物流はどう変わるかで扱いました。
この3つは、いずれも荷主側の行動を変えないと動かない項目です。積載効率は発注ロットや納品頻度の決め方に、荷待ち時間は納品時間の指定方法に、荷役等時間はパレット化や検品のやり方に依存します。運送会社が単独で解決できる範囲が狭いからこそ、荷主に義務が課される形になっています。
提出後の差し戻しに注意する
手続き上の注意点として、申請内容に不備があると審査担当省庁から差し戻されることがあります。国土交通省は、差し戻しに気づかないまま提出期限を超過しないよう、処理状況の画面を定期的に確認することと、メッセージ通知の設定を変更することを案内しています。初期設定では通知が届かないとされているため、申請前に設定を見直しておくのが安全です。
提出先も間違えやすい部分です。荷主は行う事業を所管する大臣すべてに提出する必要があり、事業が複数省庁にまたがる場合は複数の所管省庁あてに届け出ることになります。自社の主たる事業がどこの所管かを、先に確認しておくと手戻りを防げます。
指定されなかったEC事業者に残るもの
努力義務は規模にかかわらず全ての荷主に及ぶ
ここが今回いちばん誤解されやすい点です。指定されなかった=この法律と無関係、ではありません。
物流効率化法は、まず荷主・物流事業者全般に対して物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務を課し、そのうえで国が判断基準を定める構造になっています。特定事業者の指定は、そのなかでも一定規模以上の事業者に計画提出という追加の義務を課すものです。
つまり、9万トンに届かないEC事業者も努力義務の対象からは外れません。提出書類が発生しないだけです。
国の調査・公表の対象にもなる
国は判断基準に基づいて指導・助言や調査・公表を行うとされており、実際に荷主・物流事業者の取組状況を調べた調査結果が公表されています。荷主については、積載効率の向上に向けた取組や関係部門間の連携といった項目で実施が進んでいる一方、関係者との連携を要する取組や設備投資を伴う取組は実施率が低い傾向が示されました。
2026年度に効いてくる制度変更を横断的に確認したい場合は制度変更・コスト増カレンダーに一覧化しています。物流の構造的な人手不足については物流2026年問題と物流の2030年問題にまとめています。
着荷主としての立場も見落とさない
受け取る側でも荷主に当たりうる
EC事業者は「送る側」の意識が強くなりがちですが、仕入れた商品を受け取る場面では着荷主にあたります。国土交通省は、自らの事業に関して継続的にトラック事業者と運送契約を締結し、または貨物の受渡しを行っている事業者は荷主に該当しうる、と説明しています。
倉庫での荷受けに時間がかかっていれば、それはドライバーの荷待ち時間そのものです。入荷の予約制や伝票の事前準備といった改善は、規模にかかわらず取り組める内容です。
公正取引委員会の規制とも接続する
着荷主については、公正取引委員会が物流特殊指定を改正し、2027年4月1日から着荷主規制が始まる予定です。契約外の荷待ちを行わせる行為などが新たに規制対象になります。この動きは公正取引委員会が物流特殊指定を改正で詳述しました。
あわせて、取引条件の適正化そのものについては取適法で物流取引を見直すと公正取引委員会の取適法の概要に制度の全体像がまとまっています。運賃の原価を国が示す動きは運賃の原価をめぐる検討会で取り上げています。
EC事業者が今から確認すべき4項目
1. 指定通知が届いていないかを確認する
まず自社に通知が来ていないかを確認します。届いていれば10月末日が期限です。GビズIDの取得から始める場合は、逆算して早めに動く必要があります。
2. 主要取引先がリストにあるかを見る
取引先が特定事業者であれば、納品時間の指定や予約システムの導入といった協力を求められる可能性があります。公表されているリストで確認しておくと、依頼が来たときに慌てずに済みます。
3. 着荷主としての荷受け体制を点検する
仕入れ商品の入荷でドライバーを待たせていないか。荷待ち時間は2027年4月の着荷主規制でも論点になります。委託先の倉庫を使っている場合は、その運用も含めて確認が要ります。
4. 委託先との契約内容を見直す
