企業物価7.2%上昇で梱包資材コストが上がる|EC出荷1件あたりの資材費を点検する【2026年8月】
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「送料は毎年見直しているが、梱包資材の単価は前に決めたまま」という状態のEC事業者は少なくありません。ところが、いま静かに効いているのは資材側のコストです。日本銀行が2026年8月13日に公表した企業物価指数(2026年7月速報)によると、企業間で取引されるモノの価格を示す国内企業物価指数は前年比7.2%の上昇となりました。中身を見ると、段ボールを含む「パルプ・紙・同製品」が前年比6.0%、緩衝材やポリ袋に関わる「プラスチック製品」が前年比9.1%の上昇です。消費者物価のニュースでは見えにくい、梱包資材そのものの値上がりがはっきり数字に出ています。この記事では、公表された一次情報をもとに、値上がりが効いている類別を分解し、EC出荷1件あたりの資材費という単位に翻訳して点検する手順を整理します。
企業物価指数とは:消費者物価との違い
企業間で取引されるモノの価格を測る指標
企業物価指数は、日本銀行が毎月公表している統計で、企業と企業のあいだで取引される財の価格の動きをとらえます。国内で生産され国内向けに出荷される財を対象とする「国内企業物価指数」、輸出品を対象とする「輸出物価指数」、輸入品を対象とする「輸入物価指数」の3つで構成されます。指数は2020年の平均を100として表され、2026年7月の国内企業物価指数の総平均は135.8でした。つまり2020年に比べて、企業間で取引されるモノの値段は平均して3割以上高くなっている計算になります。
消費者物価との違いはどこにあるか
ニュースでよく耳にする消費者物価指数(CPI)が「消費者が店頭やECで払う値段」を測るのに対し、企業物価指数はその手前、事業者が仕入れる段階の値段を測ります。EC事業者にとっては、企業物価指数のほうが自社のコスト構造に直結します。段ボール、緩衝材、OPP袋、テープといった梱包材はすべて企業間取引で調達するものだからです。消費者物価の動きはEC価格戦略の記事で扱っていますが、本記事はその手前の仕入れ側を見ます。企業物価が先に上がり、遅れて消費者物価に転嫁されていく、という順番を押さえておくと、値上げ判断のタイミングを考えやすくなります。
2026年7月の国内企業物価指数は、前月比プラス0.1%、前年比プラス7.2%。夏季電力料金調整後では前月比0.0%。指数は2020年平均を100とする。
2026年7月の結果:国内企業物価は前年比7.2%
前年比は7%台の高止まり
2026年7月の国内企業物価指数は前月比プラス0.1%、前年比プラス7.2%でした。前月(6月)の前年比は7.3%だったので、上昇率としてはほぼ横ばいの高止まりです。前月比は0.1%と小さく見えますが、これは毎年7月から9月に適用される夏季の電力割増料金が押し上げた分を含んでおり、その影響を除いた「夏季電力料金調整後」では前月比0.0%でした。つまり足元の勢いは鈍いが、1年前と比べた水準は7%高いままという状態です。1年前に決めた資材単価をそのまま使っていると、実勢とのズレが広がっていきます。
輸入物価は円ベースで29.1%上昇
あわせて見ておきたいのが輸入物価です。7月の輸入物価指数は、円ベースで前年比プラス29.1%でした。同じ月の契約通貨ベース(現地通貨での価格)の上昇率はこれより10ポイント以上低く、その差が円安による押し上げ分にあたります。海外から商品や資材を仕入れているEC事業者は、現地価格が変わらなくても支払額が膨らむということです。輸入側の動きは貿易統計の記事もあわせて確認すると全体像がつかめます。
この3つの数字だけ押さえればよい
企業物価指数は類別も品目も細かく公表されていますが、EC事業者が毎月追う必要はありません。実務で意味を持つのは「国内の前年比」「自社が使う資材の類別」「輸入物価(海外仕入れがある場合)」の3点だけです。それ以外は、資材の見積もりが上がってきたときに背景を確認する材料として、必要なタイミングで原典を見に行けば足ります。数字を集めること自体が目的にならないよう、見る範囲は絞っておくのが続けるコツです。
梱包資材に効く類別を分解する
段ボールは「パルプ・紙・同製品」で見る
企業物価指数は類別ごとの数字も公表されており、EC梱包に直結する類別を拾うと動きがはっきりします。段ボールが含まれる「パルプ・紙・同製品」は前年比6.0%の上昇で、7月に国内企業物価を押し上げた品目のひとつに段ボール箱が挙げられています。総平均の7.2%と比べれば穏やかですが、それでも1年で6%上がっている計算です。1個50円の段ボールなら、1年で3円ほど上がったことになります。1件の出荷で1枚使うなら、これがそのまま1件あたりの原価増です。
緩衝材・袋は「プラスチック製品」で見る
気泡緩衝材、OPP袋、宅配ビニール袋などが含まれる「プラスチック製品」は前年比9.1%の上昇で、こちらは総平均を上回っています。ここにはプラスチックフィルム・シートやプラスチック製容器といった、まさにEC出荷で使う資材が含まれます。段ボールよりプラスチック系のほうが値上がりが急という関係が、資材構成を見直すうえでの出発点になります。
倉庫の光熱費も同時に上がっている
資材そのものではありませんが、電力・ガス・水道の価格も前年より高い水準にあります。倉庫の空調・照明・設備稼働のコストが夏場に膨らむということで、発送代行を含む物流拠点の運営コストに影響します。自社倉庫を持つ事業者にとっては、資材費と光熱費が同時に効いてくる時期です。「資材だけ」「電気だけ」と部分的に見ると、負担の全体像を見誤ります。
自社の資材を紙系とプラ系に仕分ける
ここまでの動きを実務に落とすなら、まず自社が使っている資材を紙系とプラ系に仕分け、それぞれに打ち手を割り当てるのが早道です。下の表は、STOCKCREWが実務でよく使う整理です。
| 資材 | 系統 | 優先して検討する打ち手 |
|---|---|---|
| 段ボール箱 | 紙系(パルプ・紙) | サイズ展開を絞り、よく出る構成に合わせる |
| 気泡緩衝材・紙緩衝材 | プラ系/紙系 | 1件あたりの使用枚数に上限を決める |
| OPP袋・宅配袋 | プラ系 | 小型商品は箱から袋へ切り替えられるか検証 |
| テープ・PPバンド | プラ系 | 封緘方法を統一し、使用長を揃える |
| 納品書・同梱物 | 紙系 | 電子化できる書類がないか棚卸しする |
紙系よりプラ系のほうが上昇が急という点は、この表の使い方に直結します。置き換えられるなら、プラ系から紙系へ寄せる判断に合理性が出ているということです。ただし緩衝性能や商品保護の要件を下げてしまうと、破損による再出荷でかえってコストが増えます。資材の変更は、クレームの発生状況とセットで判断してください。
燃料や電力の価格は配送費にも波及します。燃料をめぐる制度面の動きは燃料補助金の見直しとEC配送費の記事で、宅配大手の運賃方針はヤマトHDの第1四半期決算の記事で扱っています。資材・燃料・電力は別々の費目に見えて、出荷1件あたりのコストという1点で合流します。
出荷1件あたりの資材費に翻訳する
指数の%を自社の金額に置き換える
そもそも資材費は、出荷が多いほど積み上がる費目です。経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年比5.1%増)、物販系分野のEC化率は9.8%で、EC出荷そのものは伸び続けています。出荷が増えるほど、資材単価の数%の差が効いてくるという関係を先に押さえておきましょう。
2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、26.1兆円(前年24.8兆円、前々年22.7兆円、前年比5.1%増)に拡大しています。(中略)EC化率は、BtoC-ECで9.8%(前年比0.4ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展しています。