発送代行や3PLに委託している場合、荷待ち・荷役の負担が契約でどう扱われているかを確認しておきます。契約条項の考え方は3PL契約の実務ガイドと物流契約見直しチェックリストにまとめました。委託先の選択肢そのものを比較したい場合はEC物流アウトソーシングの4つの選択肢が出発点になります。
4項目の確認スケジュール
| 確認項目 | 対象 | 期限の目安 | 放置したときのリスク |
|---|---|---|---|
| 指定通知の有無 | 自社 | 今すぐ | 10月末の提出期限に間に合わない |
| 主要取引先の指定状況 | 取引先 | 今月中 | 納品条件の変更依頼に対応できない |
| 着荷主としての荷受け体制 | 自社倉庫・委託先 | 2027年3月まで | 着荷主規制の開始時に是正が間に合わない |
| 委託先との契約内容 | 発送代行・3PL | 次回更新時 | 荷待ち・荷役の負担の所在が不明確なまま残る |
参考:制度対応の背景にあるEC市場の拡大
荷主への規制が強まっている背景には、物流量の増加があります。
2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、26.1兆円(前年24.8兆円、前々年22.7兆円、前年比5.1%増)に拡大しています。また、2024年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前々年420.2兆円、前年比10.6%増)に増加しました。
配送費の上昇が続く構造的な理由は宅配運賃が上がる理由、価格転嫁の実態は価格転嫁率54.2%どまりで扱っています。
まとめ:対象外でも無関係ではない
物流効率化法で特定事業者に指定された事業者は、10月末日までに中長期計画を提出する必要があります。手続きはe-Gov電子申請で、GビズIDが前提です。指定基準は荷主・連鎖化事業者が取扱貨物9万トン以上、運送事業者が保有車両150台以上、倉庫業者が保管量70万トン以上で、大多数のEC事業者は該当しません。
ただし努力義務は規模にかかわらず全ての荷主に及びます。加えてEC事業者は仕入れの場面で着荷主にあたり、2027年4月からは着荷主規制も始まります。提出書類がないことと、何もしなくてよいことは別です。
まずは指定通知の有無を確認し、着荷主としての荷受け体制と委託先との契約内容を点検するところから始めてみてください。倉庫運用そのものを外部に委ねる選択肢を検討する場合は発送代行完全ガイドとSTOCKCREW完全ガイド、EC物流全体の設計はEC物流完全ガイドで全体像をつかめます。自社の状況に沿って相談したい方はお問い合わせから、まず資料で検討したい方は資料ダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 中長期計画の提出期限はいつですか?
A. 10月末日です。特定事業者に指定された事業者が、事業所管省庁に対して電子システムで提出します。国土交通省・経済産業省・農林水産省の連名資料(令和8年8月3日付)で示されています。
Q. 特定荷主になる基準を教えてください。
A. 取扱貨物の重量が年間9万トン以上です。特定貨物自動車運送事業者等は保有車両150台以上、特定倉庫業者は貨物の保管量70万トン以上が基準になります。
Q. 指定されなかったEC事業者は何もしなくてよいですか?
A. 中長期計画の提出は不要ですが、物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務は規模にかかわらず全ての荷主に及びます。国による調査・公表の対象にもなりえます。
Q. 物流統括管理者(CLO)は誰が選任するのですか?
A. 特定荷主と特定連鎖化事業者のみに選任義務があります。運送事業者や倉庫業者には求められていません。届出は特定荷主の指定通知を受け取った日以降に行う必要があります。
Q. 提出の手続きはどこで行いますか?
A. 原則としてe-Gov電子申請によるオンライン手続きです。申請にはGビズIDが必要で、アカウント種別は原則プライムでの取得が推奨されています。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。