企業物価指数の数字は業界全体の平均であって、自社の仕入価格そのものではありません。実際の値上げ幅は取引先や数量によって変わります。それでも、この指数は「交渉のときに相手が持ち出してくる根拠と同じ土俵に立つための物差し」として使えます。やることは単純です。まず自社の直近の資材単価表を用意し、段ボール系にはパルプ・紙の6.0%、緩衝材や袋にはプラスチック製品の9.1%を仮に当ててみて、1件あたり資材費がいくら増えるかを試算します。ここで出た金額が、次の交渉や価格改定で議論すべき「上限の目安」になります。
1件あたり資材費の出し方
計算は「資材単価×1件あたりの使用点数」で求めます。たとえば段ボール1枚に緩衝材2枚、テープ、納品書を使う構成なら、それぞれの単価を足し上げた合計が1件あたり資材費です。これに月間出荷件数を掛ければ、月次の資材費が出ます。1件あたり配送コスト(CPO)を管理している事業者なら、その内訳に資材費の行を追加するだけで済みます。重要なのは、単価だけを見ないことです。単価が上がっても使用点数が減れば1件あたりは下がります。逆に単価が据え置きでも、過剰梱包で点数が増えていれば負担は重くなります。
| 試算例(1件あたり) | 現行 | 想定上昇率 | 試算後 |
|---|---|---|---|
| 段ボール1枚 | 50円 | +6.0% | 53.0円 |
| 緩衝材・袋 | 20円 | +9.1% | 21.8円 |
| テープ・その他 | 10円 | +9.1% | 10.9円 |
| 合計 | 80円 | — | 85.7円 |
この例では1件あたり5.7円の増加です。月3,000件出荷していれば月あたり約1万7千円、年間では約20万円の差になります。金額としては送料の改定ほど大きくありませんが、気づかないまま利益から差し引かれ続けるのがこの費目の厄介なところです。なお上の試算は、企業物価指数の類別上昇率をそのまま当てはめた仮の計算であり、実際の見積額は取引先にご確認ください。
EC事業者が今できる5つの打ち手
1. 資材単価表の棚卸しを年1回ではなく半期で回す
企業物価の前年比が7%台で高止まりしている局面では、年1回の見直しではズレが大きくなります。少なくとも半期に一度、主要資材の単価を確認する運用に変えるだけで、想定外の原価上昇を早く検知できます。次回の企業物価指数(8月速報)は2026年9月11日に公表される予定なので、月次の動きを追う習慣をつけておくと、値上げ交渉の打診が来たときに慌てずに済みます。
2. 箱サイズの種類を見直して過剰な空間を減らす
箱が大きいほど、資材費と緩衝材の使用量が増え、配送サイズ区分も上がりやすくなります。よく出る商品構成に合わせて箱のサイズ展開を最適化すると、資材費と送料の両方に効きます。サイズ選定の考え方は段ボール・梱包資材の選び方で詳しく整理しています。値上がり局面では、単価を下げる交渉よりも使用量を減らす設計のほうが確実なことが多いという点は押さえておきたいところです。
3. 同梱率を上げて出荷件数そのものを減らす
資材費は出荷件数に比例します。同じ顧客の複数注文をまとめて1件で出せれば、箱もテープも1件分で済みます。まとめ買いを促す設計は送料負担の観点でも有効で、この考え方は1配送あたりの粗利密度の記事で扱っています。送料無料ラインの設定とあわせて検討すると、資材費と配送費をまとめて改善できます。
4. 値上げ交渉には指数を根拠として持っていく
仕入先から値上げの相談を受けたとき、あるいは自社が販売価格を見直したいとき、公的な指数は共通の土俵になります。「パルプ・紙・同製品が前年比6.0%上昇している」という事実は、双方が確認できる客観的な根拠です。取引先への価格転嫁の実務は価格転嫁の記事で扱っていますが、資材費についても同じ考え方が使えます。価格交渉の進め方や相談窓口は中小企業庁「取引適正化、価格交渉・価格転嫁」にまとまっています。感覚ではなく数字で話すことが、値上げ局面での交渉を前に進めます。
5. 繁忙期前に必要量を固めておく
資材は使う直前に慌てて手配すると単価も納期も不利になります。年末商戦のように出荷が跳ねる時期は、必要量を早めに見積もって発注を分散させるほうが安定します。繁忙期の準備全体の流れは年末商戦の出荷準備ガイドで整理しています。過去の資材値上がり局面での対応は梱包資材の値上げラッシュの記事もあわせてご覧ください。
まとめ:資材費は「単価×点数」で管理する
2026年7月の国内企業物価指数は前年比7.2%の上昇で、高い水準が続いています。EC出荷に直結する類別を見ると、段ボールを含むパルプ・紙・同製品が前年比6.0%、緩衝材や袋に関わるプラスチック製品が前年比9.1%の上昇でした。輸入物価は円ベースで前年比29.1%上がっており、海外仕入れを行う事業者にはさらに重い局面です。ここで大事なのは、指数の%を眺めて終わらせず、「1件あたり資材費=単価×使用点数」という自社の単位に翻訳することです。単価は市況で決まるので動かしにくい一方、使用点数と箱サイズ、そして同梱による出荷件数の削減は自社で設計できます。半期ごとの単価棚卸し、サイズ展開の見直し、同梱率の改善、そして指数を根拠にした交渉。この4つを回せば、資材費の上昇を利益から静かに削られ続ける状態から抜け出せます。企業物価指数の最新の数字は日本銀行の企業物価指数のページで毎月確認でき、次回(8月速報)の公表は2026年9月11日の予定です。梱包設計や資材費の見直しを含めた出荷体制のご相談はお問い合わせや資料ダウンロードから承っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 企業物価指数と消費者物価指数は何が違いますか?
A. 企業物価指数は企業と企業のあいだで取引される財の価格を測る指標で、日本銀行が毎月公表しています。一方、消費者物価指数は消費者が実際に払う小売段階の価格を測ります。EC事業者の仕入れコストに直結するのは企業物価指数のほうで、一般に企業物価が先に動き、遅れて消費者物価に転嫁されていきます。
Q. 2026年7月の企業物価指数はどうなりましたか?
A. 国内企業物価指数は前月比プラス0.1%、前年比プラス7.2%でした。指数は135.8(2020年平均を100とする)です。夏季電力割増料金の影響を除いた夏季電力料金調整後では前月比0.0%で、足元の勢いは鈍いものの、1年前と比べた水準は高止まりしています。
Q. 段ボールや緩衝材はどれくらい値上がりしていますか?
A. 段ボールが含まれるパルプ・紙・同製品は2026年7月に前年比6.0%の上昇、気泡緩衝材やOPP袋などが含まれるプラスチック製品は前年比9.1%の上昇でした。国内企業物価の総平均が7.2%なので、プラ系は平均を上回り、紙系は平均をやや下回るという関係です。詳しい類別・品目の内訳は日本銀行の公表資料でご確認ください。
Q. 出荷1件あたりの資材費はどう計算すればよいですか?
A. 「資材単価×1件あたりの使用点数」で求めます。段ボール、緩衝材、テープ、納品書など出荷1件で使うものの単価を足し上げた金額が1件あたり資材費です。これに月間出荷件数を掛ければ月次の資材費になります。単価だけでなく使用点数を同時に見ることで、過剰梱包による無駄も見つけやすくなります。
Q. 資材の値上がりに対して何から手をつけるべきですか?
A. 単価の交渉より先に、使用量を減らす設計から着手するのが確実です。よく出る商品に合わせて箱サイズの展開を見直せば、資材費と配送サイズ区分の両方に効きます。あわせて同梱率を上げて出荷件数そのものを減らすと、資材費は件数に比例するため効果が出ます。発送代行を利用すれば、資材の共同調達や梱包設計の見直しをまとめて相談することもできます。
この記事の監修者
金子将大
株式会社KEYCREW ソリューション部門の責任者。大手ECプラットフォーム会社にてEC構築に関する開発・PM業務を7年間担当し、EC業界での豊富な技術知見を持つ。応用情報技術者・証券外務員2種の資格を保有。UIリニューアルやサービスリニューアルのプロジェクトマネジメント、Temu・ShopifyなどのEC外部API連携の新規開発・リプレイスを手がけてきた。クラウド環境のアプリログコストを60%程度削減するなどの技術的成果も上げている。KEYCREWではソリューション部門全体を統括し、技術で組織の仕組みを改善し、安定した運営と今後の成長につながる基盤づくりに注力。API連携・システム統合・EC自動化・DX推進に関する実践的な知見を記事に反映している。